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韓国 2010年~14年 労災と認めたられた自殺は59件
2017/07/20(Thu)
 7月20日 (木)

 韓国での精神疾患の労災認定についての動向が新聞に載りました。日本と共通の課題を抱えています。

 7月16日のハンギョレ新聞は 「労災の可否、当事者の立場から判断してください」 の見出し記事を載せています。
 自殺も労災と認められます。ただし越えなければならない峠が数多くあります。
 労災の 「業務上の災害」 とは業務上の事由による労働者の負傷・疾病・障害または死亡を意味します。したがって自殺が業務上災害と認められるには、業務と自殺の間に相当な因果関係がなければなりません。労災保険法37条2項は 「労働者の故意・自害やそれが原因となって発生した死亡は業務上災害と見なさない」 と規定しています。基本的に自殺は業務上災害と見なしません。
ただし同じ条項で「その死亡が正常な認識能力等が明らかに低下した状態で行なった行為により発生した場合で、大統領令に定める事由があれば、業務上の災害と見なす」と例外規定を置いています。これによって労災保険法施行令36条は 「業務上の事由による精神的異常状態」 で自害したということが医学的に認められる場合などは業務上災害と見なされます。

 2010年から14年までの5年間、勤労福祉公団が自殺を業務上災害と認めた事例は遺族の申請190件中59件 (31.1%) に過ぎませんでした。これらの事件で勤労福祉公団は 「個人的要因の方が大きい」、「職場を持つ一般の人が耐えられる程度だった」、「ストレスの内容が自殺を誘発するほどに過度なものではない」 などの理由で遺族給与支給を拒否していました。
 クォン・ドンヒ労務士 (法律事務所 「明日」 所属) は 「勤労福祉公団で自殺事件を審議する際、精神健康医学と医者の医学的判断が重要な判断基準となる。医学的判断はどうしても業務上の構造的問題より労働者個人の問題に集中して見るという限界があり、業務上災害の認定がなされにくい」 と言っています。
 それに対し公団の統計によれば、公団の業務上災害不認定に不服があるとして、遺族が訴訟により裁判所から業務上災害確定判決を受けたケースは2010~16年に13件ありました。裁判所はそのような医学的判断より社会的・規範的基準を重要視するので、自殺の業務上災害を勤労福祉公団よりは幅広く認める方だといいます。最高裁の判例は「業務と災害発生の因果関係の有無は医学的・自然科学的に明白に証明されなければならないのではなく、規範的観点から “相当な因果関係” の有無として判断されるべきである」 と明らかにしています。さらに業務と自殺の因果関係に対しても「業務上過労やストレスが疾病の主な発生原因と重なって誘発または悪化し、それによって心身喪失などの状態に陥り自殺に至るようになったものと推断できる場合 “相当な因果関係” がある」という立場です。
 しかし裁判所も、自殺と業務の相当な因果関係を判断する基準が 「社会的な平均人」 なのか 「当事者」 なのかについては明確でなく、議論を生んでいます。最高裁は1991年から 「業務と災害の間の相当な因果関係の有無は、普通の平均人ではなく 『当該労働者』 の健康と身体条件を基準に判断すべきである」 という判例を何回も出していました。
 ところが2008年、最高裁は自殺事件で 「自殺が “社会的な平均人” の立場から到底克服できないような業務上ストレスのためでなければ “相当な因果関係” を認めることはできない」 と判断しました。この判例によって下級審では “社会的な平均人” の立場から見て自殺するほどのストレスを受けたものではないとして、自殺を業務上災害と認めない判決が続きました。
 しかしこのような判決に対し、当の最高裁が “個人的特性” をさらに考慮せよという趣旨で破棄した事例も2015年に確認されたものだけで6件あります。
 クォン労務士は 「最高裁が自殺と業務の因果関係の基準を “社会的な平均人” なのか “当事者” なのか明確にしないでいるため、混乱をきたしている。他の業務上災害認定基準と同様に、自殺事件も “当事者” の立場で判断すべきだ」 と指摘します。


 7月10日付のハンギョレ新聞は 「精神疾患そして業務上災害…自殺ではない、それは労災だった 2000年~2016年に労災判決を受けた自殺・精神疾患21件の分析」 の見出し記事を載せています。
 法律は労働者の身体的健康だけでなく精神的健康も保護されるべき対象として規定していますが、現実ではストレスなどによる自殺と精神疾患の労災認定は容易ではありません。
 ハンギョレ新聞は、クォン・ドンヒ労務士とともに、2000年から16年まで裁判所で業務上災害と確定した21件の自殺・精神疾患の判決文を分析しました。

 ■ 「業務変化」 がストレスの1位
 労働者が自殺するあるいは精神疾患にかかる理由は1つだけでは説明できません。そのため判決文に登場する多くの職場ストレスの原因のうち 「業務変化」 がとりわけ多く指摘されている点は注目に値します。
 コンドミニアムの総務チームに勤務していたLさんは2009年、一度もやったことのない客室管理を任されました。500を超える客室を維持・管理する業務はLさんにとって不慣れな仕事でしたが、副総支配人は客室の電話機に付いたシールの除去、エアコン点検などを指示し、さらに 「その仕事はそんなに時間がかかるんですか」 と随時督促しました。客室管理業務担当になってからLさんは不眠を訴えたり不安そうな姿まで見せました。2010年8月、Lさんは業務遂行の困難さ、会社の違法な業務処理などを記した遺書を残して亡くなりました。
 大邱 (テグ) 高裁は去年7月 「担当業務の突然の変更、変更された業務による自尊心損傷、ひどい侮辱感と羞恥心を誘発する事件に直面して業務上の深刻なストレスを受け急激な憂鬱症状などが誘発された」 としてLさんの自殺を業務上災害と認めました。

 軍需産業体に勤めていたCさんは軍需観測装備の組み立て・試験を担当していましたが、2012年8月射撃統制班に移った後、大きなストレスを受けて退社まで考えるほど悩みました。結局Cさんは同年10月12日病院に行って 「新しい業務によるストレスが大きく、初めてのプロジェクトを担当して心配でよく眠れず食事もまともに取れない」 と訴えます。適応障害と不安障害診断を受けてから4日目にCさんは自ら命を絶ちました。
 大邱地裁は2014年 「射撃統制班に移動した後、普段扱ったこともなく関連知識もない業務を担当することになり多くの心的負担を感じるようになった」 とし、勤労福祉公団の処分を覆して業務上災害と判断しました。

 ■ 条件・状況を考慮しない 「成果主義」
 通信分野でのみ働いてきたLさんは2010年にIPTV事業部長を務めるようになりました。部署移動の直後から営業損失が発生した上に2012年には市場占有率が下落し、Lさんはすべてが自分の責任に帰される雰囲気の中で 「売り上げ増大」 の圧迫にさいなまれます。そして2012年8月に命を絶ちました。
 ソウル行政裁判所は2015年8月 「LさんはIPTV事業に関する経験が全くない状態で会社の重点事業の売り上げ増大に対して負担を持っており、販売不振が続けば地位が保障されないかも知れないという不安を感じていたものと推断される」 と判断します。

