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労働政策審議会が有識者だけで構成される
2017/09/19(Tue)
 9月19日 (火)

 7月31日、労働政策審議会 「労働政策基本部会」 が初会合を開きました。「労働政策基本部会」 は、昨年12月14日に 「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」 が提出した報告書を受けて新設されました。
 目的は、「現在行われている労働政策についての議論が分科会及び部会単位で行われており、分科会及び部会を横断するような課題については議論されにくい環境にある」 「研究会等や労政審での議論は法改正の具体的な内容が中心となり、中長期的な課題についての議論が不足している」 のでこのような問題に対応するといいます。
 具体的には、「各分科会及び部会を横断する中長期的課題、就業構造に関する課題、旧来の労使の枠組に当てはまらないような課題について審議を行う」 といいます。例えば・技術革新 (AI等) の動向と労働への影響等 ・生産性向上、円滑な労働移動、職業能力開発・時間・空間・企業に縛られない働き方等のような事項について審議します。

 構成員は 「基本部会運営規程」 に 「委員は公益を代表するもののみ」 とあり15人以内です。
 7月31日に開催された部会の委員は12人でした。学者5人、経営者4人、弁護士1人、エコノミスト1人、そして連合の元会長の古賀信明氏です。15人を予定していて残りの3人の枠は企業代表者と労働組合関係者だといいます。公益を代表するものだけでは労使自治が否定されているという意見に対応するため、実態としては労働者代表も含まれているという言い訳も準備されています。しかし決まらないままで止まっていました。8月に内閣改造がおこなわれることになると、改造前にとにかく開催の既成事実をつくっておくということになりました。
 安部政権が推し進めている 「働きかた改革」 は経産省の主導だといわれていますが、8月の内閣改造では、それまで官邸で 「仕掛け人」 として 「働き方改革実行計画」 をまとめてきた加藤勝信内閣府担当相が、厚生労働相に横滑りしています。

 労働政策についてはILOで労使の協議によって決定するということになっています。
 日本でも厚労大臣の諮問機関である労働政策審議会 (労政審) において 「労働者代表」 「使用者代表」 「公益代表」 三者の10人ずつで構成され、合意で決定することになっています。審議会の下にある7つの分科会や部会でも 「三者合意」 が徹底されています。
 「労働政策基本部会」 はそれが覆されています。このようなことを許してしまうと、労働現場の労使関係にも影響が出てきます。

 「有識者会議」 の報告書には 「法制度上は、我が国が批准しているILO条約で要請されているものを除き、法律の制定・改正を行う際に労政審での議論を必ず行わなければならないこととはなっていない」 とし、「働き方やそれに伴う課題が多様化する中、旧来の労使の枠組に当てはまらないような課題や就業構造に関する課題などの基本的課題については、必ずしも公労使同数の三者構成にとらわれない体制で議論を行った方がよいと考えられる」 としています。政府と自民党、財界は、条約の隙間を拡大解釈し、労働政策における労使自治の原則・政策決定のプロセスを否定し、解体しようとしています。
 具体的例として挙げられたのが 「・時間・空間・企業に縛られない働き方等のような事項」 は 「高度プロフェッショナル制度」 を見据えています。


 2015年6月30日に閣議決定された規制改革実施計画に 「多様な働き手のニーズに応えていくため、従来の主要関係者のみならず、様々な立場の声を吸収し、それらを政策に反映させていくための検討を行う」 ことが盛り込まれました。
 これを受け、2016年5月公表の 「規制改革実施計画のフォローアップ結果」 では 「働き方の多様化等により的確に対応した政策作りのため、労働政策審議会等の在り方について検討を行う」 とされました。
 また2016年2月23日、自民党の 「多様な働き方を支援する勉強会」 (会長:川崎二郎、事務局長:穴見陽一) からも 「労働政策審議会に関する提言」 を受けました。そこには 「ILOの政労使三者構成の原則を踏まえ、政策を議論する場面においては、厚生労働省の政務三役が会議に参加するなど、『政』 の役割を強化すべき」 とあります。
 2016年12月14日、これらの意見をうけて設置された 「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」 は 「労働政策基本部会」 の設置を決定しました。
 当初は、「労働政策基本部会」 を労政審本審議会の下に置くことは想定していませんでした。しかし抵抗にあい、本審議会の下に部会として置くことになりました。
 安倍政権の規制改革、働き方改革実現会議が労政審にも進出してきました。


 なぜこのような動きが登場したのでしょうか。
 2015年2月13日、労政審から 「高度プロフェッショナル制度」 に関する建議 「今後の労働時間法制等の在り方について (報告)」 が提出されました。そこには、使用者代表委員と労働者代表委員からの対立する意見が併記されています。「三者合意」 が成立しませんでした。
 規制改革実施計画が閣議決定されたのはその後の2015年6月30日です。


 2015年6月に閣議決定した 「日本再興戦略」 を踏まえて、「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」 が設置され、20回の検討会の議論をへて2017年5月に報告書が提出されました。そのなかにいわゆる 「解雇自由法制」 がありました。
 報告書には 「・解決されていない法技術的論点が多く、現時点で新制度を設けるのは時期尚早等の意見もあった。」 「・解決されていない法技術的論点が多く、現時点で新制度を設けるのは時期尚早等の意見もあった。」 「現行の労働審判制度が有効に機能しており、こうした現行の労 働紛争解決システムに悪影響を及ぼす可能性があることのほか、労使の合意による解決でなければ納得感を得られないので、合意による解決を大事にすべきということや、企業のリストラの手段として使われる可能性があること等の理由から、金銭救済制度を創設する必要はないとの意見があったことを、今後の議論において、十分に考慮することが適当である。」 と記載されています。

