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客室乗務員の感情労働  いわれたこと、いわれ方で傷つけられる  
2017/02/07(Tue)
 2月7日 (火)

 第17回 ワンコイン講座は 「お客様は神様ではない!」 のテーマでJALの客室乗務員の方から話をうかがいました。

 呼びかけのチラシです。

  個人的なこととして受け取る必要はない
 鎌田慧著の 『空港 〈25時間〉』 には客室乗務員からの聞き取りが載っています。「社長や会長らしい客は客室乗務員に多少ミスがあってもクレームを言わない、一方、ビジネスクラスに乗る日本人のビジネスマンはミスを探してクレームをつけてくるし、しつこい。」
 感情労働の問題は、日本では2000年にアーリー・ホックシールド著 『管理される心―感情が商品になるとき』 (世界思想社刊)が翻訳・発刊されてから取り上げられ始めました。定義とともに、客室乗務員がどう対応しているか具体的に紹介しています。

「問題が乗客の側にあると思われたとき、彼らの人生に何かトラウマがあったのだ、というふうに考えるように努めます。」
「予防策にもかかわらず怒りが吹き出してしまったら、『彼といっしょに家に帰る必要はないのだから』 と自分に言い聞かせる。」
「あなたが何も悪いことをしていないのに、お客様があなたにがみがみ言うことがあったら、その人が責めているのはあなた自身ではない、と思いなさい。」
「乗務員同士で抵抗力をつけ緩衝役になります。自分自身が正常な精神状態にとどまっていられるように、冷やかし合う。」
「『何が起こっても、お気持ちはわかりますと言う』共感の表現は、乗客に、自分たちは非難するべきところを間違え、怒りをぶつける相手を間違えたということを納得させる。」


 講座には12人が参加しました。その報告です。

 JALの客室乗務員のサービス・感情労働についての話をします。
 最近は情勢を受けてクレームをつける乗客がすごく増えています。乗客もいじめられていてそのストレスを弱い者、いい返せない人にあたるということなんだと思います。内容もひどくなっています。
 以前のミーティングでの話です。客室乗務員はいろいろなクレームを受けてストレスを感じていますが、そのストレスをやはり他者にあたってしまっていたと話していた人がいました。彼女は、自分はストレスを解消していたと思っていましたが、引っ越しをする時、業者がミスをしたことに電話で話をしていたらだんだん激高してきて考えられないような言葉遣いでクレームをつけていたことにはたと気づいてショックだったといっていました。
 社会の矛盾のなかで追いやられ、押し込められている状況にあるなかで弱い者にあたっていくというのは客室乗務員もしているし、乗客もいい返せない客室乗務員にあたってくるのがクレームの発端になっているのかなと思います。

 だからといって 「お客様は神様」 ではありません。特に客室乗務員には安全業務があります。何かあったとき、脱出してもらったりするときは乗客に個人の感情を押し殺して従ってもらわなければなりません。だから乗客の要求を受け入れるだけではなく、ある程度はちゃんとしていないとダメなんだよと昔から先輩からいわれていますし、私たちも後輩に伝えています。
 今、サービス業の競争が激しくて、客はいい方にと流れていくなかで、どうしても従業員に無理を強いるような経営体質になりつつあります。そこをどうやって自分たちは乗り超えていくか、改善させるかが大きな課題となっています。

 JALの客室乗務員は全体で5.000人います。労働組合が分裂していて、会社が作った組合はどんどん大きくなり、私たちの方は300人くらいです。ものをいえる環境が悪くなっていますし、解雇問題はものをいう労働者を切ったということがあります。
 

 会社が7年前に経営破たんをした後は賃金も他のいろいろな労働環境も7割くらいに下がり、それからほとんど回復していません。
 解雇問題が発生した後、3000名近い客室乗務員を採用していますが採用しても辞めていくので慢性的な人員不足になっています。職場の半分が3年未満の新人です。先輩があまりにもいないので仕事を教えてもらえないし覚えられません。客から怒られてもどうしたらいいかわかりません。先輩の経験も伝承しにくい状況にあります。しかし解雇者は戻しません。
 解雇問題が発生した後はパワハラやセクハラがひどくなり蔓延しています。みなイライラしているので他の人にあたります。昔は管理職がパワハラをするとみんなが騒ぎましたが、今はおかしいことにおかしという人がいなくなりました。いわれたらそのまま受け入れてしまうもののいえない職場になっています。そうするとそういうことをやってもいいと思ってしまうので一般職も下の社員にパワハラします。
 職場としても厳しくなっています。労働組合を中心にして働きやすい職場をつくっていかないと働き続けることができなくなっています。

 具体的な話です。
 モンスター乗客がすごく増えています。わけの分からない理不尽な要求が結構あります。
 例えば、国際線はファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラスに分かれていていますがファーストクラスのフライ数が多い乗客はステータスがあり、名前をよんで挨拶をしなければならないことになっています。エコノミークラスはしませんが、何でおれに挨拶をしないんだとクレームをいう乗客がいます。
 座席が狭いとか、今は長距離路線だと通路側が人気ですが希望通りに取れなかったとか座席の問題は多いです。何とかアレンジしろといわれても1人ひとりに聞くわけにはいきません。「今はできません」 といわないとサービスが始められません。
 隣の席が空いている方がいいです。地上職のスタッフに自分の席の隣を空けておけとごり押しする人がいます。
 それぞれのクラスで提供する特有のサービスがちがいます。エコノミーはほとんどないですが、国内クラスではファーストクラスで新聞、ビジネスクラスには機内で使うマスクとかをサービスします。そのクラスに座っていないのに以前座った時のサービスを持ってこいという人がいます。
 機内に持ち込める荷物の量は決まっていますが、それを超えて持ちこんで、自分ではしないで客室乗務員に上の棚に入れろと命令する人がいます。安全上置いてはいけない場所に手荷物を置かせろと要求する人がいます、
 肉とか魚とか食事の選択があります。どちらにしますかと聞くと両方食べて見ないとわからないから両方食べさせろと要求する人がいます。休んでいたので飲み物を渡さなかったら、もらえなかったと会社の方にクレームをあげた人がいました。その後に会社から事情聴取をされたりしたことがあります。

 このような時にどうするかです。
 隣の席を空けておけといわれてもできないので断るしかないです。安全上問題があるところに荷物を置かれてもだめですと断るしかありません。
 毅然として断ったときに会社にクレームがいく場合があります。乗客に非があるのですけれど、乗客はいい方が悪い、乗客に対してのいい方ではなかったといいます。
 そうすると会社はどういうことだったのか話を聞かせろといってきますので客室乗務員としては不快な思いをします。こういうことだったと説明して管理職がわかりましたといえばいいです。それを、あなたのいい方が悪かったんじゃないのとねちねちいわれたり、最悪の場合に日勤教育を受けさせられたりするからだんだん断らなくなります。断らない方が楽です。いいや目をつぶっていればということになったら安全上の問題が出てきます。
 毅然とした対応をしていくことが必要です。会社がそうさせる労働環境にしていかないとみな断らなくなります。

 魚と肉がありますといっても全員分を間に合うように乗せていませんので最後の乗客は選択できないです。何で自分は選択できないんだと怒る人はすごく多いです。ビジネスクラスは文句をいう人が多いです。申し訳ないですけどこちらにしてくださいといって受け入れてもらえるしかないです。じゃ俺はいらないと食べない人もいます。ほっとくしかないです。食べ物のうらみは非常に多いです。
 遠距離だと2食あるので、2食目はその人には先に選択してもらったりします。ビジネスクラスの場合は、ラーメンなどがありますのでそれを出して機嫌を直してもらいます。私はなんで食事のことでここまでいわれなければいけないのかとそれが一番嫌でした。

 国際線の場合は、テレビ映像が観れるのですが数カ所はしょっちゅう壊れて直らないことがあります。そうすると乗客は10数時間も観れないことになりますので怒ります。代替の席があればいいのですがなかった場合は謝るしかないです。クーポン券を渡してなだめるくらいしかないです。
 カップルの1人の方が壊れたことがありました。直らないので申し訳ありませんといっても彼の方が納得しません。申し訳ないじゃ済まないんだよとずっとそこに留め置かれることになりました。私はこれ以上何もできないので、すみませんこれ以上はできませんといいました。チーフパーサーに説明したらシートチャートを見てくれて他の乗客と席を替わってもらう交渉をして納得してもらいました。そのことだけに関わっていると時間もかかってしまいますので助かりました。
 自分だけではできないことを上位職の知識を借りて解決することもありました。 通常の接客対応についてマニュアルはありませんので先輩から教わりました。

 クレームに遭遇することがあると、帰ってきても何日も引きずってしまいます。たとえクレームをちゃんと抑えられたとしてもいわれたこと、いわれ方とで客室乗務員は傷つけられます。なるべく経験しない方がいいですが多いです。
 食事やテレビの問題は機内では解決できませんが、改善策はありますのでそれはちゃんと会社にさせることが必要です。食事は乗る前に選択させることは可能です。小さく 「ご希望に添えないことがあります」 と書いてありますが大きく書くとか。

 断るのはかまわないのですが、断られた客は会社に連絡します。断ってからの会社のバックアップ、事情聴取などの体制が問題です。
 会社のクレーム処理の部署が申し訳ありませんでした今後気をつけますといいえばいいものを、管理職が客室乗務員に事情聴取し、どうしてあんなことをやったんだと客室乗務員のせいにします。みな一生懸命やっていて相手が悪かったのにそういうことになると地雷を踏んでしまったということになります。それが一番嫌なことです。
 クレーム処理の部署で押さえてしまって事情聴取をさせないことが必要で、また上司がそういうクレームが来ても彼女はきちんとやっていますといって断る体制を作っていくことが必要です。そうさせないように会社に要請していくことが大切です。