 成果を上げなければならないという圧迫感は、長年やってきた慣れた仕事だからと言って違いはありませんでした。
 ある生命保険会社の支店長だったJさんは一日単位、週単位、月単位で目標対比実績を報告しなければなりませんでした。しかし2013年1~3月まで営業実績が27%下落する中でストレスを受けたJさんは2013年3月に自ら命を絶ちます。
 証券営業などを担当していたSさんも、2011年東日本大地震と世界金融危機の余波で顧客投資金に51億ウォン (約5億円) の損失が生じると 「死をもって償う」 として2011年8月に命を絶ちました。
 記者だったKさんは入社19年目にして初めて社会部に人事異動されると、精神的ストレスで鬱病診断を受けます。Kさんは他の部署に移ったが鬱病は持続し、4大河川特集企画記事を準備する中で2011年9月に極端な選択をしました。
 勤労福祉公団は 「20年間記者生活をした人であり、ストレスは認められるが死亡に繋がるほどの負担ではない」 として業務上災害を認めませんでした。しかしソウル行政裁判所は2014年11月 「4大河川特集企画製作を担当するようになり普段の2倍の分量の仕事を消化するために心的苦痛が加重され、成果を出さなくてはという精神的圧迫感が以前より大きかったと思われる」 として業務上災害不認定の判断を覆しました。

 ■ 「解雇」 は殺人だった
 2009年の整理解雇後死亡した双龍 (サンヨン) 自動車解雇者が28人にのぼり 「解雇は殺人」 だという声が高まったことがありました。高麗大のキム・スンソブ教授研究チームの 「2015年共に生きよう希望研究」 によれば、「過去1年間、鬱および不安障害経験」 のある双龍自動車解雇者の割合 (75.2%) は自動車工場労働者 (1.6%) の47倍に至ります。
 海藻類加工食品業体に勤めていたPさんは、会社と葛藤をきたし2013年3月に解雇通知を受けるや自殺を選びました。社長は防犯カメラで職員の勤務を管理し、社長の頻繁な叱責に一部職員が出勤を拒否して反発しました。社長はPさんが主導したと見てPさんと同僚を解雇した。光州 (クァンジュ) 高裁は2015年 「自分が解雇されたという精神的な衝撃のほかに自分のために同僚まで解雇されたという自責の念まで加わり、耐え難いストレスを受けたと思われる」 としてPさんの業務上災害を認めました。

 解雇の傷は復職後も容易に癒えませんでした。学校の非正規職調理師であるSさんは2007年1月、正規職調理師が同じ学校に発令されると解雇されます。4カ月後の同年5月、地方労働委員会の不当解雇判定でSさんは学校に戻ったが、急性ストレス反応などで精神科に通うようになりました。光州高裁は2011年 「突然解雇されたのであり、復職するまで相当なストレスを受けたものと見られる」 と判断しました。

 日常的に雇用不安を経験している非正規職は特にストレスに脆弱でした。派遣労働者のSさんは2003年ある工場に派遣されてコンピュータ管理業務などを担当したが、派遣業者と工場との契約が終結して2006年5月から失職の危機を迎えます。2003年から2006年の間、1年または3カ月単位で契約を結んでいたSさんは 「アルバイトでやれと言うが、ずっとそんなふうに勤めていられるか」 と憤慨して酒をたくさん飲みました。
 ソウル行政裁判所は2011年、Sさんの自殺を業務上災害と認めて 「雇用不安による心理的圧迫感など深刻なストレスを受けたものと見られる」 と明らかにしました。

 ■ 「劣悪な環境」 も精神疾患の危険要素
 劣悪な労働環境に露出している特定職業群のストレスも高く現れました。2003年からソウル都市鉄道 (地下鉄5~8号線) で機関士9人が自殺で死亡した事実が知られ、地下鉄機関士の劣悪な労働環境を指摘する声が大きくなったのが代表的事例です。
 ソウル都市鉄道5号線を運行していたYさんは2013年3月、自殺します。5号線はすべての区間が地下で粉じん濃度が高いのに換気が難しく、当時の9組5交代という勤務形態も一般人の生活パターンとは非常に異なるものでした。裁判所は 「劣悪な勤務環境は医学的に見て、精神疾患の発病または悪化に一部危険要素として作用し得る」 と判断しました。
 ソウルメトロの機関士であるKさんも2007年にパニック障害診断を受けました。ソウル行政裁判所は2009年にKさんの業務上災害を認めて 「機関士として高速運行に対する不安感、正確な時間に出発と下車を繰り返さなければならないところから来る緊張感、運行遅延による経緯書提出と乗客抗議などで持続的な精神的・心理的ストレスを受けてきたものと見られる」 と明らかにしました。
 特にKさんの判決文は、一般的な地下鉄機関士の精神健康問題を指摘しています。裁判部は 「研究結果によれば、事故を経験した機関士の外傷後ストレス障害とパニック障害発病率が、そうではない機関士よりずっと高く、同一業務をする地下鉄機関士の相当数がパニック障害を訴えている」 と明らかにしました。機関士だけでなく最近は感情労働者の精神的健康も社会的問題になっているだけに、ストレスに露出させられやすい業務環境を改善する事は労働者の精神疾患予防のために必須であるという指摘が出ています。

 クォン・ドンヒ労務士は 「職務ストレス検診制度などを取り入れて労働者が何のために苦しんでいるのか察してこそ、自殺や精神疾患などを予防することができる。事業主と政府が労働者の精神健康を保護できるような対策も具体的に反映させて法を作るべきだ」 と指摘します。


 7月10日付の記事は韓国・保健福祉部の 『2017年自殺予防白書』 について触れています。
 2015年の自殺者は1万3513人 (統計庁集計) で、死亡原因全体の5位を占めます。自殺者の中に就業者と非就業者が占める比重は、学生 (生徒) ・家事・無職が57.6% (7784人)、就業者は42.4% (5729人) です。2011年の統計で自殺者中非就業者の割合が61% (9706人)、就業者割合が39% (6200人) だったことから見れば、極端な選択をした人々のうち就業者が占める割合が増えている傾向にあると言えます。
 就業者がこのような選択をした原因を把握できるような統計はありません。ただし 「自殺の動機」 が記録された警察庁統計数値によれば、2015年の死亡者1万3436人中559人 (4.2%) の動機が 「職場や業務上の問題のため」 となっている。2012年には577人、2013年には561人、2014年には552人と記録されています。「職場及び業務」 から生じるストレスが年に500人ほどの犠牲者を出していることになります。自殺にまで至らなくても 「職場及び業務」 による精神疾患被害者の規模も相当なものと思われますが、これも正確な統計はありません。

   「海外のメンタルヘルスケア 韓国」
   「活動報告」 2017.7.7
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「職場ドック」 を職場のメンタルヘルスの1次予防に
2017/04/04(Tue)
 4月4日 (火)

 ストレスチェック制度が開始されてから1年以上が経過しました。期待と不信が混在していますが、会社の指示ということで何の疑問も持つことなく受け入れている人もいます。
 期待は、職場環境が悪いという診断や、いじめにあっている者がいるということが判ったら、会社は何らかの対応をしてくれるだろうという判断です。他力本願の思考ですが、効果があったという話は聞いたことがありません。不信は、すでに体調不良状態であるが隠している労働者があぶり出されるという危険視する判断です。

