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マタハラで雇止め  働けないのは労働者の責任?
2019/12/03(Tue)
 12月3日 (火)

 妊娠している、もしくは出産後の女性社員に対する嫌がらせなど、“出産ハラスメント” といわれるマタニティハラスメント (マタハラ) を巡って各地で紛争が相次いでいます。
 現在の 「育児休業 介護休業法」 第25条は、「事業主は、職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業・・・に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう・・」 とあります。育児休業等に関するハラスメントの防止措置です。
 その 「指針」 には 「『制度等の利用への嫌がらせ型』 とは・・・典型的な例として・・・①解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの 女性労働者が、制度等の利用の請求等をしたい旨を上司に相談したこと、制度等の利用の請求等をしたこと、又は制度等の利用をしたことにより、上司が 当該女性労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いを示唆すること。」 とあります。
 しかし罰則規定はあってなきがごとしです。

 11月28日、東京高裁は、語学学校で講師をしていた女性が育児休業取得後に正社員から契約社員になったが、再度元の正社員に戻さないのは 「マタハラ」 にあたると訴えていた控訴審判決で、去年9月の一審の判決を覆し、逆転敗訴を言い渡しました。
 女性は正社員として働いていましたが育児休業の取得後に週5日勤務ができないため週3日勤務の契約社員になります。女性は育児休業から復帰する第1号で、会社も新しく制度を作ったのですが、会社の制度では 「契約社員 (1年更新) は、本人が希望する場合は正社員への契約再変更が前提」とあります。もともとこの会社では契約社員はいなく、正社員のみの講師でしたが、その正社員講師が育休明けの場合と限定された制度でした。会社からの説明はキャリアをつなぐものとの説明で、いったん正社員は退職となることや、期間の定めに意味や雇止めの可能性などの説明はありませんでした。そこで週5勤務復帰を前提にした 「つなぎの制度」 と受けとめていました。しかし会社は週5に戻すのを拒み続け、契約社員の更新も認めませんでした。
 労働組合に入って団交を申し入れましたが、団交直前に突然大量の業務改善指導書 (しかも日付を遡ったもの) を一括して出されました。団交でも会社は言を左右にし、都労委斡旋では、在籍している女性の退職前提の金銭解決に固執し、不調に終わりました。その後会社から女性に対して労働審判を申立て、この審判が正社員に戻す方向で進むと取り下げて、雇止めを通告、まだ在籍中に 「地位不存在確認訴訟」 を会社が提起したのです。
 その後女性も提訴し、2018年9月、東京地裁はマタハラを認め、契約社員としての雇い止めについては 「合理的な理由を欠く」 と無効としましたが、正社員の地位は認めませんでした。
 
 しかし今回、東京高裁は、雇止めは有効と判断しました。
 女性が働き続けるためには個人ては解決できない様々な困難にぶつかります。そのひとつが、国・行政がきちんと対応していない保育所確保の問題です。そして個人の努力の限界をカバーするのが企業の社会的責任で、そのために法規制が必用であり、就業規則等に明記することです。すべての労働者に保育を個人の責任としないことです。
 しかし育児休業 介護休業法は国・行政の不十分な対応や企業の社会的責任を免罪します。
 判決は、そのような中で原告が困難に直面していたことを無視し、法律に含まれている問題点を指摘するのではなく、社会契約法の一方的解釈で自己責任を押し付けています。
 このような判決がまかり通ったら、5月に法改正が行われた 「女性の活躍の推進法」 は単なるスローガンでしかありません。
 女性はただちに上告しました。


 実効性の伴わない理念法は同時に改正された 「パワハラ防止法」 も同じです。
 労働政策研究・研修機構 (JILPT) が発行している 『Business Labor Trend』 2019年10月号は 「有識者からの提言 パワーハラスメントを防ぐために求められるもの」 を特集しました。そこに労働ジャーナリストの金子雅臣さんが 「労働現場からみたパワーハラスメント ―劣化する労働現場」 が一文を寄せています。抜粋します。
「そもそもパワハラの現状のとらえ方をめぐっては、 厚生労働省の有識者検討会でも議論が交わされたよう に、大きくは二つの見解がある。
 その一つは、『あくまで職場の単なるコミュニケーションギャップの問題』 であり、『個人的な指導の行き過ぎの問題だ』 とする見解であり、もう一つは『職場の重大な人権問題』 であり、『深刻な労働問題だ』 とする見解である。
 この両者の主張は、対策をめぐる議論にも大きな違 いとなってくる。前者は極力個人の指導上の問題ととらえて、指導との線引きの難しさから、まずはガイドラインにとどめることでよしとするものになる。一方、後者はパワハラ問題が生じる職場環境の劣悪化を防ぐため、より厳しい法規制を求めるということになる。
 こうした議論を交わした結果、今回の法規制は企業の措置義務という、どちらかと言えば、前者の主張に沿う形で決着をみた。しかし、相談現場から見た場合、両者の主張の是非はともかく、あまり生産的な議論だったようには思えない。」

「さて、パワハラの実相を検討しながら、今回の法規制の実効性について考えてきたが、結論的に言えば、 今回の規制法では現状のパワハラを規制する有効な手段となるかについては疑問が多いと言わざるをえない。
 その理由は、すでに幾度か触れてきたように、パワハラを表面的にとらえて、その原因に迫る規制法になっていないことである。・・・このパワハラ規制をめぐっては二つの立場があるということを冒頭に触れたが、その見解の違いはパワハラ規制に向けた基本的な姿勢の問題の違いであることがわかる。つまり、「あくまで職場の単なるコミュニケーションギャップであり、指導上の個人の行き過ぎの問題だ」 とする見解は、職場環境の問題であることを意図的に無視することにより、企業の責任を回避したいというものである。
 それに対して、もう一つの立場は 「職場の重大な人権問題」 であり、「うつ自殺に発展しかねない深刻な 労働問題だ」 とする。この見解は、まさに背景にある企業のモラルダウンやそれによって引き起こされる人権侵害に焦点を当てて企業の責任を問うというもので ある。
 つまり、あくまでコミュニケーション上の問題としてとらえようとする視点からは、何としても企業責任 を回避しようという意図が見えてくる。企業の人権侵害が問題になれば、当然に企業の責任が問題になる。 そこで、何としても個人の問題にとどめておきたいという思惑が込められている。」

 パワハラを職場環境の問題と捉えないで個人間の問題するのと、育児休業において国・行政の不十分な対応や企業の社会的責任を免罪するのは同じです。政府は表向き取り組むふりをしながら企業が取り組まないことを容認する、実効性がともないものにしています。労働者が働きづらい状況は続いています。今回の判決はそれを踏襲したものともいえます。そこには社会的に認めあうべき人権が否定されています。
 「女性の活躍の推進法」 や 「パワハラ防止法」 は、今年6月に日本政府も賛成して成立したILO条約の内容に即して早急に改正が必要です。


 この裁判はこれ以外にも問題点があります。女性は会社との面談等に際し、会話の正確さをきすため録音します。しかしこの行為が指示に従わなかったということで雇止め理由の1つになります。「いった」 「いわない」 の言い争いになることはよくあります。そのためお互いに録音することはよくあります。労働者の録音を禁止することは防御権を剥奪することになります。
 また女性は、記者会見や取材でマタハラを受けた当該として、同じような被害にあうようなことがないように、あったら声をあげようと呼びかけました。判決ではこのような行為が 「マスコミ関係者らに対して客観的事実と異なる事実を提供した、信頼関係を破壊する背信行為」になり会社の名誉毀損になると認定され、女性に損害賠償金の支払いが命じられました。
 信頼関係が失われた中にあって、労働者と労働組合はさまざまな手段を行使して自己の権利を守り、正当性を世論に訴え、会社に喚起をせまります。今回の判決は一方的に会社の主張を擁護し、労働組合の争議権を否定しています。
 このようなことが許されるなら、この事件だけでなく多くの労働組合の権利が侵害されることになってしまいます。
 今、パワハラ防止法の具体例 「下から上へのパワハラ」 を真似て、「労働組合の乱暴な追及」 が団交拒否の口実になっているといいます。合同労組、ユニオンが守ってきた労働組合法の改悪がささやかれています。
 労働者と労働組合の防御権、争議権を否定するこのような行為を絶対に認めることなく、さらに大きな声をあげていく必要があります。

