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公務員  正規・非正規で命の値段に格差
2019/03/08(Fri)
 3月8日 (金)

 3月7日の毎日新聞に 「非常勤職員の労災請求、全自治体が対応明記へ 総務省調査で明らかに」 の見出し記事が載りました。
 総務省は、昨年7月20日に全国の自治体に、非常勤公務員本人や遺族から公務災害の認定請求があったら受理するよう規則の改正を要請する通知をだしました。その実施状況について、10~11月に全国の自治体に調査を実施しました。
 その結果、都道府県や政令市、市区町村計875自治体のうち、通知以前から非常勤職員の労災請求を認める規則があったのは11自治体でした。運用で請求を認めていた自治体もかなりあったとみられます。例えば東日本大震災の被災地自治体がそうでした。しかし特殊公務災害においては常勤職員との格差が問題となりました。
 通知には法的拘束力はありませんが、昨年9月末までに328自治体が条例規則を改正、509自治体が今年度中に改正予定と回答しました。残りの自治体も2019年度以降に改正予定などと回答しています。
 
 総務省が通知をだしたのは、昨年7の北九州市の非常勤職員の母親の手紙がきっかけでした。
 2012年4月から北九州市の区役所で子ども・家庭問題の相談員をしていた非常勤職員の森下佳奈さん (当時27) は13年1月ころから体調を崩して休職、うつ病と診断され3月に退職しました。その後も治療を続けていましたが15年に自殺します。
 16年8月、遺族は過重な業務負担や上司の執拗な叱責が原因だとして、市に公務災害の遺族補償手続きを問い合わせました。すると市の条例は非常勤職員本人や遺族による公務災害の請求は規定しておらず、事実上、職場が認めた場合以外の申請は認められないと拒否されました。
 市は当時の上司らへの聞き取り調査をしたが 「パワハラの事実はなかったと判断している」 と説明しました。

 17年8月、遺族は福岡地裁に、自殺は上司のパワハラが原因なのに、常勤職員は請求できても非常勤だということで 「本人や遺族の請求権を認めない条例は無効で、適切な調査で公務災害かどうかの判断を受ける期待権を不当に侵害された」 と主張し、あわせて市を相手取って遺族補償など約1209万円の損害賠償を求める訴訟を起こしました。
 市は 「条例は国が各自治体に示したひな型に基づき定めた。また市の調査で上司のパワハラは認められなかったため、公務災害かどうかを判断する必要もない」 と反論しました。

 昨年7月、遺族は野田聖子総務相 (当時) に手紙を送り 「この問題をどうか大臣も知って下さい」 と訴えました。
 テレビで野田大臣が 「女性活躍」 について語っているのを見て、「『活躍』 の手前で倒れ、没後も人間らしい扱いをされなかった娘の無念をわかってくれるのでは」 と思ったといいます。「困難を抱えた子どもたちの助けに」 という夢をもって就職したが数カ月で元気を失い、追い詰められていった過程や、死後も労災請求すら許されなかった事情をつづりました。
 返事は期待していませんでしたが、7月19日に手書きの封書が野田氏から届きました。さらに面談することができました。


 地方公務員の公務災害を巡っては、常勤職員は地方公務員災害補償法に基づき本人や遺族が第三者機関の基金に認定申請できます。非常勤職員でも現業部門の場合は労働者災害補償保険法が適用されます。しかし事務部門の非常勤職員については適用外になっていました。地方公務員災害補償法では、常勤職員以外の職員については自治体条例に委ねるとしています。
 旧自治省が1967年に各自治体に示した 「準則」 に基づいた条例のひな型が基本となっていました。そこには非常勤職員本人や遺族らによる請求手続きが盛り込まれてないため、多くの自治体は明記していませんでした。このため 「請求できない」 として門前払いする自治体や自ら認定の判断をしない場合の対応は不明確で、改善を求める声が上がっていました。
 各自治体が条例で補償手続きを定めたり、本人や遺族からの申請を認めている自治体もありました。

 昨年7月の通知をうけ、10月、北九州市は制度を改正しました。しかし改正前の事案は請求を認めませんでした。批判を受けて市長は12月に方針転換を表明し、今年の2月26日、非常勤職員やその遺族が過去にさかのぼって公務災害の認定を請求できるように再改正しました。
 過去の労災を対象から外す規定を設けている政令市は、北九州市を含め4市ありました。
 再改正で森下さんのケースもやっと請求できるようになります。


 15年4月18日の毎日新聞に 「<特殊公務災害> 被災で死亡47人の非正規職員 補償対象外」 の見出し記事を載りました。
 東日本大震災では多くの自治体で正規職員、非正規職員が犠牲になり、ともに公務災害として認定されました。しかし特殊公務災害の認定については異なりました。
 特殊公務災害制度は、1972年の 「あさま山荘事件」 で警察官2人が死亡したのをきっかけに設けられました。地方公務員が危険性が高い業務に就いている時に死傷したと認定されると公務災害の最大1.5倍の補償金が地方公務員災害補償基金から遺族らに給付されます。しかし警察官や消防士など業務上の危険性が高い職員しか認定されていませんでした。地公災法により各自治体で制定した条例には 「特殊公務災害」 の規定がありませんでした。
 震災後の2014年に、認定要件として 「生命、身体に高度な危険が予測される状況での職務従事」 「天災など人命救助、その他の被害の防御」 が加えられ、東日本大震災で被災した一般職員にも対象が拡大されました。
 しかし正規職員と同様に従事しながら、非正規職員は特殊公務災害の認定を受けられていません。制度の前提として、非正規職員は 「危険業務」 に従事させないことになっているためです。実際は、震災時には正規職員と一緒に役所で災害対応しているうちに建物ごと津波にのまれて死亡したケースが多くありました。「同じ職場で同じ仕事をして、命を落としたのに」 差があります。
 総務省安全厚生推進室は 「非正規職員は役所内の事務など、生命の危険がない仕事しか任せないとの考えが前提にある。震災のような事態は想定していなかった」 といいます。
 岩手、宮城、福島各県の地方公務員災害補償基金支部によると、15年3月までに計184人が 特殊公務災害に認定されましたが、いずれも正規職員で、死亡した47人の非正規職員は通常の 「公務災害」 にとどまりました。

 職員111人が犠牲になった岩手県陸前高田市は、正規職員62人が特殊公務災害に認定されましたが、非常勤などの非正規職員44人は通常の公務災害にとどまりました。
 非常勤として市教育委員会に採用されていた女性は、正規職員と一緒に市民の避難誘導の連絡をしていたところを津波に襲われました。娘を亡くした母親は公務災害」認定を受けましたが、特殊公務災害の申請については、市幹部から 「制度が違う」 といわれ、認められませんでした。
 臨時職員として市営プールで受付係をしていた女性は、災害対応のため上司らの指示で向かった市役所前の事務所で津波にのまれました。市が14年夏にまとめた震災対応の検証報告書では、職員の被害が拡大した要因を 「危険を感じながらも、災害対応や市民の避難誘導に備えて待機を続けた」 と総括しました。しかし、市の担当者は非正規職員の特殊公務災害については全国一律で条例化されていることもあり、「心情的には分かるが、なすすべがない」 と話しました。
 非正規職員の特殊公務災害の適用についてはその後も変更はありません。