 乗客同士のトラブルが多いです。エコノミークラスの席は狭いです。席を倒すと後ろの人が狭いのでトラブルになります。最近はアナウンスの時に 「お座席を倒す時は後ろのお客様にご配慮ください」 といいますがそこまでしなければならないくらいトラブルが多いです。
 「前の席を戻させろ」 といわれました。しかし席は倒せることになっています。「難しいです」 というと 「狭いんだよ」。「お客様も倒したらどうですか。そうすると少しお楽になると思いますよ」 といったらそれ以上文句はいわれませんでした。双方に権利があるのでどうやって調整するかは工夫が必要です。
 どういうふうにいうのかは先輩から教わっています。「お客様が納得していないんですけども」 というと 「こういうふうにいってみたら」。そのようにして覚えていきます。先輩ができてきた経験を教えてもらうということがないとトラブル処理ができなくなっています。

 今新人が増えているなかでは厳しい状況にあります。処理をできないからどんどん上の方に持ってきます。最終的には上の人が謝りに行くのですが、そこではすでに怒りが爆発していてどうしようもなくなっている状況があります。抑えることができる客室乗務員が少なくなっているのでトラブルがどんどんクレーム処理の部署にあがっていきます。担当者は一気にしなければならないのでメンタルで休むケースが増えているといいます。

 あまりひどいことをいってくる乗客に対しては搭乗拒否をしています。以前は、そういう人で有名だとわかっていてもでも受け入れて対応しなければいけませんでした。担当になった客室乗務員はたいへんな思いをしていました。
 その後、それぞれの航空会社が搭乗拒否をするようになりました。全日空はきちんと拒否、外国の会社もそうしています。しかし競争が激しくなるなかでJALは断らないのでモンスター天国になっています。わがままをいう乗客に1人だけならうまくなだめてと思うのですが、周りにはいろいろな人がいるので1人だけはということではすまなくなりますので公平なことしかできませんからすごく難しいです。


 乗客同士のトラブルがあります。
 エコノミー席での肘掛が1人に1つではありませんので小競り合いが起きます。日よけがありますが、後ろの人がまぶしいから閉めてくれといいますが前の人は外を見たいから開けていますので小競り合いがおきます。そういう場合、移動できる人にはしてもらうのですが、難しいです。1時間交代にしてもらったりします。席の上に荷物入れは共有ですが、なんで俺の席の上に他の人の荷物があるんだという人がいて先にいれた人とトラブルになったりします。 
 持ち込める荷物は規制があるのですが守らせていない問題があります。最近は自動チェックインになっているのでどんな荷物でも入ってきます。セキュリティーチェックの第一関門はエアラインのスタッフではないです。自分たちのところでトラブルが起きてほしくないのでどんどん通します。チェックインするゲートのところもほとんど契約社員や派遣社員で正社員がいません。注意をすると怒鳴られたり、もめていると離陸が遅れてしまいますのでしょうがないから通してしまいます。1回通すと次の回に、前はよくてなんで今日はダメなんだと文句をいいます。トラブルを避けるためにはセキュリティやゲートのところで断らなければいけないのですが、地上職の人もみんな弱い立場にいるのできていません。
 荷物の問題は安全上の問題なので、何とかしろといってきているのですがなかなか改善されません。

 クレームが多いのは60代のビジネスマンと40代、50代のキャリアウーマンです。いろいろ工夫はするのですが最終的に納得してもらえないことについては会社にこういうことがありましたと報告します。
 タバコを吸う、携帯電話を使用する、ベルトを締めないなどの機内迷惑行為が8項目あり、飛行機に乗った時にビデオで流されています。禁止命令に従わない場合には50万円以下の罰金になりますとアナウンスされています。
文句だけですめばいいのですがねちねち続けたり、暴力を振るったりしたら安全阻害行為になりますので乗務員の業務を妨げる行為ということで迷惑行為になります。この場合には警告書を出し、次にキャプテンに報告して禁止命令書を出してもらい、それでもだめだったら、着陸したら警察を呼んで引き渡します。以前は大変だったので労働組合が要求して2004年に法律を作らせました。これを盾にひどいお客さんについては何とかできています。
 酔ってくだまく乗客には、他の乗客に聞こえるようにやめてくださいと禁止命令を出し、命令書をだすようになっています。現認体制は乗客です。これは有効で客室乗務員は救われています。
 暴力行為などの迷惑行為については拘束権限もあります。安全阻害行為に対するマニュアルがあり、1年に1回訓練もしますがこれは難しいです。ほとんどが女性ですので乗客に頼んでしてもらうこともあります。客室乗務員のなかのチーフパーサーがきちんとできるかどうかにかかっています。最終的にキャプテンが判断です。

 知識をきちんと持って乗客に毅然と対応する姿勢を示す必要がありますがなかなかできません。そこには教育の問題、経験の問題があり、一番の問題は会社の対応の問題です。きちんとしたことに対してはよくやったと褒めることが必要です。本人がよかれと思ってしたことは評価をする、責めない、事情聴取をして卑しめることをさせないというふうにしないとなかなか客室乗務員は救われません。
 先輩の中にはクレーム対応で休職した人もいます。一旦休職するとほとんど戻れません。

 このようなことがあった時にどのようにして解消するかというと、ある後輩は酒で解消するといっていました。あとは同僚とこんなことがあったといい合って慰め合います。先輩にそのような場合はこのようにしたらどうなのとアドバイスをもらったりします。ひどい時には労働組合に相談してこういう労働環境は改善して貰わなければ困ると交渉項目の1つにあげてもらうことにしています。

 なかなか乗務員のいいようにはなりません。会社は競争があるのでお客様は神様とサービスを過剰にします。それを安全上の問題の視点から乗務員が主張し、させないようにしないと結局はお客様のためになりません。
 そのためにも長年勤めて経験のある先輩たちがいて新人がいるというバランスのある層で構成されていなければなりません。今は歪んだ環境になっています。


   「感情労働」
   「活動報告」 2016.12.21
   「活動報告」 2016.9.27
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『ありがとうございます』 感情労働者が一番欲しい一言です
2016/12/21(Wed)
 12月21 (水)

 12月19日、韓国の緑色病院労働環境健康研究所の任祥赫 (イムサンヒョク) 所長による韓国の 「感情労働 実態と改善方向」 の講演会がありました。主催したのは関西労働安全センターです。
 日本では感情労働で発生する問題への対応は個人や企業に任せられていて社会的課題にはなっていません。「お客様は神様です」 の意識が労働者にも利用者にもあります。
 韓国の対策は日本より数段進んでいます。講演の概要を紹介します。


 感情労働についてです。
 1983年アメリカの社会学者アーリー・ホックシールドは 「外的に観察可能な表情や身振りを作るための感覚の管理」 と定義しました。
 韓国労働部は 「職業上の接客時において、たとえ自分の感情が良いとか悲しいとか腹立つ状況にあっても、会社が要求する感情と表現を顧客に見せることができるなどの顧客応対業務」 と定義しています。
 具体的行為として、感情労働は特定の雰囲気を演出するため、要求される感情を持続的に表現しようと努力します。顧客から刺激や脅威の中でも、感情をおさえつけながら崩れない状態を維持します。言語的暴力や暴力、セクハラに対して自制力と平常心の維持が要求されます。感情が商品化されます。

 研究所が感情労働の問題に取り組むきっかけとなったのは、イギリスの労働組合のキャンペーンを知ってです。デパートの労働は客がいないとき椅子に座っていました。座ることができるのは労働組合・自分たちの力によってです。成功したのは消費者が必要だと思ったからです。疲れない方が労働者のサービスが向上します。
 研究所は接客業のかかえる職場環境を取り上げていきます。
 2010年から感情労働に対する調査を実施します。2011年、国家人権委員会が感情労働問題を取り上げました。
 社会的に大きく取り上げられたのは2013年です。4月、韓国航空に乗った大企業の常務が 「ラーメンをまともに作れなかった」 と女性乗務員に暴行を加える事件が発生、9月には大企業の会長が非正規職の航空保安労働者に暴行をはたらきました。連続する暴力の報道があり社会に知れわたりました。感情労働を遂行する約700万人の顧客対面労働者の精神の健康やストレスが社会的議題として台頭します。
 デパートの労働者は膝まづいて土下座させられたりしていました。サービス連盟と一緒に、社会にむけて何とかしなければならないということになりました。最初に始めたのが立って働く労働者に椅子を差し出すことでした。キャンペーンをしたらマスコミで取り上げられて大成功でした。韓国のデパートには椅子がおいています。

 感情労働の特性です。サービス産業は製品とサービスが結合された商品を販売することであらたな利潤をうみだす産業になりました。企業は顧客応対を労働者に任せるのではなく、サービス内容を標準化して一貫されたサービス品質を維持しようとします。そのためサービス評価に大きな影響をおよぼす感情労働者の言語だけでなく、話し方、態度、行動などの要素までも企業の顧客対応規則に含ませ、職員の感情表現を管理します。顧客満足や顧客サービス (カスタマーサービス) が企業の競争優位を決めるおもな要因の1つとして浮上しています。

 韓国職業能力開発院は2013年に感情労働従事者の現状を質問用紙で調査しました。ストレス度の最高点は5点です。そうすると高い順に、飲食サービス関連職4.13、営業および販売関連職4.1、美容・宿泊・旅行・娯楽、スポーツ関連職4.04、社会福祉および宗教関連職4.02、保健・医療関連職3.98、警備および清掃関連職3.93などでした。
 2013年は公務員の社会福祉従事者の自殺が多く発生しました。政府の政策制度が変わり、貧困な生活者からの苦情にその説明と対応をまかせられました。