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運転手さん。 悔しかったでしょう。 理不尽だったでしょう。 情けなかったでしょう。 でも、貴方は立派でカッコ良かったと思うよ。
2019/07/26(Fri)
 7月26日 (金)

 インターネットに共同通信の 「運転手に土下座強要疑い、札幌 寝過ごし謝罪要求、男逮捕」 の配信記事が載りました

 札幌・西署は7月25日、路線バスの男性運転手 (48) に、自身が寝過ごしたのに起こさなかったことに謝罪を求めて土下座させたとして、強要の疑いで札幌市中央区盤渓のアルバイト従業員の男 (52) を逮捕した。
 逮捕容疑は6月9日午後7時15分ごろ、同市中央区盤渓に駐車中のばんけいバスの車内で、運転手に謝罪を強要して土下座させた疑い。
 署によると、乗客だった男は降りるはずだった停留所を寝過ごし、終点まで運転手が起こさなかったことに立腹。降車予定だった停留所まで送ることを要求した。運転手は会社に相談して送ろうとしてバスを発車させたが、男は詰め寄り土下座を強要した。


 記事に対して短時間にたくさんのコメントが寄せられました。そのいくつかを紹介します。

・降車予定だった停留所まで送ることを要求した。運転手は会社に相談して送ろうとしてバスを発車させたが送ってくれることになったんやろ?
 良い会社に良い運転手さんやん。
 土下座強要ではなくて、ありがとうござます。やろ!

・運転士さんは、この男性を置き去りにしたくなかった良心から会社に相談して寝過ごしたヒトを送ろうとした。
 この良心に感謝するのが普通かなと思うけど、実際は違うんですね。
 交通従事者に対して、低く見られてるというかやつあたりしやすく見られているのか…
 これでは、せっかくの良心も無駄になる。
 なぜ土下座なのかわからない。
 顔写真等、公開してもいい事件だと思う。

・お客様は神様、ではありません!

 返信がありました。
 ・神様です。厄病神 貧乏神
 ・友達のファミレスでは、お客様は神様ではなく王様ですって言ってるそうですw

・こういうのを野放しにしてはいけないと思うんだけど。
 運転手さんは1人でそのわがままに付き合わなくちゃいけないのかな。
 会社として対応しないと、無理を通してしまう体質になっちゃうよ。

・どうしてその場で警察を呼んで毅然とした対応をしないんだろうか?
 たぶんそれをやると後から会社から怒られるって言うのはわかっているから一旦会社に相談するんだと思う。
 ある程度自分の判断で動けるように会社も常日頃から毅然とした対応を心がけるようにしたほうがいいと思う。
 もともとその会社は日頃からそういう クレームに負けるようなところがあったのではないかな。

運転手さん。
 悔しかったでしょう。
 理不尽だったでしょう。
 情けなかったでしょう。
 でも、貴方は立派でカッコ良かったと思うよ。


・こんな記事を読むと、なぜ客が上の立場なのか不思議に思う。バスの運転手だけではなく、サービス業なども然り。客と従業員は対等の立場である。おかしな奴はすぐに警察に突き出してやればいい。

・バスはタクシーと違うんですけどねー。
 電車と同じで自分で降りる意思を示さないとどんどん終点に向かって走ります。ある種そのリスクを背負って乗車している訳で、乗り過ごした事を乗務員のせいにするのは全くのお門違い。運賃は安全に目的地まで乗客を送り届けることに対する対価。それ以上のサービスを求めてはいけない。それならばタクシーを利用すればいいだけの事。
 あと、こういう事件が起きると必ず 「通名が〜、国籍が〜」 って言う奴いるけど、そんなのどうでもよくない? シンプルに犯罪犯したら日本人だろうが外国人だろうが悪いもんは悪い。それだけのこと。

・バスの運転手さん、お疲れさまです。
 日本では憧れの職業では無いですが…残念ながら。北欧のデンマーク代表の元サッカー選手 (W杯にも出場した)、ヨルゲンセンだったと思いますが、今現在はバスの運転手ですよね。
 小さい頃からの、夢をバスとサッカーで叶えて素晴らしいと思います。一部の人からは憧れだと思いますんで…安全運転で。
ヨルゲンセンは、サッカー選手を送り迎えするバスやって夢叶える・一石二鳥じゃないが、良い仕事してますね~。

・こういう奴には従業員側も高圧的に対応して、時には制裁も辞さないくらいにした方がいいと思うぞ。世間がそれを許さないがな。

・世に職業の数は星の数ほどあるが、接客とバスの運転という仕事はまず普通の者にはできない。免許を持たない人や、老人、体の弱い方などのための公共性の高い仕事です。職場の環境を改善して、運転手さんの肉体と精神のケアをするべきです

・一般的に日本人は自分が折れることで争いごとを穏便に済ませようとする。今回の件もそう。停留所まで送るのはだけど、こういう輩は増長するから後々のことを考えたら不当な要求には断固立ち向かうべき。
 そして会社は団結して社員を守る姿勢を示してほしい。お客様だからと思考停止してはいけない。バスに乗れなくて困るのはどっちだよ

・現代では交通事情でバスが遅れるとバスの運転手が責められるおかしな時代だ、バスの運転手は何時も一生懸命走っている。日本人として我々の先祖が大切にしてきた道徳とは何かを、今、皆がよく考えるべきだ。

・最近身勝手な動機の事件が多発してるけど今回の件は一番酷い
 それにしても運転手には何も落ち度がないのに土下座してしまうのは理解できない、即会社に報告して応援を呼ぶか警察に通報するなりの対応ができないものか?

・即通報案件。
 多分100%お客が悪くても、クレームとして会社に連絡が来るといろいろ問題になるんじゃないのかな? 会社としてもお客に強く言えず、結局従業員が泣きを見る。もっと従業員を守ってあげてほしい

・寝過ごした乗客を会社と相談して送ろうとしたとのことですが、ここは毅然として断って欲しかった。普通、自分が寝過ごしたらタクシーかなんかで戻るのが普通です。こういう理不尽な要求に応えると必ずまた真似をする人が出てきます。
 日本人の感性からは考えられない事案です。

・自分が寝過ごしたのに怒る理屈がわかんない。
 私も昔レジが混んでる!っていきなりお客さんにぶたれた事があるんだけど、その時は下手すりゃ刺されるかもと思ったのでもし土下座を強要されたらするかもしれないね。

・こういう悪質で自己中心的で理不尽なクレーマーに対するなんらかの法律を制定するとか、あまりにひどい場合は鉄拳制裁可能!くらいにしていただければ、かなりこのようなできごとは減るように思うのですが・・・。とにかく立場の弱い相手に対して、このようなふるまいをする人間が増えたように思いますので。

・自分が勝手に寝過ごしただけで運転手さんは何も悪くないうえに、会社に相談して戻るという選択肢まで考慮してくれた上に戻ろうとしてくれたんでしょ
 運転手さんに感謝するべきだよ

・バスに乗せていただいているという謙虚さがない。
 本当なら、「眠り込んで乗り過ごしました」 と詫びるのは
 乗客のほうではないか。
 人の世話になったときは、ありがとうございました。
 食事の時には、いただきます・ごちそうさま。
 自分に非があったときは、すみません・失礼しました・ごめんなさい。
 こんなことは、子供でも分かるのに・・・。