 現在、全国の自治体には非正規職員は総務省の公表資料によると、16年現在の非正規公務員約64万3000人です。職種別内訳は 「事務補助」 が約10万人、「教員・講師」 が約9万人、「保育所保育士 」が約6万人です。行政の現場は5人に1人が非正規職員です。しかし身分・処遇は大きく違います。同じ時、場所で震災に遭遇し、誘導などの任務に従事して亡くなっても 「命の値段」 に差がつけられます。早急な改善がはかられなければなりません。


 ついでに自治体における一般職以外の非正規職員についてです。
 13年8月23日の岩手日報に 「震災犠牲の民生委員、公務災害に 本県と宮城の36人」 の見出し記事が載りました。民生委員は住民の相談に乗るなど地域の福祉増進に努めることが業務の特別職の地方公務員です。東日本大震災では避難誘導をしたり、足の不自由な高齢者を助けに行ったりして津波に巻き込まれるなど岩手県で25人、宮城県で23人、福島県で7人が犠牲になりました。
 12年1月、厚労省は震災時に高齢者や障害者などの要援護者の安否確認をした場合は職務に当たるとして公務災害補償の適用を検討するよう被災自治体に通知します。これを受け、岩手県と宮城県は遺族に公務災害を申請するように促し、8月22日までに東日本大震災で岩手県と宮城県で死亡・行方不明になった民生委員55人のうち、遺族が申請した36人全員の公務災害が認定されたことが分かりました。

 14年7月14日の岩手日報に 「津波犠牲区長の公務災害認定 陸前高田市で本県初」 の見出し記事が載りました。
 4月に日東日本大震災で住民の避難を誘導し、犠牲になった陸前高田市の行政区長9人が非常勤職員として公務災害が認定されていたことがわかりました。区長は市政の情報を住民に伝えたり、各種の調査に協力したりする地区のまとめ役で陸前高田では市が委嘱しています。
 東日本大審査で11人が犠牲になりました。認定をおこなう県市町村総合事務組合によると、うち9人は目撃証言から避難誘導中だったと確認されました。
 当初、市は区長の本来業務と避難誘導との関わりは薄いとみていました。しかし、同様に自治体の非常勤職員で犠牲となった民生委員の公務災害が認められてきた例を踏まえ、市が事務組合に相談、遺族の申請に至りました。
 7月時点で行政区長では福島県の6人、宮城県の2人が公務災害と認定されています。

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「監視カメラによる労組活動監視による精神疾患は労災」 韓国
2018/12/14(Fri)
 12月14日 (金)

 12月6日のハンギョレ新聞に 「ユソン企業労組に軍配上げた最高裁 『労組活動監視による精神疾患は労災』」 の見出し記事が載りました。
 労組活動監視とは、ユソン企業社は2011年9月以後、ストから復帰した労働者の27人を解雇、42人を出勤停止などの重い懲戒を下しました。
 同時に、他の労働者に対しては防犯カメラを設置し、ビデオカメラ、携帯電話、カメラをも利用して監視を続けました。
 争議中に会社が主導して第二組合を結成させ、「特別生産寄与金」 を支給する一方、ユソン支部には成果給を支給しない、残業と特別勤務からも排除するなどの差別行為を働いてきました。

 このようななかで、牙山 (アサン) 工場の組合員Pさんは重症度のうつ病をり患しました。Pさんは15年9月に労災審査をする勤労福祉公団に療養給与を申込み (労災申請)、16年5月に労災と認定されました。
 会社はそれを不服として裁判所に提訴しましたが、1審・2審とも敗訴、最高裁 (大法院) に上告しましたが、11月27日、棄却されていたことが明らかになりました。
 最高裁が支持したソウル高裁の判決内容は、「P組合員らは良心の自由と経済的圧迫の間で相当な精神的ストレスを受けたと思われる」 とし 「最大の原因は、正常業務遂行中に経験した労使・労労葛藤と、そこに原告 (ユソン企業社側) の不当な経済的圧迫と強化された監視および統制が加えられて生じたもの」 というものです。

 会社側の労働組合弾圧など不法不当労働行為で発生した精神疾患が労災と認定されました。憲法が保障した正当な労組活動を会社が妨害すれば、労組活動中に受けた監視などから生じた精神疾患も不当労働行為だけでなく業務上の労災と認定されるという初めての判例です。


 ユソン企業社の労働争議は2011年から続いています。
 17年2月17日、忠清南道天安 (チョンアン) の新富洞大田 (テジョン) 地裁天安支部で、ユ・シヨン会長に懲役1年6カ月の実刑が言い渡されました。
 判決に至る経緯です。
 11年5月18日、会社は労組がストライキに突入すると職場閉鎖を断行し、工場内にいた労組組合員を引きずり出すために暴力ガードマンを動員して多数の負傷者を出しました。
 7月、労組は工場復帰意思を明らかにしますが、会社は一カ月以上職場閉鎖を維持しながら復帰を阻みます。その間に 「創造コンサルティング」 の諮問に従って、会社主導で会社に友好的な組合を瓦解させるため第2労組を結成させ支援します。
 組合員と第2労組組合員とを差別し始めます。

 12年9月、国会で創造コンサルティングの諮問文書が公開されます。
 労組はユソン企業を不当労働行為の疑いで告訴しますが、検察は13年12月、創造コンサルティングと関連した 「労組破壊」 の容疑を除外し極めて一部の容疑だけでユ会長などを “温情” 起訴するに留めました。
 これに対して労組は大田高裁に裁定申立てを行ないます。
 14年12月、裁判所が検察に公訴提起を命令して 「労組破壊」 の容疑に対する本格的な裁判が開かれることになります。

 17年2月17日、忠清南道天安 (チョンアン) の 新富洞大田 (テジョン) 地裁天安支部で、ユ・シヨン会長に懲役1年6カ月の実刑が言い渡されました。
 16年4月、労組が提起した第2労組無効訴訟でソウル中央地裁は 「第2労組が会社の主導の下に設立されたため無効」 と判決を下しました。
 しかし 「労組破壊」 を主導した経営陣に対する刑事処罰はずっと見送られてきました。この日の判決で初めて、労組が告訴した大部分の犯罪事実が有罪と認められました。