 感情労働が多い職業の30選です。ストレス度が高い順に航空機客室乗務員4.70、広報アシスタントおよび販促員4.60、通信サービス・移動通信機販売員4.50、葬儀相談員および葬儀指導士4.49、アナウンサーおよびリポーター4.46、飲食サービス関連管理者4.44などの順です。テレフォンマーケッターは4.35です。

 感情労働は否定的効果が発生します。例えば、感情的不調和で自我の二重化が出てきます。低い職務満足で高い職務ストレスが発生しています。精神的枯渇は燃え尽き感を発生させます。高い離職率なります。飲酒、喫煙、薬物、賭博中毒など不健康な生活習慣に陥ります。適応障害、うつ病、外傷性ストレス障害、恐怖障害、自殺に陥ります。免疫機能の障害になります。そしてサービス産業の 「サービス」 の弱化になっていきます。コールセンターの女性の50%がタバコを吸っていました。


 2013年にサービス連盟と一緒に、過去1年間に2000人を対象に顧客から受けた被害などの調査をしました。その結果です。
人格を無視された経験86.74%、無理な要求をされた経験79.81%、罵声や暴言を受けた経験79.69、身体の脅威にあった経験46.1%、セクハラ、性的接触を受けた経験29.71%、暴行された経験12.8%などです。
 そのことを会社に知らせたときの反応です。加害者に法的責任を問えるよう支援してくれた3.62%、言葉で慰めてくれた43.28%、そのまま我慢しろといわれた33.90%、是非を正さず、顧客に無条件に謝れといわれた19.64%、かえって自分に人事上の不利益が来た3.27%です。
 逆に被害の事実を知らせない理由です。話すのが恥ずかしい3.14%、話したところで別に対策を立ててくれないようなので82.81%、却って自分に不利益が回るようで8.05%です。10%の労働者は同僚には話しています。
 感情労働者の鬱のレベルです。K-BDI分類で正常25.69、軽いうつ状態27.07%、中等度のうつ状態31.88%、ひどい鬱状態15.36%でした。


 なぜ韓国で感情労働が問題になるのでしょうか。
 企業の経営戦略として消費者の過剰な利益意識を誘発します。
 位階を重視する集団主義文化があります。
 家父長的な儒教文化があります。女性の犠牲と奉仕が要求される家事労働があります。
 尊敬されるお金持ちがいない社会です。
 感情労働者は女性労働者、非正規労働者になっています。
 業務に関連した反人権的モニタリング、覆面調査があります。
 職務教育ではない感情労働を強要する親切教育があります。
 無条件な謝罪が強制され、支持・支援のシステムが欠如しています。

 例えばロッテデパートの管理マニュアルです。
 カ、基本姿勢
 (7) 顧客が正しければ過失を認め、すぐに謝罪。反対なら顧客の対面を最大限いかして説得。
 (8) いかなる場合にも論争自体に対しては顧客に深く謝罪。
 ナ、状況別対応方法
 (2) 職員が不親切であると不満に思う場合
 -職員は弁明や言い訳をせず、顧客にすぐに謝罪。管理者ももう一度謝罪。
 (4) 職員のミスによって顧客が怒っている場合
 -まず周囲すべての顧客に謝罪。
 -ミスに対する会社の処理指針を知らせる。周囲のすべての顧客が認知するように。
 -状況が完了後、もう一度丁寧に謝罪。

 さまざまな消費者がいます。
 ブラックコンシューマーと呼ばれる、企業を相手に購買した商品やサービスに対して補償金などを目的に意図的に悪性な要求をする消費者です。
 意図的にあるいは偶然に、サービス組織とは別の顧客に否定的な影響をおよぼし、サービスを混乱させる不良消費者がいます。また、顧客という力の優位を保ち、感情労働者にいわゆる 「力関係の濫用」 をする消費者がいます。
 顧客サービスの原則なしに、顧客の過度な要求も無条件に受け入れた企業の経営方針によって、消費者は 「大声を出さなければむしろ損害を被る」 と考えるようになり、ますます過度な要求をするようになりました。これが結局、問題のある消費者をますます増加させています。

 消費者に対して2015年に調査をしました。感情労働者への不満は、よくある6.6%、時々ある60.8%、ほとんどない24.4%、まったくない8.2%です。


 労働者が顧客対面労働をしながらストレスを感じることの1位が無視 (ぞんざいな言葉) 40.1%、つづいて不当な要求37.6%、督促12.7%です。
 逆に消費者がストレスを感じるのは無視 (ぞんざいな言葉) 60.2%、不当な要求20.4%です。

 労働者、消費者双方にとってサービスがまともに成り立たない理由についてです。
 長時間待たせたことについては、労働者29.6%、消費者18.2%、必要な情報を知らせなかったについては、労働者23.5%、消費者26.7%、必要とするサービスの内容について理解できないようだったから、労働者14.2%、消費者20.6%、解決せず、サービスを他の人に回したから腹が立った、労働者16.1%、消費者19.2%です。

 労働者がサービスをまともに提供できない理由につてです。人手が足りなくて忙しいから42.7%、低い労働条件の上に雇用も不安定で、頑張ろうという気になれない33.6%、教育訓練をちゃんと受けていないから15.7%です。

 消費者と労働者が求めている共通点があります。
 労働者は正確な情報を提供するために、教育訓練を受けることを願い、消費者も同じです。
 消費者は安っぽい親切より、正確で合理的な業務処理を希望しています。
 労働者はより良いサービスを提供するため、雇用不安、低い労働条件、人員不足が解決されることを願っています。
 消費者からのクレームを専門的に処理する体系が作られることを希望しています。
 職員の言語使用、話し方、態度、行動などを規制して管理するのではなく、職員のサービスの質を高める考察や研究が必要です。
 労働者がアイデンティティを持つこと、組織が自分をどんなに大事に思っているのか、自分が重要な役目をする人だと認められることを知ることが必要です。

 企業が問題を解決することの必要性です。
 生産性と効率性が増加します。当該企業に対する社会的、国際的な評判が改善します。
 精神健康に対する法律上の規定があります。(社会、団体) 協約に明示する必要があります。
 生産性と効率性の増かについてです。ブラックコンシューマ―による経済的被害は売上高対比で12.4%のデータがあります。

 防止のためには枠組み合意が必要です。
 労働組合がある大企業では労使合意で施行しています。しかしまだ大部分は、感情労働手当などにとどまっています。EAP導入、感情労働休暇などが徐々に増加される傾向にあります。労使合意の感情労働対応マニュアルを作ったところもあります。

 人権保護のため法的規制が必要です。感情労働者を守るのは事業主 (元請事業主) の責任です。労働者にとっては予防と対応をとらなければなりません。

 ソウル市は、2016年 「ソウル特別市感情労働従事者の権利保護などに関する条例」 を制定し2017年から施行されます。
 具体的には、ソウル市に感情労働者の勤労環境改善計画の樹立を義務付けています。
 機関別マニュアル作成も義務付けられますがその中には、「甚だしく不当な要求をする顧客の場合、顧客の要求に応じない権利を保障」 「不当な待遇にあった感情労働従事者の業務中断時間に関する事項」 なども盛り込まれています。
 さらに、「ソウル市感情労働従事者権利保護センター」 を設置することが義務付けられています。
 ソウル以外でも光州など3つの自治体で同じ動きがあります。

 2枚のポスターが紹介されました。1枚は警察に貼られているものです。「相手方の人権を無視する大声、悪口などの言語暴力も処罰される場合があります」。もう1枚は国家人権委員会が作成したものです。「『ありがとうございます』 感情労働者が一番欲しい一言です」

 韓国の感情労働に対する取り組みの特徴です。感情労働者は女性労働者、非正規労働者が多く、劣悪な労働環境、労働条件のなかにおかれているという調査結果の中でその改善の必要性を強調しています。労働者、消費者個人の問題ではなく構造的問題ということです。
 調査においては、労働者だけでなく消費者からも要望を聞き出す取り組みをして改善点を洗い出しています。
 その中で労働者の人権を守ることを起点にしています。
 そして、一企業だけではなく社会的取り組みが必要ということで企業に働きかけて労使協定を締結したり、ソウル市の条例制定に至っています。

 日本での取り組みの課題が示されています。


   「感情労働」
   「海外のメンタルヘルス・ケア」
   「活動報告」 2016.9.27
   「活動報告」 2016.5.31
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お客様は神様ではない
2016/09/27(Tue)
 9月27日 (火)

 9月21日午前10時35分ごろ、近鉄奈良線河内小阪駅で人身事故が発生し、ダイヤが乱れました。その影響で河内小阪駅から4つ目の東花園駅 (東大阪市) で電車は運転中止になります。この時にホームで乗客への状況説明などに当たった車掌 (26) と客が言い争いになります。そのさなか、車掌は制服上着と制帽を投げ捨てて線路に飛び降り、さらに高架から数メートル下の地上に飛び降り、腰椎 (ようつい) を骨折して救急車で病院に運ばれました。
 目撃者によると、乗客が車掌に 「なんで止まってんねん」 「いつ動くんや」 「声が小さくて聞こえません」 などと喧嘩腰で詰め寄り、車掌は 「乗客6,7人に囲まれて、喧嘩腰に言われていた。駅員さん、すごいちゃんと冷静に対応したはるんだなと感じてて…」 でいる状況でしたが、やがて 「死にたい」 「こんなんいやや」 などと言っていたといいます。そして高架に 「ぶら下がっている状態で、上を向いて、『いややねん! もう生きてられへんねん、もういやや、辛いって』 と叫んでいた」 といいます。
 その後近畿日本鉄道は、「お客様にご迷惑をお掛けして大変申し訳ない。社内規定にのっとって、駅員の処分を検討する」 とコメントを出しました。