・こう言う場合でも運転手は弱者であるべきなのかなぁ。言い返したら世間に叩かれる可能性もあるのかなぁ。俺には我慢出来ずにバスから引きずり下ろして二度と喋れないくらいボコるけど。

運転手、怖かっただろうな

・最近、すごいクレーマーが多くなったよ。
 世の中全体がイラついているように思える。
 何か原因があるのだろう。
 肩が触れたからと、高速で追い抜いたからと、直ぐに喧嘩になる。
 駅のホームでは、なるべく中央部分で待機するよう心掛けている。
 肩でも押されて、一生を終えるのもむなしい。笑

・タクシーの場合 起きるまでメーターは止めません。起きるように 「声」 はかけます。大半は警察で降りてもらい 料金を払ってもらいます。支払いを拒否した場合 その場で被害届出し その後 「和解」 はしません。

・朝寝坊して親に 「何で起こしてくれなかったのさ!」 って逆ギレする
 小中学生じゃないんだからさ……
 なんか大人として大丈夫か?って事案多すぎだぞ最近。

・免許持ってるけど
 これだから 路線バスの運転手に なりたくないんだよ
 強要罪になるから110番すべきです
 私なら 自分に相当の非が無い限り 土下座なんかしない
 ましてや 寝過ごして理不尽な事 抜かす奴の言う事など 聞かないし通報する

 運転手さんの 心労をお察しします
 毎日大変でしょうけど 応援しています


・トラブった段階で 即警察を呼びましょう 会社も落ち度がない運転手を守ってやらないと・・送るなんて もっての外  この種の人間をつけあがらせるだけ・・毅然としましょう

・相手の立場が分かっていて恫喝するって大抵は、反論出来ない職種や立場の人に向かって言うよね

・会社も運転手さんの言い分をよく認めてくれたね。いい会社だね。

・だから、バス運転手になりてがいなくなるんだよ。
 バスや、タクシー運転手にストレスを発散する人が多くて困る。

・こんなみっともないオッサンにはならないようにしよう…
 貧しくとも心に余裕を備えたオッサンになろう…


 運転士はなぜ土下座した、毅然とした対応をとれというコメントが数件ありましたが、同情するのが圧倒的です。
 「お客様は神様ではない」 という思考が、客・利用者の側とれにも浸透しつつあるようです。
 改善の方向として、会社が通常毅然とする姿勢を示していないと運転士はできないという要請も多く寄せられました。
 日常的に客の理不尽な行動は周囲の者たちをも不快にさせています。

 このような局面に遭遇した時どうしたらいいでしょうか。事前に労働者の心構えが必要です。
 ・自分に向けられたものだとは思い過ぎない。
 ・相手の社会に対する不満がたまたま自分に向けられていると理解する。
 ・相手の感情に巻き込まれない。弁解しない。その方が早く終了する。
 ・後で誰かにその時の状況を、感情を含めて話して聞いてもらう。
 ・終了したら休息をとる。
 ・体験を共有化する。
 トラブルが治まったからといって、何ごともなかったように業務が再開されることは解決したということにはなりません。それでは被害者である労働者の尊厳が回復されていません。対応した労働者へのいわれのない攻撃、正義感、自尊心への攻撃は放置したら傷は癒えません。身体的打撃を受けた場合はトラウマに襲われて労働が恐怖になることもあります。その結果、休職者、退職者が出てしまいます。
 会社は被害を受けた労働者の人権・人格の回復のために、他からは干渉されないで安心して心情を吐露できる場所・休憩室を確保し、時間を保障することが必要です。
 人格の回復のための心のケアには職場の同僚や仲間の支援が必要です。同僚や仲間は労働者のいい分を聞き直し、対応の正当性に共感して回復に向かわせる必要があります。そして被害者が要請する支援を受け入れ、休養を保障します。

 「こういう事件が起きると必ず 『通名が〜、国籍が〜』 って言う奴いるけど、そんなのどうでもよくない? シンプルに犯罪犯したら日本人だろうが外国人だろうが悪いもんは悪い。それだけのこと。」 のコメントがありました。
 ヘイトのコメントもたくさんありました。本質をずらして勝手に決めつけて非難します。土下座を強要した乗客の態度と同じです。
 「日本人だろうが外国人だろうが悪いもんは悪い。それだけのこと。」 です。
 同じように、52歳でアルバイト従業員ということが非難されています。しかしそれで人にレッテル張りをすることは危険です。


 この記事の近くに載っていた別の記事を転用します。
 19年3月17日付の京都新聞の社説です。

  悪質クレーム お客さまは神様、ですか
 レジの前で店員に、おじさんが大声でどなってる。
 そんな度を越したクレームを目にすることが、多くなった気がします。コンビニや駅などで 「謝れ」 と繰り返し、「アホ、バカ」 と罵倒する光景です。店員や駅員が気の毒に思えてきます。
 気をつけて書かないといけないでしょう。何も客のクレーム自体がおかしいというのではありません。クレームは本来、商品やサービスの問題を指摘し、改善を求める声です。企業や店はしっかり受け止め、改善すべきは改善する。そうすることで、商品やサービスの質は向上し、店にも客にも良い循環になります。
 ここで指摘したいのは、度を越した悪質な場合です。一部の客の行為とはいえ、放置されることで社会にまん延しかねない、という懸念です。
 労働組合UAゼンセンが2017年に、販売やレジなどの従業員にアンケート調査しました。それによると、回答のあった5万人超の7割強が悪質クレームなどの迷惑行為を受け、そのうち約9割がストレスを感じていました。
 事例を読むと深刻です。「土下座での謝罪を要求されました」 「お前なんか首にするぞ、と延々怒られました」 「3時間説教され続けました」 「殴りかかるしぐさを何度もされました」 暴言、説教、威嚇・脅迫、長時間拘束を受け、中には精神疾患になったケースもあります。近年増えている、と5割近くが答えています。
 こうした客による悪質クレームや迷惑行為は、「カスタマーハラスメント (カスハラ)」 と呼ばれ問題視されています。
 厚生労働省の審議会で、カスハラ禁止について議論されましたが、今国会に提出予定の女性活躍・ハラスメント規制法案には入りませんでした。カスハラが社内ではなく客や取引先との間で起き、労働法制での対応は難しいというのが理由です。政府は指針を作成し、企業の対応方法を示すことにしています。消費者の正当な権利を見据えつつ、悪質なクレームの具体例などを示し、従業員らを保護する手だてが求められるでしょう。
 いずれにしても、脅迫など犯罪はもちろん、社会通念上受け入れられない行為には、毅然 (きぜん) とした態度を示すことです。
 先のアンケート調査で、悪質クレームの原因について気になる回答がありました。「消費者のモラル低下」 「消費者の過剰な期待」 「ストレスのはけ口になりやすい」
 「お客さまは神様です」 という言葉を都合よく受け止め、消費者なら何でも許されるという誤った特権意識に陥っていないでしょうか。加えて社会全体が不寛容になっていることも背景にあるように思えます。
 正当なクレームが時に感情のコントロールを失って、罵倒に変質してしまう。あり得ることです。商品やサービスに問題があれば、冷静に指摘し、改善を求めればいいのです。
 胸に手を当てて、自身の態度を見つめ直してみました。

 「職場の暴力」
 「活動報告」 2018.1.23
 「活動報告」 2016.9.27
 「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」 ホームページ・ご相談はこちらから
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「私どもの嘆願は、かほどまで迫害されねばならぬほどのものでしようか」
2019/07/23(Tue)
 7月23日 (火)

