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男性管理職のメンタル不調が深刻
2019/06/18(Tue)
 6月18日 (火)

 日本産業カウンセラー協会は、相談室によせられた利用状況等の18年度統計結果をまとめました。
 「対面」 と電話相談 「働く人の悩みホットライン」 合わせて10,371件寄せられました。対面は男性2.458件、女性2.855件、電話は、男性2.241人、女性2.817件です。労働人口における男女比から見ると、女性の方が圧倒的に多いです。

 相談内容についてです。
 男性の対面でもっとも多かったのは 「職場の問題」 (823件)、次いで 「自分自身のこと」 (691件)、「メンタル不調」 (413件)、「キャリアカウンセリング」 (280件)、「家庭の問題」 (221件) の順です。
 電話は 「場の問題」 (785件)、次いで 「自分自身のこと」 (649件)、「キャリアカウンセリング」 (306件)、「メンタル不調・病気」 (305件)、「生活全般」 (74件)、「家庭の問題」 (64件) の順です。
 女性の対面でもっとも多かったのは 「自分自身のこと」 (1.087件)、ついで 「職場の問題」 (835件)、「家庭の問題」 (443件)、「キャリアカウンセリング」 (221件)、「メンタル不調」 (213件) の順です。
 電話は 「職場の問題」 (1,411件)、次いで 「自分自身のこと」 (638件)、「キャリアカウンセリング」 (324件)、「家庭の問題」 (187件)、「メンタル不調・病気」 (142件) の順です。

 男性は対面と電話ともに 「職場の問題」 「自分自身のこと」 の順で、ついで面談では 「メンタル不調」 が3位、電話では1件の差で4位です。
 女性は電話では 「職場の問題」 を、対面では 「自分自身のこと」 を相談することが多いです。
 男女の違いとしては、「メンタル不調・病気」 については、男性は女性に比べ2倍以上多くいます。逆に 「家庭の問題」 は、女性は男性に比べ2倍以上多くいます。男性は家庭をあまり顧みるゆとりがないくらい仕事を続け、女性は家事に専念しているということでしょうか。
 「職場の問題」、「メンタル不調・病気」 の相談が職場ではなく外部機関におこなわれるということは、職場の労働組合や安全衛生を担当する機関が機能していないということです。「自分自身のこと」 の相談を外部機関にするのは職場に相談できる相手がいないということです。現在の職場状況、人間関係が垣間見られます。

 面談での年齢別に見てみると、対面は40代が最も多く、次いで50代、30代の順です。
 さらに細かくみると、40代では男性が多く、30代では女性が圧倒的に多く、50代では同じくらいになっています。
 電話での年齢別では、40代が最も多く、30代、50代の順です。しかし件数に大きな差はありません。ただ、どの年代でも女性が多くなっています。さらに細かくみると、40代、50代では女性が圧倒的に多くなっています。


 面談で相談内容と年代、男女別をクロスさせると、「メンタル不調・病気」 では40代男性が最も多く (28.6%)、50代男性 (12.9%)、20代男性 (12.3%)、20代女性 (11.2%)、30代男性 (9.1%) の順です。
 電話では、40代男性が最も多く (24.6%)、30代男性 (16.3%)、50代男性 (13.9%)、60代男性 (9.6%)、30代女性 (8.3%)の順です。
 40代男性からの比率が他の年代に比べ多いことから、中間管理職にあたる世代で 「メンタル不調・病気」 の悩みを抱える方が多くなっているといえます。
 また、30代男性と60代男性の電話での相談が面談よりの多くなっています。「顔が見える関係」 では相談しにくいということでしょうか。


 2011年からの対面の男女比率を発表しています。
 2015年までは男性55%前後、女性45%前後でしたが、14年、15年は拮抗し16年に逆転します18年は男性46.3%、女性53.7%です。
 電話では、男性44.3%、女性55.7%で、昨年度と比べると4.7%、女性の比率が高くなりました。
 女性労働者が増大しています。ただし正規、非正規の具体的数字はわかりません。

 対面の相談事例です。
 ・あまり深く考えず転職し、周囲から即戦力として期待されているが、それに応える自
  信がない。
 ・鬱病で休職中だが、復職に備えてどういったことに気をつけたら良いか相談したい。
 ・転職先でも以前の職場でもパワハラを受けている。自分に問題があるとは思えない
  が、第三者の意見を聞きたい。
 電話の相談事例です。
 ・通勤途中の出来事が原因でパニック障害となり休職。復職したが同僚の心無い言
  葉に傷ついた。
 ・異動先の上司から必要以上の好意を寄せられたので、少し距離を置いたら、逆に
  嫌がらせを受けるようになった。
 ・新人の態度が悪いので注意したら、パワハラだと上司に訴えられてしまった。
 ・電話すると気持ちが落ち着く。話を聴いてもらえるのはここだけ。

 相談事例からも、現在は職場の人間関係がバラバラ、孤立していることが伺えます。


 相談内容も時代の流れとともに変化が見られます。
 管理職の 「メンタル不調・病気」 の原因は、これまでも時代背景とともにあげられました。
 1990年代のバブル崩壊後、各企業はリストラを推進します。多くの管理職、中間管理職がその対象になりましたが、残された管理職は経験が浅い業務で責任を負わされます。部下も削減されます。プレイング・マネジャー化が進みます。部下はバブル期入社組でした。その中で部下の業務を深夜に処理をすることになるなど、孤立無援のなかで多忙を極みました。
 管理職としてのノウハウも伝授・継承されていません。管理職の責務を充分に習得しないままで部下を指導することになります。
 ゆとりがない上司を部下は “無能” と評価します。しかし “無能” ではなく能力を発揮するゆとりやチャンスがないのです。管理職のメンタルヘルス不調、過労自殺が増大しました。しかし体調不良は自己管理ができていないからといわれました。
 いまもこの弊害は残っています。

 非正規労働者が増大します。正規労働者、非正規労働者の格差がさまざまに表れます。それを取り繕うのが管理職の任務です。しかし改善する手立てはもっていません。その場しのぎの対応しかできないので当事者の不満を解消することはできません。非正規労働者の業務を深夜に肩代わりします。職場環境は改善されません。職場全体に不満が鬱積します。

 成果主義 (実際は実績主義)、生産性向上を迫られます。部、課全体の責任が問われます。最終的にはそこの責任者の責任となります。
 指定された目標に達しなかったときは全体へのペナルティーが科せられます。その結果、やる気を失い、労働者はバラバラになっていきます。仲間内の個人攻撃がおきます。