 このニュースが流されると、ツイッターでさまざまな意見が寄せられました。東京の当日午後のラジオではニュースといっしょにツイッターの意見も紹介されました。
 会社のコメントに対して、インターネットで車掌の処分の再考を要請する嘆願書署名を呼びかけたらかなりの数が集まってきています。


 ツイッターの意見は当然のことですがそれぞれとらえる視点が違います。また時間の経過とともに傾向が変化していきます。そのことを踏まえても車掌に同情する意見が多くみられるという特徴があります。
 特徴的な意見を紹介します。

 事件そのものへの意見です。
「なんか、最近言わないと損? 言っても問題がない (立場弱い) みたいな人にクレームを付ける人が多いように感じる。一人が言いだすとみんなが言う・・見た感じいかつそうな人には言わず・・みたいな・・ポリには偉そうに言うが、ヤクザには丁寧みたいな人がうじゃうじゃしてる。
 子供の虐めと同じやんと思うことがしばしばあって・・マスコミも何でも中途半端に放送するからよけいクレーマーが増えるのかな。特に会社名が大きければ大きいほどくいつきが良いから・・なんか嫌や」
「人身事故や災害によって運行が止まるのはやむを得ない。それでも毎回駅員にむかって詰め寄る乗客がいる。そういう人ってどこにいても誰にも相手にされてないんだろうなーってかわいそうになる。」
「乗客も、もっと大人の対応ができなかったのでしょうか? しかし、その程度のコメントしかできない、会社も情けないよなぁ」
「近鉄の車掌に対して 『職場放棄』 『逆ギレ』 という声があることに驚き。大勢に囲まれて暴行を受けて自殺を図るぐらいに追い込まれてるのに仕事なんか続けられる訳がないし、逃げ出したのは自分の身を守る行動として当然。だいたい鉄道は運輸業であってサービス業ではない。これを勘違いしてはいけない」

 会社の対応への意見です。
「近鉄のコメントを見る限り、この会社は社員を守ろうとしないんだな。近鉄という会社って、何か起きた時は個人の責任ではなく組織の責任として考える事が出来ない会社なんだろう」
「『ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。当該職員に事情を確認し、今後の然るべき対応を検討して参ります。』 とかでいいんじゃないの? 理由はともかく大怪我を負ってる自社職員に 『処分』 なんて言葉を使わんとあかんかね?」
「ストレスもあったと思う。不思議なのは乗客の対応を、この職員だけに任せていたのであろうか。管理職や同僚のサポートはなかったのか。今、一度検証する必要がある。」
 推測ですが、駅構内にいる職員は多くなかったと思われます。また他の乗客の対応をしていたかもしれません。しかし、対応マニュアルとしては必須項目です。
「もう会社もクレーマーには屈しません、従業員を守りますと堂々と宣言したほうがいいかもしれないな。表向きは車掌を処分しますと出して、休養職場復帰がベターだけど。近鉄は彼の心身をしっかりケアしてやってくれ。」
「お客様は神様の勢いで噛みつかれては、追い詰められても仕方ない。確かに車掌の行動も行き過ぎだけど、会社はもう少し、社員を大事にしても良いのでは? 」
「車掌の行動は適切ではなかったけど、パニックになるまでの間に何があったかは会社はちゃんと調べるべき。ここまでになるのは理由があるのだから、調べた上で汲むべき事情があるならばそこは会社が社員をちゃんと守ってやるべきだと思います。
 車掌だけを処分するなら、ここまで追い詰めた乗客にも何らかの処分をするべきと思う。」
「今の時代はクレーム客なんかより毅然とした対応した会社のほうが世間の人は評価するのにね。会社の上層部が時代錯誤の石頭だからそのへんが理解できないんだろうね」
「『車掌が、鉄道事業者として不適切な行動を起こした』 って。あのー近鉄さん、今回は謝るべきじゃなかったと思いますよ。狂ったようにクレームつける人間、怒りをぶつけたいだけの人間は今後益々鉄道職員を標的にしますよ。職員は会社に処罰されると思ったら、理不尽でもじっと耐えるしかなくなる。」
「近鉄が 『車掌が不適切な行動を起こしたことは大変遺憾です』 とか言うのよくないと思う。『我が社の社員を気が狂うまで追い詰めた犯人は絶対に許さない。絶対に探し出して枕木の染みにしてやる』 みたいな感じがいいんじゃないか。」
「やはり、近鉄は件の車掌さんを処分する方針なのか・・・それは悪手だぞ・・・。会社が社員守らんでどうするんだ。そんなことやったら、社員側も会社はどうせ守ってくれないって一生懸命頑張るだけ無駄だという意識が広まればどんな安全対策を会社側がやっても空虚なものになる」
「まあ会社は表向きの会見や発表では車掌を擁護はできないでしょう。」
 韓国ではこのような問題を 「感情労働」 と捉え、労働者・市民が一緒に対策を進めています。日本が見習うべきこともたくさんあります。

 乗客にたいする意見です。
「飛び込み事故や天候が原因で運行できない時でも駅員に絡む神経がわからん」
「むしろ責められるのは詰めよってた客でしょ! 人身事故なんて鉄道会社の責任ないでしょ。」
「一社員に会社としての対応を求める乗客も異常。」
「正直、急いでいる途中で、突然の事故やトラブルで、イライラする乗客の気持ちは分かる。
 だが、車掌や駅員に詰め寄った処で、詰め寄られた方も、『こっちが聞きたいわ!』 って言うのが、きっと本音だと思う。ただ、イライラする気持ちは分かるが、必要以上に駅員に詰め寄る奴は、何様のつもりか? と思う。」
「きっと、この車掌さんに詰め寄った乗客の方々は罪悪感を感じずに、御自分達の態度を改める事なく生き続けていかれるんでしょうね。そして、この車掌さんが本当に 『死にたい』 とまで追い詰めてしまわれたとも知らずに、、、もし、亡くなっておられたらどう感じられていたんでしょうね。相手の気持ちを考えることが出来ない方々が増えているのが悲しいですね。」
「こういう人の痛み苦しみの分からない人間には激しく嫌悪感。勘違いしてはいけない。車掌も人間。マナー常識を失った人間を対応することまでが仕事じゃない。修正すべきはそういった人間達。」
「絶対に刃向かってこないだろうと確信しとるから、理不尽な事を言いよるヘタレ客。噂では年輩客らしいが、ワガの息子、孫、だったら可哀想とか考えへんのか!」
「クレームつけてた輩を恐喝脅迫で裁くべし。お客様は神様ではない」
 会社や家庭で蓄積したストレスを社会の弱者、反論しない者に向けて発散させています。本来向けるべき相手を見失っています。そしてこのような行為を目撃する者も、自分の正義感に攻撃をうけてストレスを感じてしまいます。
 
 駅員に対する意見です。
 テレビでは、駅員は仕事なんだから最後まで我慢してい対応すべきだったという意見が紹介されていました。
「人身事故が起きた時に、なんで止まってるのとか、理不尽に車掌に怒る人が居るけど、車掌さんや駅員さんが悪いわけじゃないでしょ。無茶苦茶言って、まるでストレスのはけ口みたいにしてる人、どうかと思うよ。正直、この車掌さんに同情するよ。」
「車掌も弱いけど、会社ももう少し優しい言葉で対応をしたら? お客様のクレームの対応をしない部署に配置換えをする、とか、マニュアルを見直す、整備する、など言いようが有るでしょうにね、。」
「質の悪い乗客が複数いたと思われ…。この情けない車掌ばかりを責める、会社&世論に納得できない。メディアはもう少し真面目に取材していただきたい。『なんで?』 が抜け落ちている!」
「気持ちは分かるなぁ。自分が原因でもないのに、詰め寄られて…嫌になってもおかしくないよ。」
「やっちゃいけないことをしたんだが、何か批判するのが躊躇される。何となく状況わかるものね。社員ってだけで自分を殺して我慢しなければならないっていうが、我慢して何が残るって思うと空しいね。」
「この車掌さんは、今回のことの以前にも、怒りを抑えなければならないことに数えきれないほどあって、爆発したのではなかろうか。社員一人ひとりの判断に任せるべき限界を超えることがありそうなのは、混雑時や、事故が起こった時の状況をはたで見て思うところです。社として組織的に対応を考える必要があると思います。」
「JR福知山線脱線事故もそうだけど、規則、原則が人格に配慮していない部分があるからこういう事件が起きるような気がする。クレーマーの言うことを右から左へ受け流す事が出来る鈍感力が必要で、規則、原則が人格に配慮されていないサービス業で柔軟性のない真面目な人がメンタルやられる人多いよね。」
「多分、自分なら抑えられないとお客さんに逆ギレすると思う。この車掌さんは自分に怒りを向けたからある意味偉いと思う」
「何となく気持ちは分かる。お客様に詰め寄られ、助けもなく孤立無援。精神的に切れても、お客様に手を出す訳にはいかないから、替わりに自傷行為に走ったのだろう。制服を脱いだのは、彼なりに会社に迷惑をかけたくないとの気持ちからだろう。こういう時は、組織としての対応が必要と思う。」