 これまでは労政審を経たならば、労働者代表の同意も得たということで法改正の作業に進めたのですがそうは進みません。検討会や審議会からも期待するブーメランの報告が返ってきません。急ぐはずの 「高度プロフェッショナル制度」 の法改正は2年経過しても成立していません。全国過労死を考える家族の会などは必死に反対運動を展開しました。
 安倍政権と経産省は、「働き方改革」・「働かせ方改革」 を強引に推し進めようとしています。そのためさまざまなところで異論が出ています。逆に反対運動が盛り上がっていきます。

 「労働政策基本部会」 はその教訓を踏まえての制度改革です。反対の世論をまき起こさないで決定していく方策がとられます。安部政権は 「働き方改革実現会議」 を設置し今年3月末には 「働き方改革実行計画」 をまとめています。


 では 「高度プロフェッショナル制度」 を巡る状況は、今、どうなっているでしょうか。
 7月13日、連合の神津会長は安倍首相と会談し、これまで反対の姿勢を表明してきた 「高度プロフェッショナル制度」 の創設を 「年104日以上の休日確保の義務化」 などの条件付きで容認する姿勢を表明したことを明らかにしました。安倍首相は 「しっかり受け止めて検討する。経団連とも調整する」 と応じたといいます。神津会長は3月頃から水面下で政府と交渉をつづけてきていたことも明らかにしました。
 労政審を無視し、重要法案を労・公の “ボス交” で決定しようとしました。なおかつ裏交渉を公表してはばかりませんでした。しかし傘下単産などから反対意見に遭遇し、あらためて反対を表明せざるを得なくなりました。

 8月30日、厚労省は残業時間の上限規制と 「高度プロフェッショナル制度」 を労基法改正として一本化した方針を固めて労政審労働条件分科会で概要説明の資料を提出し説明しました。分科会は9月4日にも開催されます。
 一本化のヒントを与えたのは連合です。相反する2つの政策を一緒にすれば連合は反対の意思を表明していてもいつかは折れるとよみ、揺さぶりをかけています。連合は安倍政権に助け舟を出したのです。
 それをふまえて9月8日には 「働きかた改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」 が諮問されました。「法律案要綱」 は8種類の労働法規の改正を一まとめにした一括法案で48ページにおよびます。
 (1)労働基準法 残業時間の上限規制 ▽裁量労働制の対象拡大 ▽高プロ ▽年休取得促進
 (2)じん肺法 産業医・産業保健機能の強化
 (3)雇用対策法 「労働施策総合推進法」 に改称。働き方改革の理念を定めた基本法
 (4)労働安全衛生法 研究開発職と高プロ社員への医師の面接指導
 (5)労働者派遣法  同一労働同一賃金
 (6)労働時間等設定 勤務間インターバルの努力義務改善
 (7)短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律 (パートタイム労働法) 「パート有期法」 に改称。
   不合理な待遇の禁止 (同一労働同一賃金)。
 (8)労働契約法 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止に関する規定を削除。期間の
   定めのある労働者は (7) に移す。

 これらの内容がこのスピードで審議し、答申されたのです。15日、労働者側は 「高プロと裁量労働制拡大は必要なく、これらを含む答申は遺憾であり、残念」 と意見表明しました。しかし答申には要綱を 「おおむね妥当」 としました。「高度プロフェッショナル制度」 の導入と裁量労働制の対象拡大に対しては、労働者代表委員からの 「長時間労働を助長するおそれがなお払拭されておらず、実施すべきではない」 の反対意見が付記されました。
 政府は原則2019年4月の施行を目指します。

 安倍政権の経済政策は挫折してしまいました。経済界はそれを克服するには労働市場の改革、雇用の流動化が必要で、生産性向上とコスト削減を目指すとなりふり構わす主張し、労働者の生活や健康には関心を示しません。労働者と労働組合は 「高度プロフェッショナル制度」 の法制化を絶対に阻止しなければなりません。

 9月5日の 「活動報告」 の再録です。
 8月10日、厚生労働省は2016年度 「過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業報告書」 を公表しました。
「特に、『把握されている労働時間の正確性』 に関しては、把握されている労働時間が 『全く正確に把握されていない』 場合に比べて、『正確に把握されている』 方が、1週間当たりの残業時間が約6時間短縮される傾向があるほか、年次有給休暇の取得日数の増加、メンタルヘルスの状態が良くなる影響も示唆された。加えて…… 『1週間当たりの残業時間』 に対しては、『把握されている労働時間の正確性』 に関して 『正確に把握されている』 場合や、『残業を行う場合の手続き』 に関して 『事前に本人が申請し、所属長が承認する』 場合や 『所属長が指示した場合のみ残業を認める』 場合において、他の要因よりも長時間労働の抑制に特に強く関連性を有していることが伺えた。 これらの結果を踏まえると、労働者の心身の健康の確保、過労死等の防止に向けては、労働時間を正確に把握することや残業する場合の手続きを適正に行うことが、非常に重要な取組基盤となることが改めて確認された」
 この調査結果からも、「高度プロフェッショナル制度」 は 「過労死促進法案」 です。
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過労死防止対策  課題ははっきりしている
2017/09/05(Tue)
 9月5日 (火)