 本来のストレスチェック制度は、職場のストレスをチェックするもので、労働者個人の状況を掌握するものではありません。職場環境のストレスが解消されたら、体調不良におちいる原因が消去されたら、体調不良者は減少するというという捉えかたです。
 しかし、労働安全衛生法が改正され、具体的取り組みについての検討会が開催されると職場のストレスチェックは努力目標になり、体調不良者のあぶり出す手段になっていきます。(16年 月 日の 「活動報告」 参照)


 「予防医学」 には一次予防、二次予防、三次予防があります。予防医学は、病気を予防するだけでなく、疾病予防、障害予防、寿命の延長、身体的・精神的健康の増進を目的としています。
 一次予防は、生活習慣の改善、生活環境の改善、健康教育による健康増進を図り、予防接種による疾病の発生予防、事故防止による傷害の発生を予防することをいいます。
 二次予防は、発生した疾病や障害を検診などにより早期に発見し、早期に治療や保健指導などの対策を行ない、疾病や傷害の重症化を予防することをいいます。
 三次予防は、治療の過程において保健指導やリハビリテーション等による機能回復を図るなど、社会復帰を支援し、再発を予防することをいいます。
 メンタルヘルス対策は一次予防が重視される必要があります。未然防止は、具体的には長時間労働の禁止、過重労働の禁止、ストレス発生原因の解消などです。

 精神科医である荒井千暁医師は、著書 『職場はなぜ壊れるのか-産業医が見た人間関係の病理-』 (ちくま新書) で 「労働衛生の3管理」 を取り上げています。
「労働者が健康を害さないよう措置を取る 『労働衛生の3管理』 とは何か。『作業環境管理、作業管理、健康管理』 で、これについては順序が大切です。・・
 労働組合はこのことをもう一度自覚する必要があります。『作業環境管理、作業管理』 を抜きにして 『健康管理』 はありえません。」
 しかし運用されるストレスチェック制度は、この順序を無視して二次予防を目的にするものになってしまいました。
 ストレスチェック制度が本来の目的である職場のストレスチェックに役立てるというのなら、労働組合や職場の安全衛生委員会も関与して共同して改善につなげることもできますが、そのようなものではありません。


 本来のストレスチェック制度が役に立たないという中で、経験を積み上げて構築された 「職場ドッグ」 に取り組む職場が増えています。(15年10月2日の 「活動報告」 参照)
 研修会などでは大原記念労働科学研究所が発行した 『メンタルヘルスに役立つ 職場ドック』 が活用されています。取り組みの手順やツールの使い方、チェックリストなどが詳細に説明されていますが難しくありません。70ページにおよびますがかいつまんで紹介します。

 職場ドックは事後処理ではありません。船をドッグに入れて安全な操船ができるようにしていくことになぞらえ、健康状態を多面的にチェックして安心して日常生活を送ることができるようにする、労働者が自分の職場で働く条件について日常業務を離れてチェックし、可能な改善策を実施していく参加型職場環境改善です。重要なことは 「改善」 について特別な知識や技能を持たなくても、誰もが容易に参加し、すぐ実施できることです。
 進め方は、その職場にあった改善提案用のチェックリストを利用しながら、小グループに分かれて討論した結果を報告し合い、改善計画を職場ごとに独自に決めて実施していきます。すでにある良い実践例を話し合いながら、すぐできる改善を職場の創意工夫をいれて提案し合います。

 予防医学・職場のメンタルヘルス対策は、職場改善で事故や傷害の発生を予防するなどの1次予防、疾病の早期発見・治療などの2次予防、復帰支援・再発防止の3次予防があります。職場ドックは、2次予防の個人向けアプローチの効果が一時的、限定的になりやすいのに比べて、職場環境の改善を通したアプローチということでより持続的な効果をもたらします。

 職場ドッグは6領域で有効性を発揮します。ミーチィング・情報の共有、ON (仕事) ・OFF (生活) のバランス、仕事のしやすさ、執務室内環境の整備、職場内の相互支援、安心できる職場のしくみ、です。

 ミーチィング・情報の共有の領域の「同僚に相談でき、コミュニケーションがとりやすい環境を整備します」の具体的取り組み方です。
 なぜ取り組むかは 「仕事をスムースに進める上でとても大事です。仕事で困った時にも、同僚に相談でき、適切な支援を受けることができれば、それだけ問題解決が早くできるようになり、働きやすい環境になります」です。
 どのように取り組むかの具体的方法です。・すべて の従業員が参加して朝の短時間ミーティングをもち、その日の作業計画をお互いに確認し、疑問点があれば明らかにします。・社内報、日報、メーリングリスト、イントラネットなどの共通フォルダーや掲示板などを活用して重要な情報を共有する。などです。
 追加のヒントです。・元気のよい挨拶や、目線を合わせた声掛けなどで、日頃から打ち解けた交流が図れるように努めます。・職場のメンバーが仕事の上で交流しやすいように、職場のレイアウトを工夫します。などです。

 職場内の相互支援の領域の 「同僚に相談でき、コミュニケーションがとりやすい環境を整備します」 の具体的取り組み方です。
 なぜ取り組むのかは 「仕事で困った時も、同僚に相談でき、適切な支援を受けることができれば、それだけ問題解決が早くできるようになり、働きやすい環境になります。同僚に相談を持ちかけたり適切な支援を受けるための機械や仕組みを作っておくことが、コミュニケーションがとりやすい環境を整えておくことに大いに役立ちます。」 です。
 取り組み方です。・すべての従業員が参加して朝の短時間ミーティングをもち、その日の作業計画をお互いに確認し、疑問点があれば明らかにしておきます。・見やすいいちに置いた掲示板やホワイトボードを利用して、誰がその作業をやっているか 「見える化」 を行ない、同僚の業務内容がわかり、必要な場合にサポートしやすい環境を整えます。などです。
 追加のヒントです。・元気のよいあいさつや、目線を合わせた声かけなどで、日ごろからうちとけた交流が図れるよう努めます。・職場のメンバーが仕事の上で交流しやすいように、職場のレイアウトを工夫します。などです。

 安心できる職場のしくみの領域の 「ストレスへの気づきや上手な対処法など、セルフケアについて学ぶ機会を設けます」 の具体的取り組み方です。
 なぜ取り組むかは 「セルフケアについて学ぶ機会を設けることで心の健康に対して正しく認識し、より理解を深めるようにできるなることです。周囲の人々の心の健康について理解を深めることも期待できます」 です。
 取り組み方です。・セルフケアやリラクゼーションに役立つ情報を提供します。・セルフケアに関する研修会等を定期的に開催し、ストレスへの気づき、ストレスへの上手な対処法などについて学ぶことができる機会を設けます。などです。
 追加のヒントです。・研修では情報提供だけでなく実技や演習、グループワークを取り入れることにより受講者の関心を高め、具体的な実践や行動に結び付けることができるようにします。・職場や従業員の特徴や状況に応じて、集合教育などの方法を選択します。などです。

 好事例集もあります。
 いわれていることは難しくありません。しかし日常的に実行されているかと問われたら 「はい」 と答えられない状況があります。定期的に職場ドッグに取り組むことで、お互いに意見を出し合い、理解し合いあうと改善に結びつけることができます。
 メンタルヘルス不調者を出さないための安全衛生・予防医学の1次予防で、安心して働き続ける職場づくりに有効です。