 連日、吉本興行の問題が放映されています。時間が経つとともに企業体質が見えてきます。まともな組織と呼べません。
 社長の記者会見で、記者が 「記者会見をしたら全員クビだ」 の発言について質問しました。
「パワハラにあたると思いませんか」
「そのような認識はありません」
「パワハラだと認識しませんか」
「ファミリーだと思っているので冗談のつもりでいった」
 記者がさらにくいさがります。
「パワハラでないんですか」
「相手がそう受け取ったらそうなんでしょう」
 人間関係が崩れているなかでクビを通告しても 「相手がそう受け取ったらそうなんでしょう」 としか認めません。
 記者会見という分が悪い局面だから認めるふりをしましたが、“自分はそう思わない” と居直ります。

 似たようなやりとりは、団体交渉でもあります。平行線が続きます。
 あるときは、会社側弁護士は 「パワハラの定義を言ってみろ」 と反論してきました。そして 「該当しない」 と居直ります。
 ハラスメントの二次被害が発生します。

 パワハラは定義に沿った行為だけをいうのではありません。相手が感情を害したと受け取ったらそうです。パワハラは 「概念」 です。そもそもお互いが違う人格を持つ労働者の感情を定義で判断することなどできません。定義を引きずり出して狭く解釈する必要はありません。
 今回成立した 「パワハラ防止法」 のパワハラの定義 (概念) は以前よりも狭められました。さらに罰則規定がありません。
 パワハラが起きた (起こしてしまった) ときは、定義の解釈ではなく、 職場環境の点検に立ち帰って問題にしないと再発します。


 記者会見では、もうひとつ、 「ファミリー」 という言葉が飛び交いました。
 ファミリーとは何でしょうか。

 13年2月5日の 「活動報告」 のコピーです。

 現在の企業別組合を戦前は “縦の組合” と呼びました。最初にそう呼んだのは床次竹二郎内務相だったといわれます。
 第一次世界大戦の後、拡大した労働運動への対策として、家族関係にみたてた温情主義の労務管理による労使の意思疎通をめざして奨励しました。
「労働者の組合を同業の関係で大きくつくる代わりに、1工場、1鉱山、1仕事場という狭い範囲で職長も組長も工場長も技師も、ないしは支配人も社長も、ことごとく組合に取り込む仕組みをいう」 (『労働』 20年2月号の鈴木文治論文)

 1980年代頃から、海外に進出した日本企業は現地で一企業一組合の労働組合を組織しました。イギリスなどでは職能別組合が横断的に組織されていましたが日本企業を真似た組合が組織され、“シングルユニオン” と呼ばれましたがその元祖です。

 この “縦の組合” を早くから進めていたのが1886年11月に創立、その後紡績会社を合併・吸収していった鐘淵紡績です。女工が他の工場に移動、逃亡するのを防ぎ、企業への帰属意識を高めて長く留まらせる方法として考え出されました。
 社長の武藤山治は、工場経営の極意を 「修繕費を惜しまず、機械の保全を完全にすること、これを扱う男女工を優遇し、教育をほどこし、自然にすすんで働くようにすること」 と語っていました。
 労働意欲を刺激するために臨時物価手当、家族手当、勤続賞与、皆勤賞与などを支給。定着化がすすむと勤続の長さに応じた賃金体系を成立させます。「家族主義」、「温情主義」 の、いわゆる鐘紡的労務管理方式と呼ばれました
 1900年には、「職工救済奨励及懲罰規則」 の整備を行い、職工の就業中の負傷に対する会社からの救済金を定めました。共済組合による給付の始まりといわれます。
 ちなみに武藤社長は19年秋、ワシントンで開かれたILO第1回国際労働会議に日本からの使用者側代表として出席しています。
 対抗して “横の組合 (産業別組合)” をすすめる労働者は “縦の組合” を “御用組合” といって批判しました。
 しかし総同盟その他の労働組合は、鐘紡の労務管理を批判してオルグ活動を続けましたが歯が立たなかったといいます。
 1930年には36工場、36800人の従業員を擁する最大の紡績会社に発展し、しかも争議ゼロを誇っていました。しかし賃下げを発表すると争議が開始されます。


 “縦の組合” は、戦時中に 「産業報国会」 となります。
 そして戦後はその産業報国会を母体に労働組合が結成されていきます。
 日本の戦後の労使関係の特徴は 「年功序列」、「終身雇用」、「企業内組合」 と言われますがその原型は戦前にありました。
 戦争直後の労働争議を経るとさらに強固な労使関係の “絆” になりました。労働組合は成果の分配を経営福祉主義で要求します。
 企業城下町に住み分けられた労働者は、社宅を保障されたり、住宅ローンを斡旋されたりしました。病院や保育園、保養所も完備されました。労働者はゆりかごから墓場まで企業に依存しました。だから 「企業戦士」 にもなれます。実際は心身、生活のすべてを企業に絡め取られてしまっていたのです。
 不況になると、下請、子会社などのヒエラルヒーの下から合理化がすすめられます。しがらみの中で抵抗力を奪われていました。
 ファミリーは昔も今も危険です。


 鐘紡的労務管理方式を完成させた武藤が反面教師としたのが他の製糸工場、紡績工場です。
 長野県岡谷市の製糸工場の争議についての18年8月24日の 「活動報告」 のコピーです。

 岡谷市は明治維新以降、製糸工場で栄えました。日本は生糸を輸出して外貨を獲得し、兵器を購入して富国強兵を推し進めます。まさしく製糸工場の女工たちの下支えが戦争遂行を可能にしていました。しかしその労働条件は過酷そのものでした。

 岡谷、製糸工場というとすぐ思い出されるのが聞き取り調査のドキュメント・山本茂実著の 『あゝ野麦峠』 です。
 毎年2月になると、小学4年を終えた12歳の子どもたちの集団が飛騨地方から野麦峠をこえ、諏訪地方の製糸工場に働きに来ます。
 『本』 に政井みねが登場します。
 岐阜県吉城郡河合村角川生まれのみねは1903年 (明治36年) 2月、口減らしのため野麦峠を越えて信州の岡谷の製糸工場山安足立組で働くことになります。そこでは寄宿舎生活です。

「そもそも繊維資本が、寄宿舎の付設に力を入れたのは、女工に快適な宿舎を提供するというより、労働力を確保し、労務対策にそれを利用するところにねらいがありました。というのは、寄宿舎はまず女工の出勤督励に好都合です。長時間労働、とくに深夜業のばあいは、欠勤者が多く、必要労働力をなかなか確保できませんが、寄宿舎はその点、労働者をいやおうなしにかり出すのに便利でした。次に寄宿舎は、女工の移動や逃亡が頻発する 『状況』 のもとでは、それを防止する 『城砦』 の役割をはたしました。」

 三年後、みねは 「百円工女」と云われた模範工女になっていました。逆に、毎日の検査で一定基準に合格しない場合は給金から罰金が差引かれました。賃金格差はこの頃から始まりました
 1908年、アメリカに不況が訪れ、その影響は岡谷にも押し寄せます。倒産から逃れるには、国内向けの生糸を安く生産しなければならず、労働条件・環境は日増しに悪化します。

 寄宿舎には外から鍵がかけられていました。
 しかし、過酷な労働にたえられなかった女工の逃亡は続きます。『あゝ野麦峠』 にも書かれていますが、諏訪湖に入水したり、鉄道に飛び込む女工があとを絶ちませんでした。「湖水に飛び込む工女の亡骸で諏訪湖が浅くなった」 といわれました。いまも諏訪湖畔にはその遺体が埋められた跡に乗せたと思われる石が見かけられるそうです。
 このような状況にあって、1926年、キリスト教関係の女性社会事業家は長野県諏訪湖畔に 「母の家」 を建て、自殺防止のために湖畔や線路わきに20数本の立札をたてながら巡回し、工女たちを絶望の淵から救う活動をつづけました。立札には 「ちょっとお待ち、思案に余らば母の家」 と書かれていました。今のJR岡谷駅近くの諏訪湖畔です。