 過労死問題は長時間労働や医学的知見からだけでは説明できません。長時間労働はその原因やその中で発生す精神状態の分析も必要です。
 8月10日、厚生労働省は2016年度 「過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業報告書」 を公表しました。

 調査の目的は、「過労死等の実態を把握するためには、『過労死等の防止のための対策に関する大綱』 にも記載されているとおり、医学面の調査研究だけではなく、長時間労働の実態、企業の取組等、労働・社会面の調査研究も必要である。とりわけ、過重労働が多く発生し、重点的な調査を行う必要のある職種、業種等を検討し、さらに詳細な調査、分析を行うことが必要である」 ことを踏まえ、「過労死等の実態を労働・社会的側面から明らかにすることを目的として」 います。

 報告書の 「第2章 既存の統計資料等の整理」 の集計対象データは 「平成27年度調査における労働者調査において、『正社員 (フルタイム)』 であり、かつ 『通常の 勤務時間制度』 で働いていると回答のあった者のうち、『最終学歴』、『平均的な1週間当たりの残業時間』、『残業が最長の週の残業時間』、『労働時間の把握方法』、『残業を行う場合の手続き』 についてそれぞれ有効回答 (回答が 『その他』 を除く。) があり、かつ、『労働時間の把握方法』 が 『特に把握されていない』 と回答した者を除いた7.242件」 についてです。

 平均的な1週間当たりの残業時間に影響を及ぼす要因についてです。
 「労働者の特性が及ぼす影響」としては、「残業時間が長くなる要因として、男性であること、年齢が低いこと、主たる家計の維持 (支持) 者であることが挙げられた。また、最終学歴においては、『中学校卒・高校卒』 の場合に比べて、『短期大学・高等専門学校卒』 の場合に残業時間が短くなる傾向が見られた」といいます。

 労働環境が及ぼす影響としては、「『職階』 では、『一般社員』 に比べて何らかの役職者の方が、残業時間が長くなる傾向が見られた。
 『従事している仕事の種類』 では、『事務職』 に比べて 『管理職』、『専門職・技術職』、『生産工程職』、『輸送・機械運転職』、『建設・採掘職』 において残業時間が長くなる傾向が見られた。特に 『輸送・機械運転職』 では、『事務職』に 比べて1週間当たり約1.8時間長くなる傾向が見られた。
 『従業員規模別』 では、『10人未満』 に比べて 『30人以上50人未満』 以上の企業において、残業時間が長い傾向が見られた」 といいます。

 企業の管理・対応等が及ぼす影響においては、「『残業手当の支給の有無』 では、残業手当が『支給されていない』 (サービス残業の者等含む) 者に比べて、『全額支給されている』 者の方が残業時間は短くなる傾向が見られた。
 『把握されている労働時間の正確性』 では、把握されている労働時間が 『全く正確に把握されていない』 場合に比べて、『正確に把握されている』、『概ね正確に把握されている』、『あまり正確に把握されていない』 場合の方が残業時間は短くなる傾向が見られた。特に 『正確に把握されている』 場合では1週間当たり6時間近い残業時間の短縮が見られた。 『残業を行う場合の手続き』 では、『本人の意思や所属長の指示に関わらず残業が恒常的にある』 場合に比べて、『事前に本人が申請し、所属長が承認する』 場合や 『所属長が指示した場合のみ残業を認める』 場合において、残業時間は短くなる傾向が見られた」といいます。

 企業の経営環境が及ぼす影響については、「企業の経営環境 (ただし、労働者による評価に基づくもの) が 『平均的な1週間当たりの残業時間』 に及ぼす影響についてみると、『この会社の経営はうまくいっている』と感じている方が、残業時間は短くなる傾向が見られた」 といいます。


 年次有給休暇の取得日数に影響を及ぼす要因についてです。
 労働者の特性が及ぼす影響については、「男性であること、年齢が低いこと、配偶者がいないこと、『こころの耳』 を知らない場合において、取得日数が短くなる傾向が見られた」 といいます。

 労働環境が及ぼす影響については、「『従業員規模別』 では、『10人未満』 に比べて従業員規模が大きい方が、取得日数が多くなる傾向が見られた(ただし、『500人以上1000人未満』 の規模は有意な違いは見られなかった)。
 『労働組合の有無』 別では、『労働組合がない、もしくは分からない場合』 に比べて、加入・未加入に関わらず、『労働組合がある』 場合において取得日数が多くなる傾向が見られた。
 また、『年次有給休暇の年間新規付与日数』 が多いほど取得日数が多くなる傾向が見られた。『平均的な1週間当たりの残業時間』 では、『0時間』 に比べて 『5時間以上』 の場合に、取得日数は少なくなる傾向が見られた。平均的な1週間当たりの残業時間が長くなるほど取得日数が短くなり、休みがとりづらい状況が伺えた。特に平均的な1週間当たりの残業時間が 『20時間以上』 の場合には 『0時間』 に比べて約3日、取得日数が少なくなることが分かった」といいます。