 1990年代半ばから2000年前半は 「就職氷河期」 と呼ばれました。自分に自信を持てない世代が入社します。夢を追わない・追えない世代です。
 この世代が現在の会社の中堅を担っています。
 2008年にリーマンショックが起きました。「努力しても報われない」 ことが突然起きます。しかし自己責任を強いられました。年末の 「日比谷派遣村」 にはスーツ姿の中年男性労働者が “路上” から集まってきました。
 不安定な社会状況は今も続いています。
 社会生活、日常生活の中でストレスが発生しないはずがありません。


 「日経ビジネス」6月19日号の記事「中間管理職がヤバい!死亡率急増と身代わり残業」からです。
「北里大学公衆衛生学部の和田耕治氏らの研究グループが、30~53歳の男性の死因および死亡前に就いていた職業のデータなどを、1980年から2005年まで縦断的に解析したところ、管理職の自殺率は1980年から2005年の25年間で、271%も激増し、管理職の死亡率が5年で7割も増加。さらに、心筋梗塞や脳卒中で亡くなる人は他の職種で漸減していたのに、管理職と専門職では70%も増加していたのである。
 また、この調査では30~59歳の日本人男性の人口に占める管理職の割合も調べているのだが、1980~2005年の25年間で、8.2%だったのが3.2%と半分未満に減少していることもわかった。」


 今は、職場での業務指示もインターネット、人間関係は携帯、スマホになっています。同僚・仲間の関係性がつくれません。そして携帯、スマホは人間関係を狭くします。逆に一方的、無責任な情報が飛び交っています。
 いびつな職場、社会がつくられています。このようななかで1人ひとりの労働者は脆弱になっているといわれています。
 生産性が向上するはずがありません。

 お互いが不満をいい合う労働環境から、理解し合う関係を模索することが大切です。
 誰かに相談する場合は、個人的に不満を解消するだけではなく、職場環境を改善に向けて挑戦する契機にしていく必要があります。
 不安定な社会だからこそ、「失敗しても許される、再起が保障される」 制度を確立していく必要があります。お互いが助け合う社会をつくりあげていかなければなりません。

 「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」 ホームページ・ご相談はこちらから
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「政権が労働者に権利を与えるのではありません。労働者自ら力を合わせなければなりません。」
2018/06/22(Fri)
 6月22日 (金)

 韓国の6月20日のハンギョレ新聞に 「[インタビュー] パワハラ告発の “職場人オンラインの会” が続々…労働運動の希望」 の見出し記事が載りました。
 昨年11月1日に 「職場パワハラ119」 という民間公益団体がスタートしました。ホットラインラインで非正規労働者の労働相談を受けています。これまで一日平均66件、一カ月目に2千人以上の労組が誕生しました。
 実名のオンライングループが5つ生まれたのが 「最大の成果」 で、計1万2千件を越える情報提供が団体の匿名グループチャットやEメールに寄せられました。
 運営しているのは 「非正規職のいない世の中を作る会」 で執行委員10人を置くネットワーク形式の団体です。

 「非正規職のいない世の中を作る会」 は、2008年キリュン電子の非正規職解雇労働者の闘いの過程で生まれました。「非正規職解雇者問題は一企業内で解決することは難しいという問題意識の中で誕生しました」。2011年当時キム・ジンスク民主労総指導委員の高空籠城の時に始まり今でも続いている 「希望バス」 闘争が、外でもないこの団体の企画です。


 この団体の活動家であり 「職場パワハラ119」 の名付けの親でもあるパク・チョムギュ執行委員 (47) との6月11日に行われたインタビューです。
 なぜ 「労働」 の代わりに 「職場」 なのか?
「あのろうそく集会の時、4カ月以上光化門 (クァンファムン) のキャンプ村にいました。その時 非正規労働者から 『パク・クネが退陣すれば私の暮らしが変わるのか』 という質問をたくさん受けました。この問題で6カ月間討論もしました。始めは 『誰でも労組が必要だ』 という名の社会的機構を作ろうとしました。でも、非正規職には労組はとても遠い存在です。彼らに 『労組を作りなさい』 と言うことはできませんでした。労組は (活動の )結果でなければならなかったんです。『もう少し降りて行こう』 と考えました」。
 その結果が 『職場』 です。
 誰でも簡単に訪ねてきて法律的助力を得ることのできる空間を考えたのです。信頼度を高めるために、専門家の参加が必須だと判断しました。
「現在、弁護士・労務士など専門家100認余りがそれぞれ週に二時間ほどグループチャットを見守り相談を受けています。必要な場合はEメールで連絡をとったり直接会ったりもします」。

 最も大きな成果は?
「オンラインの会が5つもできました。翰林大医療院の看護師をはじめ、保育園教師、中小の病院の看護師、安山 (アンサン) の半月 (パヌォル) 工業団地の労働者、放送作家が、別にオンラインのグループを作ったのです」。
 昨年11月1日のスタート直後に看護師らの強要されたダンス労役を暴露しました。反響は大きく、1カ月後の12月1日、看護師たちは組合員2千人を越える労組 (翰林 (ハンリム) 大医療院) を立ち上げました。
 このような集まりが労組への飛び石になることができると答えました。
「5つのオンライングループは、実名で加入します。責任性や対話の密度が高いです。労組結成の話もたくさん出ます。実際、保育園のグループチャットの教師500人のうち100人は労組に加入しました」。


 パク・チョムギュ執行委員は、1998年から2011年まで民主労総と金属労組で仕事をしていました。「労働現場に飛び込もうと準備していたんですが、はからずも民主労総の専従になりました」。産別労組を築き上げようと考えていた夢が遠ざかり、労働の両極化が激しくなる現実を見ながら、7年前金属労組を出て非正規職支援団体の活動家の人生を歩んでいいます。

 今の活動の中に労働運動の新しい可能性を見るとも語ります。
「IMF危機以後、非正規職が増えて職場のパワハラ文化がひどくなりました。昨年のろうそく集会が 『私たちの職場も変えなければならない』 というそんな勇気を出させてくれました。あちこちで不当さを訴えるオンライン空間が生まれています。全羅北道にも 『職場パワハラ119』 ができたし、全国に散らばっているベーカリー職員もグループチャットを作りました」。

 労働者が集まるオンライン空間の意についてです。
「職場で受けたパワハラ被害に共感し合い、学校で学ぶことが出来なかった労働法も教えてくれる所です。80年代に偽装就職して解雇された労働者らが作った労働相談所のような所と言えるでしょう」。
 労働運動家の反応は?
「民主労総では、私たちの団体が労組のない労働者の声を代弁すると見ています。労組との距離を狭めてくれると考えています。平素現代車労組の記事にコメントをつけ罵倒している人たちも、私たちの活動を見て 『大企業労組が誤っている部分はあるけれども、それでも労組は重要だ』 と言いますから」。