 これ以外に、車掌は当初から精神的に体調不良だったのではないかという意見が数件ありました。しかしこのことを強調すると、事件が個人的問題になってしまい、事件の本質が逆に見えなくなってしまいます。労働者は感情をもった生き物であるかぎり、健康であったとしても相手の対応に “切れてしまう” ことはあります。これに対する対策は 「ストレスに強くなる」 ことではありません。また労働者の健康管理をするときには、プライバシー保護と情報管理は厳しく行なう必要があります。

 
 職場の暴力・「感情労働」にたいする対策は、労働者・消費者(客)・政府・企業それぞれの役割があります。クレームや攻撃は起こることを前提に対策を取っておく必要があります。職場のいじめ対策と同じです。
 まず企業・使用者は、労働者を守る、最終的責任はトップが負うという姿勢をはっきり示しておく必要があります。そのうえでトラブルが発生した時のサポーター体制を確立しておきます。そうすると労働者は安心して対応できます。労働者に、しつこいクレーマーにははっきりと「業務妨害」、「暴力」であると指摘し、対応を拒否する決定権限を与えることが必要です。
 そのうえで労働者は、心構えが必要です。
 ・自分に向けられたものだとは思い過ぎない。
 ・相手の社会に対する不満がたまたま自分に向けられていると理解する。
 ・相手の感情に巻き込まれない。弁解しない。その方が早く終了する。
 ・後で誰かにその時の状況を、感情を含めて話して聞いてもらう。
 ・終了したら休息をとる。
 ・体験を共有化する。
 トラブルが治まったからといって解決したということではありません。対応した労働者へのいわれのない攻撃、正義感、価値観、自尊心への攻撃は放置したら傷は癒えません。身体的打撃を受けた場合はトラウマに襲われて労働が恐怖になることもあります。
 被害を受けた労働者の人権・人格の回復のためには安心して心情を吐露できる時間と場所を確保する必要があります。職場の同僚や仲間は労働者の言い分を聞き直し、対応の正当性を確認し合う心のケアと必要な支援をします。そして休養を保障します。
さらに会社として同じことを起こさせないための対策を再確認して進め、安全・安心を保障する必要があります。


 当たり前のことですが、鉄道の第一の使命は列車を安全に運行することです。乗客が安心して目的地に行けることを支援することです。そのためには、鉄道で働く者たちの心身の安全が保障されなければ乗客の安全も保てません。今回の事件のように、乗客が駅員の心身の安全を奪うという行為は、その後復旧したとしても安全な運行に支障をきたします。乗客はそのことを自覚する必要があります。「お客様は神様ではありません」
 意見でも言われていますが、駅員にクレームをつけても復旧が早まることはありません。


 今回の事件のように、労働者に対して心身の攻撃を加えることを 「職場の暴力」 と呼びます。
 ILOは2003年に 「サービス業における職場暴力及びこの現象を克服する対策についての実施基準案」 を発表しています。そこでは 「職場の暴力」 を 「妥当な対応を行っている者が業務の遂行及び直接的な結果に伴って攻撃され、嚇かされ、危害を加えられ、傷害を受けるすべての行動、出来事、行為」 と定義したうえで 「部内職場暴力」 と 「部外職場暴力」 双方を含めています。「部内職場暴力とは、管理者、監督者を含めた労働者間で発生したものを言う。」 「部外職場暴力とは、管理者、監督者を含めた労働者と職場に存在するその他の者との間で発生したものを言う。」 です。
 しかし日本では、2012年3月15日に厚生労働省が発表した 「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」 (「提言」) においても 「部外職場暴力」 は対策の対象になっていません。対応はそれぞれの企業・事業体に任せられています。
 その結果が今回のような事態を発生させてしまいました。


 8月26日、全国労働安全衛生センター連絡会議は、厚労省に要請行動をおこないました。要請項目には
「3.職場のいじめ・嫌がらせパワーハラスメント対策
 (1) 今年度実施が予定されているという職場のパワーハラスメントに関する実態調査において、取引
  先、利用者や顧客などからの暴力行為及び発言等について調査対象とすること。」
 を含めました。交渉の記録の抜粋です。
「センター 調査は前回のことを踏まえてということになると、『提言』 は外部の暴力については抜けているので今回も触れられていないのではないかと思われます。
 ILOでは 『内部暴力』 『外部暴力』 と使い分けをしていますが、外部暴力について対応していないのは日本だけです。なんで対応しないのか疑問です。先ほど、人格・尊厳と言われましたけど、内部だけに人格・尊厳があるわけではありません。しかし外部は無視され、人格・尊厳がダブルスタンダードになってしまいます。そうすると解釈があいまいになってしまいます。
 もう1つは、前回、鉄道における暴力にたいする対応は国交相、地方公務員に対しては総務省など別々に対応していてもらちがあかないので、『外部暴力』 の問題全体に対して厚労省がイニシアティブをとって対応したらどうかと提案しました。同じように人格・尊厳のスタンダードが各省によって違うということはないはずだからです。
 この問題は、個別職場の問題ではなく社会的な運動として取り組まれないと解決できませんので、そのような運動を提起して取り組んでいただきたいという要請です。
厚労省 調査は職場のパワーハラスメントということで狭い範囲での調査になります。広い範囲を対象にした問題については持ち帰らせてもらいます。
センター コンビニの店員が客からハラスメントを受けるということもあります。事業者にとっても従業員を守るということで何らかの対応をしなければなりません。しかし対応能力がない、マニュアルがないという状況があり、そのことによって体調を崩す人も出てきます。だからこそ今回の実態調査にも加えるべきだったと思います。事業者にとっても必要なことです。医療現場でもそうです。
 パワハラは単に上司や同僚ということだけではないので、第三者からの行為や言動などについても提言をすべきだという趣旨です。この点の問題意識をもっていただかないと同じような調査をしても変わらない結果にしかならないと思います。
厚労省 今の提起はしっかりと持ち帰らせてもらいます。
センター 労災事例の調査・分析を今回の調査には含めてないのだったら、あらためてしてほしいと思います。
厚労省 「提言」 は 「同じ職場で働く」 ということですので第三者からのパワハラは原則的には外れています。
 そうするとパワハラの定義が正しいのかという議論になってきます。今回は持ち帰らせてもらって考えていくということにさせていただきます。
センター 第三者からの問題に対応しないと、逆にパワハラを認めることになってしまいます。定義をどう変えるのかということになると、提言を再度提言することになりますが、そこに固執するのではなく、現に起きている問題があり、そこには責任者・管理者の問題も出てきますので、そういうことに関連付けて対応を変えることは出来るはずです。


 今回の事件後のツイッターの意見を見ていると、以前とは社会的認識がいい方向に変わってきているように思われます。日本でもやっと 「外部の暴力」 が問題化されつつあります。
 今回の事件が、同じような問題をくり返さないためにももっと大きな議論が巻き起こり対策がすすめられることを期待します。

   「職場の暴力」
  ILO 「サービス業における職場暴力及びこの現象を克服する対策についての実施基準案」
   「感情労働」
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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 管理される心 -労働者の尊厳と人権の回復に向けて-
2016/05/31(Tue)
 5月31日 (火)

 5月29日、ひょうご労働安全センター第11回通常総会が開催されました。
 第二部で、「管理される心 - 感情労働の現状と対策」 のテーマでの講演を依頼されました。講演全体の再録ではなく、「感情労働」 に至るイントロダクションの 「管理される心」 「管理される心からの脱出――労働者の心の取り戻し」 の部分についてだけ紹介します。


 現在の労働の中で 「心」 はどう扱われているでしょうか。さまざまな形で管理・支配が行なわれています。具体的にあげてみます。
 使用者による心の管理は、雇用契約に基づく業務命令・指示などで行なわれて従属させられます。帰属意識による安心感も生まれますが、依存に陥ったりもします。「会社人間」 です。従属は雇用継続、出世のためだったりしますが、基本的には生活のためです。
 組織 (部署・部門) による心の管理は、グループ・チームの共同作業、目標管理などのために集団による相互監視などで行なわれます。連帯責任・集団的防衛、秩序維持が要求されます。個々人の労働者は、目標達成での同僚への迷惑回避、仲間はずれ回避のために努力します。それが不可能になった時は差別、孤立の状態におかれます。
 機械による心の支配は、生産性を優先させた効率追求のためのテンポの強制です。労働者は機械への従属を強制され、心身のゆとりがうばわれます。
 ITによる心の支配は、会社や上司からの指示・命令が24時間とおして行なわれる状況を作り出しました。またコミュニケーションが一方通行になったり、行き違いが生じたりします。業務遂行指示がマニュアル化され、個々人の労働者の裁量や工夫の幅は小さくなりました。IT産業の労働者のあいだでは 「IT奴隷」 という言葉が使われています。
 顧客や行政の窓口における住民からの心への侵略があります。サービス・営業活動に従事する労働者に売り上げ目標設定やノルマが課せられます。目標達成のために低姿勢になって顧客の引き留めをはかると相手は逆手にでます。このような本来の自分の感情を押し殺して対応する行為は感情労働と呼ばれます。オイルショック以降、その傾向が大きくなりました。また、行政窓口などにおける住民からの過剰な要求やクレーム、いわれのない非難への対応もそう呼ばれます。
 社会や慣習からの心の強制があります。会社に、受け入れがたい風土や社風が存在したりします。法律や就業規則に違反するようなこともあります。長期にわたる慣習になっていて労働者はそのようなものだと思い込んで受け入れたりしています。おかしいと思う労働者は我慢を強いられます。指摘すると協調性がないと批判されます。不正などが公然と行われていたりします。「みんなで渡れば怖くない」 がもたれ合い構造と安心感をつくり、疑問を持つ労働者も “みて見ぬふり” をしています。正義感への攻撃です。 
 経済的理由からの心の管理とは、格差者社会において底辺におかれる労働者から声を上げる手段もゆとりも奪います。声を上げる前に現在の貧困状態での生活を維持していくことで精いっぱいです。常に恐怖間に支配され、我慢、無理を続けます。