 企業の管理・対応等が及ぼす影響については、「『残業手当の支給の有無』 では、残業手当が 『支給されていない』 者 (サービス残業の者等含む) に比べて、『全額支給されている』 者の方が取得日数は多くなる傾向が見られた。
 『把握されている労働時間の正確性』 では、把握されている労働時間が 『全く正確に把握されていない』 場合に比べて、『正確に把握されている』、『概ね正確に把握されている』 場合の方が取得日数が多くなる傾向が見られた」 といいます。

 企業の経営環境が及ぼす影響については、「企業の経営環境 (ただし、労働者による評価に基づくもの) が 『年次有給休暇の取得日数』 に及ぼす影響についてみると、有意な関連性はみられなかった」 といいます。


 メンタルヘルスの状況に影響を及ぼす要因についてです。
 調査には 「GHQ精神健康調査票」 を使用しています。主として神経症者の症状把握、評価および発見に有効なスクリーニング調査であり、「日本版GHQ12」 は12問からなる調査で、各問の回答に応じて0点または1点を付与し、0~12点の合計得点を算出します。スコアが高いほど精神的には不健康 (メンタルヘルスの状態が悪化している) といえます。

 労働者の特性が及ぼす影響については、「『年齢が高い』、『配偶者がいる』、『勤務日1日の睡眠時間が長い』 場合において、GHQ-12のスコアが低くなる、即ち、メンタルヘルスの状態が良好になる傾向が見られた。また、 最終学歴においては、『中学校卒・高校卒』 の場合に比べて、『大学卒・大学院修了』 の場合にメンタルヘルスの状態が良好になる傾向が見られた。
 一方、『介護をしている』、『業務以外にストレスや悩みを感じた経験がある』 場合において、GHQ-12のスコアが高くなる、即ち、メンタルヘルスの状態が悪化する傾向が見られた」といいます。

 労働環境が及ぼす影響については、「『平均的な1週間当たりの残業時間』 では、『0時間』 の場合に比べて 『10時間以上』 の場合に、メンタルヘルスの状態が悪化する傾向が見られた。また、『残業が最長の週の残業時間』 では、『0時間』 の場合に比べて 『30時間以上』 の場合に、メンタルヘルスの状態が悪化する傾向が見られた。
 『ハラスメントの有無』 別では、『ハラスメントはない』 場合に比べて、『ハラスメントを受けている』 または 『自分以外がハラスメントを受けている』 場合において、メンタルヘルスの状態が悪化する傾向が見られた。
 『職場環境に対する評価』 に関しては、『自分に与えられた仕事について、裁量を持って進めることができる』場合や 『今の職場やこの仕事にやりがいや誇りを感じている』 場合及び 『全体として、仕事の量と質は適当だと思う』 場合は、そうでない場合に比べてメンタルヘルスの状態が良好になる傾向が見られた」 といいます。

 企業の管理・対応等が及ぼす影響については、「『残業手当の支給の有無』 では、残業手当が 『支給されていない』 者 (サービス残業の者等含む。) に比べて、『全額支給されている』 者の方が、メンタルヘルスの状態が良好になる傾向が見られた。
 『把握されている労働時間の正確性』 では、把握されている労働時間が 『全く正確に把握されていない』 場合に比べて、『正確に把握されている』、『概ね正確に把握されている』、『あまり正確 に把握されていない』 場合の方が、メンタルヘルスの状態が良好になる傾向が見られた
 『残業を行う場合の手続き』 では、『本人の意思や所属長の指示に関わらず残業が恒常的にある』 場合に比べて、『事前に本人が申請し、所属長が承認する』 方が、メンタルヘルスの状態が良好になる傾向が見られた」とあります。


 まとめにあたる 「留意事項」 です。
「労働者の特性や労働環境、企業の管理・対応等のいずれも、『平均的な1週間当たりの残業時間』、『年次有給休暇の取得日数 (2014年度)』、『メンタルヘルスの状況』 (GHQ-12) と有意に関連している可能性が示唆されるとともに、『平均的な1週間当たりの残業時間』 に関しては、企業の経営環境とも関連している可能性が示唆された。また、労働環境としての 『週間当たりの残業時間』 は 『年次有給休暇の取得日数 (2014年度)』 や 『メンタルヘルスの状況』 (GHQ-12) と有意に関連しており、残業時間が長いほど年次有給休暇が取りづらく、また、メンタルヘルスの状態が悪化する可能性があると考えられた。
 さらに、労働者の特性や労働者が置かれている労働環境は様々であるが、そうした要因を考慮してもなお、企業の管理・対応等は、残業時間や年次有給休暇の取得日数だけでなく、メンタル ヘルスの状態にも関連している可能性が示唆された。特に、『把握されている労働時間の正確性』 に関しては、把握されている労働時間が 『全く正確に把握されていない』 場合に比べて、『正確に把握されている』 方が、1週間当たりの残業時間が約6時間短縮される傾向があるほか、年次有給休暇の取得日数の増加、メンタルヘルスの状態が良くなる影響も示唆された。加えて…… 『1週間当たりの残業時間』 に対しては、『把握されている労働時間の正確性』 に関して 『正確に把握されている』 場合や、『残業を行う場合の手続き』 に関して 『事前に本人が申請し、所属長が承認する』 場合や 『所属長が指示した場合のみ残業を認める』 場合において、他の要因よりも長時間労働の抑制に特に強く関連性を有していることが伺えた。 これらの結果を踏まえると、労働者の心身の健康の確保、過労死等の防止に向けては、労働時間を正確に把握することや残業する場合の手続きを適正に行うことが、非常に重要な取組基盤となることが改めて確認された」 といいます。