 活動の最大の壁は?
「労働部勤労監督官です。彼らが態度を少し変えるだけで、情報提供の半分は解決できます。特に中小企業の場合は勤労監督官の力が大きいです。しかし賃金を踏み倒されて訪ねて行けば、たいがい企業主と和解しろと勧めます。非人間的な対応もします」。
これまでの情報提供は、一番多いのは未払いなど賃金関連 (25%) で、2位は業務外指示 (15%)、3位は職場内のいじめ (14%) だといいます。
「労働部が2位と3位のパワハラを処罰した前例がありません。処罰の根拠が勤労基準法にあるにも拘らずです」。

 文在寅 (ムン・ジェイン) 政権の労働政策は?
「文在寅政権はろうそくの力で立てられました。政府が韓国社会の不平等を非常に破格な方式で変えていくべきだと考えた理由です。最近の姿を見れば、最低賃金1万ウォン・公共部門非正規職ゼロなどの公約がスローガンに過ぎなかったという気がします。政府が最も低いところに置かれた労働者の権利を向上させるかどうかについて、疑問を持っています」。
 そのなかで到達した結論です。
政権が労働者に権利を与えるのではありません。労働者自ら、力を合わせなければなりません。オンラインで職業別・職種別の労組を作ることができます。直接秘密無記名投票で代表を選んで事務室を作ればいいのです」。

 「非正規職のいない世の中を作る会」 の3人の専従者はみな 「職場のパワハラとの戦い」 にかかりきりだといいます。「できれば専門担当労務士を3人迎えたいのですが、そのためには毎月750万ウォンの後援金が必要です。これまで200人余りの方が後援を約束され、3分の1程度は集めました。後援者が増えたらいいと思います」。(後援口座:農協010-119-119-1199職場パワハラ119)


 2月9日の 「中央日報」 に 「職場パワハラ119」 についての 「週100時間働いても手当なし…韓国人の職場生活は災難水準」 の見出し記事が載りました。合わせて紹介します。
 昨年11月1日から1月20日までに1万2287人がチャットルームに接続し、14万5767度の会話が行われました。パワハラに関する情報提供は3841件が入ってきました。電子メールやフェイスブックのメッセージ上の情報提供まで合わせれば計5478件です。

 職場パワハラ119の法律スタッフであるキム・ユギョン労務士は 「様々な 『パワハラ使用者』 らによって法の死角地帯に放置されている方々がとても多かった。女性労働者の中では職場内性暴行に関する情報提供も結構あった」 と説明しています。
 各種情報提供を類型別に分類しています。

◆賃金未払いなど労働法違反=一番大きかったのは 「賃金を受けなかった」 (24%) ということだった。
職場パワハラ119によると、ある情報提供者は 「一週間に100時間以上働いているが、包括賃金制なので追加手当てを全く受けられていない」 と訴えた。
「『休日を有給休暇に代替する』 と契約書に署名を強要された」 と明らかにした人もいた。入社後、勤労条件が変更された契約書に改めてサインするように求められる場合も多かった。
退社を決心した労働者に 「無断退社」 として使用者が損害賠償を請求することも代表的なパワハラの事例だった。
 キム労務士は 「法の脆弱点につけ込んで使用者は労働法を違反し、情報提供者は当さに立ち向かって厳しい死闘をせざるを得なかった」 と話しています。

◆軍隊式パワハラ=昨年、江陵 (カンヌン) のある病院職員は休みの日に社長と一家親戚に送るキムチの漬け込みで白菜1万株を漬けた。
ある会社員は旅行に出発した会長に代わって会長が飼っている犬と鶏に飼料を与えなければならなかった。社長が別に運営している焼肉屋の炭火を作ることをしたりもした。情報提供者たちは指示が不当で非合理的なことだということが分かっても不利益を恐れて簡単に抵抗することができなかった。
 キム労務士は 「通報したり、問題視したりする瞬間 『あの子はなぜあんなにうるさいの?』 『ちょっと変わっているね』 のような視線を恐れて皆沈黙してきたし、それが結果的にはあきれるパワハラ問題の増加につながったわけ」 と指摘しました。

◆職場内いじめ=情報提供の15.1%を占めた。
最も代表的な類型は 「多様な理由で会社に目をつけられた社員を執拗に困らせて自らやめさせること」 だった。
ある情報提供者は 「会社で不当に解雇された後、労働庁に申告して復職できたが、その後組織内で完全に 『透明人間』 扱いされて一言も言わず退勤する時もある」 と打ち明けた。女性労働者に対しては上司や同僚のセクハラなどが簡単に行われたが、その終わりは人事移動など被害者だけに不利益が及んだ。


 淑明 (スンミョン )女子大学産学協力団が国家人権委員会の依頼で全国会社員1500人を対象に 「職場内いじめ」 の実態調査をした結果、回答者の73.3%が「最近1年間被害を受けたことがある」と答えました。
 主な内容では▼不当な成果評価▼過度な業務配分▼難癖と暴言▼公開の恥さらし▼飲み会の強要――などが挙げられました。このような情報提供者たちの話はその間 「職場生活が本来このようなものだよ」 「させる通りにするのが気楽」 「君だけ大変なのか」 などの話に隠されてきたものでし。
 スタッフは▼勤労契約書・賃金明細書・就業規則などの書類を確認する▼労働組合の設立▼職場内労働法および労働人権教育の常時義務化――などを情報提供者が自らできる3大課題として提示しました。


 日本でも、多くのユニオン等が電話・メール等での労働相談活動を行い、ホットラインなども開催しています。その活動をどうしたら組織化につなげることができるのでしょうか。みな苦闘しています。
「非正規職には労組はとても遠い存在です。彼らに 『労組を作りなさい』 と言うことはできませんでした。労組は (活動の) 結果でなければならなかったんです。『もう少し降りて行こう』 と考えました」。
「政権が労働者に権利を与えるのではありません。労働者自ら力を合わせなければなりません。」
 含蓄のある言葉です。

 「活動報告」 2013.10.25
 「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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命を活かす
2017/10/03(Tue)
 10月3日 (火)

 上智大学グリーフケア研究所が主催する 「悲嘆とともに生きる」 の特別講習会に参加しました。
 グリーフケアについてです。
「特に、大震災後に必要な 『心のケア』 は、災害による多重的な喪失体験をした後に残る、複雑な悲嘆をケアすることである。それは具体的には 『悲嘆ケア』 すなわち 『グリーフケア』 のことである。この度の大震災では、想像さえできないほどの重複する悲嘆体験をした人びとが多くあった。家族1人を亡くすだけで、深く強い悲嘆状態に陥るのが通常生活の中での悲嘆であるが、災害後の悲嘆は、本人にとって大切と思うものすべてを一瞬にして喪失し、明日を生きる希望さえ失わせてしまうほど恐ろしい喪失体験に基づいている。
 このような人々に寄り添うケア提供者は、限りない思いやりと、相手に対する尊敬と信念を持っている必要がある。」 (パンフレット『大震災後の悲嘆ケア (グリーフケア)』 上智大学グリーフケア研究所 発行)