「製糸業は、……昭和五年前後に多条繰糸機が導入されるまでは、良質の糸をどれだけたくさん取れるかは、もっぱら女工の手先の熟練度に依存していたといっても過言ではない。そのため製糸家は女工を低賃金で、しかも長時間にわたって働かせることができるような賃金制度を考案し、能率上昇による利益はすべて自分のふところに入るような、絶妙な等級賃金制なるものを導入した
 この等級賃金制というのは、繰目・糸目・デニール・光沢などについて工場全体の平均を決定し、その平均より上位の者から順に一等、二等というように順位をつけ、その等級の高低にしたがって賃金の多寡をきめる賃金制度である。工場によっては、これを五〇等級にまで細分しているところもあった。……
 この等級制度の巧妙な点は、製糸女工全体に払う賃金総額をあらかじめ固定し、決定してあることである。つまり、すでにあたえられた賃金総額を、女工を相互に競争させることによって取りあいさせるわけである。1人がいっしょうけんめい働いたとしても、他人もそれにおとらず働けばそれだけ平均点が上昇するから、いっしょうけんめい働いたぶんだけ賃金も上がるというわけにはゆかない。とくになまけたということでなくとも、日々精進しないかぎり、むしろ等級=賃金はさがってしまうことになる。……
 この制度のもとでは、つねに他人以上に働いていないと自己の賃金が低下するという危険に、女工はたえず怯えていなければならない。しかも、資本家は意識的に優秀な女工を優等女工・一等女工としてもてはやした。身体を酷使できる若い娘たちにとって、この賃金制度は残酷なまでに効果的であった。……こうして、娘たちは長時間の労働もいとわず、なんとかして点数をあげようと必死の努力をする。等級賃金制は、別名 『共食い制度』 といわれて、女工たちはおたがいを食いあいながら、身の細るようなはげしい労働を強制されたのである
 さらに工場主は賞旗をつくり、毎日または毎月末に書く検番の監督下にある女工の成績を評定して、もっともよい成績をあげた検番にこの賞旗をあたえるなど、検番の競争心をあおることによって、女工の競争を奨励したりした。」

 現在の成果主義賃金制度そっくりの実態が存在しています。

 1927年ころ岡谷では200有余の工場に約4万人の製糸労働者が働いていました。
 3月、諏訪湖の近くの岡谷町にある合名会社林組 (山一林組) 製糸所で、日本労働総同盟加盟の全日本製糸労働組合が誕生します。組合結成後、女工たちは歌をうたいながら街をデモ行進します。
 8月28日、日本労働総同盟全日本製糸労働組合の山一林組の従業員を主体に結成している第15支部が嘆願書を提出します。
「一、労働組合ノ加入ノ自由ヲ認メテ下サイ。……
 七、従来ノ賃金ガ一般工場ヨリ非常ニ低廉ナルガ故ニ、私共ノ生活ハ困難ガアリマス。
  可憐ナ私共ノ為ニ左ニ記シマシタ賃金ヲ与ヘテ下サル様願ヒマス。……」
 29日、会社側代表と争議団代表が交渉に入りますが決裂、30日午前10時、争議団は総罷業断行を通告して1213人の女工が突入します。
 罷業心得が渡されます。
「一、組合員は機械の回転を絶対に止めぬこと。
 一、意のままにならぬ故に、工場器具の破壊を絶対にせざること。
 一、暴言を吐き、不徳の行動に出づることを禁ず。
 一、組合員、会社側より呼び出された場合は部長に届出、決して一人にて出席
  せざること。出席の場合は五人以上とし、男子役員を同伴すること。」
 組合員の粗暴を戒め、倫理的退廃を防ぎ、会社側の切り崩しを警戒しながら内部の結束を固めることを考慮しています。
 会社側は就業希望者を募集しますが申し出たのは16人です。そこで会社は女工の出身家庭にストライキを続けるなら辞めてもらうしかないという内容のはがきを送付します。
 そのことを知った組合は、9月3日、謄写版刷りの父母あての手紙を作成し、女工各自の署名を付して送付します。
 4日には大規模なデモンストレーションが敢行されます。デモは大きな自信と勇気を与えました。争議団への支援も活発になっていきます。

 9月6日、会社側は反撃に出ます。警察署に取締りを依頼し、警察官と組合員との間に小競り合いが始まり、組合員から逮捕者も出ます。
 7日、会社側は工場閉鎖を声明、さらに寄宿舎の明け渡しと貯金・賃金の清算を組合側に通告します。
 12日、会社側は追い打ちをかけて本店工場の炊事場閉鎖を決行、さらに組合員が外出していた隙をねらって寄宿舎から排除します。
 この後は、組合幹部の寝返りをうって組合員を帰省させたり、行方不明になる幹部も生まれました。
 ストライキ14日目、闘争本部は労働者を映画館につれ出します。そのすきに会社は寄宿舎を閉鎖します。
 労働者たちは闘争本部と 「母の家」 に分宿します。

 17日、ストライキ19日目、女子労働者47人が踏みとどまっていましたが、再会を誓って故郷に帰ることとし、争議団は解散します。18日間の闘争は終了します。
 争議団は最後の声明を出しました。
「私ども18日間の努力も空しく、遂に一時休戦のやむなきにいたりました。思えば私どもの惨目(みじめ)な工場の待遇を改善して、人間らしき生活を呼び来たらすためには、私ども自身の力をまつよりほかに何物もないことを痛感いたします。私どもの嘆願は、かほどまでにあらゆる権力で迫害されねばならぬほどのものであるでしようか
 夜を日についで糸繰る私どものあのわずかな嘆願は、資本家と官憲とが袋叩きにせねばならぬものでしょうか。私どもの正々堂々たる争議のどこに、内乱を取締るがごとき取締りの必要があつたでしようか。私どもは泣きました
 初めてこの社会の虚偽を深刻に知つたからであります。強きをくじき弱きを助くる日本人の義侠心は、少くとも岡谷では滅びました。しかしながら、私どもは屈しませぬ。いかに権力や金力が偉大でありましても、私どもは労働者の人格権を確立するまでは、ひるまずたゆまずたたかいつづけます。私どもは絶望しませぬ。最後の勝利を信ずるがゆえであります。
 おわりに私どもは、激励し、援助下さつた多くの人々にたいし、厚く感謝します。なお、資本家および官憲諸士にたいしては、人として、国民として人間を解し、真に恥を知られるよう勧告いたします。」

 争議が終った翌18日付の 『信濃毎日新聞』 の社説のタイトルは 「労働争議の教訓」 です。
初めに人間があり、人間の生活がある。そして終りも亦人間と、生活とで在る。これが人間史の全部である。/ 人間生活のあるところ、そこにありとしある生活資料の生産がある。(中略)注意せよ。生産方法在つて生活在るのではない。生活在つて而して生産方法があるのである。従つて生産の方法と態様とは人間のものなのであって、決つしてその逆ではないのだ。(中略)然るに岡谷に於いては、それが全く逆転してゐるのだ。人間史が、人間生活が、理論的にも現実的にも転倒してゐるのだ。それこそ製糸の街岡谷の、製糸家の、人間としての欠陥である。(中略) / 二旬に亘る女工達のあの悪戦苦闘、それはそもそも何のための苦しみ、何のための闘ひであったか。いふまでもなく、それは生産方法における一手段、即ち生産用具たるの地位から、本然の人間に立ち戻らんとする彼等の努力の表現に外ならなかった。(中略)/ 女工達は繭よりも、繰糸わくよりも、そして彼等の手から繰りだされる美しい糸よりも、自分達の方がはるかに尊い存在であることを識つたのだ。(中略)彼等は人間生活への道を、製糸家よりも一歩先に踏み出した。先んずるものの道の険しきが故に、山一林組の女工達は製糸家との悪戦苦闘の後、ひとまづ破れた。(中略) とはいへ、人間への途はなほ燦然たる輝きを失ふものではない。/ 歴史がその足を止めない限り、そして人間生活への道が、その燦然たる光を失はない限り、退いた女工達は、永久に眠ることをしないだらう。」