 17年5月24日、検察は、ユソン企業社の「労組破壊」に関与した疑い (「労働組合および労働関係調整法違反」) で、元請け会社である現代自動車の11年9月当時の購買本部駆動部品開発室長など4人の取締役員と法人を 「共同主犯」 として起訴しました。
 その訴状です。
 11年5月、ユソン企業社から現代自動車への部品供給に支障が生じると、元請けの現代自動車は、「2011年末まで品切れの懸念のない安定的生産構造を定着させることができない場合、納品構造の二本化方針によって注文量を削減するしかない」 と圧迫しました。
 ユソン企業社は会社側と対立を深めてきた金属労組の影響力のユソン企業労組の弱体化と瓦解のために、11年7月に会社側に近い労働者を煽って第2労組を組織していましたが、現代自動車に 「第2労組の組合員を増やし、品切れ状態が発生しないようにする」 と明言しました。
 現代自動車はユソン企業社の 「不当労働行為」 を制止するどころか、時期別の第2労組加入人員の目標値を管理し、思ったように組合員が増えないとしてユソン企業社を叱責する一方、労務法人 「創造コンサルティング」 関係者まで現代自動車本社に呼んで会議を開きました。
 検察はこのような行為を、現代自動車が「円滑な部品納品」のためにユソン企業社と共に不当労働行為を 「共謀」 したと判断しました。

 最高裁は10年、現代重工業で社内下請けの労組が設立されたことを受け、元請けの現代重工業が該当の社内下請け会社を廃業させる方法で下請け労働者を解雇した行為を 「不当労働行為」 と認めて以来、元請け会社の使用者による下請け業者労組への不当労働行為が認められる事例が相次いでいます。
 しかし元請けの関係者たちが実際に刑事処罰の対象となったのは今回の事例が初めてです。
 労働基本権の保護を重視する新政府の発足と共に、検察が反労組犯罪を積極的に処罰する方向に変わっています。


 6年という時間の中で、組合員たちの身心は壊されました。今も18人の解雇者が復帰できていません。
 現場にいる300人余りの金属労組組合員は、第2労組員や会社の管理者と衝突し1300件もの告訴・告発にあい、懲戒委員会に呼び出されねばなりませんでした。
 16年3月17日には、ハン・グァンホ組合員は会社の懲戒を控えて自ら命を絶ちました。5月、3人の労働者は精神疾患が業務上の災害に当たるとする認定をうけました。
 組合員の精神状態が深刻化すると、国家人権委員会がユソン企業社の労働者全体を対象に精神健康実態を調査し、17年発表しました。 調査の結果、いじめを経験した人が3人のうち2人に当たる67.6%、潜在的ストレス群が93%、死に至る危険のある高危険群が2人でした。
 14年以降、組合員のうち鬱病など精神疾患で労災を認められた労働者だけで7人にものぼります。
 企業牙山工場の労働者キムさん (38) は、14年11月、ソウル業務上疾病判定委員会で 「職場閉鎖期間中のデモや、解雇などの不利益、監視カメラによるストレスなどが積み重なった混合型不安や憂鬱病障害が現れたのは、業務と関連性がある」 との認定判定を受けました。キムさんは 「解雇された後に仲裁があった時、会社側に私も知らない間に撮影された写真を見せられ驚いた。今はどこに行っても監視カメラがあるか常に確認する。 (誰が私を監視しているのか確かめる習慣が) 身についた」 と話します。


 ユソン企業社ではありません。
 15年5月に自ら命を絶ったポスコ光陽製鉄所の協力会社として酸化鉄を生産するイージーテックの組合員を組織する金属労組ポスコ社内下請け支会イージーテック分会長のヤン・ウグォンさん (当時50歳) は、監視カメラに対する不安を日記に書き残しました。

 労組を1人だけ脱退しなかったヤンさんは、減給、無期限の待機発令、2度の解雇、2度の停職となります。11年と12年の不当解雇には対抗して争い、いずれも勝ります。
 しかし会社は、14年5月23日に復職した彼に対し、製鉄所の外にある会社事務所の机の前で待機するよう命じます。ヤンさんは事務所で1人でいる時の行動を会社側に指摘され、監視カメラが設置されている事実を知ります。会社側は、ヤンさんが復職する直前の14年5月15日に社内に監視カメラ4台を設置していました。
 ヤン分会長はそこで1年余りを送ります。同僚らと対話もできず、一緒に食事もできませんでした。壁に向かい合う机に8時間ずっと座っていました。

 11年、ヤンさんは会社が同僚を通じて自分を監視していることを知ってから、うつ病に悩まされ始めた。遺族は 「監視カメラを通じ監視されている事実を知ってから症状がさらに悪化した」 と主張しました。故人は 「あのカメラが気になってしょうがない。すべての行動が監視されていると思うと気がおかしくなる。ハンマーで叩いて壊してしまいたい。いつまで一人で食事しなくてはならないんだ」 「何の業務も与えられず、こんなふうに机の前に座らせられたら本当におかしくなってしまう」 (14年9月2日) と監視カメラに対する不安を日記に書き残しています。ヤンさんの遺族は 「深刻な精神的ストレスにより精神障害状態に陥り、自殺をすることになった」 と主張しました。

 勤労福祉公団ソウル業務上疾病判定委員会は、ヤンさんの家族が同公団麗水支社に申請した労災保険の遺族給与等の請求に対し、16年5月27日、「解雇と復職が繰り返される過程、復職後に続いた使用者の法的対応及び懲戒処分が繰り返される過程で、業務と関連したうつ病が発生した。悪化したうつ病による心身微弱の状態で自殺した」 「故人の死亡は業務上の死亡と認められる」 と認定しました。判定書は会社側が遺族年金と葬儀費用を支払うよう判定しました。
 会社の監視カメラでうつ症が悪化した労働者の死が、業務上の死亡として認められたのは初めてでした。

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過労死の1割が 「専門的・技術的職業従事者」                     「働き方改革法」 は 「過労死促進法」
2018/07/19(Thu)
 7月19日 (木)

 7月6日、厚労省は2017年度 「過労死等の労災補償状況」 を公表しました。

 「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」 については、決定件数664件で支給決定件数253件、認定率38.1%です。支給決定数のうち死亡件数は96件、認定率39.0%です。
 請求件数は12年までは800件台半ばに至っていましたが、13年度からは700件台に減少、16年度からまた800件台になっています。過労死をめぐる社会的な動きに誘発され、泣き寝入りをしない労働者・遺族が増えていると思われます。
 決定件数は、600人台後半がつづいています。支給決定件数は13年度までは300人台でしたが少しずつ減少しています。

 支給決定件数を業種別にみると、 「運輸業・郵便業」 が99件(昨年97件) で断トツです。続いて 「卸売業・小売業」 35件 (29件)、「製造業」 24件 (41件) の順です。
 職種別では、「輸送・機械運転従業者」 89件 (昨年90件)、「サービス職業従事者」 36件 (22件)、「販売従事者」 29件 (23件)、「専門的・技術的職業従事者」 25件 (30件) の順です。
 「輸送・機械運転従業者」 は深刻な状況におかれてることが指摘できます。
 「専門的・技術的職業従事者」 が過労死の1割を占めます。「働き方改革法」 の反対運動のなかで 「高プロ」 は 「過労死促進法」 と批判されましたがまさにその通りです。