 最初は、研究所の高木慶子特任所長の講演の要約です。

 すべての人びとが悲嘆者、悲しみ苦しみを持っています。
 新美南吉の 「でんでんむしのかなしみ」 です。

 いっぴきの でんでんむしが ありました。
 あるひ そのでんでんむしは たいへんなことに きがつきました。
 「わたしは いままで うっかりしていたけれど、わたしのせなかの からのなかには 
 かなしみが いっぱいつまって い るではないか」
 このかなしみは どうしたらよいでしょう。

 でんでんむしは おともだちの でんでんむしのところに やってきました。
 「わたしは もう いきて いられません」
 と そのでんでんむしは おともだちに いいました。

 「なんですか」
 と おともだちの でんでんむしは ききました。

 「わたしは なんという ふしあわせな ものでしょう。わたしの せなかのからのなかには
 かなしみが いっぱい つまって いるのです」
 と はじめの でんでんむしが はなしました。

 すると おともだちのでんでんむしは いいました。
 「あなたばかりでは ありません。わたしのせなかにも かなしみは いっぱいです。」

 それじゃ しかたないと おもつて、はじめのでんでんむしは、べつのおともだちのところへ いきました。

 すると、そのおともだちも いいました。
 「あなたばかりじゃ ありません。わたしの せなかにも かなしみは いっぱいです」

 そこで、はじめの でんでんむしは また べつの おともだちのところへ いきました。
 こうして、おともだちを じゅんじゅんに たづねていきましたが、どのおともだちも おなじことを
 いうのでありまし た。

 とうとう はじめの でんでんむしは きがつきました。

 「かなしみは だれでも もっているのだ。わたしばかりでは ないのだ。わたしは わたしの
 かなしみを こらえ て いきなきゃならない」
 そして、この でんでんむしは もう、なげくのを やめたので あります。


 突然の事故事件より、日常が破壊されます。天災で 「今までに経験したことのない・・・」 とのアナウンスがつづいています。新しい考えでの防災が必要な時代になっています。台風、雨、地震、津波などの天災、人災の多い時代にどのように生きて行ったらいいのでしょうか。
 人はこれまでの教育としつけにより、善行にはご褒美、悪行には罰、天災は大いなるものからの罰と考えってきました。しかしその考えは大いなるもののレベルを人間のレベルに引き下げる愚かさです。人災の中で最も大きな災害は戦争です。
 不安要因が多くなっている時期だからこそ、いつ離別があっても悔いがないようにしておくことが大切です。
 例えば、日常生活の中で優しく人びとと接しておく、共同体意識を深める、安否の確認方法を確かめておく、緊急時に持ちだすものを準備しておくなどです。
 なぜ意識して優しく人に寄り添う必要があるのでしょうか。1人ひとりは大小の悲嘆 (苦しみ、悲しみ) をかかえているから、可能な限り他の人びとのことを思いやり、親切に生きることが大切です。
 そして、人は苦しい時、他の人から優しくされることで新たな希望や勇気が生まれ元気になれます。心身が弱った時、他の人びとからの支え、励ましで元気になったことを思い出すと、人の存在やありがたさを理解できます。
 人びとの小さい思いやりや優しさが、私たちが住んでいるところを 「住みなれた町」 にし、また 「共に生きる」 ことの喜びを感じて生きることができます。

 人が優しくなれるためには、まず 「私の苦しみ、悲しみよりもほかの人びとの方が強く大きいのだ・・・」 と自覚すること、たとえ、自分にとって大きな苦しみを体験している時も、もっと他の人は苦しんでいると思うと、他の人びとに対しての思いやりと親切な心がもてます。
 しかし、自分の苦しみを乗り越えるためには、各自の力だけでは難しいことも多くあります。そのために相互に支え合い、そして優しい心で接し合うことが大切です。


 尼崎の列車事故で大学生の娘を亡くしたお母さんの体験です。
 娘の事故のことを想うと、悲しみと、怒りと、罪責感で心が引き裂かれます。愛しい娘は、もういない。会いたい。この思いをどこに、誰にぶつければいいのでしょうか。
 2つの何故を問いました。「娘を亡くしたのが、何故私なのか」 「死んだのが、何故私の娘なのか」 答えのない問い。不条理な思いです。
 愛する者の死に接した時、何故という問いとともに娘の個人的 「死の意味」 を問います。それは愛する者の死が無意味なものであってほしくないからです。自分にとって大切な人の存在が、死によって失われることに耐えがたいのです。

 西田幾多郎は、萩原朔太郎から頼まれた 「国文学史講話序文」 に書いています。
「・・・深く我が心を動かしたのは、今まで愛らしく話したり、歌ったり、遊んだりして居た者が、忽ち消えて壺中の白骨となると云うのは、如何なる訳であろうか。もし、人生はこれまでのものであるというのならば、人生ほどつまらぬものはない。此処には深き意味が無くてはならぬ、人間の霊的生命はかくも無意味なものではない。死の問題を解決するというのが人生の大事である。死の事実の前には生は泡沫の如くである。死の問題を解決し得て、初めて真に生の意義を悟ることができる。」
 西田幾多郎も萩原朔太郎も娘を亡くしています。

 悲しみには様相があります。
 心に表れた悲しみ (心理的悲嘆) として、哀惜、否認、孤独、絶望、不安、混乱、苦しみ、無気力、後悔、怒りなどです。
 身体に現れた悲しみ (身体的悲嘆) として不眠、食べられない、悪夢を見る、胸の痛み、集中力の低下などです。
 日常生活への影響 (社会的悲嘆) として、仕事・家事ができない、引きこもりなどです。
 哀惜の思いとして、「只々、あの子がいないことが悲しい。会えないのが辛い」 「大学に入り、受験も終わり、これから好きなことをできたのに。やりたいこともいっぱいあっただろうに・・・」 「あの子は、社会人となり、愛する人と出会い、結婚し母親になることはできなかった。」 がありました。
 自責の念として、「あの子を守れなかった私は、母親として生きて行く資格がない」 「あの電車に乗らなかったら、事故に遭わなかったのに。あの電車に乗るために車で送っていったのは私・・」 「あの大学に入学を勧めたのは私」 がありました。何もかも自分の責任だと考えていました。
 悲しみの対象は、自分に対してです。話してもわからない、わかってもらえません。寂しさ、愛着心、孤独、二度と生きている娘に触れられないつらさがあります。故人に対して、今どうしているの? 寂しくない? 悔しいよね、もっと生きたかったよねという思いが沸きます。周りの人に対しては、誰にも気持ちを分かってもらえない、皆といる世界が違ってしまったと思いがあります。