   「活動報告」 2016.11.18
   「活動報告」 2015.10.2
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過労死等防止対策 個別的対応ではなく複合的対応を
2016/10/07(Fri)
 10月7日 (金)

 10月7日、政府は 「過労死等防止対策白書」 を閣議決定しました。
 2014年6月20日に 「過労死防止対策推進法」 が成立しました (14年5月30日の 「活動報告」 参照)。その第六条は (年次報告) 「政府は、毎年、国会に、我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況に関する報告書を提出しなければならない。」 と謳っていることによるものです。「白書」 は今回が初めてです。
 法はまた第七条で 「過労死等の防止のための対策に関する大綱」 を定めることを謳っています。15年5月25日に 「過労死等の防止のための対策に関する大綱 ~過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ~」 (案) が作成されました (15年5月26日の 「活動報告」 参照)。
 「大綱」 は、これまで個別に取り扱われてきた長時間労働やストレス、メンタルヘルス対策などの問題を集約的に取りまとめたもので新しいものは見当たりません。しかし個別的課題にほかの課題に連関させ、さらに大綱作成のために5回開催された過労死等防止対策推進協議会の議事録と提出された資料を合わせて読み通すと本質的問題が浮き彫りになりました。
 これまでの個別的対応、しかも法律ではなく強制力のない 「通達」 等の限界の状況が露呈されました。
 「白書」 はこれらの経過報告と一緒に、これまで様々な部署から個別に発表されてきた調査結果を集めています。


 第1章 過労死等の現状について見てみます。
「一般労働者とパートタイム労働者の別にみると、一般労働者の総実労働時間は2,000時間前後で高止まりしている一方、パートタイム労働者の総実労働時間は横ばいから微減で推移 している。一方、パートタイム労働者の割合は、近年、増加傾向にあることから、近年の労働者1人当たりの年間総実労働時間の減少は、パートタイム労働者の割合の増加によるものと考えられる。」
 一般労働者の総実労働時間2,000時間は、事業場を対象とした調査結果で、管理職、裁量労働の労働者、サービス残業の労働者等はどう扱われているか不明です。このからくりは事件が起きないと発覚しません。
 それでも2000時間を切ったのは2009年、リーマンショックの翌年だけです。総務省が行なっている世帯を対象とした労働力調査の労働時間とは開きがあります。
 厚労省は、この間、一般労働者とパートタイム労働者を合わせた平均労働時間を発表して世論をだましてきましたが、過労死防止対策が開始されてやっと別々に発表されるようになりました。

 1週間の就業時間が60時間以上の長時間労働者についてです。
「総務省 『労働力調査』 で雇用者 (非農林業) の月末1週間の就業時間別の雇用者の割合の推移をみると、1週間の就業時間が60時間以上である者の割合は、最近では平成15、16年 (2003年、04年) をピークとして減少傾向にある。平成21年 (2009年) に大きく減少した後、平成22年 (2010年) に一時増加したが、平成22年以降は緩やかな減少を続けている。」
 性別、年齢層別に見ると、週間就業時間35時間以上の就業者に占める割合は30歳代と40歳代の男性は18%前後、50歳代、20歳代は14%台です。
「総務省 『就業構造基本調査』 により、職業別に、年間就業日数が200日以上の者のうち、 月末1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合をみると、平成24年 (2012年) は、『輸送・機械運転従事者』 で最も高くなっており、次いで、『保安職業従事者』、『農林漁業従事者』 の順に高くなっている。一方、『事務従事者』、『運搬・清掃・包装等従事者』、『生産工程従事者』 の順に、その割合が低くなっている。」
 「輸送・機械運転従事者」、「保安職業従事者」 は過重だが賃金が低い労働者です。そのため長時間に流れます。なおかつ関連会社、下請けが多い業種で、輸送・機械運転従事者は個人事業主も多くいます。これらの労働条件は、系列会社としての 「同一労働同一価値賃金」 の視点から検討して改善されなければなりません。現在進んでいる政府の 「同一労働同一賃金」 の議論はここまで含め、業界全体の底上げにいたらないと賃金、労働時間の格差は解消されません。
 見失ってはいけないのは、1週間の就業時間が60時間以上について公表されていますが、具体的時間数については明らかにされていません。OECDなどの国際的調査は最長60時間までになっているので日本もそれに合わせたと説明するのでしょうが、実際に労災認定状況などで明らかにされている資料では、100時間以上もかなりいます。
 具体的には、脳・心臓疾患の労災認定の時間外労働時間数 (1か月平均) 別支給決定件数のうち、100時間以上で支給決定 (労災認定) になった件数は、2014年に141件、15年に120件あります。精神障害の労災認定の時間外労働時間数 (1か月平均) 別支給決定件数では、2014件に174件、15年に172件あります。これらの数字は、超長時間労働は決して例外ではないということです。
 60時間以上ということで目くらましに合わないように注意しなければなりません。


 職場におけるメンタルヘルス対策の状況についてです。
「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスの内容 (3つ以内の複数回答) をみる と、『仕事の質・量』 (65.3%) が最も多く、次いで、『仕事の失敗、責任の発生等』 (36.6%)、『対人関係 (セクハラ・パワハラを含む。)』 (33.7%) となっている。」
「現在の自分の仕事や職業生活でのストレス等について相談できる人がいるとする労働者の割合は90.8%となっており、相談できる人がいるとする労働者が挙げた相談相手 (複数回答) は、『家族・友人』 (83.2%) が最も多く、次いで、『上司・同僚』 (75.8%)となっている。」
「また、ストレスを相談できる人がいるとした労働者のうち、実際に相談した人がいる労働 者の割合は75.8%となっており、実際に相談した相手 (複数回答) をみると、『家族・友人』 (58.9%) が最も多く、次いで、『上司・同僚』 (53.5%) となっている。」
 不安、悩み、ストレスの内容からは、労働者が職場で共同ではなく分断されて業務に従事している状況が見えてきます。実際は、この3つの内容は連関しています。「仕事の質・量」 が多い中で 「仕事の失敗、責任の発生等」、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」 は発生します。時代の流れでしょうが、同僚との仲間意識が薄れてきています。
 その結果、相談できる人がいるとする労働者の相談相手が 「家族・友人」 が「上司・同僚」 よりも大きくなっています。実際に相談した相手もそうです。職場のトラブルが家庭に持ち込まれています。その相談ではない形態が家庭内暴力です。


 メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所の割合についてです。
「メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所の割合は、60.7% (平成25年 (2013年)) であり、前年の47.2%より上昇している。取組内容 (複数回答) をみると、『労働者への教育研修・情報提供』 (46.0%) が最も多く、次いで、『事業所内での相談体制の整備』 (41.8%)、『管理監督者への教育研修・情報提供』 (37.9%) となっている。」
 実際は、教育研修は講師を外部から、相談体制は “専門家” に引き継ぐ、そして 「管理監督者への教育研修・情報提供」 の取り組みは、職場にいる労働者を巻き込んでのものではありません。「管理・監督」 の手法です。
 労働者の不満や希望、要求を聞き、改善点を探って体調不良者を出さないという職場環境づくりが必要です。