 この調査結果から、今、働きかた改革において法案化がおこなわれようとしている 「残業代ゼロ法案」 ・ 「高度プロフェッショナル制度」 (高プロ) をみたらどうなるでしょうか。
「『残業を行う場合の手続き』 では、『本人の意思や所属長の指示に関わらず残業が恒常的にある』 場合に比べて、『事前に本人が申請し、所属長が承認する』 場合や 『所属長が指示した場合のみ残業を認める』 場合において、残業時間は短くなる傾向が見られた」
「『把握されている労働時間の正確性』 では、把握されている労働時間が 『全く正確に把握されていない』 場合に比べて、『正確に把握されている』、『概ね正確に把握されている』、『あまり正確に把握されていない』 場合の方が残業時間は短くなる傾向が見られた。」
「『把握されている労働時間の正確性』 では、把握されている労働時間が 『全く正確に把握されていない』 場合に比べて、『正確に把握されている』、『概ね正確に把握されている』、『あまり正確 に把握されていない』 場合の方が、メンタルヘルスの状態が良好になる傾向が見られた。」
 「高度プロフェッショナル制度」 はこのような実態に逆行しています。これだけでメンタル状況は不調になります。


 これらの調査結果のほとんどは日々の労働相談のなかで実感していることです。しかし行政は “素人” の意見・要求は聞き入れません。
 日本における行政の調査は、取り組みの糸口を探るのではなく、データを作成して公表することで落着してしまいます。糸口を探ろうとするなら沢山の課題が見えています。
 調査結果を公表してそれ以降は企業の良心に任せるのではなく、議論をまき起こし、行政は指導、規制、法制化へと進めていかなければなりません。
 そうでないとせっかくの過労死対策も絵に描いた餅になってしまいます。

   「活動報告」 2017.7.7
   「活動報告」 2017.6.9
   「活動報告」 2017.1.31
  当センター「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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「自動車運転従事者」 は過労死予備軍
2017/07/07(Fri)
 7月7日 (金)

 7月5日、国土交通省は今年3~5月に労働組合を通じて実施した全国のバス運転手の勤務状況アンケート調査結果を発表しました。7.083人が回答しました。2016年1月15日に起きた軽井沢スキーバス事故の対策を検討する有識者委員会の要請を受けたものです。
 直近4週間の勤務状況を尋ねたところ、国は運転手の拘束時間について 「原則13時間以内」 などとする基準を定めていますが、1日当たりの平均拘束時間が 「13時間以上」 は19.1%でした。睡眠時間についての規定はありませんが、平均睡眠時間が 「5時間未満」 24.9%、「5~7時間」 63.7%、「7時間以上」 11.4%でした。その結果、約2割が1日13時間以上拘束され、4人に1人は睡眠が5時間未満という実態が明らかになりました。
 一方、1200のバス事業者を対象とした調査では、「運転手を仮眠させる施設の確保に苦労する」 「高齢化、運転手不足が課題」 という意見が多かったといいます。
 業種がおかれている状況は深刻です。


 6月30日、厚労省は2016年度 「過労死等の労災補償状況」 を公表しました。
 「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」 については、請求件数825件で支給決定件数は260件、そのうち死亡件数は107件です。
 請求件数は12年までは800件台半ばに至っていましたが、13年度からは700件台に減っていました。16年度はまた800件台になりました。
 支給決定件数は13年度まで300件台でしたが、14年度から200件台に減っています。認定率は、11年度43.2%、12年度45.6%、13年度44.8%、14年度43.5%でしたが、15年度は37.4%、16年度38.2%と急減しています。
 「審査請求事案の取消決定等による支給決定状況」、つまり一旦請求は認められなかったが不服を申し立てて支給決定になった事案が、16年度は16件ありました。この数字は 「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」 には含まれていません。合わせると16年度の支給決定認定件数は277件です。

 支給決定件数を職種別 (中分類) にみると 「自動車運転従事者」 が89件で断トツです。続いて 「法人・団体管理職員」 22件、「飲食物調理従事者」 14件、「商品販売従事者」 13件、「営業職業従事者」 10件の順です。「自動車運転従事者」 3分の1を占めます。
 年齢別では50~59歳が99件、40~49歳が90件、30~39歳が34件、60歳以上が33件です。
 労働時間数別の支給決定件数では、時間外労働時間が1か月又は2~6か月における1か月平均80時間以上が全体の94%、100時間以上では52%を占めます。160時間が17件です。

 しかし6月5日の労働政策審議会の時間外労働の上限規制についての建議は、現行の時間外限度基準告示の①自動車の運転の業務、②建設事業、③新技術、新商品等の研究開発の業務、④厚生労働省労働基準局長が指定する業務、についてはそのまま上限規制の適用除外を容認し、さらに医師を追認しました。
 上限規制の法改正がおこなわれた施行期日の5年後に、年960時間以内の規制を適用することとし、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けることが適当であるとしています。
 全国のバス運転手の勤務状況アンケート調査結果と 「過労死等の労災補償状況」 をみるとバス運転手は過労死等の予備軍です。放置することは許されません。抜本的改善が早急に必要です。