 支給決定件数が上位を占める職種が労働時間数も長くなっていることが想定できます。道路貨物運送業は人手不足が社会問題になっています。営業職業従事者はノルマ、飲食物調理従事者は人手不足のなかでの不規則な勤務です。これらの業種、職務にたいする早急な対策が必要です。

 年齢別支給決定数は、40歳~49歳が97件 (昨年90件)、50歳~59歳が97件 (99件)、60歳以上が32件 (33件) です。
 このうちの自殺者は40歳~49歳が41件 (昨年38件)、50歳~59歳が97件 (38件)、60歳以上が7件 (12件) です。

 時間外労働時間別の決定件数です。
 80時間~100時間未満が101件 (昨年106件)、100時間~120時間未満76件 (57件)、120時間以上59件 (71件)です。80時間以上が全体の83%、100時間以上では50%を占めます。

 過労死防止対策は効果が表れていません。というより、政府はその逆の政策を進めています。


 7月6日、過労死弁護団全国連絡会議幹事長の川人博弁護士は 「平成29年 『過労死の労災補償状況』 に対するコメント」 を発表しました。その抜粋です。
 2.脳・心臓疾患の労災認定件数として引き続き運送業・建設業が多いことが示されて
  おり、これらの業種を適用除外とした 『働き方改革法』 の問題点を改めて浮き彫りに
  した。これらの業種にについて、早急に過重労働をなくすための国家的な取り組みが
  必要である。
 3.精神障害の支給決定件数が多い業種として医療・福祉があげられているが、病院
  や介護施設等で働く人々の心理的負荷がたいへん大変大きいことを示すものであ
  り、これらの職場で働く人々の過重労働や精神的ストレスを軽減する国家的な取り
  組みが必要である。


 「精神障害の労災補償状況」 については、請求件数1732件、決定件数1545件で支給決定件数506件、認定率32.8%です。請求件数は16年度までは1500件台でしたがいっきに1700件台に、決定件数は1300件台から1500件台に達しました。処理件数が増えたか、決定が早くなっています。
 しかし支給決定認定率は30%後半から下がっています。特に女性は26.4%となっています。
 そのうちの未遂を含む自殺者の請求件数と支給決定数は、13年度177件と63件、14年度213件と99件、15年度199件と93件、16年度198件と84件、17年度221件と98件です。自殺防止対策が叫ばれていますが減ってはいません。

 支給決定件数を業種別にみると、製造業87件 (昨年91件)、医療・福祉82件 (80件)、卸売業・小売業65件 (57件)、運輸業・郵便業62件 (45件) の順でした。

 職種別では、専門職・技術的職業決定者130件 (昨年115件)、サービス従業従事者70件 (64件)、事務従事者66件 (81件)、生産工程従事者56件 (52件) の順でした。
 支給決定件数を年齢別にみると、40歳~49歳が158件 (昨年144件)、30歳~39歳が131件 (136件)、20歳~29歳が114件 (107件)、50歳~59歳が82件 (82件) の順です。
 支給決定件数を20時間刻みの労働時間数区分でみると100時間以上が151件 (昨年158件)、100時間未満が211件 (215件) となっています。自殺者数でみると100時間以上が43件 (48件) です。
 20時間未満が75件 (84件) です。一方、160時間以上が49件あります。長時間労働はちょっとは減少していますがまだまだ長時間労働問題は解消されていません。そして体調不良におちいる原因は労働時間だけでないことを物語っています。

 「出来事の類型」では、「ひどい嫌がらせ、いじめ又は暴行をうけた」 88件 (昨年74件)、「仕事内容・仕事量の (大きな) 変化を生じさせる出来事があった」 64件 (63件)、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」 63件 (53件)、「2週間にわたって連続勤務を行なった」 48件 (47件)、「1か月に80時間の時間外労働を行なった」 41件 (39件) の順でした。
 「セクハラを受けた」 は35件 (29件) でした。
 心理的負荷が極度のものである 「特別な出来事」 は63件 (67件) です。
 業務遂行にゆとりがない状況が浮かび上がってきます。

 都道府県別請求・決定件数です。
 以前、極端に少なかった埼玉県は、決定件数61件、支給決定18件、認定件数29.5%です。少しは改善されました。
 ちなみに、12年度から16年度の流れは、45件-34件-49件-36件-39件、6件 (13.3%)-8件 (23.5%)-22件 (44.9%)-11件 (30.5%)-16件 (41%) です。
 13年秋に、IMCと全国労働安全衛生センター連絡会議は、埼玉労働局に原因究明の要請、提案行動をおこないました。その成果が出てきています。
 総就業者の割合には請求件数が絶対的に少ない愛知県は、82件、18件、21.9%です。三重県は16件、1人、0.6%です。このような状況では、労働者は体調不良に陥っても労災申請に期待する気になりません。


 今回から裁量労働者についての決定件数と支給決定件数が公表されました。
 脳・心臓疾患については、14年度決定件数9件、うち支給決定件数8件、15件度7件、3件、16年度3件、1件、17件度6件、4件です。
 精神障害については、14年度決定件数8件、うち支給決定件数7件、15件度10件、8件、16年度2件、1件、17件度19件、10件です。
 しかし、裁量労働制は、労働時間の管理等が難しい実態があります。それぞれがきちんと労働時間の管理をきちんとしておく必要があります。


 それにしても1年間に760人が労災認定を受ける、仕事が原因で自殺するという実態を見る時、政府が進めるべきは 「働かせ方改革」 ではなく、労働者の側に立った本当の 「働き方改革」 であるこを確信させられます。

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現場の労働者こそが職場治療の専門医・本物の産業医
2018/06/26(Tue)
 6月26日 (火)

 ある組合協議会の勉強会で報告する機会をもらいました。テーマは 「働きやすい職場づくりに向けて 労働安全衛生と悪質クレーム問題」 です。

 労働安全衛生については、労働安全衛生の原則からです。
 「予防医学」 には一次予防、二次予防、三次予防があります。予防医学は、病気を予防するだけでなく、疾病予防、障害予防、寿命の延長、身体的・精神的健康の増進を目的としています。
 一次予防は、生活習慣の改善、生活環境の改善、健康教育による健康増進を図り、予防接種による疾病の発生予防、事故防止による傷害の発生を予防することをいいます。
 二次予防は、発生した疾病や障害を検診などにより早期に発見し、早期に治療や保健指導などの対策を行ない、疾病や傷害の重症化を予防することをいいます。
 三次予防は、治療の過程において保健指導やリハビリテーション等による機能回復を図るなど、社会復帰を支援し、再発を予防することをいいます。
 対策を進める時はこの順序が大切です。メンタルヘルス対策は、職場のストレッサーの除去なしに労働者のストレス軽減はありません。一次予防が重視される必要があります。「発生を予防」 は、具体的には長時間労働の禁止、過重労働の禁止、ストレス発生原因の解消などです。医者や薬では治りません。