 管理・支配される構造は時代とともに変化します。
 「管理される心」 は、労働者からはあまり関心がもたれていないテーマです。慣らされてしまって気づかない状況におかれたり、我慢、あきらめ、服従、自己の喪失に支配されています。その中からさまざまな問題が発生しています。労働者は自覚・無自覚のストレスを、他者を対象に発散します。労働現場で抱えているさまざまな課題の違う形での問題表出です。「管理される心」 による被害者が加害者になり、新たな被害者が生まれています。
 ですからこれらの問題は、個別には解決しません。視点が違っても労働現場が抱えている問題と一体のものなので対処療法ではなく土壌の改善が必要です。解決方法は、個人的対応、組織的対応、社会的対応がセットでないと本質的解決には至りません。 
 組織的対応とは、賃金、労働時間など (数字で見える) 労働条件や労働環境の改善です。そのことを通してお互いの理解、心身の心のゆとりの見直しと獲得に向かう必要があります。ゆとりとは、労働者の人間性の回復、人権獲得、自立などです。これまでは精神面からの労働安全衛生、職場環境改善の取り組みは弱かったのではないでしょうか。
 社会的対応は、社会的風習打破のための社会的運動です。共生の社会建設への挑戦です。


 工業が発展して労働者が登場すると、最初は抵抗、衝突が自然発生的に、頻繁に発生しました。すこしずつ支配・管理がすすんでいきます。
 1700年代後半にイギリスで産業革命がすすむと熟練工は機械を打ちこわしました。「ラダイト運動」 と呼ばれます。繊維工業の機械が発明されるようになると手工業職人は失業しました。打ちこわしは、熟練工のプライド維持、人権無視への闘いです。
 この後、機械化による労働者の貧困問題と人権要求が労働組合運動に発展していきます。
 19世紀後半になると大規模なストライキがおきます。1889年のロンドンのドック労働者のストライキは、不熟練労働者によるもので、これを契機に不熟練労働者の組織化が進んでいきます。

 1861年4月12日に南北戦争が開始され65年4月まで続いた南北戦争はさまざまな面で工業の発展を刺激し、それ以降も続きます。労働力が不足しますがそれを解消しようとしたのがテイラー主義です。(テイラー主義については2016年5月17日の 『活動報告』 参照)
 日本にも1910年代にはアメリカの産業心理学が導入され、テイラーの 『科学的管理法』 も翻訳・出版されました。(2013年10月1日の 「活動報告」 参照)


 1900年に発表された 『職工事情』 の織物工場での調査の部分です。
「……労働時間は大略以上のごとくといえども終歳これを励行するにあらず、彼ら職工は……就業中といえども雑談を試むる等不規律極まるものなり。本調査員は桐生、足利地方織物工場の労働時間長きに失することにつき工場主に語りしことあり。彼らは曰く、単に1日の労働時間は16、17時間なりと。聞けばその長きにわたり過酷なる如くみゆるも、機械工は機械的に働作するものにあらず。その就業時間中全力を委して労働に従事するが如きことなく、倦怠すれば自ら手を休め、あるいは雑談を試みあるいは管巻を取りに行くとか、監督者の目を盗みてなるべく労働せざることを務む。」
 工場主は、勤務時間中 「機械工が機械的に」 働かずに 「監督者の目を盗みてなるべく労働せざる」 からやむを得ず労働時間を延ばしているという主張です。
 しかし調査員は 「労働時間の長きにわたること甚だしきを以て、勢い労働の不規律に流るる傾向あり」 と指摘しています。

 今も同じような議論があります。使用者は仕事ができない労働者が残業をする、昼間サボって夜働いていると言い訳します。しかし労働者にはこなし切れない仕事量が舞い込んでいます。成果と労働時間は正比例いません。一番効率が悪いのが慢性的疲労のもとでの労働です。逆に、適時の休息は効率を高めます。


 橋本毅彦+栗山茂久編著の 『遅刻の誕生 近代日本における時間意識の形成』 (三元社) からの引用です。
 宇野利右衛門は、明治から大正にかけて職工の労働と生活の問題を詳細に調査、分析して雑誌 『職工問題の研究』 を発刊しました。そのなかで職工たちの欠勤率の高さを指摘して解決策を提示しています。
 紡績工場の調査では、出勤率は1年と1月を通してバラツキがあります。1年を通しては3、4月には多くの職工が出勤し、8月には最低になります。その差は20から30%にも及びます。8月の熱い盛りに欠勤が多くなることを企業の方も見越して、余分の労働者を雇用しておきました。一方、1月を通しては労賃が支払われる5日、帳締めが行われる20日をピークとして、その翌日から3、4日はストンと100%から80%程度に出勤率が落ちました。
 
 8月の出勤は7割に満たなかったことになります。日本の労働者は決して勤勉でなかったということを知るとホッとします。今も昔も休養が保障されて長時間労働が解消されたら、欠勤、遅刻者は激減することは明らかです。
 ちなみに官公庁では1935年まで8月は午前だけの執務・「半ドン」 でした。しかしマスコミなどで批判されると延長されました。

 欠勤にはいつも理由があります。
 宇野は、出勤率を高める均一化のための解決法を記載しています。
 全体として①強励法、②皆勤賞与法、③短期賞与法、④工銀循環毎日払法、⑤矯癖法、⑥休養法の6種類に分けました。
そして 「出勤時刻の励行法」 として時間規律を身につけることの重要性を説いています。そのために欠勤理由の分析をしています。
 鐘紡では、休養を妨げないために遅刻もいけない、早出もいけないと正確な時刻を守ることを促したといいます。
 出勤時間の性格さを奨励することは、必然的に就眠時刻の正確さを奨励することに繋がります。社宅の集まる地域では、当番が拍子木などで就眠時刻に近いことを知らせます。
 定刻通り起床を促す習慣に関しては、イギリスの 「戸叩き」 の例を引用しています。マンチェスターの職工の住む地域では、職工自身が雇った、毎日職工の家を叩いてまわる者がいたといいます。

 ちなみに1926年に行われた遅刻制裁のアンケート調査結果が紹介されています。
 33社が回答していますが、制裁を定めている・いないは半々です。制裁を定めているうちの4分の1が数回の遅刻に対して欠勤扱いにしています。5回で1日の欠勤が2社、4回が1社、3回が2社、2回が3社です。他の4分の1は遅刻の延べ時間によって賞与や昇給に影響が及ぶとしています。


 ストライキに似た効果をあげる、労働者が職場を離れないでとった戦術がサボタージュです。名前は20世紀初めにフランスの労働者がサボ (木靴) で機械を蹴飛ばして壊した戦術に由来します。
 日本では1919年9月半ばからの神戸の川崎造船所の争議で行使されました。このような闘いで8時間労働制が実施されていきます。
 労働者不満・怒りの表現は自己の覚醒、自己確認です。「やってられないよ」 の感情での抵抗や爆発は今も組織化の要素です。労働組合は見逃さないで組織するチャンスです。

 1920年代からオートメーション化が進みます。人間労働の機械への置き換えは意思決定から人間的要素を次第に排除していきます。労働者は自律不能にされます。
 大量生産・フォーディズムは生産性上昇をもたらし、見返りとして賃金が上昇し、消費の自由・拡大が生まれます。また第三次産業が成長していきます。
 高度経済成長は日本ではマイホーム建設がすすみます。


 大量生産・フォーディズムは労働をつまらなくしました。アメリカでは70年代以降、大量生産システム、いわゆるテイラー主義が限界に至ったといわれています。いくつかの理由が挙げられますが、その1つが 「労働の質」 の問題です。労働者の欠勤という形で抵抗します。
「生産現場における伝統的な管理の有効性も低下した。機械化とテイラー主義による管理が有効だったのは相手が不均質な移民労働者だったからだ。それは戦後も、農村から大挙して流れ込んだ、新しい労働者の管理には絶大な威力を発揮した。だが、量産産業の順調な発展によりブルーカラー労働者の中流化が進み、工場には豊かな社会のなかで成長し、両親よりも高い教育を修め、期待や欲求の水準を上昇させた若年労働者が数を増した。彼等は賃金や労働条件のみならず、労働の質を重視した。
 ところが工場では19世紀末の世界がほぼ維持されていた。現場の作業者は毎日単純で部分的な作業を繰り返すに過ぎず、自らの経験と技能を工場内で生かす道は少なかった。会社は高い離職率を理由に職場内での訓練を重視せず、レイオフを繰り返して、現場の作業者を取替え可能な部品として扱い続けた。60年代末から70年代初頭にかけての超完全雇用に伴う深刻な労働不足と、ベトナム反戦運動や公民権運動など社会紛争の激化は、これらの不満を爆発させる格好の触媒となった。彼らは、高賃金および先任権を代償に、徹底した分業と階層的な管理に服する労働秩序への挑戦を開始した。現場での苦情申請件数は増え、離職率や無断欠勤率の上昇、作業密度の低下など労働意欲の低下や労働規律の弛緩が表面化した。ロボット化された工場での公然たる反発も生じた。」 (鈴木直次著 『アメリカ産業社会の盛衰』 岩波新書)