 「精神障害の労災補償状況」 については、請求件数1.586件で支給決定件数 (いわゆる労災認定) は498件、認定率は36.8%です。請求件数はこの間増え続けていて13年度から1.400件台、15年度に1.500件台に達しました。労災認定の基準は11年12月に 「判断指針」 から 「認定基準」 に改善されました。それにより12年度以降は申請件数、支給決定認定件数が増えました。申請件数が15年度と比べて16年度に71件増えている背景としては過労死防止法案をはじめとして労災問題にたいする社会の関心が強まったことが影響していると思われます。
 支給決定認定率はこの間30%後半で大きな変化はありません。
 「審査請求事案の取消決定等による支給決定状況」 は16年度は13件ありました。13年度12年、14年21件、15年21件でした。これらの数字は 「精神障害の労災補償状況」 には含まれていません。合わせると16年度の支給決定認定件数は511件です。そのうち自殺者 (未遂を含む) は91件です (84+7)。

 支給決定件数を職種別でみると、専門的・技術的職業従事者115件 (前年度114件1位)、事務従事者81件 (93件2位)、サービス職業従事者64件 (53件3位)、販売従事者63件 (48件4位)、生産工程従事者52件 (36件6位)、輸送・機械運転従事者32件 (37件5位) の順になっています。
 職種の中分類別では、一般事務従事者47件、営業職業従事者37件、法人・団体管理職員29件、自動車運転従事者26件、商品販売従事者25件の順です。

 発表された資料から細かいことはわかりませんが、政府はいま、高度な能力を持つ人に労働時間でなく、仕事の成果に応じて賃金を決める働き方を認める 「高度プロフェッショナル制度」 の導入をおこなおうとしています。
 専門的・技術的職業従事者など 「専門的・・・」 の職種の労働者は 「高度プロフェッショナル制度」 の対象者ではないでしょうか。だとしたらやはり時間外労働を野放しにすることは危険です。

 年齢別では、40~49歳144件、30~39歳136件、20~29歳107件、60歳以上20件です。
 支給決定件数を、時間外労働時間が1か月又は2~6か月における1か月平均の20時間刻みの労働時間数区分でみると、100時間以上が120時間未満49件、120時間以上140時間未満38件、140時間以上160時間未満19件、160時間以上52時間となっています。この状況はあまり変化がありません。一方、20時間未満が84件、40時間未満43件、60時間未満41時間です。体調不良におちいる原因は労働時間だけでないことを物語っています。

 「出来事の類型」 では、出来事の類型の 「事故や災害の体験」 では 「(重度の) 病気やケガをした」 が42件、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」 53件です。「仕事の量・質」 では 「仕事内容・仕事量の (大きな) 変化を生じさせる出来事があった」 63件、「2週間以上にわたって連続勤務を行った」 47件、「役割・地位の変化等」として「配置転換があった」 14件、「対人関係」 として 「ひどい嫌がらせ、いじめ又は暴行をうけた」 74件、「上司とのトラブルがあった」 24件、「セクシャルハラスメント」 として 「セクシャルハラスメントを受けた」 29件などとなっています。
 「配置転換があった」 は、リストラ部屋などが含まれるのでしょうか。

 支給決定件数・率が都道府県によって大きなばらつきがあります。問題があると思われる府県の請求件数、決定件数、支給決定件数について、12年度、13年度、14年度、15年度、16年度の流れを見てみます。カッコは支給決定率です。
 埼玉県 43件-42件-50件-50件-48件   45件-34件-49件-36件-39件
      6件 (13.3%)- 8件 (23.5%)-22件 (44.9%)-11件 (30.5%)-16件 (41%)
 千葉県 46件-43件-46件-48件-48件   41件-47件-39件-48件-39件
      9件 (21.2%)-13件 (27.7%)-19件 (48.7%)-17件 (35.4%)-12件 (40%)
 愛知県 67件-57件-61件-67件-98件   83件-51件-51件-52件-81件
      19件 (22.9%)-10件 (19.6%)-17件 (33.3%)-10件 (19.2%)-27件 (33.3%)
 三重県 16件-12件-22件-19件-21件   14件-13件-12件-21件-23件
      0件 ( 0.0%)- 2件 (15.3%)- 6件 (50.0%)-6件 (28.6%)-9件 (39%)
 熊本県 15件-10-件18件-14件-22件   16件- 8件-13件-10件-17件
      3件 (18.7%)- 2件 (25.0%)- 4件 (30.8%)-3件 (30%)-6件 (35.3%)
 これらの県は、まだまだ総就業者と比べて今も申請件数が少ないです。労働者が期待していません。


 今回初めて裁量労働制対象者に係る支給決定件数が6年分発表されました。
 「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」 は、11年度専門業務型1件、企画業務型0件、12年度は4件と0件、13年度は5件と0件、14年度は7件と1件、15年は3件と0件、16件度は1件と0件です。
 「精神障害の労災補償状況」 は、11年度専門業務型2件、企画業務型0件、12年度は11件と0件、13年度は10件と0件、14年度は6件と1件、15年は7件と1件、16件度は1件と0件です。
 裁量労働は労働者の都合にあわせて業務遂行できる、早期に終了した時は自由に時間を使えるなどをうたい文句に導入されましたが、特に専門業務型は逆な状況になっていることが明らかにされました。
 働きかた改革においても議題になっていますが安易な導入・促進派危険です。