「職場のパワーハラスメントの問題については、近年、全国の総合労働相談コーナーへの 『いじめ・嫌がらせ』 の相談件数が増加するなど、社会問題として顕在化している。具体的には、総合労働相談コーナーにおいて、民事上の個別労働紛争に係る相談を平成27年 (2015年) 度中245,125件受け付けているが、そのうち、職場での 『いじめ・嫌がらせ』 に関する相談受付件数は、66,566件 (22.4%) であり、相談内容として最多となっている。」
 「いじめ・嫌がらせ」 の相談件数が増えているのは、現在の職場環境を見たなら頷けます。もう1つは、2012年3月15日に厚生労働省は 「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」 (「提言」) を発表しました。そのような流れの中で労働者が声をあげやすくなったということもあります。
 ただ、総合労働相談コーナーの相談内容の分類は項目が少なく、無理やり 「いじめ・嫌がらせ」 に含ませている内容ももあるように思われます。項目が少ないと、職場の実態が見えてきません。
 さらに相談件数245,125件、そのうち 「いじめ・嫌がらせ」 66,566件ですが、あっせん等の手段で解決に至っている件数はかなり少ないです。総合労働相談コーナーは、労働者から相談を受けたら解決に至る力量をもっともっとアップさせる必要があります。そうでないと 「あてにならない」 機関になっていきます。

 就業者の脳血管疾患、心疾患等の発生状況、精神障害の労災認定の状況については割愛します。(2016年7月8日の 「活動報告」 参照)


 自殺の状況における、勤務問題を原因・動機の 1 つとする自殺者数の推移 (原因・動機詳細別) についてです。
「原因・動機別 (遺書等の自殺を裏付ける資料により明らかに推定できる原因・動機を自殺者 一人につき3つまで計上可能としたもの) にみると、勤務問題が原因・動機の一つと推定される自殺者数は、平成19年 (2007年) から平成23年 (2011年) までにかけて、自殺者総数が横ばいから減少傾向にある中で増加したが、その後減少し、平成27年 (2015年) は2,159人となっている。
 勤務問題が原因・動機の一つと推定される自殺者数の推移を原因・動機の詳細別にみると、 勤務問題のうち 『仕事疲れ』 が3割を占め、次いで、『職場の人間関係』 が2割、『仕事の失 敗』 が2割弱、『職場環境の変化』 が1割強となっている。」
「勤務問題が原因・動機の一つと推定される自殺者数の推移を年齢層別にみると、概ね、40 ~49 歳、30~39 歳、20~29 歳、50~59 歳の順に多く、これらの階層は何れも全体の4分の1から5分の1を占めている。」
 「仕事疲れ」、「職場の人間関係」、「仕事の失敗」、「職場環境の変化」 は表面的原因です。
 13年2月28日、自殺対策に取り組んでいるNPO法人ライフリンクは、2008年に続いて 「自殺実態白書2013」 を公表しました。そのなかで自殺に至るまでの過程・プロセスなどを分析してまとめあげています。
 1.自殺の危機要因となり得るものは69個ある。自殺で亡くなった人は、「平均3.9個の危機要因」 を抱
  えていた。
 4.正規雇用者 (正社員+公務員) の25%は、配置転換や昇進等の 「職場環境の変化」 が出発要因
  となっていた。
 5.うつ病は、自殺の一歩手前の要因であると同時に、他の様々な要因によって引き起こされた 「結果」
  でもあった。うつ病の「危機複合度 (その要因が発現するまでに連鎖してきた要因の数) は、3.6と非
  常に高かつた。
などです。
 「平均3.9個の危機要因・経路」 の事例です。(「→」 は連鎖を、「+」 は問題が新たに加わってきたことを示す)
 【被雇用者 (労働者)】
  ① 配置転換 → 過労+職場の人間関係 → うつ病 → 自殺
  ② 昇進 → 過労 → 仕事の失敗 → 職場の人間関係 → 自殺
  ③ 職場のいじめ → うつ病 → 自殺
 【離職者 (就労経験あり)】
  ① 体調疾患 → 休職 → 失業 → 生活苦 → 多重債務 → うつ病 → 自殺
  ② 帯保証債務 → 倒産 → 離婚の悩み+将来生活への不安 → 自殺
  ③ 犯罪被害 (性的暴力) → 精神疾患 → 失業+失恋 → 自殺
などが挙げられています。
 危機経路の自殺の一歩手前がうつで、うつの対策は、その手前で対策を取らなければなりません。


 この後に公務員の労災状況が続きます。公務員についてまとめて報告されるのは珍しいです。


 疲労の蓄積度、ストレスの状況についてです。
「労働者 (正社員(フルタイム)) 調査において、最近1か月間の勤務の状況や自覚症状に関する質問により判定した疲労の蓄積度が 『高い』、『非常に高い』 と判定される者の割合を、回答者の勤務先の業種別にみると、『宿泊業,飲食サービス業』 (40.3%) が最も高く、次いで 『教育,学習支援業』 (38.9%)、『運輸業,郵便業」 (38.0%) の順となっている。」
「一方、労働者 (正社員(フルタイム)) 調査において、最近数週間のストレスの状況に関す る質問により4点以上と判定された者の割合を、回答者の勤務先の業種別にみると、『医 療,福祉』 (41.6%) が最も高く、次いで 『サービス業 (他に分類されないもの)』 (39.8%)、『卸売業,小売業』、『宿泊業,飲食サービス業』 (何れも39.2%) となっている。」
 ストレスの状況は残業時間に確実に正比例しています。

「労働者 (正社員 (フルタイム)) 調査において、勤務日における睡眠時間別に疲労の 蓄積度をみると、睡眠時間が 『3時間未満』 では、疲労の蓄積度が 『高い』 又は 『非常に高い』 と判定される者の割合は52.7%、『3時間以上6時間未満』 では46.3%であったのに対し、『6時間以上7時間未満』 では29.7%、『7時間以上8時間未満』 では21.9%、『8時間以上』 では20.6%と、睡眠時間が長くなるに従って、その割合が低くなる傾向がみられる。同様にストレスの状況 (GHQ12による判定が4点以上の者の割合) については、睡眠時間が 『3時間未満』 では52.6%、『3時間以上6時間未満』 では48.0%、『6時間以上7時間未満』 では34.9%、『7時間以上8時間未満』 では29.0%、『8時間以上』 では28.2%と、睡眠時間が 長くなるに従って、その割合が低くなる傾向がみられる。」
 睡眠時間が 「3時間未満」は異常です。原因を追究して改善に向かわせる必要があります。
 ワーク・ライフ・バランスがさけばれていますが、その中に睡眠時間はしっかりと組み入れる必要があります。


 勤務間インターバル制度の導入状況についての調査結果については、8月26日の 「活動報告」 を参照してください。


 日本では、問題が発生すると、調査をして報告書を作成します。しかし対策はそこで止まっています。「白書」 はそれらが集約されています。眠っている資料を複合的に活用するチャンス到来です。
 厚労省は、約2万人の労働者を10年間追跡する大規模調査や、長時間労働と健康に関する研究を推進する方針ということです。
 「白書」に書かれていることについてはまだまだ改善の余地があります。これを契機に意見を交流し、提案しながら具体的問題に対応していく必要があります。