 しかし厚労省は、一次予防、二次予防、三次予防を同時に進める必要があると主張します。日本の労働安全衛生対策は 「世界の常識・日本の非常識」 です。
 労働安全衛生法第一条は (目的) 「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成と促進を目的とする。」
 それをふまえた厚労省の 「労働災害防止計画」 です。
「メンタルヘルス不調者を増やさないためには、労働者自身によるセルフケアをはじめ、管理監督者や産業保健スタッフによるケアなどにより、メンタルヘルス不調者の早期発見・早期治療を進めるとともに、メンタルヘルス不調になりにくい職場環境に改善していくことが必要である」
 このやり方は一次予防がおろそかになり二次予防中心になります。
 
 健康診断についてです。
 第六十六条の六は (健康診断の結果の通知) 「事業者は、第六十六条第一項から第四項までの規定により行う健康診断を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該健康診断の結果を通知しなければならない。」
 第六十六条の七は (保健指導等) 「事業者は、第六十六条第一項の規定による健康診断若しくは当該健康診断に係る同条第五項ただし書の規定による健康診断又は第六十六条の二の規定による健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による保健指導を行うように努めなければならない。」
 事業者は労働者の健康状態について情報を集めて管理し、提供するが、健康管理は労働者の責務ということです。その結果が 「早期発見」 「早期治療」 「早期退職 (退職勧奨・強要、解雇)」 です。
 日本の労働者は健康診断項目を増やすのは健康管理・健康維持のためでいいことだと捉える傾向があります。健康情報を会社任せで安心しています。会社に任せられるのは、第一次防止がおこなわれて、労働者が日常的に安全とおもえる職場環境があり、安心して働いている時です。

 2015年12月に施行された 「ストレスチェック法」 についてです。
 検査には 「ストレスチェック票」 が用いられます。票は 「仕事のストレス要因」、「心身のストレス反応」、「周囲のサポート」 の項目が盛り込まれていることが必須です。
 「仕事のストレス要因」 調査の 「非常にたくさんの仕事をしなければならない」 「時間内に仕事が処理しきれない」 「一生懸命働かなければならない」 などです。
 事業場は労働者の精神状態、「心身のストレス反応」 をチェックできるようになりました。「心身のストレス反応」 には 「ひどく疲れた」 「不安だ」 「気分が晴れない」 などがあります。労働者は、“内心” まで提供します。
 毎日新聞の昨年12月21日の記事を書いた記者のはなしです。
「一番疑問だったのは、集団分析が、科学的根拠がある部分 (「仕事のストレス要因」) が任意で、効果がないといわれている自己責任のセルフケアとしての結果返却と医師面接 (「心身のストレス反応」) が義務になっている制度の矛盾は何なのだろうかということです。」
 「仕事のストレス要因」 は日常的にコミュニケーションができていたら必要ありません。人間関係が良好ならばチェックできることを、票を使って数値でさぐるのがストレスチェックです。
 労働者の職業性ストレスは、個人的な弱さではなく組織的問題の表れです。
 ストレスチェックは法的に拒否できます。
 職場のストレスチェックなら 「仕事のストレス要因」、「周囲のサポート」 だけで無記名で可能です。
 しかし制度に疑問や反対の声はほとんど上がっていません。結果がどう取り扱われているかも関心がありません。日本以外で同じようなものを導入しようとしたらただちに反対運動がおき、実施できません。
 EUでは個人情報は基本権、アメリカでは消費者がサービスを選ぶ自己責任です。
 日本では、様々な分野で情報の漏えいが続いています。情報は取得したら 「勝ち」 です。
 「ストレスチェック制度」 開始と同じ時期に 「秘密保護法」、「マイナンバー制度」、「個人情報保護改正」 が施行されるのは偶然でしょうか。マイナンバー制度はあらゆる情報が盛り込まれ、人びとの一切が管理されます。しかし管理される側は見ることはできません。もっと関心を持つ必要があります。
 「高ストレス」 のチェックにも役立っていません。

 この後 「働き方改革法案」 のなかの労働安全衛生法改正案、つづけて日本の労働安全衛生の特徴を軍隊と関連させてふれました。
 精神科医の島悟医師が雑誌の座談会で次のように語っています。
「行政の進める労働安全衛生のモデルは軍隊なんですね。産業保健スタッフで言えば、産業医は軍医、衛生管理者は衛生兵です。『場の管理』 が基本なんです。それぞれの現場で使っている有機溶剤や薬剤など危険物の種類の違いなどに対応するために 『場を管理する』 という発想。実際のオフィスワークの場合はどこでも同じですよね」
 「場を管理する」 政策は、労働者を画一的対応・管理し、集団としか見ません。
 現在の競争社会において会社も労働者を 「数」 や 「モノ」 や 「原子的存在」 としか見ていません。「企業戦士」 です。戦力外通報が解雇、退職強要です。
 「徴兵制度」 は健康な者を選別する制度ではありません。「まだ戦える者」 を、必要を満たす基準を設けて選別します。外れた者は 「非国民」 です。
 安倍首相の 「全国過労死を考える家族の会」 との面会拒否の対応は、過労死した労働者を 「モノ」、高プロや月100時間の時間外労働で働く労働者を 「数」 としか捉えていない証左です。だから被害者家族の声には関心がないのです。

 このような中で労働者は自分たちで労働安全衛生管理への挑戦する必要があります。
 東京都清掃局労働者の実践です。
 業務中に事故が発生した時、労働組合が自分たちで「実況見分調書」を作成します。
 そこで道路の状況、通行人の動向などをふまえて不可抗力だったと主張して警察に提出します。組合員を守る活動です。
 また自分たちで再発防止のための話し合いをし、教訓化します。起きてしまったことを分析して再発防止につなげる。予防の原則です。
 「社員の病は会社の病 会社の病は社会の病」 です。むずかしくなく自分たちの職場の病を診断する方法です。
 東京都人権啓発センターは2012年に「今、考えよう 人権 のこと」と書かれたポスターを作成しました。そこには
  「東京は、差別のない街ですか。
   東京は、迫害のない街ですか。
   東京は、貧困のない街ですか。
   東京は、虐待のない街ですか。
   東京は、いじめのない、街ですか。
   東京は、自由のない街ですか。」
とあります。
 「東京」 「街」 を 「私たちの職場」 と置き換えて考えてみます。
 診断したら、次に具体的治療方法をみんなで議論します。治療できるのは専門家ではありません。現場の労働者が持っている感覚・感性、知恵です。現場の労働者こそが職場治療の専門医・本物の産業医です。
 職場の安全衛生委員会の挑戦課題でもあります。