 では怒りはどこに向いているでしょうか。
 自責の思い、後悔をいだきながら自分自身に対してです。「どうして私をおいて逝ったの」 と故人に対してです。不条理だ、傷つけないでと社会、世間に対してです。そして「娘を返して!」 「何故、事故を起こしたの?」 と加害者に対してです。
 加害者を許せるでしょうか。「許せない」 と私の心は叫んでいます。加害者が犯した罪に対して、どのように贖ってもらえば許せるのでしょうか。例え、生命で償ってもらっても、娘は私の元に帰ってきません。心は深い闇の底に落ちてしまうばかりです。企業は裁判で無罪です。だれも責任を取りません。

 どうすれば救われるのでしょうか。
 何事もなかったように許すことはできません。また、二度とそのようなことを起こさないように許してはいけないと思います。
 しかし、許せないという思いは 「負のエネルギー」 を生み出し、重く辛く私に覆いかぶさり、生きるエネルギーを奪っていきました。
 私の思いは、加害者に対しての責めだけでなく、私自身にも自責の思いがあり、その責めも許されなければならないと思いました。娘は、友のことを気遣うことができる子でした。自分の死のせいで遺された家族や友を苦しめることになるのを望まないでしょう。私は、「負のエネルギー」 に打ちのめされないで、私の人生を歩みたいと思いました。
 娘は高校時代バスケ部に入っていました。「気持ちで負けない 絶対に下を向かないプレーヤーになる」 と書いて部屋に貼っていました。この言葉が、私の気持ちを応援してくれました。下を向かないで前を向いて生きる力を私に与えてくれました。
 命を活かして生きることにしました。

 悲しみや辛さを抱えながらも、今ここに生かされている自分の 「いのち」 を知りました。
 そして、この 「いのち」 を生きることに再会の希望があると思いました。
 時の流れから捉えた再会があります。
 「過去」 との再会は、思い出の中での再会です。
 「今、ここ」 の再会は、残された者のなかに今も生き続けています。
 「未来」 での再会は、天国での再会です。
 故人とのつながりを感じながら生きると、生者と死者とを隔てているものはないのではないかと思います。
 生かされている 「いのち」 に気付くと 「いのち」 を活かす働きに気付くことができます。この 「いのち」 の働きを活かして生きることにしました。
 「いのち」 を活かすものは、Hope:希望、望みを与えるものです。望むこと、期待することです。Love:愛、慈悲です。愛すること。慈しむこと。大切にすることです。Faith:信じるもの、信念、信仰、信頼、約束、誓いです。
 「いのち」 を活かす働きは、この3つの相互作用です。

 今を生きるために、死別の悲しみを分かち合う遺族会を開催しています。そして寄り添う活動として緩和ケア病棟のボランティアと老人福祉施設のグリーフケアを担っています。
 遺族へのメッセージは、・あなたは1人ではない ・そのような思いを抱えているのはあなただけではない ・あなたは、あなたのままでいい ・あなたには力がある です。
 愛する人を亡くした悲しみはなくなることはありません。失われた 「いのち」 を想う時、今、生かされている 「いのち」 に気付きます。その 「いのち」 を活かすことが亡き人とつながり、共に生きていけるように思います。
また会う日まで、大切に 「いのち」 を紡いでいきたいと思います。

 苦しみを乗り越えるためには、相互に支え合い、優しい心で接し合うことが大切です。
 グリーフケアとは、悲嘆している人たちに寄り添うことです。
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『ひとりで闘う労働紛争』 発刊  労使紛争とは労働者と使用者が対等な立場で交渉し、平和的に問題解決をはかること
2017/06/27(Tue)
 6月27日 (火)

 この3月に本 『ひとりで闘う労働紛争』 サブタイトル 「個別労働紛争対処法」 が発刊されました (緑風出版 1900円)。既刊 『ひとりでも闘える労働組合読本』 を大幅に書き換えたものです。既刊は三訂増補を重ね、5000冊を完売しています。

 形式はQ&Aです。ただしAは長文です。
 章立ては7章です。
 Ⅰ 労働紛争とは何か?
 Ⅱ 労働問題の相談
 Ⅲ 労働者を守る救済機関
 Ⅳ 労働者を守る法律
 Ⅴ 労働組合づくり
 Ⅵ 団体交渉のすすめかた
 Ⅶ 争議の闘いかた
 これらに付随するコラム 「余談雑談」 が13あります。

 具体的内容を抜粋します。
Ⅰ 労働紛争とは何か? のQ 「1 労働紛争にはどんなものがありますか?」 へのAです。
「労働紛争は、多様かつ非定型的で、そもそも権利義務の形でルールを設定することはむずかしいです。いま、労働関係においておきる紛争を労働紛争ということにすると、労働関係の内容に応じて、権利紛争と利益紛争、あるいは、個別紛争と集団紛争とに整理することができます。
 まず、権利紛争と利益紛争です。
(1) 権利紛争とは、主として、労働者の 「権利侵害」 にかかわる紛争であり、解雇権の濫用、不当労働行為など、契約の不履行や法のルールに対する違反が問題になります。
(2) 利益紛争とは、「紛争の対象について権利義務関係を定めた法的ルールが存在しない場合に、相互の合意によるルール形成を目指す紛争」 と定義されます。労働者の 「経済的利益」 をめぐる紛争であり、賃金や労働時間など労働条件にかかわる労働者の 「経済的利益」 を、要求交渉を通じて合意形成をめざすものです。
 次に、個別紛争と集団紛争です。
(3) 個別紛争は、個々の労働者と使用者の個別的労働関係 (雇用関係) において生じる紛争です。
(4) 集団紛争は、労働組合など労働者の集団と企業など使用者との集団的労働関係 (労使関係) において生じる紛争です。
 紛争の解決は、基本的には、当事者の合意を基礎とする自主的解決が望ましいです。第三者が関与する訴訟等にくらべて経済的・時間的コスト、信頼関係の崩壊がすくないからです。また、権利義務関係にこだわらない柔軟な解決をはかりやすいです。……」

 Q 「5 労働問題がおきたらどうしたらいいですか?」 のAです。
「『労働問題』 がおきたら、『労働問題』 にくわしい人や労働組合、公的な相談機関を訪ねてまず相談に行きましょう。一人で悩んでいるのはよくありません。病気と一緒で、時間がたてばたつほど症状が悪化します。……
(2)労働組合
 労働組合にも、当然、労働問題の相談窓口があります。連合 (日本労働組合総連合会) などナショナルセンターも労働相談窓口を設けていますが、個別労働紛争の労働相談は、合同労組、コミュニティ・ユニオン、管理職ユニオンなど個人加盟 (加入) 方式の労働組合の方が格段に相談に適しています。労働組合に加盟すれば、会社に団体交渉を申入れ、交渉によって解雇や降格・減給などの労働紛争の解決をはかることができます。
 労働組合 (個人加盟方式の労働組合は、一般的にユニオンという名称を名のっている) に労働相談するメリットは、会社と団体交渉 (団交) を行なえることです。団体交渉権 (団交権) は、労働組合法六条で次のように保障されています。……」