 「労働生活の質 (QWL)」 はアメリカだけの問題ではありません。
 1976年、イギリスの兵器生産企業、ルーカス・エアロスペースで働くショップ・スチュワード (職場委員) たちは、社会の役に立つ製品と新しい形の従業員の能力開発のための詳細なプランを作成し、人員整理や兵器の生産に代わるべき道として提案しました。通称 「ルーカス・プラン」 と呼ばれる 「経営プラン」 です。
「『経営プラン』 が指摘したもう一つの問題は、残っている仕事の技術面での内容やそのおもしろさが低下しているということだった。『経営プラン』 の序文は、この70年間にわたって、仕事を小さな限られた職務に細分化し、その遂行の速度を上げていくということが系統的な形で試みられてきた、と述べている。序文は、さらにつぎのように続けている。『奇妙なことに 「科学的管理」 という名で知られるこの過程は、労働者を自分が扱っている機械または工程に付随している無目的的で思考力のない付属物としての存在にまで落とし込めようとするものである……』。
 連合委員会は、仕事の性格からずっと前に機械のペースと要求に縛られることになった他の労働者たちによる抵抗を自分たちのものとしてとらえた。『経営プラン』 は、これらの労働者たちがどのような形で人間以下の存在として扱われることを拒否しているかを示す実例を挙げている。
 たとえば、スウェーデンのボルボ社では、1969年の労働移動率は52%で、欠勤率はいくつかの工場では30%に達していた。アメリカでは、労働者の反応はもっと劇的なものだった。オハイオ州のローズタウンにあるゼネラル・モーターズ社の工場では、労働者は、コンピューター制御の生産ラインに直接手を下して破壊している。」 (ヒラリー・ウェインライト、デイヴ・エリオット著 『ルーカス・プラン 「もう一つの社会」 への労働者戦略』 緑風出版)

 労働のつまらなさを指摘する労働者の正直な行動にたして、アメリカの経営者は深刻に受け止めて対応することを迫られました。「ルーカス・プラン」 のショップ・スチュワードも認識を共有しようとしました。その捉え方は、原因は労働者に起因するのではなく労働そのものにあるということです。


 日本ではオイルショック後、合理化がすすめられます。「余剰」 な労働者には営業への職種転換や出向がおこなわれました。さらに “社員全員営業部員” とされてノルマ設定が課せられます。この頃から 「お客様は神様です」 が言われ始めます。顧客が要求するすべてに従って離しません。客は頭に乗ります。労働者は、自分の心が侵略されているという意識も失って従っていきました。メンタルヘルスにり患する労働者が増えました。


 「心の支配」 は世界的にすすんでいました。その問題の指摘は20世紀末になって労働現場の外部から行なわれます。
 1998年に発表されたフランスの精神科医マリー=フランス・イリゴイエンヌさんの 『モラルハラスメントが人も会社もダメにする』 (紀伊国屋書店) は 「モラルハラスメント」 の言葉を使用して問題を指摘しました。
 それまでは、労働者は職場でさまざまないじめや嫌がらせのような現象・雰囲気に遭遇しても言葉で表現したり、主張することができませんでした。『本』 を読んで初めて自分たちの周囲で起きている現象・雰囲気について捉えなおし、議論することができるようになります。同時に社会的に広範な議論が起こっていきました。
 モラルハラスメントとは 「雇われている労働者の権利や尊厳が侵されるような労働条件の切り下げを目的にした、またはその効果を狙って繰り返される行為。労働者の身体的、精神的または職業上の将来の名誉を傷つけることを目的にして繰り返される行為。」 です。

 アメリカでは1970年代から 「感情社会学」 という分野が登場し、肉体労働、頭脳労働ともう1つの形態として 「感情労働」 が登場します。
 アメリカの社会学者アーリー・ホックシールドは著書 『管理される心』 のなかで 「感情労働」を 「公的に観察可能な表情と身体的表現を作るために行う感情の管理で、賃金と引き換えに売られ、したがって <交換価値> を有する」 労働、「自分の感情を誘発したり抑圧したりしながら、相手の中に適切な精神状態を作り出すために、自分の外見を維持すること」 と定義し、具体的に航空会社の乗務員の事例から説明しました。


 講演は、後にひょうご労働安全センターの機関誌に掲載されます。


  「活動報告」 2016.5.17
  「活動報告」 2014.10.3
  「活動報告」 2013.10.1
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「過度な親切は止めましょう」                             「ただし私が買うときは正当な情報を伝えてください」
2015/11/26(Thu)
 11月26日 (木)

 11月12日から16日まで、コミュニティユニオン全国ネットワークは韓国で労働組合等と交流をしてきました。前回の続きです。
 3日目は、ウォンジン緑色病院内にある労働環境健康研究所を訪問しました。対応していただいたのは任祥赤赤 (イムサンヒョク) 所長と研修医の方です。

 研究所は1999年6月に設立されました。韓国で唯一の民間の労働安全衛生分野の研究所です。
 設立目的は、1980年代初めに源信 (ウォンジン) レーヨンで二酸化炭素中毒事件が発覚し、最終的には1000人を超える職業病患者を発生させ、死亡者は100人に及んだことを踏まえ、二度とこのような悲惨な被害者を出さないようにするということです。患者が闘って獲得した補償金で財団を立ち上げて病院と研究所を設立しました。
 93年にウォンジンレーヨンは廃業しました。財団の理事の半数は退職者の患者たちです。患者の集まりがあり、そこが推薦した人が理事になります。
 現在は医師3人、研修医4人など23人が働いています。
 労働組合、労働者、環境被害者の要請に応えて活動しています。また必要と判断したら独自に活動します。政府からはすごく嫌われています。にもかかわらず研究所が成長してきた背景は2つあります。1つは、国内の最高の専門家が集まっている、2つは、現実に最も必要な研究をしているということです。
 政府の労働安全政策制定にも深くかかわっていて、研究所が参加することで法案が変更させることもあります。政府には好かれていないのに法制化に至るのは、労働者と一緒になって社会的問題提起をする中で政府を動かすからです。研究のための研究をしていないからです。
 財源は、会員はいますが寄与度は少ないです。委託研究は、数が多くないですが政府や行政からもあります。労働組合からも、労働組合を通じた企業からもあります。
 韓国労総は内部に環境測定をできる組織がありましたが最近規模を縮小しました。あまり活動していません。

 最近の事例です。環境美化 (道路清掃) の清掃労働者は休憩所がありませんでした。作業を終えた服装で帰宅します。彼らのために休息と洗面するスペースが必要だという研究を行い、休憩所を設置するキャンペーンを環境美化の労働者を組織している労働組合と一緒に取り組みました。清掃労働者はほとんどが下請けで給料が低く、年齢が高い、そして労働者の権利を持たないままにいます。
 大きな波紋を社会に投げかけました。環境美化労働者が身体を洗える権利を含んだ法律が制定されました。

 コンビニやスーパーのレジで働くサービス業の女性労働者がいます。立って働いていると足が痛くなるし疲れます。これらの労働者のために調査を行い、椅子を置こうというキャンペーンを民間サービス労働組合と一緒に行いました。多くの社会団体がこのキャンペーンに参加しました。大きな社会的反響があり政府機関もキャンペーンに参加しました。
 きっかけとなったのは、イギリスの労働組合のホームページです。「立っていますか? 足が痛くなりませんか?」 と問いかけ、「労働組合に相談してください」 という相談事例を見つけました。椅子を置く取り組みでした。
 客がいいなければ座れます。キャンペーンを展開する時に客に対して座っていても失礼じゃないと宣伝しました。制度化は研究によって出来るものではなく、労働者の力も弱いので消費者や地域住民と一緒に行わなければなりません。
 しかし椅子を置いても座るのは難しいです。労働組合の力で勝ち取らなければなりません。

 建設労組と一緒に法律を変えた取り組みがあります。
 作業環境測定の制度があり、工場の保守、施設の公開には建設労働者がかかわります。例えば、化学物質を扱う工場で施設を変えるためにプラントの回収に携わる場合には短期間で清掃をします。その時に化学物資が暴露します。
 2つの制度を変えました。そのような施設管理に携わる建設労働者にどのような毒性の物質があるかの情報を伝える法律を作りました。短期間で工事を行うために環境を評価することが出来ませんでした。しかし有害化学物質に短期間でも暴露することは健康に影響があります。短期間暴露の基準を設定しようと研究成果を発表しました。これも法制化させました。

 地域住民の知る権利が法制化される予定です。住んでいる地域に工場がたくさんありますが、そこでどのような物質がどれくらいの量使われているのか、どれだけ危険なのかを地域住民は知りません。もし事故が起きた時、事実を知らないと退避することもできません。
 そのような情報を地域住民に知らせろとキャンペーンを行いました。労働部ではなく環境部の仕事です。
 それに基づき、各自治体で地域住民に知らせるための条例作りをしています。


 消費者に対面する、またはコールセンターで応対する労働者、顧客に対応するCSなどを韓国では感情労働者、そこでのいじめやパワハラを 「感情労働」 と呼んでいます。
 感情労働による健康障害はメンタルヘルスです。労災認定・補償の基準を定める法案を作成しました。うつ病、適応障害、パニック障害が対象になっています。とりあえず入り口のところではじまりました。長期的にはいろいろなことも入ってくると思います。因果関係・認定基準については法制化されていませんし、政府の政策もありません。労働時間がどれくらいか、企業による無理な要求はないかなどをいくつかを考慮し、その結果、精神疾患になりうるということを判断します。労災認定の中で精神疾患も年間約20人が認められています。
 労働環境健康研究所の研究を議員が反映させて取りまとめました。
 感情労働を巡ってネットワークを作りました。法制化できたのも消費者の支持があったからです。「過度な親切は止めましょう」 「ただし私が買うときは正当な情報を伝えてください」 という要求を掲げたら労働者の要求と一致しました。
 まだ立法化はされていませんが今度の国会で成立するかなと思っています。