 終了後に寄せられたアンケートです。
・個別具体の話で理解しやすかった。世界における日本の現状も知ることができ不安
 に思うこともありました。
・どこの職場でもメンタル問題は発生していると思う。その解決策は専門医ではなく
 現場労働者の持っている感覚・感性・知恵という考えに改めて気づかされました。
・心身のストレス反応は労働者の内心、つまり個人情報をさらけ出してしまうとい
 うことに気づかされた。
・世界的観点での労働環境、日本とも大きな違いなどは勉強になった。職場環境
 でのメンタル維持は自分が思っている以上に重く、多くの人々が苦しい思いをし
 ていると思うので、この日本のシステムには疑問点が多い。
・ストレスチェックについて疑問に思っていたことがわかってよかった。行政の行
 政のための法、管理職の責任逃れの法に振り回されているのでは?と思いま
 した。
・ストレスチェックのデメリットも明示してもらい良かった


 悪質クレーム問題についてです。
 「感情労働 (emotional labor)」、サービス業の増大、ドイツのサービスとの比較、鉄道職場の第三者暴力 ストレスの発散についてふれました。
 その後、韓国の取り組みについてふれました。これまで 「活動報告」 で繰り返し触れてきたことをコンパクトにまとめました。レジュメ風です。
 韓国では2010年ころから職場の暴力を 「感情労働」 と呼び取り組みを始めました。経過です。
 ・売場にお客さんがいない時は椅子に座れるように要求。
 ・化粧品販売会社で、労働組合は最初 「感情手当」 を要求 ――手当の要求
  それでは解決しないということがわかり 「感情休暇」 を要求 ―― ゆとりの保障
 ・一方的に謝らない権利。電話を一方的に切る権利 ―― 人権侵害の排除、再獲得
 ・デパート下請け会社とデパートで対応を業務協定 ―― 企業が労働者を守る対策開始、
  労使、関連会社間で取り組み
  『顧客が王様なら、従業員も王様だ』 の認識を共有します。
 ・コールセンター労働者は自らビラをまき、社会的の呼びかけを行いました。 ―― 
  可視化。社会的問題に。
 ・14年10月23日付の 「毎日労働ニュース」 から
  イーマート・CJ第一製糖など、ソウル市と 『感情労働者人権保護協約』 締結。背景にサービス
  連盟の要求。
  協約を締結した企業は 『企業の10大実践約束』 を基に、感情労働者の勤務環境改善のた
  めに努力することになる。10大実践約束は、△感情労働者の基本的人権の保障・支持、
  △安全な勤務環境の造成、△適正な休憩時間・休日の保障、などが内容。
 ・14年11月 、光州女性民友会が、ロッテ百貨店光州店付近で 「デパートには人がいます」 の
  チラシをまきました。デパートのサービス・販売職労働者が尊重を受けて働ける環境を作ろう
  という 「尊重の帯つなぎキャンペーン」 の一環です。
  「サービス・販売職労働者が自分の子どもだったらと捉えてみよう」
  一緒に考え、行動するなかから相手への思いやりが芽生えてきました。
  6つの事項を要求。
  「デパート労働者は仕事の特性上、話をよくするので喉が渇くが、売場で水を飲めないケース
  が多い」 として 「デパート労働者が売場で自由に水を飲めるようにすべきだ」。
  デパート労働者が顧客用トイレと移動手段を一緒に使えるようにし、売場にお客さんがいな
  い時は椅子に座れるようにしてほしい。
  市民には 「レジでカードを放り投げないこと」 を呼びかけ
  光州市北区で開かれる市民実践キャンペーン。
  △デパート労働者に丁寧語を使い
  △返品・払い戻し規定をよく熟知して不合理な要求をせず
  △会計をする時にはカードや紙幣を放り投げず
  △不必要なスキンシップや言語セクハラをしない、など
 ・ソウルのコーヒーショップの労働者がメーデーにミニステッカーで訴え 「あたりまえの日常に対
  する感謝と 互いの労働に対する尊重を 私たちから始めましょう たった今から」 ―― 連帯の
  呼びかけ。―→ 社会全体での取り組みの課題に
 ・「ソウル特別市感情労動従事者の権利保護などに関する条例 (2016)」 を制定 ――
   社会的合意形成。
 ・17年11月、雇用労働部は 「感情労働従事者健康保護ハンドブック」 を発行して、政府・ 公共機関
  335カ所と全国50人以上のサービス業種の事業場1万9000カ 所に配布しました。感情労働者の
  健康保護のための10種類の措置。「顧客が横暴なら 『業務中断』 できます」
 このようにして人間の尊厳を取り戻しています。牽引力は労働組合と労働運動、そして市民との連携です。

 韓国の労働者の挑戦を、自分(たち)に引き付けて “診断” してみましょう。
 個人的点検 「レジでカードを放り投げないこと」 「デパート労働者に丁寧語を使い」 「不必要なスキンシップや言語セクハラをしない」・・・
 組織的挑戦 「協力業者に対する大企業の災害予防責任」 『顧客が王様なら、従業員も王様だ』 『感情労働者人権保護協約』 締結・・・
「あたりまえの日常に対する感謝と 互いの労働に対する尊重を 私たちから始めましょう たった今から」
 ここから連帯の社会が生まれます。


 この後、第107回ILO総会と日本政府の姿勢についてふれました。

 最期に、では具体的にどのような対応が必要かについてふれました。
 対策には、ILOや韓国のサービス連盟が具体的に提案しているように、労働者・消費者・政府・企業それぞれの役割があります。解決方法としては、クレームや攻撃は起こることを前提に対策を取る必要があります。
 まず企業・使用者は、トップから職員を守る姿勢をはっきりさせる必要があります。最終的責任はトップが負うというアピールが必要です。そのうえでトラブルが発生した時のサポーター体制を確立しておくことが必要です。「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」 と同じです。さらにトラブルを評価の対象にしないことが必要です。そうすると労働者は少しは安心して対応できます。
 問題が発生した時、トップに声明・見解を出させる取り組みが必要です。
 最近は、市民のおかしな声・行動にはちゃんと批判の反論がおきます。
 そのためには “閉じこもらないで”、現場、当事者から声をあげていかなければなりません。世論は、労働者を批判するものだけではありません。労働者同士の交流もできます。
 しつこいクレーマーにははっきりと 「業務妨害」、「暴力」 であると提示し、企業・使用者は労働者に、顧客との対応を拒否する決定権限を与えることが必要です。
 クレーマーは一歩譲歩すると二歩付け込んできます。クレーマーの顧客が減っても企業の売上高は大きく減少しません。むしろクレーマーに対応している時間はチャンスロスが発生しています。
 ・そのうえで労働者の心構えとサポーター体制の確立が必要です。
 ・自分に向けられたものだとは思い過ぎない。
 ・相手の社会に対する不満がたまたま自分に向けられていると理解する。
 ・相手の感情に巻き込まれない。弁解しない。その方が早く終了する。
 ・後で誰かにその時の状況を、感情を含めて話して聞いてもらう。
 ・終了したら休息をとる。
 ・体験を共有化する。
 周囲の労働者は “見て見ぬふり” をしないことが必要です。“見て見ぬふり” は自分の正義感を傷つけます。自分のこととして対応します。
 職場のトラブルが治まったからといって解決したということではありません。対応した職員へのいわれのない攻撃、正義感、価値観、自尊心への攻撃は放置したら傷は癒えません。労働者としての誇り、労働の誇り、喜びを奪われます。身体的打撃を受けた場合はトラウマに襲われて労働が恐怖になることもあります。有能な労働者を失うことになります。
 人格の回復のための心のケア、同僚等の支援が必要です。労働者の言い分を聞き直し、対応の正当性を共有しあって回復に向かわせる必要があります。そして休養を保障する必要があります。各職場に他からは干渉されない休憩室が必要です。
 「感情労働者に不当要求拒絶、謝らない権利を付与せよ」 を遂行することの一番の効果は、労働者の尊厳を守り、心身の安全を守り、労働環境が改善されることです。
 労働者にとっては職場で仕事を嫌いにならない、させないようお互いに支え合うことが加害者を救済ことができます。このような取り組みが 「共感」 「共生」 の社会を作り出します。