 Ⅴ 労働組合づくり のQ 「23 労働組合に関する法律はどのようになっているのですか?」 へのAです。
「日本国憲法は第二八条で、勤労者の団結する権利、団体交渉その他の団体行動をする権利をみとめており、この憲法の趣旨を具体的に保障することを目的として労働組合法がつくられています。
 労働組合法は、労働者が使用者との交渉において対等の立場にたつことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するためにみずから代表者を選出すること、その他の団体行動を行なうために自主的に労働組合を組織し団結することをよう護すること、ならびに、労働協約を締結するための団体交渉をすることおよびその手続を助成することを目的としています (労働組合法一条一項)。
 一人ひとりでは弱い労働者が団結し、使用者と対等な立場にたって労働者の地位を向上させ、かつまた勝手なまねをさせないためにも労働組合が必要なのです。使用者が労働条件の改善要求を聞きいれなければ、ストライキを行なうこともできますし、労働組合の団体交渉その他の正当な行為 (刑法三五条) に対しては、刑事罰を科せられません (刑事免責/労働組合法一条二項)。ただし、いかなる場合にも暴力の行使は、正当な行為とみとめられません。また、労働組合法八条は、『使用者は、同盟罷業その他の争議行為であって正当なものによって損害を受けたことの故をもって、労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができない』 と、民事免責をみとめています。……」

 Q 「30 労働組合は個人の問題を取り上げてくれないのでは?」 へのAです。
「労働組合は、多くの労働者が一緒になって団結し、共通の労働条件の向上をはかることを主たる目的としていますから、従来は、あまり個人の問題を扱うのには積極的ではなく、得意でもなかったといえます。また、『団結』 のまえに個人の問題は 『わがまま』 とされることも多かったのでしょう。とくに、企業のなかで労働組合全体の利益を守ろうとする企業別組合の場合は、まず会社とのあいだで 『基本計画』 を話し合いますから、それに反対したり同調できない人を受け入れにくい傾向があります。例えば、会社全体の組織変更について組合と会社が合意したのち、ある組合員の配置転換が問題になり、その組合員が個人としてその人事に応じられないと訴えても、その個別事情についての会社との交渉には消極的、というのが企業別組合の実情でしょう。
 しかし、現在、労働条件は一人ひとりの労働者のはたらき方のレベルまで細かくきめられ、一般的な基準だけで労働組合の側がそれを規制するのはむずかしいのです。言い方を変えれば、企業の個々の労働者に対する 『支配』 がすすんでいるということです。とくに、サービス業などの第三次産業では、労働者が一緒に、一律にはたらくということがほとんどなくなっていますから、労働組合としても、個々の組合員がどのようにはたらいているのか、キメ細かくチェックすべき時代になってきているのです。一人ひとりの問題を全体で議論しながらその解決をはかるというシステムを、つくることが求められています。裁量労働制がホワイトカラー全体に広がると、労働時間は労働組合との合意ではなく、個人個人 (と会社) がきめることになります。ただし、過半数労働組合または過半数労働者の代表者・労使委員会 (労働基準法三八条の三および三八条の四) を通じて関与できますから、組合としても、個人のはたらき方に関心をもたなくてはならないわけです。労働組合によっては、個人の生活問題等の相談に積極的に応じる 『世話役活動』 に力を入れているところもあります。
 また、個人加盟のできる労働組合もあります。そうした組合は、直接個人の問題を扱いますから、そこに相談すれば問題解決に役立つでしょう。……」


 Ⅵ 団体交渉のすすめかた のQ 「32 団体交渉ってなんですか?」 へのAです。
「労働組合法第一条は、(目的) として 『この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。』 とうたっています。
 そして第六条は、(交渉権限) として 『労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。』 とうたっています。
 団体交渉 (団交) とは、労働者と使用者 (会社・法人) が対等な立場で交渉のテーブルについて話し合いをかさね、平和的に問題解決をはかることです。
 団交申入
 団体交渉は労働組合 (または会社、法人) が相手方に申入れます。事前に協議して決めた交渉事項を記した団交申入書を作成し、相手方に提出します。口頭でも有効ですが、のちに申入れがあった・なかったのトラブルが発生しる危険性もありますので必ず文書で行い、回答も文書でもらうようにします。
 団体交渉申入書には、団交での協議する事項、希望する日時・場所、組合からの出席者、申し入れに対する回答期限、労組の窓口担当を記載します。会社側の出席者は、団交議題について決定権を持つ者の出席を要求します。
 そして最後に 『付記 当労働組合からの団体交渉申入れは、労働組合法第六条によるものであります。団体交渉は労働組合法第七条で正当な理由がなくて拒むことはできないことを申し添えます。』 と書き添えます。……」


 Ⅶ 争議の闘いかた のQ 「42 会社の経営にまで組合はタッチできるのですか?」 へのAです。
「組合が団体交渉で会社に要求できる事項は、主に労働条件、雇用条件などとされています。しかし、団交の際に、会社側が賃上げ要求に対して 『会社に支払い能力がない』 として、賃上げを拒否したり、賃上げ幅を抑えようとしてくることがよくあります。これに対抗するには、経営状態、売上げや経費、利益の実態を調べ、経営内部の状況をよく分析、把握しておく必要があります。労働条件や雇用条件は経営の根幹をなすものであり、それだけに、組合側がその面から経営内容を深く追求して経営全体に迫り、経営のあり方をチェックすることは可能であり、当然ともいえます。
 例えば、ベースアップ・ゼロや昇給制度の改悪は、経営の失敗や無能を従業員に転嫁し、犠牲を押し付けようとするものにほかなりませんから、そういう事態をまねいた経営者の責任を追及するとともに、経営のあり方についてさまざまな角度から批判し、要求していくことが重要です。現状の日本企業の、閉鎖的な、相互もたれあい主義の経営から脱皮するために、組合が経営に対してもっと積極的に、正当なチェック機能を果たすことを期待されています。
 会社の役員人事などを、組合側から要求することはムリだと一般に考えられています。しかし、役員人事を含めていわゆる経営事項が、すべて『経営権』に属する会社の専決事項ということではありません。……さらに、取締役の追放を目的とする争議行為も、労働条件改善のための必要な手段として行われる場合は、正当な争議目的とされます。
 ところで、『経営権』 という概念は、『施設管理権』 と同様、法律上の概念ではありません。しいて定義すれば、『資本所有権の企業経営面における一つの作用ないし権能』 であるとされていますが、要するに、労働条件や労働者の経済的地位向上と関連性をもたない経営上の専決事項は、非常に限られているということです。現在、日本の企業では、株主総会や監査役、取締役会は単に形式的な法律手続として存在するだけで、まったく機能していないのが実情です。こうした異常な状態に、クサビを打ち込み、経営のチェック機能を果たすことは、労働組合の社会的責任です。」

