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「公務員は残業をあまりしていない」
2011/02/16(Wed)
2月16日(水)

 昨年12月13日、厚労省で「第3回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討委員会」が開催されました。
 大きな検討課題は2つです。1つは、「出来事」が複数ある場合の総合的判断のあり方です。2つ目は、「出来事」の中の長時間労働をどれくらいに設定するか、つまり残業時間が何時間だったら労災と認定するかです。
 委員は「労働時間と健康の因果関係は証明されていない」ということを前提にして、勝手なことを発言します。そして以前から言われている「睡眠時間は6時間で充分」に生活時間の5時間を足して、それ以外の時間は労働させても大丈夫という方向になり、「1か月の残業限度は100時間か120時間か」というところでの論議になりました。
 その中で、このような検討委員会の常連である山口浩一郎上智大学名誉教授(法学者)は、「地方公務員の判断指針は残業時間が80時間と緩くできている。なぜなら地方公務員は残業しないから、5時で帰るから、該当者がいないから基準が緩くてもいいんだ」と発言しました。裏を返すと、民間労働者の場合には残業時間が80時間ではなくもっと厳しくした方がいい、そうしないと認定者が増えるという言い方です。そもそも判断基準に客観的基準はないという主張です。
 それを受けて織英子委員(弁護士・信州大学大学院法曹法務研究科講師)は、「長時間労働でも週休2日ならば個人的自由があるということで篩い落とすことができる」と発言しました。
 みんな篩い落とす基準を考えています。

 彼らは、問題ある発言をしても委員はみんな同じ意見のはずと捉え、傍聴者も誰もまともに聞いていないと思っていたのでしょう。しかし2つの検討課題はもちろん、判断指針の改定は深刻な問題だと捉えて耳を傾けていた傍聴者が約3人いたのです。
 全国安全センターと支援センター等は、この間、この発言は黙認することはできないと対応を検討していました。
さすが厚労省も問題発言と気付いたのでしょう。なんと出来上がった議事録からはこの部分は抹消されていました。確かにあった発言を勝手に抹消することも大きな問題です。
 全国安全センター等は、議事録抹消問題を含めて厚労省と交渉することにしました。

 イギリスの精神科医R.D.レインは朝鮮戦争の時の体験を『レイン わが半生』(岩波現代文庫)に書いています。
 「私の仕事の一部は、陸軍が必要としない兵士たちを精神病だという理由で陸軍から『降職』させることだった。そもそもそういう兵士たちはまず患者であるということで自動的に『降格』されていた。だが、8項目から成る基準に基づいて一体どの程度までダウングレイドさせればよいのか。……診断とグレイドづけは、どの患者にも並たいていでない影響を及ぼした。……私に判断できる限りでは、経済的にも影響を及ぼすこのような臨床資格の格付けの基準設定に関する方針は、陸軍の医療部門の外から発していた。その実態は私には永久に分るまい。誰と誰を原隊に復帰させ、誰と誰を除隊させたらよいのか。ある月は10%の人を復帰させ、90%の人を除隊させたかと思うと、翌月には10%を除隊させ、90%を留任させた。陸軍がどの程度まで人員を切り詰めるかという決定は陸軍当局次第だった。」
 イギリス陸軍における兵士の降格の判断は、精神科医が兵士を診断した健康状態によるのではなく、陸軍の人数合わせ・体制維持から逆算されていたのです。

 日本における精神障害等の労災認定数少なすぎます。実態からではなく、厚生労働省の政策に基づいて基準が制定されています。


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