   「平成28年版過労死等防止対策白書」
   「活動報告」 2016.8.26
   「活動報告」 2016.7.8
   「活動報告」 2015.5.26
   「活動報告」 2014.5.30
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オリンピックで労災が増加する危険性大
2016/07/08(Fri)
 7月8日 (金)

 6月24日、厚労省は2015年度 「過労死等の労災補償状況」 を公表しました。
 「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」 については、請求件数795件で支給決定件数は251件、そのうち死亡件数は96件です。
 請求件数は12年までは800件台半ばに至っていましたが、13年度からは700件台に減っています。支給決定件数は13年度まで300件台でしたが14年度から200件台に減っています。
 では認定率はどうなっているでしょうか。11年度43.2%、12年度45.6%、13年度44.8%、14年度43.5%でしたが、15年度は37.4%と急減しています。

 支給決定件数を職種別にみると 「自動車運転従事者」 が87件で断トツです。続いて 「法人・団体管理職員」 22件、「営業職業従事者」 20件、「飲食物調理従事者」 14件の順です。
 労働時間数別の支給決定件数では80時間以上が全体の83%、100時間以上では50%を占めます。
 支給決定件数が上位を占める職種別が労働時間数も長くなっていることが想定できます。道路貨物運送業は社会問題になっています。営業職業従事者はノルマ、飲食物調理従事者は人手不足のなかでの不規則な勤務です。これらの業種、職務にたいする対策が迫られていることは明らかです。


 「精神障害の労災補償状況」 については、請求件数1515件で支給決定件数は472件、認定率は36.1%です。請求件数はこの間増え続けていて13年度から1400件台、15年度に1500件台に達しました。
 しかし支給決定認定率は30%後半で大きな変化はありません。
 注意しなければならないのは、支給決定数において、未遂を含む自殺者が、12年度93件、13年度63件、14年度99件、15年度93件を占めています。これは後に触れますが、労働時間が短くても支給決定になっている状況の要因に関連していると思われます。

 支給決定件数を業種別にみると、道路貨物運送業が36件で最も多く、社会保険・社会福祉・介護事業が24件、医療業23件、その他の小売業21件、情報サービス業20件、総合工事業18件、飲食業18件の順になっています。
 職種別では、一般事務従事者61件、法人・団体管理職員42件、自動車運転従事者34件、商品販売従事者25件、建設・土木・測量技術者24件の順になっています。
 「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」 と同じような状況ですが、建設・土木・測量技術者は、東京オリンピックにむけて労働力不足になっていて労働者の奪い合いが続いています。長時間労働になる危険性があります。東京オリンピックについては、この面からも抜本的見直しが必要です。

 支給決定件数を20時間刻みの労働時間数区分でみると100時間以上が172件となっています。(その他が78件) 一方、20時間未満が86件、40時間未満50件、60時間未満46時間です。体調不良におちいる原因は労働時間だけでないことを物語っています。
 「出来事の類型」 では、「(重度の) 病気やケガをした」 が34件、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」 45件です。これ以外では、「仕事内容・仕事量に大きな変化を生じさせる出来事があった」 75件、「ひどい嫌がらせ、いじめ又は暴行をうけた」 60件、「上司とのトラブルがあった」 21件、「セクハラを受けた」 24件などです。心理的負荷が極度のものである 「特別な出来事」 は87件です。
 体調不良を引き起こす職場環境・人間関係が浮かび上がってきます。企業にゆとりがありません。企業任せでない政府の抜本的対応が必要になっています。


 13年秋に、いじめ メンタルヘルス労働者支援センターと全国労働安全衛生センター連絡会議メンタルヘルス・ハラスメント対策局は、支給決定件数・率が都道府県によって大きなばらつきがあるということで件数・率が低い府県の労働局と交渉をもち改善を要求しました。(13年12月13日の 「活動報告」 参照)
 そのことは厚労省も気付いていたようで、13年11月に全国の労働局の労災精神障害専門調査員を集めて研修を開催しました。この4年間の動向をみると、厚労省は、支給決定率が低い府県については不支給決定の通知を送付する前に本省で書類をチェックするようなことが行われたのではないかと思われます。

 要請行動を行なった府県の請求件数、決定件数、支給決定件数について、12年度、13年度、14年度、15年度の流れを見てみます。カッコは支給決定率です。
 埼玉県 43件-42件-50件-50件   45件-34件-49件-36件
     6件 (13.3%)- 8件 (23.5%)-22件 (44.9%)-11件 (30.5%)
 千葉県 46件-43件-46件-48件   41件-47件-39件-48件
     9件 (21.2%)-13件 (27.7%)-19件 (48.7%)-17件 (35.4%)
 愛知県 67件-57件-61件-67件   83件-51件-51件-52件
     19件 (22.9%)-10件 (19.6%)-17件 (33.3%)-10件 (19.2%)
 三重県 16件-12件-22件-19件   14件-13件-12件-21件
      0件 ( 0.0%)- 2件 (15.3%)- 6件 (50.0%)-6件 (28.6%)
 熊本県 15件-10-件18件-14件   16件- 8件-13件-10件
     3件 (18.7%)- 2件 (25.0%)- 4件 (30.8%)-3件 (30%)

 これらの県は、まだあだ総就業者と比べて今も申請件数が少ないです。
 ちなみに 「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」 において愛知県は、請求件数42件、決定件数32件、支給決定件数20件です。総就業者からみて申請件数は少なくありません。また認定率は他県と比べても高いです。


 「過労死等の労災補償状況」 で、合わせて600人以上が労災に認定され、しかも200人近くが死亡・自殺 (未遂) している状況が続いている国は他にあるでしょうか。しかも経済的問題、時間の問題で申請に至らなかったり、別の対応で解決している事案もたくさんあります。また認定基準が厳しすぎるから認定率が低いことをしってあきらめる人も多くいます。
 労働者の命の価値が低く取り扱われています。しかし政府も使用者も労働者もこれらの数字に慣らされています。
 労災の申請数が増えることは歓迎されることではありません。
  “働き方” “働かせ方” “働かされ方” について労働者の側から根本的問い直しが必要です。


  「活動報告」 2013.12.13
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欧州の仕事関連の抑うつによるコストは年間6,170億ユー ロ
2016/06/10(Fri)
 6月10日 (金)

 5月23日、ILO日本事務所から2016年労働安全衛生世界デー報告書 「職場内ストレス:集団的な課題」 の邦訳が発表されました。目的は、「仕事関連のストレスの広がりと影響について、地域横断的な外観を提供するとともに、国際、地域、国及び職場のレベルでこれを管理するための法規制や政策、介入措置などに検討を加える」 ためです。
 要約して紹介します。

 まず、基本的な仕事関連のストレスについてのとらえ方です。
「普遍的な原則として、人間には、到達可能な最高水準の健康を享受する権利がある。職場で健康を維持できなければ、社会に貢献し、福祉 (wellbeing) を達成することもできない。職場で健康が脅かされれば、生産的雇用と社会経済開発の基盤はなくなってしまう。精神疾患の負担は、仕事の世界に大きく関係してくる、雇用の見通しや賃金を低下させ、世帯所得や企業の生産性に悪影響を及ぼすとともに、経済に直接、間接に大きなコストをもたらすことで、人間の福祉に大きな打撃を与えるからである。」