 声明も、新聞社説も 「労働者宣言」 とも呼べるものです。


 吉本興行所属タレントの行動が、最低賃金以下の労働を強いられる奴隷労働からの脱出のための 「人間宣言」 になることを期待します。

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「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」 (素案) に罰則規定
2019/07/02(Tue)
 7月2日 (火)

 6月19日、川崎市の福田市長はヘイトスピーチの規制にむけて 「あらゆる差別を許さない決意を持ち、差別の根絶を目指す。多様な人々が暮らす市にふさわしい条例になるよう市民の総意でつくりあげていく」 と決意を表明しました。

 この表明をふまえ、6月24日、川崎市は市議会文教委員会にあらゆる差別を禁止し、根絶を図る 「(仮称) 川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」 (素案) を公表しました。
 素案はすべての市民が生き生きと暮らせるまちづくりを掲げ、人種や国籍、民族、性的指向、出身、障害などを理由にした差別の禁止を明示します。ヘイトスピーチに関しては在日コリアン集住地区の川崎区桜本を標的にしたヘイトデモがふたたび行われる恐れが続いていると判断し、実効性を確保するために刑事罰を導入します。導入に当たっては正当な表現行為を侵害しないよう配慮します。
 
 取り組みの推進としては、「何人も、市の区域内の道路、公園、広場、駅その他の公共の場所において、次に該当する 『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』 を行い、又は行わせてはならない。」 とします。その ≪類型≫ として、◎特定の国若しくは地域の出身である者又はその子孫 (以下 「特定国出身者等」 という。) を、本邦の域外へ退去させることをあおり、又は告知するもの ◎特定国出身者等の生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加えることをあおり、又は告知する もの ◎ 特定国出身者等を著しく侮蔑するもの、≪手段≫ として、◎拡声機を使用する ◎看板、プラカード等を掲示する ◎ビラ、パンフレット等を配布する ◎多数の者が一斉に大声で連呼する をあげています。
 運用面では、市長による勧告、命令と段階を踏み、それでも従わなかった場合に氏名の公表と罰則に踏み切ります。条例違反として市が検察か警察に告発する形を取るほか、恣意 (しい) 的な判断とならないよう勧告、命令の際は有識者でつくる 「差別防止対策等審査会」 に意見聴取します。
 成立すれば全国で被害が続くヘイトスピーチへの刑事規制が初めて実現します。「50万円以下の罰金に処する。また、法人等の場合には、行為者を罰するほか、法人等も罰する (両罰規定)。」。罰金額は刑法の名誉毀損 (きそん) 罪や県迷惑行為防止条例を参考にしました。
 インターネット上のヘイトスピーチは罰金の対象外ですが、事例の公表や削除要請などの拡散防止措置を行います。

 このほかに ▽市と市民、事業者の責務 ▽差別解消・人権尊重に関する施策の基本計画策定 ▽教育・啓発の推進 ▽人権侵害の被害者支援、も盛り込みます。
 市は7月8日から8月9日まで市民の意見を募るパブリックコメント (意見公募) を実施。12月議会で成立させ、同月下旬に一部を施行、2020年7月に罰則を含めた全面施行にするとしています。

 川崎市は、去年3月に、ヘイトスピーチに公共施設が悪用されるのを防ぐため、事前に規制することを盛り込んだ 「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に基づく 『公の施設』 利用許可に関するガイドライン」 施行しました。しかし、実効性の面で課題があるとして、条例に罰則を設けるよう求める声が上がっていました。


 2016年は、「解消」 をうたう3つの法律が制定・施行されました。4月1日に 「障害者差別解消法」、6月3日に 「ヘイトスピーチ解消法」、12月16日に 「部落差別解消推進法」 です。2020年の東京オリンピック開催をひかえ、人権問題への取り組みが世界から後れをとっていることを放置できませんでした。
 しかしいずれも理念法で禁止条項がなく、その実効性のある救済手続きには疑問がありました。

 ヘイトスピーチ解消法 (「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」) です。
「一 前文
 我が国においては、近年、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、適法に居住するその出身者又はその子孫を、我が国の地域社会から排除することを煽 (せん) 動する不当な差別的言動が行われ、その出身者又はその子孫が多大な苦痛を強いられるとともに、当該地域社会に深刻な亀裂を生じさせている。・・・
 ここに、このような不当な差別的言動は許されないことを宣言するとともに、更なる人権教育と人権啓発などを通じて、国民に周知を図り、その理解と協力を得つつ、不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進すべく、この法律を制定する。
二 総則
 1 定義
 この法律において 『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』 とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの (以下1において 『本邦外出身者』 という。) に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。
 2 基本理念
 国民は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性に対する理解を深めるとともに、本邦外出身者に対する不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならない。
 3 国及び地方公共団体の責務
三 基本的施策
 基本的施策として、国は、相談体制の整備、教育の充実等及び啓発活動等を実施することとし、地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、これらの基本的施策を実施するよう努めることとする。」

 法案成立に際しては、「本邦外出身者」 以外のマイノリティーの人たち、例えばオーバーステイの人びとや、アイヌ民族などが対象外になっていることが指摘され、付帯決議に憲法や人種差別撤廃条約の精神にかんがみた適切な対処が盛り込まれました。
 川崎市の条例 (素案) には 「人種や国籍、民族、性的指向、出身、障害などを理由にした差別の禁止」 と明記されています。
この点でも評価できます。全国に広げていく必要があります。
 付帯決議には、インターネットを通じて行われる不当な差別的言動を助長したり、誘発する行為についても、解消に向けた施策を実施することが盛り込まれました。しかしながら、差別を扇動するサイトの規制は、もとのサイトが削除されてもミラー・サイトが規制の及ばない国に置かれたりと、現行法での対応には難しいものがあることも確かです。

 それでも、インターネットによる部落差別の解消にむけた取り組みは開始されています。(6月4日の 「活動報告」 参照)

 1月16日、川崎簡易裁判所は、昨年12月に神奈川検察が、インターネットの匿名ブログで在日コリアンの高校生の実名を公開して嫌悪発言をしたとして侮辱罪の容疑で略式起訴した大分市に住む日本人男性 (66) に対して9千円の科料を課する略式命令を下していたことを高校生の代理人弁護士が会見で明らかにしました。
 日本人男性は、昨年1月、在日韓国人を 「バクテリアのようだ。悪性外来妓生生物」 と中傷しました。高校生は、昨年7月ブログ管理会社に日本人男性の情報を開示請求して告訴しました。
 インターネット上のヘイトスピーチが日本国内で侮辱罪と処罰されたのは初めてです。