 感情労働の具体例です。
 サムスンのアフターサービスの労働者はみな非正規労働者です。顧客先に行き、サービスが終わるとサムスンから電話がかかってきます。「今回のサービスは10点満点で何点でしたか」。10点でないとサービスに行った労働者は始末書を書き、全員の前で読み上げさせられます。普通の評価ではだめで、「よくできました」 でなければなりません。そうすると顧客側の要求が高くなります。「ゴキブリを捕まえてくれ」 とかもあります。
 そこまでいくとパワハラに近い労働者管理と言えます。
 労働組合があればそのようなことはさせません。しかし韓国の労働者の組織率は10%に満たないです。

 コールセンターにしょっちゅう電話をしてくる人がいますが、電話を受けた労働者は自分から電話を切ることが出来ません。クレーム電話でも先に電話を切ったらペナルティを課せられます。労働組合があったらそうではないでしょう。
 キャンペーンを進めたら、労働者が電話を先に切る権利を受け入れる企業も出てきました。それを法制化しようとしています。

 スーパーの労働組合で、感情労働の価値を認めろと要求しています。日本では笑顔で対応するのが当たり前と言われますが、そうではないということを認めさせようとしています。日本でも感情労働によるストレス疾患が増えていくと思われるので、日本に紹介すべきことがと思います。
 特に感情労働で苦しめられているのはデパートの化粧品売り場の労働者です。トラブルが一番多いです。デパートの化粧品売り場の労働者が、メーカー直属でなく輸入化粧品の販売代理業の会社で労働組合を作り、そこで感情手当を制定させました。会社ごとに差はあります。

 ロッテデパートの服売り場でパートの責任者の労働者が屋上から飛び降り自殺しました。遺書には直属の上司への不満が書かれていました。上司から販売量を上げるようにと実績を要求され、実績を上げないと叱責されました。その案件は労災と認められました。

 公務職の中に社会福祉職があり住民からの窓口の仕事をします。おもにお金のない人を相手にします。審査を通じて保護の対象から振り落とすこともします。落とされた住民は役所に来て狼藉を働くこともあります。
 年ごとに社会福祉制度が変わっていきますので業務量も多いです。2013年、区役所で社会福祉を専門にしている労働者3人が相次いで自殺しました。自治体で対応すると言っていますがどうなっているかは掴んでいません。

 労働者が体調不良に陥った場合の休職期間は、公務員は6か月です。民間企業にはありません。


 事前学習用に渡された労働政策研究・研修機構作成のパンフレット 『韓国における労働政策の展開と政労使の対応 -非正規労働者問題の解決を中心に-』 に、韓国で2番目の大型スーパー・ホームプラスでの非正規労働者の組織化と処遇改善の闘いについてのヒアリング調査が報告されています。上部団体のサービス連盟や民主労総の地域組織の支援を受けて労組が結成されたのは2013年3月24日です。
 ホームプラスは年間売上が約10兆ウォンで、大型店舗数は139店。労働者数は約2万1000人で、2015年3月現在の労働組合員数は約2500人です。正社員の加入も認めていますが加入者は少なく、パートタイマーが組合員の大半を占め、43店舗に組合支部が設立されました。そのうち、組合員が従業員の過半数を占める支部が10あります。

 報告の中の感情労働に関する部分を中心に紹介します。
 組合結成の背景には次のものが挙げられます。
 第1に、非正規労働者保護関連法の2年みなし規定により、多くのパートタイマーは無期契約労働者となりますが、勤続10年でも手取りの月給が100万ウォンを下回る労働者も多く、それも勤続10年までしか昇給しませんでした。そのために、勤続1年と10年との間に賃金の差はほとんどありませんでした。第2に、パートタイマーなのに超過労働を強いられることが多く、手当はほとんど支払われませんでした。第3に、暴言、暴行の人格無視、不当な仕事の命令が日常的に行われていました。また、顧客からのハラスメントにさらされているのに、会社の本格的な対応はありませんでした
 組合加入呼びかけ文には「不法行為をただすことから組合活動を始めます」という見出しのところに次のことが例示されています。「超過労働をさせながらも手当を支払わない」、「週12時間を超えることができないとされる超過労働が数十時間も行われている」、「個別従業員が顧客のクレームに耐えなければならず、冒涜されても、会社はどうしようもないとのことで対応をしてくれない」、「最賃とあまり変わらない賃金」、「上級者が汚い言葉や暴言を吐き、人格的な侮辱感を覚える言葉や行動を惜しまない」。
 組合結成後、現場では目に見える形で変化が現れてきました。一週間も経たないうちに、「上司が丁寧語を使うようになった」、「定刻退勤ができるようになった」、「組合結成により同僚の表情が明るくなった」、「協力会社の社員に掃除をさせなくなった」、「休日出勤をしないようにという指示が来るなど奇妙なことが起きている」、「法律で認められた権利を正当に行使するようになった」 等のような変化がありました。
 労使は2013年8月27日から労働協約締結に向けた団交に入り、4回目の交渉で基本協約を締結しました。組合は、152項目の要求項目を掲げて労働協約の締結を目指し、団交を続けていきましたが、会社は3分の1の項目を削除するように対抗してきました。
 組合は、11月10日に会社の本社前で座り込み集会を開催しました。また、ストへの賛否投票を行い、12月24日に96.7%でスト権を確立し、組合員は、「団結して労働協約を勝ち取ろう」等の字が入っている布 (背中屏報 (トンビョッポ)) を背中に張って仕事を行うことを決めました。12月31日、1つの店舗で部分ストに入りその後相次いで他の店舗でも部分ストを行いました。そして2014年1月9日に全面ストと上京集会に入ることを決定しました。会社は、それに押される形で同日深夜1時に労働協約の締結に同意しました。
 
 労働組合が高く評価する労働協約の内容です。第1に、労働時間の確定によるサービス残業の廃止、30分間の休憩時間 (有給) の獲得。第2に、入社16か月が経つと自動的に無期契約労働者となる雇用安定です。
 第3に、感情労働者の保護です。職員が顧客から暴行を受けた場合、会社は積極的な救済措置をとることを原則とし、また、暴言・暴行の際に当該の職員は直ちに顧客への対応を拒否し、代わって上位責任者が対応を行います。顧客からの暴言等で深刻な感情の毀損が認められる際に1時間の心理管理時間を与えるとともに当該の顧客に2回目の対面を原則禁止します。そして、顧客の不平不満の多い顧客センターでは暴行・暴行の予防措置をとります。組合は、感情労働手当として月5万ウォンを要求したが、認められませんでした。
 第4に、組合活動の保障です。企業が賃金を支払う6人の組合専従者を認めるとともに、各店舗に掲示板の設置、また、チェックオフ (賃金の1%) も組合の事務室提供も認めさせました。第5に、組合員は、法律や労働協約によって保障されている権利を正当に行使することができるようになりました。

 労働協約の締結の後、組合は、2014年4月21日より初めての賃上げ交渉を行いました。要求内容は、1.生活賃金の保障として、2013年都市労働者の平均賃金の58%水準の基本給 (月148万ウォン) を求めた。2.賃金の低下を伴わないボーナス4か月の支給。3.レジうち、調理等職種別に異なる賃金を統一すること、4.感情労働手当の新設、等10項目でした。
 労働組合は、8回までの団交で具体的な回答内容を示されなかったのでスト権の投票を行うことを決めました。投票の結果、93%の賛成率を記録しました。7月11日から部分ストを行い、22日に警告ストの実施を決めました。28日からは部分ストに加えて集団休暇闘争を行い、8月29日は、全面ストの決起集会を開きました。そのほか店舗別ピケッティング及び集会、店舗別一斉食事スト等の多様な争議行為が行われました。このような組合の抗議を経て、10月23日、労使は妥結する方針を示しました。
 主な内容は、第1に、平均賃上げ率を3.79%以上にする、第2に、職種区分の賃金レベルを従来5つから3つにする、です。

 組合は、初めての賃上げ交渉を次のような意味づけをしています。第1に、会社設立15年ぶりに労働者が賃金を直接決める歴史的な出来事である、第2に、従業員が会社の爆発的な発展を遂げてきた主役であったにもかかわらず、低賃金、高い労働強度に強いられてきた者として、それに相応しい正当な要求を求める交渉であった、第3に、組合員の団結と実践によって、会社を楽しく誇らしい職場に作り替える橋頭堡であった。

 ホームプラスでは、非正規労働者が自ら労働組合を立ち上げて、処遇改善活動等をしているが、それも当該労働者が無期契約化されたから可能でした。非正規労働者保護関連法上2年のみなし規定は、非正規労働者の組合立ち上げや活動の環境を間接的に創ったといって過言ではありません。


 韓国の労働者の労働条件、処遇、労働安全衛生、健康は労働組合がキャンペーンなどを展開し、地域住民や利用者を共感させて共同の闘いを組んで向上させています。その闘いに労働環境健康研究所はコミットします。そして社会環境を変えていっています。
 「お客様は神様」 ではありません。労働者と消費者・利用者はお互いに人権と人格を認め合い、社会のパートナーとして理解しあって共生していくことの大切さを痛感させられました。


   「海外のメンタルヘルスケア 韓国」
   「感情労働」
   「職場の暴力」
   「活動報告」 2015.7.23
   「活動報告」 2015.12.27
   「活動報告」 2014.2.4
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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