 1.仕事関連のストレスとは何か、です。
 「ストレスは健康障害ではなく、悪影響を及ぼす身体的・情緒的反応の初発兆候」 ととらえます。そして 「ストレスは、感知された要請と、この要請に対処するために各人が有していると認められる資源および能力との間の不均等に起因し、悪影響を及ぼす身体的、情緒的反応を意味する。仕事関連のストレスは作業組織、ワークデザイン (働き方) および労使関係によって決定され、仕事の要請が労働者の能力、資源またはニーズにそぐわないか、これを超過したり、個別の労働者または団体の対応能力が、企業の組織文化による期待にそぐわなかったりする場合に生じる」 とあります。

 ストレスを引き起こしかねない職場要因 (心理社会的ハザード) をILOは 「作業環境、職務内容、組織的諸条件、および、労働者の能力、ニーズ、文化、仕事以外の個人的な考慮事項のあいだの相互作業で、知覚や経験を通し、健康、業績および仕事に対する満足度に影響を及ぼすもの」 と定義しています。
 この定義は、10種類に分けられ、そして 「仕事の内容 (content of work)」 と 「仕事の文脈 (context of work)」 の2つのグループにまとめられています。
 「仕事の内容」 とその特徴的な環境です。
 「作業環境と作業機材」 は、機材と設備双方の信頼性、利用可能性、適切性および保守修理に関する問題です。「職務設計」 は、多様性が欠如した短い作業サイクル、断片的または無意味な作業、スキルの利用不足、高い不確実性です。「作業負荷/職場」 は、過剰または過少な作業負荷、ペース設定に対する統制の欠如、大きな時間的圧力です。「作業スケジュール」 は、交代制の作業、柔軟性を欠く作業スケジュール、予測不可能な勤務時間、長時間 勤務または残業です。
 「仕事の内容」 とその特徴的な環境です。
 「組織文化・機能」 は、劣悪なコミュニケーション、問題解決と個人の能力開発に対する支援不足、組織的目標の定義がないことです。「組織における役割」 は、役割の曖昧性と役割の葛藤、他者に関する責任です。「キャリア開発」 は、キャリアの停滞と不確実性、過小または過大な昇進、低賃金、職の不安定性、仕事の社会的価値の低さです。「決定自由度/統制」 は、意思決定への参加不足、作業に対する統制の欠如 (特に参加の形態を取る統制は、文脈上のより幅広い組織的問題でもある) です。「職場の人間関係」 は、社会的または物理的孤立、上司との劣悪な関係、対人葛藤、社会的支援の欠如です。「家庭と仕事の接点」 は、仕事と家庭の要請の葛藤、家庭での支援の不足、共働きの問題です。

 意思決定への参加は、仕事の要請が持つストレッサー効果を緩和するとともに、心理的緊張を低下させます。意思決定への参加機会の拡大は、満足度と自尊心の向上に関連づけられることを示唆しています。長期的には、職務執行におけるわずかな自律性だけでも、労働者の精神衛生と生産力を高める効果を及ぼします。
 職場の暴力も、大きなストレス源となります。特にチームワークと顧客志向が多く要求される職種で暴力事件が起きれば、被害者だけでなく、目撃者にも影響が及ぶおそれがあります。暴力はまた、心理社会的ハザードや仕事関連のストレスの結果として生じることもあります。例えば、ストレスが大きい仕事、単調な仕事、 統制度の低さ、役割葛藤による曖昧性、過重労働負荷、劣悪なコンフリクト管理、組織変動等、いくつかの組織因子は、いじめを助長する要因として特定されています。


 2.労働者のストレスはどのような影響を及ぼすか、です。
 これだけ長くリストラや組織変動が続けば、コスト削減の必要性というプレッシャーの中で、職場リスク管理に対する関心が薄れてしまいます。多くの企業は依然として、労働安全衛生 (OSH) を投資ではなく、コストと捉えており、中にはOSH基準を無視してコスト削減を図るものもあります。公共支出の減少も、労働監督機関その他OSH部署のサービス提供能力を損なっています。
失業は生活上の満足度の低さ、社会的不名誉、自信の喪失、社会的接触の喪失と関連づけられ、精神衛生に悪影響を及ぼします。さらに、抑うつや自殺などの精神衛生障害との関連も確認されています。

 労働者の健康、安全および福祉への影響です。
 ストレスが健康に及ぼす影響は、ストレスが大きくなれば、極度の疲労、燃え尽き、不安と抑うつなどの精神・行動障害、および、循環器疾患や筋骨格障害などその他の身体障害をはじめ、健康関連の機能障害の発生を助長しかねません。
 労働災害に関する研究では、現在では、人的エラーが職場での事故に果たす役割は小さいこと、および、安全性を欠く行動が 効率や時間管理のプレッシャー、訓練不足によって引き起こされ、必ずしも労働者個人に原因はないことを示す研究結果が多くあります。
 仕事関連のストレスから来る認知的症状または身体症状があれば、瞬間的な放心状態、判断ミスまたは普段の活動の失敗を増やす可能性があります。調査結果からは、精神衛生障害 (特に燃え尽き) が安全な作業実践と反比例の関係にあり、職場での事故の可能性を高めることも分かっています。

 心血管疾患 (CVD) は全世界で最大の死因となっており、2012年には1,750万人 (全世界の死者の31%) が、これによって命を落としているものと見られます。大規模な研究の結果として作成された約30件の報告書の大半は、死に至るかどうかに関係なく、循環器 (ほとんどは冠動脈) イベントが発生するリスクはストレスを抱える人々において高いことを示す証拠を提供しています。全体的に見て、職場でのストレスを抱える人々のリスクは、それ以外の人々よりも50%以上高くなっています。

 「燃え尽き症候群」 は、職場で情緒的および対人関係上の心理社会的リスクに慢性的に晒されたことに対する対応が長引いたものとして説明されています。その特徴は、情緒的な極度の疲労、皮肉 (役務を受ける側の人々に対する否定的、非人間的かつ無神経な態度)、非人格化、職場でのやる気のなさ、個人的な業績の低さおよび非効率にあります。燃え尽きが生じうるのは、価値観や公平性、同一性、報酬、統制、作業負荷といった作業生活の主領域に関し、組織と個人の間に断絶がある場合です。
 燃え尽きの発生率とこれに対する認識は、ここ数年で急速に高まってきています。さらに、燃え尽きのリスクは女性のほうが高いことを示す研究も数多くあります。

 抑うつは、全世界の患者数は3億5,000万人に上ると見られ、男女双方にとって精神障害の最大原因のひとつになっています。その特徴は、憂鬱感、興味または喜びの喪失、活力減退、罪悪感または自尊心の低さ、睡眠または食欲の障害、集中力の低下にあります。こうした問題が慢性化または反復化すると、日常的な責任を果たす能力が大きく損なわれかねません。抑うつに伴って生じることが多い不安症状は、緊張感や心配、血圧上昇などの身体的変化を特徴とする感情です。
 多くの研究は、劣悪な精神衛生と抑うつが作業負荷 (長時間勤務や身体的、心理的または情緒的要請の大きさを含む)、決定自由度の低さ、支援の欠如、努力・報酬不均衡、職の不安定性および組織再編と関連していることを認めています。その他、抑うつとの関連性が確認されている心理社会的要因としては、仕事と生活のバランス崩壊、仕事に対する不満足、役割の葛藤と曖昧性、職場での劣悪な人間関係、 過度な関わり合い、低賃金、キャリア開発への注力および職場での不正感が挙げられます。