 「過労死等の労災補償状況」 と 「精神障害の労災補償状況」 を合わせて750人以上が労災に認定され、しかも200人近くが死亡・自殺 (未遂) している状況が続いている国は他にあるでしょうか。しかも経済的問題、時間の問題で申請に至らなかったり、別の対応で解決している事案もたくさんあります。また認定基準が厳しすぎるから認定率が低いことをしってあきらめる人も多くいます。
 労働者の命の価値が低く取り扱われています。しかし政府も使用者も労働者もこれらの数字に慣らされています。
 労災の申請数が増えることは歓迎されることではありません。
  “働き方” “働かせ方” “働かされ方” について労働者の側から根本的問い直しが必要です。


 6月1日の河北新報は 「宮城の労災死傷者2467人 3年ぶり増加」 の見出し記事を載せました。
 宮城労働局がまとめた2016年の労災発生状況によると、県内の死傷者数 (休業4日以上) は前年比185人増の2467人となり、3年ぶりに増加した。東日本大震災の復興事業で作業員が足りず、現場監督や安全教育が不十分になっているためとみられている。
 業種別の死傷者数は、製造業が前年比53人増の474人、建設業は60人増の432人だった。全体の死者数は6人減の16人で統計を始めた1998年以来、最少となったが、そのうち建設業が5人、製造業が4人と半数以上を占める。
 16年は、高台移転などの土地造成が終わった地域で、建物やインフラの建設が進み、資材の製造も多くなった。作業員が重い材料を運ぶ際に手足を挟まれたり、製造ラインの機械や重機に巻き込まれたりする事故が目立った。
 同局は 「復興事業の人員不足で事故が増えた一方、作業現場で高所からの転落防止機能の設置が進んでおり、死者数は減った」 と分析している。
 ほかの業種では、サービス業が全体で56人増の1115人。内訳は小売りが25人増の310人、社会福祉施設が12人増の170人だった。介護機器が十分に普及していない施設で、介護士らに過度の負担がかかり、腰痛などを患うケースが多いという。
 17年1~4月の県内の労災死傷者数は、前年同期比62人減の609人。建設業では28人減の104人となっている。同局担当者は「今年は件数が減るよう対策を考えたい」と話した。

 東日本大震災の被災地の岩手や福島も同じj状況だと思われます。人手不足は長時間労働をもたらしています。
 人手不足をもたらしたのはオリンピックです。オリンピックにかまけて被災地が忘れられ、そして被災地では労働安全衛生に目をつぶった作業が進められています。
 被災地にとってオリンピックは人災の災害です。
 国土交通省は、オリンピック工事がおわったら 「輸送・機械運転従事者」 「自動車運転従事者」 でも人手に余剰が出てくると考えているから深刻さがないのでしょうか。
 今、状況は深刻です。

   「活動報告」 2017.6.9
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人間らしい生き方を取り戻すための労働時間規制を
2017/06/09(Fri)
 6月9日 (金)

 6月5日、労働政策審議会は厚生労働大臣に対し、いわゆる “働きかた改革” における時間外労働の上限規制等についての建議を行いました。建議をうけてこの後は労基法の改正に向かいます。具体的内容です。

 1 時間外労働の上限規制 (1) 上限規制の基本的枠組み についてです。
 現在は上限なしの時間外労働が可能になっている 「時間外限度基準告示」 を法律に格上げし、上限を設定します。
 上限は原則として月45時間、かつ、年360時間です。この上限に対する違反には、特例の場合を除いて罰則を課します。また、一年単位の変形労働時間制 (3か月を超える期間を対象期間として定める場合に限る。) にあっては、あらかじめ業務の繁閑を見込んで労働時間を配分することにより、突発的なものを除き恒常的な時間外労働はないことを前提とした制度の趣旨に鑑み、上限は原則として月42時間、かつ、年320時間とします。

 これを原則としつつ、特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても上回ることができない時間外労働時間を年720時間と規定します。かつ、年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限として、
 ①休日労働を含み、2か月ないし6か月平均で80時間以内
 ②休日労働を含み、単月で100時間未満
 ③原則である月45時間 (一年単位の変形労働時間制の場合42時間) の時間外 労働を上回る回数は、年6回まで
とします。なお、原則である月45時間の上限には休日労働を含まないことから、①及び②については、特例を活用しない月においても適用します。

 現行の36協定は、省令により 「1日」 及び 「1日を超える一定の期間」 についての延長時間は、時間外限度基準告示で 「1日を超え3か月以内の期間及び1年間」 としなければならないと定められています。
 今後は、「1日を超える一定の期間」 は 「1か月及び1年間」 に限ることとします。併せて、省令で定める協定の様式において1年間の上限を適用する期間の起算点を明確化します。