 18年1月20日の毎日新聞は 「EU ヘイト投稿7割削除 運営企業、外部通報に迅速対応」 の見出し記事を載せました。
「【ブリュッセル八田浩輔】 欧州連合 (EU) の欧州委員会は19日、インターネットで差別や憎悪を扇動する違法な 『ヘイトスピーチ』 を巡り、ソーシャルメディアの運営企業が、外部から通報を受けた投稿の7割を削除していたとの調査結果をまとめた。ネット上のヘイト対策を巡り、法規制を導入する加盟国も出る中、欧州委は企業の自主努力に委ねる方針を示す。
 欧州委とフェイスブックやツイッターなどIT大手4社は2016年5月、ネット上のヘイトスピーチ拡散を防ぐための行動指針に合意した。利用者などから通報を受けた書き込みについて、内容を24時間以内に確認し、必要なら速やかに削除を求めている。
 欧州委の調査はこの指針に基づくもので、民間の監視組織などから通報を受けた運営元が削除した投稿の割合は、16年12月には平均28%だったが、今回は70%に上昇。通報分の8割以上は24時間以内に検証を始めていた。対象となった分野は特定の民族、反イスラム、移民を含む外国人———の順に多かった。
 司法担当のヨウロワー欧州委員は同日、企業側にさらなる努力を促す一方、『指針は違法なコンテンツに迅速、効果的に取り組む手段になっている』 と評価し、新たな法的規制の導入には慎重な見方を示した。
 一方、ドイツはソーシャルメディアの運営企業を対象に、ヘイトスピーチなど違法な投稿を放置した場合、最大5000万ユーロ (約67億5000万円) の罰金を科すことができる新法を今年施行した。表現の自由を損なう可能性もあるとして法規制には批判も根強い。
 欧州ではヘイトスピーチ以外にも、過激派組織 「イスラム国」 (IS) が戦闘員の勧誘やプロパガンダの拡散に用いたことで、ソーシャルメディアの運用元への圧力が強まった。各社は人工知能 (AI) で違法な書き込みを検知するための取り組みも進めている。」

 IT大手4社のフェイスブック、ツイッター、マイクロソフト、グーグル (You Tubeを運営) 各社は、こうしたサイトをモニターする市民団体との連携を進めるとしています。
 ヘイトに抗する、「実効性」 ある取り組みが、市民を含めた多様な主体によって、多様な方法で進められることを日本でも大いに期待されます。


 6月26日の日経新聞に 「ヘイト投稿者情報の提出、フェイスブックが仏と合意」 の見出し記事が載りました。
「【シリコンバレー=中西豊紀】 米フェイスブックがヘイトスピーチにまつわる投稿をしたユーザーについて、個人情報をフランス政府に提出することで合意したことが25日分かった。仏政府はテロや暴力に関する書き込みでユーザー情報を得ていたが、この範囲を広げる。ネット業界は長く 『表現の自由』 を重視してきたが、相次ぐ不祥事で政府の介入姿勢が強まっている。
 マクロン仏大統領のもとでデジタル担当長官をつとめるセドリック・オ氏が自身のツイッターを通じて発表した。他者を糾弾するようなヘイトスピーチで政府が問題があると判断した場合、フェイスブックはユーザーのIPアドレスや個人情報を司法関係部局に提出するという。投稿の発信元の特定にフェイスブックが協力することになる。
 セドリック氏はツイートとあわせてロイター通信の取材に応じ 『フェイスブックがヘイト関連のユーザー情報を提供するのはフランスに対してだけだ。非常に重要なことだ』 と述べた。
 フェイスブックは日本経済新聞社に対し 『犯罪的なヘイトスピーチについて、今後は (手続きが煩雑で時間がかかる) 刑事共助条約に照らさずに仏政府の情報請求に応じていくことになる』 とコメントした。一方で 『米国を含め司法当局からの要請はすべて精査のうえ、人道上あるいは合法的におかしいものには対応しない』 との考えを強調した。」

 課題はあります。しかし企業倫理、責任も含めて 「グローバルな規制が必要」 な時代になっています。
 
 日本でも差別発言・扇動も 「表現の自由」 という主張があります。
 しかし表現の自由は、基本的人権を守るためのものであって、傷つけ、否定するためのものではありません。基本的人権に国教、民族の壁などありません、基本的人権を守らない表現の自由などありません。
 取り組むか否かは政府の姿勢いかんです。

  「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」 (素案)
  「活動報告」 2019.6.4
  「活動報告」 2018.9.4
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『人間に光あれ』
2019/06/04(Tue)
 6月4日 (火)

 中山武敏弁護士が自伝 『人間に光あれ』 (花伝社) を出版しました。
 「人間に光あれ」 は水平社結成のときに発せられた 「水平社宣言」 の結びからとったものであることはわかります。起草者の西光万吉はお寺の息子で、「人間」 は仏教では 「じんかん」 と読み、人と人の間に平等に光があたるようにという思いを込めたといいます。その手前のフレーズは 「人の世に熱あれ」 です。
 中山弁護士は福岡県筑豊地域の被差別部落出身で、一貫して部落差別撤廃、差別反対の活動をつづけています。

 1971年に弁護士になります。まもなく狭山事件の2審が東京高裁で開始されますが弁護団事務局長につきます。裁判方針は、真犯人を探し出すのではなく、部落差別を利用して仕組まれた冤罪事件と位置付けます。
 当時、東京高裁は現在の検察庁のところにあり、道路をはさんだ日比谷公園の現在の健康公園は小公園で、よく裁判に関係する集会が開かれました。
 狭山事件の裁判が開催されるたびに全国から部落解放同盟員と支援者が駆けつけ小公園を中心に日比谷公園全体に座り込み、分かれて集会をしながら見守りました。労働組合や大学自治会でストを打って参加したところもありました。最高で10万人が参集したといわれます。
 中山弁護士は、裁判の途中集会に参加し裁判闘争の意義と法廷の状況を報告し、いつも最後に 「私も部落出身の弁護士として部落差別ゆえにでっち上げられた石川一雄さんの無罪を勝ち取るために最後まで頑張ります」 と締めくくりました。
 それから40数年が過ぎました。狭山再審事件主任弁護人についていますがまだ再審を勝ち取れていません。国家権力は部落差別を認めません。壁は本当に厚いです。

 狭山事件以外では、東京大空襲訴訟、重慶大爆撃訴訟、そして 『真実 私は 「捏造記者」 ではない』 の植村訴訟などの弁護団団長についています。
 『真実 私は「捏造記者」 ではない』 に中山弁護士のことが書かれていますが、『人間に光あれ』 に引用されています。
「『君を応援したいという弁護士がいる』。2014年10月3日、上京中の私に友人のジャーナリストから電話があり、こう告げられた。ちょっと、びっくりした。これまで、弁護士には自分から相談に行くものだと思っていたからだ。どんな弁護士だろう。2日後の5日、日曜日午後9時、JR秋葉原駅内の喫茶店で、その弁護士と会った。約束の時間通りに到着したが、初老の弁護士はすでに喫茶店の隅で私を待っていた。
 ・・・
 『あなたは日本の民主主義の宝です』。意外な言葉に驚き、恥ずかしくなった。私が 『慰安部』 問題で他紙に先駆けて記事を書いたことを評価したうえで、励ましてくれたのだろう。闇の中で、一筋の光をみたような気がした。
 『この人となら闘える』 と直感的に思った。手を握らせてもった。温かな手をしていた。朝の喫茶店には、ほかにもお客さんがいたが、涙が止まらなかった。
 それが中山武敏弁護士との初めての出会いであった。」

「のちに中山弁護士が私に一冊の絵本を送ってくれた。『ばあちゃんのリヤカー』 (福岡県人権研究所、2015年8月発行) という題名で、中山弁護士の母・中山コイトさんが部落差別と闘いながら、廃品回収業を続け、二男の中山弁護士ら3人の息子を育てた記録だ。父親の重夫さんは、部落解放運動に生涯をかけた。その解説文で、中山弁護士は父親のことを書いている。 
『父は中国戦線の経験から、部落解放運動や平和運動に関わり、中でも子どもたちが部落差別に負けないようにするためにと、日本国憲法の 『国民の権利』 の条文を壁に貼って、毎日私たちに暗唱させました。特に 『第14条 法の下の平等』 の規定は私の心を強くとらえました。(中略) 狭山事件にかかわることは、父親の日本国憲法に対する思いを引き継いだ私の弁護士としての使命であると考えています』」