 「42 会社の経営にまで組合はタッチできるのですか?」 に関連するコラムです。
「会社は誰のもの
 ……
 会社法は、労働者とっては馴染みが薄いというよりはあまり関心がもたれません。以前のように、銀行を併せ持った財閥グループ企業による株の持ち合いや、その傘下に中小企業を抱えていた時は、株主は株価や配当にあまり関心を持ちませんでした。労働者にとっても労使関係・労働条件決定に大きな影響はありませんでした。
 しかし会社の存続や組織再編を左右する株主総会、企業再生などの決定手続きなどには重要な問題が含まれています。
 それぞれの取締役は職務を行なうに際しては、民法の規定によって善良な管理者の注意義務 (善管注意義務) と、『法令及び定款の定め並びに総会の決議を遵守し会社のため忠実にその職務を遂行する義務 (取締役の忠実義務)』 があります。さらに判例で 『監視義務』 と 『リスク管理体制の構築義務』 を迫っています。過労死をめぐる裁判では、遺族は会社だけでなく個々人の取締役を被告として善管注意義務や監視義務を怠った会社法違反で損害賠償を起こして勝訴しています。
 グローバル化による投資の国際化の中で 『物言う株主』 が登場すると会社のあり方も変わってきました。投資家は日々の株価の動向を睨んで売買を繰り返し、短期間で利益を上げようとします。長期的会社経営には関心がなく、時には会社経営を委任されている経営陣と大きく対立することになります。
 一五年八月二十二日の毎日新聞に 『黒田電気 個人株主、村上氏を警戒』 の見出し記事が載りました。村上氏とは、かの 『お金を儲けることはいけないことですか』 と発言した村上ファンドの村上世彰。村上の長女がCEOを務める投資会社C&Iホールディングスは黒田電気の株約一六%を握り、二十一日の株主総会に村上世彰ら四人の社外取締役選任案を提出します。そして 『今後三年間、最終 (当期) 利益の一〇〇%を株主還元できる』 と訴えました。
 株主総会では、現経営陣の従来の手堅い経営を志す政策と、村上側の企業の合併・買収 (M&A) を通じた高成長を求める意見が真っ向から対立したといいます。村上側としては、最高益を達成しているときがM&Aのチャンスで、高騰した株が売れたら撤退します。
 会社への愛着はまったくありません。それが 『お金を儲けることはいけないことですか』。
 しかし村上側の提案は最終的には約六割の株主の反対で否決されました。……
 さて、このような中で社員、労働組合はどのように登場できるでしょうか。八月五日、黒田電気 『自生会 従業員』 一同は四人の社外取締役選任に反対する 『声明文』 を発表しました。取締役会は株主総会の決定に従うので、M&Aなどが行われると労使関係や雇用関係は変更に至ります。社員と社員を含んだ 『会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反』 により影響が及ぶような動向に対して労働組合が声を上げるのは必要なことです。
 労働者と労働組合は、労働者の側からの 『コンプライアンス』 ・秩序を対峙させて主張する必要があります。なぜなら、会社の利益をつくり出しているのは労働者だからです。
 ……
 会社は、社会の中に存在し、関連する事業・企業があって存在することができ、利用者があって維持できています。そして会社の中には労働者が存在しています。『ステークホルダー』 (利害関係者) のものです。さらに利害関係者は拡大し、顧客・消費者、そして事業所が存在する地域の人たちも含めるまで捉えられるようになってきています。法人としての会社には社会的責任もあります。
しかしバブルが崩壊し、ファンドが飛び交うようになった頃から、会社は誰のものかという議論が起きると 『ストックホルダー』 (株主) の主張がはびこっています。経済のグローバル化が進むなかでのグローバル・スタンダードではさらにそうです。
 『お金を儲けることは悪いことですか』 の問いに 『労働者を差別して、踏み台にしてお金を儲けることは悪い。そのために生死の境に追いやられている者もいる。私たちはそうしない。私たちはそのような社会を変えたい』 という認識と行動で対峙することが必要です。労働組合は社会の中に存在し続ける必要があります。」

 各項には解説もあります。
 宣伝活動における 「ビラ内容の正当性」 です。
「ビラの内容
 ビラを作成するときは、だれに読んでもらいたいかの対象を決めてから内容を決める。会社への要請・抗議、社員への事態の伝達や協力要請、市民への事態報告と支援要請など。
 訴えかたは 『ラブレターを書くときのように』 といわれる。『せめて○○さんはこの気持ちをわかってください』 と訴えて説得するトーンで。
 通行人が宣伝マイクに耳を傾けるのはせいぜい20秒。そのなかで引きつけるフレーズが勝負となる。ビラは、歩いていてふと目に留まる見出しが必要。見出しのインパクトと大きさが大切。まず受け取らせる努力が必要。
 正当性
 ビラの内容が使用者の労務政策の批判攻撃である場合は、内容が全体において真実であれば正当性が認められる。使用者の経営政策の批判攻撃である場合は、それが労働条件や労働者の待遇と関連性があり、内容が全体として真実であれば正当性がある。(正当性なしとされた事例、中国電力事件・最高裁判決/平成四年)」


 『ひとりで闘う労働紛争』 は、現在職場で起きているかなりの問題について取り上げることができませんでした。そこで続編として、
  労働契約の変更・継続・終了への対応
  人事考課への対処
  企業再編、倒産争議にどう戦うか
  職場いじめの労働相談
  メンタルヘルス・ケアと職場復帰 (復職)
などを取り上げる準備をしています。

  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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発達障害 常に誰かが働きかけを
2017/06/02(Fri)
 6月2日 (金)

 第20回のワンコイン講座は、就労支援の相談センターで働いている方から 「『発達障害』 (アスペルガー) をもつ人たちへの支援から見えてくるもの」 について話をうかがいました。 お話の中にはたくさんの具体例がでてきました。しかし個人情報保護の観点から公表できません。残念です。(内容は、障害解説ではありませんので、さまざまな症状が解説なしで出てきます)