 終了後に寄せられたアンケートです。
 ・無料のサービスなどない、労働者に犠牲が出るは心に響いた。
 ・自分の 「人権」 が大切なこと主張してもよいものだと改めて思った。


 「働きやすい職場づくり」 の主役は労働者です。
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「つながらない権利」  いつでも・どこでもつながる便利さと引き換えに、自由を失った
2018/06/08(Fri)
 6月8日 (金)

 相談活動の中で、「相談できる人はいません」 「友だちはいません」 と答える相談者がたくさんいます。自分の方から、関係をつくるのを断っているなら他者に相談しません。
 人恋しいけど、自分で友だちをつくれないで他者からの誘いを待っています。「かわいそうなヒロイン」 を見逃して誘ってくれないで仲間にいれないのは周囲がいけないのであって、自分は被害者なのです。

 電車のなかでほとんどの乗客が携帯を片時も離さずに手元に持っている光景を見かけます。みな、緊急事態が発生していて連絡を待っているのでしょうか。そうではなく、みな 「かわいそうなヒロイン」 を訴えているようにしか見えません。


 さて、フランスでは2016年7月21日の労働法改正・ 「労働・労使間対話の近代化・職業保障に関する法律」 (通称エルコムリ法案) 改正の一環として17年1月1日から労働者が勤務時間外や休日に仕事上のメールなどへの対応を拒否できる権利を保障する法が施行されています。「つながらない権利法 (The right to disconnect)」 と呼ばれています。
 従業員50人以上の会社に対し、勤務時間外の従業員の完全ログオフ権 (メールなどのアクセスを遮断する権利) の定款の策定を義務付けています。現在のところ罰則は設けられていませんが、従業員は権利を侵害された場合、それを理由に訴訟を起こすことが可能になりました。
 以前から一部の企業で勤務時間外のメールを制限する動きはありましたが国全体で取り組むことして法制化しました。

 背景にあるのは、ICTの進歩・普及による働き方の変化です。週35時間の労働時間制限が義務付けられていても、職場に広がるデジタルコミュニケーションがオン・オフの境界線をあいまいにし、労働時間制限を事実上無効にするおそれが高まっていました。「いつでも・どこでも」 繋がるツールを個人が所有することで、勤務時間外に連絡を取ることのハードルが下がっていました。
24時間365日、いつ連絡が来るかという緊張状態を強いられ、帰宅後もバカンス中もメールで仕事を続けざるを得なくなりました。「電子の首輪」 (電子的に常時つながれている犬) といわれていました。

 仕事による燃え尽き症候群も問題になっており、16年には約300万人のバーンアウト症候群の予備軍がいるといわれていました。また、労働者の10人に1人が、仕事による燃え尽き症候群に陥る危険性があるといわれています。バーンアウト症候群の原因は過重労働のみに限らない。社内外からの厳しい要求、過大なストレスなどがきっかけになることもあります。
 そのようななかで、16年2月には、マリソル・トゥーレーヌ厚生大臣の指揮の下、仕事による疲弊を調査するワーキンググループがつくられました。
 労働法改正は、労働者にとって不利益な法だと捉えられ、全土で抗議デモが相次ぎましたがその中で、唯一批判を浴びなかったのが、「つながらない権利」 でした。


 以前から一部の企業で勤務時間外のメールを制限する動きはありました。
 フランステレコム (France Telecom) は10年に従業員に24時間常に連絡可能な状態を求めるのをやめました。エルコムリ労働相は労働法改正案を起草するに当たり、オレンジ社 (旧フランス・テレコム) の人事部に助言を求めました。
 旧フランス・テレコムは、08年から09年の間に、全国で従業員30人が自殺しました。

 『週刊エコノミスト』 の17年2月14日号です。
 旧フランス・テレコムは、08年から09年の間に、全国で従業員30人が自殺して大スキャンダルになった。
 フランス・テレコムは、もともと郵政省の一部で、国営企業だった。それが改革、民営化の波を受け、1988年に完全民営化した。そして06年、会社幹部は「全国11万人の従業員のうち、2万2000人に3年以内に辞めてもらい、新たに7000人のIT技術に長 (た) けた若い従業員を雇用するプラン」を打ち出した。
 雇用が厳しく守られている労働法下にあって、従業員を簡単に解雇することはできない。そこで、ありとあらゆる手法の 「モラルハラスメント」 が行われた。
 ある女性は、1年間に3回転勤を命じられた。また、あるプロジェクトのリーダーだった社員は、部が引っ越すというので新しいビルに行ってみると電話もコンピューターもオフィス器具もないがらんとした部屋をあてがわれた。ある女性が出社してみると上司が彼女の資料をすべて処分していた。自分の専門職とは全く関係のない単純事務を強要された。
 当時、会社社長は 「自分から辞めないのであれば、ドアからでも、窓からでも追い出してやる」 と言い、幹部は心理的圧力をかけて辞めてもらうプランを 「ネクスト」 と呼び、トップダウンで進めていった。心療内科に通う従業員が急増し、社内の心療内科医さえ、これ以上、従業員の話を聞くのは耐え難いといって辞職するぐらいであった。
 自殺、あるいは自殺未遂をした人の中には、会社の駐車場で焼身自殺した人、ミーティング中に自分を刺した人、また会社のビル4階から身投げをした人もいた。最終的に、数千人が辞職していった。
 つながらない権利はオレンジ社で大いに歓迎されたという。少なくとも過去の経験から、職場の労働環境改善につながるという期待は大きい。
 (フランステレコムについては、「労働安全衛生」 → 「海外のメンタルヘルス」 参照)


 ドイツでは連邦労働安全衛生研究所 (BAuA) の統計によると、精神的な問題が原因の病欠は2008~11年で40%以上増えたといいます。健康保険組合によると、「バーンアウトによる病気休暇は、04年には組合員1000人あたり4.6日だったが、11年には86.9日に急増しました。
 大企業はここ数年で、幹部に24時間いつでも連絡がつくことが当然とされることへの負の効果に気付き始めました。仕事に関連した精神疾患が急増し、従業員に対する要求の見直しを迫られています。「バーンアウト (燃え尽き症候群)」 は近年の流行語となっています。