「4回目の会議で、中山弁護士が植村弁護団の団長になることが決まった。私を支援する弁護士たちもまたネットなどでバッシングされる可能性は大きい。『大丈夫ですか』 と尋ねる私に、中山弁護士は 『私はもう9月に墓石を作りました』 と意外な言葉を発し、私の取材ノートにこう書いてくれた。
『人ハ只一生ニ死有リ 生ヲ得テ異議ヲ要シ 死ヲ得テ価値有リ』
 『中国の新民主革命の活動家の詩で、父が死去の際に書き残していたものです。父と私の座右の銘です』 と中山弁護士は言った。一度だけの人生、意義のある生き方をしたいという意味だろう。」


 16年12月、「部落差別の解消の推進に関する法律」 が施行されました。罰則のない理念法です。
 しかし改めて法律が制定されなければならないほどひどい実態があります。

 かつては、被差別部落の地名をまとめた 『部落地名総監』 が企業などに売られ、身元調査に使われていました。これに対して発売元や購入先への抗議行動がおこなわれました。 
 最近はネットへの書き込みに代わっています。本人も自覚がないのに郵便物が届くなどの嫌がらせや脅しがおこなわれるようになりました。

 18年3月18日の朝日新聞は、見出し記事 「ネットの部落差別『いたちごっこ』 監視続ける自治体 香川県内における差別書き込み監視の実績」 を載せました。
「インターネットへの部落差別の書き込みを香川県内の自治体がモニタリング (監視) している。掲示板の管理運営者への削除依頼はこれまでの15年間で約1460件にのぼるが、実際に削除されたのは半数程度にとどまる。ネットの悪用による差別の深刻化を背景に、部落差別解消推進法が施行されて1年あまり。被害の実態把握や対策が課題になっている。
 監視は、県と全17市町、民間団体でつくる県人権啓発推進会議が2003年6月に始めた。県人権・同和政策課と市町の人権担当課職員が監視班を構成。SNSも含めると対象が膨大になるため、三つの掲示板に絞って監視している。
 県内の同和地区への言及があるスレッドを少なくとも週2回はチェック。個人のプライバシーを侵害▽他人を誹謗 (ひぼう) 中傷▽差別を助長する、といったおそれがある書き込みを見つけると、班内で協議し、掲示板の削除依頼方法に従って要請する。具体的には、県内の同和地区名をあげたり、県内の同和地区について語るなかで差別的な言葉や個人名を書いたりしているものが対象になるという。

 削除依頼は06年度の342件をピークに減少傾向にあり、県の担当者は 『監視による抑止効果が一定は出ている』 とみている。だが、『書き込みが止まったと思ったら別のスレッドができることもあり、いたちごっこのような感じはある』。
 また、これまでの削除依頼計1462件のうち、実際に削除されたのは約47%の692件。独自のガイドラインに基づいて削除が進む掲示板もあれば、ほとんど削除実績のない掲示板もあるという。県は 『自治体単位での監視には限界がある。削除基準を国レベルで検討してもらい、全国の自治体で一律に取り組めばより大きな効果が期待できる』 と話す。

 こうしたモニタリング事業は奈良県内全市町村でつくる 『啓発連協』、三重県、兵庫県尼崎市、伊丹市、広島県福山市などでも実施されている。いずれも各自治体に関する記述を中心にキーワード検索などで監視。法務局と相談しながら削除依頼をするところもある。・・・
 法施行を受け、兵庫、鳥取県も新たに18年度からモニタリングを始める。兵庫では、検索の方法や削除依頼の判断のポイントを習得してもらうため、県内市町職員を対象にした研修にも取り組むという。」


 ごく最近では、今夏の参院選に日本維新の会公認で比例区から立候補を予定している元フジテレビアナウンサーが2月に差別を助長する発言をしたとして、部落解放同盟から抗議を受けました。
 抗議文によると、講演で、江戸時代の被差別民について、身分を示す差別的な呼称で取り上げ 「人間以下と設定された人たちも、性欲などがあります。当然、乱暴なども働きます」 と指摘。被差別民が集団で女性や子どもに暴行しようとした時、侍は刀で守ったという話をしたといいます。
 部落解放同盟は 「史実を無視し、偏見に基づき江戸時代の被差別民が暴力的で、犯罪集団であるとの前提で話をしている。差別意識を助長する行為だ」 としています。
 本人は、公式ホームページに 「私自身の 『潜在意識にある予断と偏見』 『人権意識の欠如』 『差別問題解決へ向けた自覚の欠如』に起因する、とんでもない発言」 と認め、「謝罪するとともに、完全撤回させてください」 と陳謝するコメントを掲載しました。

 発現は 「潜在意識にある予断と偏見」 「人権意識の欠如」 からではありません。完全なる意図した捏造です。「差別問題解決へ向けた自覚の欠如」 ではなく差別を煽っています。許される行為だと確信しているからできます。指摘されなければ、選挙が近くなければ居直り続けたでしょう。
 人びとの差別意識を煽り、分断を進めようとしています。


 狭山事件のような 「捏造」 ではない本当の話です。
 狭山事件の一審裁判で、取調官から懐柔された石川一雄さんは 「犯行」 を認めます。弁護士も情状酌量を求めて死刑を回避しようとします。
 2審になると石川さんは 「俺はやっていない」 と主張します。その時から弁護方針は変わります。
 ちょうど部落差別の問題を巡って解放同盟とは対立を深めます。その影響は弁護団、支援者にもおよびます。
 支援を続けていた高校生は謀政党の関連組織の会議に参加すると、狭山事件の支援を止めるよう、部落解放同盟は暴力集団だから襲われる危険性もあると通告されます。
 しかし支援したい気持ちを抑えることができず、裁判が開かれている日の日比谷公園の集会をのぞきに行きました。そこには黄色いゼッケンをつけた部落解放同盟の人たちが無罪を確信してじっと高裁を見つめて座り込んでいました。この光景を目にしたとき、この人たちは暴力を振るわない、この人たちはずっと差別に虐げられてきた、狭山事件はそのような中で作られたのだと確信したといいます。
 その後は組織をやめて支援をつづけます。
 差別されている人びとをさらに差別し、排除して差別は強化されていきます。その状況は今もあります。


 今年1月24日の朝日新聞は、見出し記事 「部落差別解消、福岡県が条例改正へ 法制定受け全国初」 を載せました。
「2016年の部落差別解消推進法制定を受け、福岡県は2月県議会に、関連条例の改正案を提出する。結婚や就職の際に同和地区での居住歴の調査をやめるよう知事が勧告できる事業者の範囲を県外にも広げた。県や部落解放同盟中央本部によると、法制定を受けた都道府県条例の制定や改正は初めてになるという。
 改正案は従来の 『県部落差別事象の発生の防止に関する条例』 を大幅に変える内容。条例の名称も 『県部落差別の解消の推進に関する条例』 とする。
 従来の条例と同様に、同和地区に住んでいたり、過去に住んでいたりしたことを理由とした結婚や就職での差別の防止を規定。同和地区での居住に関する調査や調査の依頼などを禁じる点は同じだが、知事が調査中止などを勧告できる対象事業者を 『県内』 に限っていた規定を変え、県外事業者も対象に含めた。また、調査を依頼した事業者にも勧告ができるようにした。
 このほか、部落差別解消のため、知事が必要に応じて、学識経験者らでつくる協議会の意見を聴く規定も新設した。」

 国・各自治体は積極的に 「部落差別の解消の推進に関する法律」 を活用していかなければなりません。そして違法行為を繰り返す行為者、事業主には罰則を科す必要があります。
 なぜなら 「差別は鋭い刃」 だからです。
 『人間に光あれ』 は困難だけど可能です。

 「活動報告」 2016.1.29
 「活動報告」 2013.11.15
 「活動報告」 2012.11.20
 「活動報告」 2011.12.21
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