 「アスペルガー」 をもつ人たちについては、社会性 (社会的相互作用) の障害として 「友達を作りたいのだが、うまく作れず、悩み苦しんでいる」 と捉えると彼らの気持ちに近くなるのではないかといいます。
 川崎医科大学精神科学教室の青木省三さんの論文からの引用です。
「一般的に広汎性発達障害の特質は、心理的、環境的な負荷が加わったときに際立ちやすい。すなわち、危機的なとき、緊張したときなどに、広汎性発達障害らしくなるように感じている。例えば、こだわり、強迫傾向などは、その人たちを苦しめる症状であると同時に、その人たちを保護する役割も持っているのではないだろうか。だからこそ、不安や緊張そして危機などの際に、その人の中にある広汎性発達障害的側面が際立ってくるのである。
 また、心理的、社会的なサポートを失う、仕事内容が複雑に変化し負荷が増加する、過剰な刺激や情報にさらされるなどの、環境の変化 (進級や進学、就職や転職、仕事内容の変化、1人暮らし、恋愛など) を契機として、従来の精神障害という表現型で発症することが多いように思う」

 コミュニケーションの障害についての捉えかたです。
「米国精神医学会のDSM-Ⅳ-TRの自閉症障害の項目、『発達の水準に相応した仲間関係をつくることの失敗』 『楽しみ、興味、達成感を他人と分かち合うことを自発的に求めることの欠如』 『充分会話のある者では、他人と会話を開始し継続する能力の著名な障害』 などを見ると、『失敗』 『欠如』 『障害』 ということばが続いている。診断基準であるからしかたがないことかもしれないが、そこに、その人の 『願い』 や 『思い』、『希望』 や 『可能性』 は出てこない。しかし、実際には、多くの広汎性発達障害の人の中に人を求める気持ちや自分を変えたいという気持ち、さらには人とコミュニケーションを持ちたいという気持ちが、大きいか小さいか、意識されているかどうか、適切な形かどうかは別として、存在することに気づくのである。『一人がいいです』 といっていた青年が、ふとしたことを契機に、『職場や学校に行きはじめる』 ことも稀ではない。」

 想像力の障害についての捉え方、配慮についてです。
社会性の障害とは、『友達を作りたいのだが、うまく作れず、悩み苦しんでいる』 と考えた方が、コミュニケーションの障害とは、『自分の思いを表現したいのだが、うまくことばにならず苦しんでいる』 と考えた方が、こだわりとか想像力の障害とは、『自分を変えたいと思うが、変わるのが怖い』 と考えた方が、広汎性発達障害を持つ人たちの気持ちに近いのではないかとおもうときがしばしばある」


 相談を受ける時の心構えです。
 絶対に相談の窓口を閉めてはいけません。
 時間については1時間以内にします。相談者も疲れてきて感情を乱します。
 ソーシャルサービス職場の安全体制・維持・管理が大切です。そうしないとスタッフのストレス・バーンアウトの源、業績悪化、トラウマ、機能低下、死・・・の原因になります。
 OSHA (米国の労働安全衛生庁 Occupational Safety and Health Administration) の調査ではソーシャルサービススタッフの職場における暴力経験は他職種の6倍弱というデータがあります。OSHAはガイドラインを発刊しています。
 スーパーバイザーの役割は重要です。
 多領域連携と協働体性の構築が必要です。そうすると一支援者、一機関では対処できない人たちに対してサービスを展開できます。それぞれ独自の専門性を発揮して、互いに異質の専門性を活用することにより、包括的・総合的支援を目指すことができます。


 発達障害者支援法は2005年に施行されました。
 第二条は、「この法律において 『発達障害』 とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」 とあります。
 身体障害、知的障害、精神障害の3障害には該当しないが、生まれながらに脳機能の障害を持ち、それゆえに社会生活を送ることが困難であって、特別な支援を必要とする人への支援をねらいとした法律です。

  「発達障害」 をもつ人に対する支援制度の効用と限界についてです。
 信州大学医学部付属病院の本田秀夫医師の講演からです。
「発達障害の人の雇用では、とにかく障害が見えにくいので、会社の側が本人の特性をなかなか理解してくれません。普通の人だと思われてしまうのです。障害者雇用されている場合ですら 『普通の人と変わりない』 と思われてしまったりするので、やはりそこに対して常に誰かが働きかけていく必要があります。
 会社は、基本的に学校と違います。学校にとって、発達障害がある人を受け入れる場合は、自分たちの事業の対象 (お客さん) として受け入れます。しかし会社が発達障害のある人を雇う場合、お客さんではなくて従業員です。『従業員にはきちんと働いてもらわないと困る』 という気持ちが、どこかにあるのです。
 したがって、いくら障害者雇用だとはいっても、会社側にメリットがないと受け入れは難しくなります。」

「会社に就職できたからといって、そこで頑張り過ぎてつぶれてしまうと、二次障害になってしまいます。会社に選んでもらうだけが就職ではなくて、自分にとって合った仕事をさがすという視点が大切です。やってみて、合わなかったら辞めていいという気持ちを持っておく必要があります。……
 なんのために仕事をするのかということを考えておくべきです。仕事をやって、お金を稼ぎ、余暇の生活を楽しむことが大事です。仕事に生活のすべてを賭けるようなことにならないよう、気を付けたいものです。」

「成人期の自閉スペクトラムの人の中には、非障害の方がいるのは事実です。そういうふうに育てていければ、それに越したことはない。でも、いまは非障害の状態であっても、やはり誰かしら相談相手を持ちながら、自分に合った環境をうまく選んでいかないと、つまづくリスクは必ずあります。それをわかっておく必要があります。
 そういう意味では、誰かに相談をしながらやっていくという習慣をきちんと持てているかどうかということは、命綱になっていきます。誰かに相談する姿勢をきちんと形成できるように気をつけておいていただければと思います。」


 もらった資料の中の一節です。広瀬宏之著 『図解よくわかるアスペルガー症候群』 (2008年ナツメ社) からです。
こうした体験が積み重なると、だれでも孤独感を深め、周囲に敏感になります。ささいなことにも過剰に反応して、それが反社会的な行動に結びつくこともあります。
 そうした反社会的行動は、周囲からはいきなり発生したように見えますが、本人の中ではそうではありません。数年にわたるストレスの蓄積の結果として生じるのです。
 また、何らかの問題行動を起こすまでの過程で、本人は繰り返しSOSを出しているはずです。しかし、それが周囲にはいきなり反社会的行動が起きたように見えてしまいます。
 子どもの反社会的行動を防ぐためには、子どもが普段から発しているSOSを見逃さないことが大切です。そして、障害のある子どもが問題のある行動を起こしたときは、子ども本人よりも、本人を取り巻く環境に目を向けることが必要です。
 障害に対する誤解や偏見をなくし、正しく理解し、子どもに正しく対応することが、障害のある子どもの非行や犯罪を防ぐためには何よりも大切なことです
。」

   「活動報告」 2012.10.30
   「活動報告」 2011.12.16
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