 自動車大手フォルクスワーゲン (Volkswagen) などの企業はここ3、4年で、従業員が家にいる間に大量の業務メールが押し寄せないよう、ネット上でせき止めるシステムを導入しました。
 フォルクスワーゲンは11年末、労働組合との間で 「メール停止労使協定」 を締結しました。夕方6時15分から翌日の朝7時までは、従業員の仕事用の携帯電話にメールが転送されないようになっています。元々は約1000人いる事務職の従業員が対象の措置だったが、今では国内の全従業員25万5000人のうち5000人程度に適用されています。

 自動車大手のBMWは、17年から従業員約3万人以上に対して、上司との相談の上、職場以外の場所や勤務時間外で業務をこなすことを認めています。例えば、メールへの返答に1時間かかった場合、1時間の時間外労働として換算されます。ただ 「従業員と上司との間にある程度の信頼感と対話があることが前提」。「仕事と私生活の間に境界線が必要だと考えているが、働き方における柔軟性の利点を損なうような厳格な規則はいらない」 といいます。
 13年12月、休暇中の従業員のメールボックスに届いたメールを削除するシステムを採用しました。メールの送り主には、その従業員の不在が伝えられ、別の従業員に連絡するようメッセージが配信されます。

 ダイムラー社は13年12月、休暇の際に受け取った電子メールは削除してもよいとしています。メールの送り主には、その従業員の不在が伝えられ、別の従業員に連絡するようメッセージが配信されます。(ただ自動返信にして勤務時間に折り返すことが推奨されている)。
 10年、通信大手ドイツテレコム (Deutsche Telekom) は従業員に24時間常に連絡可能な状態を求めるのをやめました。
 労働大臣は14年8月、労働者のストレスを取り除くことを企業に義務付ける基本法 「アンチ・ストレス法」 の制定を目指すと表明し、政府の研究機関に効果ある対策の検討を指示しました。


 ジョンソン・エンド・ジョンソンは世界60か国に265以上のグループをもち従業員は12万7000名を数えます。15年7月からグループ4社で、午後10時以降と休日の時間外社内メールへの連絡対応を過剰労働につながるとして原則禁止にしました。管理職や役員も例外ではありません。16年4月から、勤務日の午後10時以降と休日に社内メールを自粛することを全社的に呼びかけています。社員のワーク・ライフ・バランス (仕事と生活の調和) を推進することが目的ですが、緊急案件は対象外となっています。

 会社は、「我が信条(Our Credo)」 をかかげ、2つ目に 「全社員に対する責任」 の項目があります。「社員が安心して仕事に従事できるよう環境を整えるほか、家族に対する責任を十分に果たせるよう (会社が) 配慮すべき」と明記されています。この信条によるものといわれています。
 また、背景として 「勤務時間外にまで業務メールに追いかけられては気が休まらない。せめて夜間と休日は仕事を忘れてリフレッシュしてほしい。その方が勤務時間中の業務効率も上がる」 があります。


 韓国では、業務時間後も上司や同僚から頻繁にメッセージが送られてくることが、社会問題化しました。
 17年8月7日の中央日報の見出し記事「退社後のSNS禁止法案発議、『業務指示続けば延長手当て支給』」 です。

 退社後にカカオトークなど各種ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) を利用して出す業務指示を制限する法案が提出された。
 国民の党のイ・ヨンホ政策委員会議長はこうした内容を盛り込んだ 「勤労基準法改正案」 を代表発議したと6日に明らかにした。
 今回の改正案はSNSを通じて行われる直接的な業務指示だけでなく、グループトークルームを通じた間接的な業務指示まで制限対象に含めた。
 例外も盛り込んだ。もし労働時間外の時間にSNSを利用して直接的・間接的に業務指示を出すだけの正当な理由がある場合だ。だが理由が認められてもこれは延長労働に該当するため通常賃金の50%以上を加算して支給するようにした。
 イ議員は 「労働者の相当数が時間と場所に関係なく鳴るグループトークメッセージのため 『24時間出勤しているようだ』 とストレスを訴えている」 と話した。

 大統領選挙で文在寅 (ムン・ジェイン) 大統領は労働時間外の電話、ショートメッセージ、SNSなどを通じた業務指示を制限すると公約し、「正しい政党」 の劉承ミン (ユ・スンミン) 議員も 「定時退勤法」 を大統領選挙の2号政策に掲げ退社後のカカオトークなどSNSを利用した業務指示を禁止するといった。
 一方、韓国政府もこうした業務指示慣行を改善するための対策作りに乗り出した。
 雇用労働部は3日、「労働時間外の業務指示を制限するなど労働者の休息権保障対策準備を推進している」 と明らかにした。退社後のSNSを通じた業務指示のために実質労働時間が増え、労働者が疲労感を訴えるなど副作用が現れ、仕事と家庭の両立が難しくなるという分析のためだ。このため雇用労働部は年末までに労使双方の意見を取りまとめ実態把握に向けた研究を進める。また、昨年 「退社後業務連絡禁止法」 である 「エル・コムリ法」 を施行するフランスの事例も参考にすることにした。
 だがこうした法案や政府の対策が実際に適用されるかに対しては懐疑的な見方もある。会社員のキム・ソクヒョンさん (35) は 「政府が携帯電話をいちいち監視することもできず、チーム内のグループトークで行われる事案を申告することも現実的に難しいだろう」 と否定的な反応を見せた。これに先立ち雇用労働部は昨年提示した 「勤務革新10大提案」 で、勤務時間ではない深夜や明け方に電話、ショートメッセージ、SNSなどでの業務指示を自制するよう勧告している。


 さて、日本はどうでしょうか。
 ダイヤモンド社はジーンリサーチの協力を得て全国の男女200名に 「休日や勤務時間外における仕事上のやり取りについて」 のアンケート調査をおこないました。調査範囲は社内・取引先からの連絡 (メール、電話含む) すべてです。
 Q: 「つながらない権利」は必要だと思いますか?
  はい……73.0%
  いいえ……27.0%

 「はい」 と答えた人の意見は、
 ・プライベートの時間にまで仕事の事を考えたくもないし、縛られたくもない
 ・勤務時間外は自分の自由な時間であって、給料をもらっている時間ではない
 ・多くの場合はタダ働きであり、対応を求めるのは言わば相手の善意につけ込んだ
  フリーライダーである
 「いいえ」 と答えた人の意見は、
 ・勤務時間外であっても、会社員である以上、対応するのは仕方ない
 ・業務上、緊急の問い合わせはあり得るので、まったくつながらないのも問題
 ・お客さんあっての仕事だから、どんな状況でも出られる範囲で対応したほうが良いと思う

でした。
 携帯は、便利でしょうか、不自由でしょうか。

 「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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