 リスクの広がりです。
 この分野での研究は、欧米をはじめとする先進国全般で盛んだが、アジア太平洋地域では比較的少なく、アフリ カやアラブ諸国ではあまり見られません。
 第4回 「欧州労働 条件調査」 (EWCS, 2007) は、EU諸国で仕事関連のストレスを抱える人々が4,000万人に上ると見られることを明らかにしました。ストレスの蔓延率が最も高いのは、教育・保健部門と、農業・狩 猟・林業・水産業部門となっています。職場で不安に襲われる労働者の割合が最も高いのは、教育・保健 (12.7%)、行政・国防 (11.1%) および農業・狩猟・林業・水産業 (9.4%) の各部門です。
 第6回 「欧州作業条件調査」 (EWCS, 2015) は、激務が広がっていることを確認しています。EU域内労働者の36%は、厳しい納期に間に合わせるために 「常時」 または 「ほぼ常時」 プレッシャーの中で仕事を迫られている一方、猛スピードで仕事をこなしていると回答した労働者も33%に上りました。さらに、労働者のほぼ6人に1人 (16%) は、敵意のある社会的行動 (身体的暴力、セクシャル・ハラスメント、いじめや 嫌がらせ) を受けたことがあるとしています。
 米州に関し、「第1回中米作業環境・労働衛生調査」 (2012年) によると、作業条件に関する懸念から、回答者の10人に1人以上が、恒常的なストレスや緊張を感じたり (12~16%)、悲しみや抑うつを感じたり (9~13%)、睡眠不足に陥ったり (13~19%) しています。
 韓国では、1999年から2004年にかけ、23件の仕事関連の自殺が補償の対象となっているのに対し、フランスでは、2010-2011年の2年度につき、149件の請求が行われ、うち43件が補償認定を受けています。

 仕事関連のストレスとそれに伴う精神疾患の生産性への影響と経済的コストです。
 職場の生産性と経済一般にかなりの影響を及ぼしています。仕事関連のストレスは、効率と精度の両面で、労働者の全般的な業績に深刻な悪影響をもたらしかねません。
 仕事関連のストレスが組織的成果に与える影響に関する調査は、例えば、仕事関連の ストレスを助長する劣悪な心理社会的作業環境は、労働者の健康と福祉に影響するだけでなく、常習的欠勤やプレゼンティーイズム (出社するものの生産性が上がらないという状態) のほか、モチベーションや満足度、コミットメントの減少、さらには離職率や離職意向の増大をもたらしかねません。これらはいずれも、 人的、社会的、金銭的コストという点で、悪影響を及ぼすおそれがあります。
 仕事に対する満足度が長時間勤務、仕事の要請、キャリアアップと昇進機会の欠如、職場での劣悪な 関係、極度の情緒的疲労、燃え尽き、仕事と家庭の葛藤、いじめや嫌がらせといった心理社会的ハザードによって影響を受けるとともに、仕事関連のストレスによっても悪化するという事実を明らかにしています。

 関連の直接的、間接的コストは、ようやく定量化が始まったところです。
 欧州では、仕事関連の抑うつによるコストは年間6,170億ユー ロに上るが、この中には、常習的欠勤とプレゼンティーイズムの使用者に対するコスト (2,720億ユーロ)、生産性の損失 (2,420億ユーロ)、 医療費 (630億ユーロ)、および高度障害給付金の形での社会福祉コスト (390億ユーロ) が含まれます。
 フランスでは、 2007年の職務ストレスによるコストが合計で19億ユーロから30 億ユーロに上るものと見られているが、この中には医療 (1億 2,400万~1億 9,900万ユーロ)、常習的欠勤 (8億2,600~12億8,400万ユーロ)、活動喪失 (7億5,600万~12億3,50ユーロ)、早死による 生産性損失 (1億6,600万=2億7,900万ユーロ) のコストが含まれています。
 ドイツでは、2008年の職務ストレスによる年間コストが292億ドル (予防、社会復帰、維持療法、投与 等の直接費が99億ユーロ、就業不能、障害および早死により失われた勤務年数等の間接費 が193億ユーロ) に上ると見られています。
 英国の最新推計によると、仕事関連のストレス、抑うつまたは不安による損失は、990万日に相当しているが、これは、 2014/2015年中に健康障害により失われた勤務時間全体の43%に当たります。2007年に英国 のセインズベリー精神衛生センターが行った調査では、社員の精神障害により使用者が負担するコストが年間合計でほぼ260 億ポンドと、労働者1人当たり1,035ポンド (常習的欠勤によるものが335ポンド、プレゼンティーイズムによるものが605ポンド、離職によるものが95ポンド) に達したものと見られています。

 報告はこの後に、
 3. 仕事関連のストレスと職場での精神衛生に関する現行法枠組み
 4. 心理社会的ハザードとリスクの予防・管理戦略
 5. グローバル・トレンドと将来のシナリオ展望
と続きます。

 6. 仕事関連のストレスの原因の予防と管理に集団的アプローチを適用することはなぜ必要か、です。
 理想的なストレス対策は、その発生を防ぐことです。そのためには、問題の核心、すなわちその原因に取り組まねばなりません。しかし、ストレスの原因となりうる心理社会的要因は数多いため、これを個別に評価、管理することはできません。
 こうした文脈においてすべての問題に対処することは期待できないため、職場レベルでの対策は、仕事関連の心理社会的リスクを予防または抑制できる介入に焦点を絞るべきです。これによって、職場内外で好影響が生まれるでしょう。仕事関連のストレスに取り組む最善の方法は、作業条件、作業環境、ならびに、組織文化と組織の労使関係において、根本的に心理社会的ハザードに取り組む戦略を採用することです。仕事関連のストレスの存在を確認し、その根源にある心理社会的ハザードを特定したうえで、これらに根本から取り組むための対策を講じるべきです。よって、講じられた対策が将来的な仕事関連のストレスを軽減、予防できるよう、できるだけ多くの原因の解消を目指す行動を起こすべきです。
 仕事関連のストレス予防のための実効的な職場プログラムを導入するためには、心理社会的リスクを適切に特定するとともに、勤務成績とストレスから生じる個人的問題を評価することが必要です。この評価は組織的に行い、労働者に対しては、職場でのストレスの原因となっている可能性のある状況があれば、これについて懸念を表明するよう要請すべ きです。


 報告書の中に、日本については1カ所だけ、過労死問題について登場します。
 それ以外の問題については報告できるような調査資料がないようです。圧倒的に取り組みが遅れています。
 ILOや欧州とは、企業や社会が根源を生みだすと捉えるか、個人的問題・個人管理の問題と捉えるかの方向性が大きく違います。それは労働安全衛生を投資ととらえるかコストととらえるかの違いとしてあらわれます。労働者を人権からとらえるか消費財ととらえているかの違いでもあります。
 労働者・労働組合からの、報告書を活用した提起、対案が期待されます。

  「職場内ストレス:集団的な課題」
  「活動報告」 2015.03.03
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