 まだまだ長時間労働を本気で規制するものにはなっていません。
 特別な事情とは、あくまで通常を前提にしたうえでの特別で、イレギュラーのことを指します。「あらかじめ業務の繁閑を見込んで労働時間を配分すること」 とも違います。しかし 「上限は原則として月45時間、かつ、年360時間」 を通常としたうえでの特例になっています。そして具体的にどのようなことを想定しているのかの説明がありません。
 この間、過労死での労災が認定された事案のなかに外食産業があります。そこでは特別の事情は明記されないまま、恒常的な人手不足を補充するものとして 「時間外限度基準告示」 の36協定が締結されています。さらに長時間労働を隠ぺいするためにサービス残業が強制されていました。
 イレギュラーが予想・発生してから協定を締結することも可能です。例えば、大震災が発生した被災地において、協定が締結されていないことを理由に時間外労働を拒否した労働者はいません。あらかじめ協定を締結することが長時間労働を常態化・蔓延化することになっています。
 「2か月ないし6か月平均で80時間以内」 は長期間です。それを容認するのは使用者の努力義務を免除することです。


 (2) 現行の適用除外等の取扱い、についてです。
 現行の時間外限度基準告示では、①自動車の運転の業務、②建設事業、③新技術、新商品等の研究開発の業務、④厚生労働省労働基準局長が指定する業務 が適用除外とされています。

 労働政策審議会で出た意見です。
「現行、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準という改善基準告示では、年間の拘束時間が3.516時間となっています。これは、休日出勤を含めて、年間1.170時間の時間外労働を可能とする内容です。……
 今次、……改正法施行5年後に960時間以内の規制適用、かつ、将来的には一般則の適用を満たす旨の規定が設けられたということで、先ほども御説明をいただきました。
 ……休日労働が960時間の別枠となりますと、現行の改善基準告示と何ら変わらないという意見が多く挙げられています。実行計画が明らかになって以降、政府が掲げた目標から我々自動車運転者、特にトラックドライバーから、『切り捨てられた』 という声が全国から寄せられています。皆さん御存知のとおり、過労死等の現状を見れば、自動車運転従事者、あるいは道路貨物運送業は、共に脳・心臓疾患の支給決定件数ワーストワンとなっています。是非ともこの実態を直視していただきたいということ、そして、自動車の運転業務こそ長時間労働の改善に向けて最優先に取り組まなければならない職種であるということです。……
 私ども運輸労連には運輸共済という共済制度があり、13万4.000名が加入しています。実は、この仲間の中で、自殺者が10年間で241名という、非常に痛ましい状況となっています。自殺の原因に関するアンケートも行っているところ、業務上に関連する問題が多くを占めている実態です。原因の全てが過重労働に結び付くかは定かではありませんが、我々としては、何としてでもこの業界の体質改善が必要であることを強く訴えさせていただきます。」

 しかし建議は、自動車の運転業務については、医師を含めて罰則付きの時間外労働規制の適用除外とせず、改正法の一般則の施行期日の5年後に、年960時間以内の規制を適用することとし、かつ、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けることが適当であるとしています。

 運送業の労働者は肉体的、精神的、そして経済的にゆとりのない劣悪な労働環境に翻弄されています。そのような現場からの切実な意見は切り捨てられました。
 今、産業界も消費者も “ジャスト・イン・タイム” を要求します。そのせわしない経済活動での数値の上昇も政府が掲げる経済成長に “貢献” したことになります。まやかしの経済成長です。しかもその裏では料金のダンピングが強要されています。
 産業界同士、労働者同士、そして労働者でもある消費者に思いやりがありません。昨今問題になっているヤマト運輸の問題は、他業界の労働者への “働きかた・働かせ方” の問題提起でもあります。運輸業だけでなく労働のあり方、サービスのあり方を社会問題として捉え返す契機にしていく必要があります。労働者の声でこの構造にメスを入れ、意識を転換させる必要があります。


 (3) 労働基準法に基づく新たな指針 についてです。
 36協定の必要的記載事項として、原則の上限を超えて労働した労働者に講ずる健康確保措置を定めなければならないことを省令に位置づけたうえで、当該健康確保措置として望ましい内容を指針に規定することが適当であるとします。


 2 勤務間インターバル についてです。
 労働時間等設定改善法第2条 (事業主等の責務) を改正し、事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の努力義務を課すとともに、その周知徹底を図ることが適当であるとします。その上で、労働者の健康確保の観点から、新たに 「終業時刻及び始業時刻」 の項目を設け、「前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息時間を確保すること (勤務間インターバル) は、労働者の健康確保に資するものであることから、労使で導入に向けた具体的な方策を検討すること」 等を追加することが適当であるとします。
 インターバルの導入は努力義務なりましたが、導入に際しては、労働者は “待ち” ・期待ではなく検討の主体です。積極的取り組みと提案が必要になります。


 3 長時間労働に対する健康確保措置 についてです。
 (1) 医師による面接指導と(2) 労働時間の客観的な把握 があります。
 長時間労働が体調不良を発症させます。しかし医師による面接指導は “ストレスに強い労働者作り” “まだ大丈夫” になっています。あわせて長時間労働を前提としながらの労働時間の把握は、会社が労災申請された時の反論書づくりにしかとらえられません。


 4 その他 (2) 上限規制の履行確保の徹底 ①過半数代表者、についてです。
 36協定を締結するに際して従業員代表は民主的に選ばれなければなりません。労働政策審議会に出された意見です。
「約4割の企業において過半数代表者の不適切な選出がされているというデータが提示されています。その中身を見てみますと、社員会、親睦会などの代表者が自動的に過半数代表になっている例や、会社側が指名したことで選ばれている所が4割に及ぶということです。こうした実態にあることを踏まえて、罰則付き時間外労働規制の実効性担保のためには、36協定の適正化が必要であり、過半数代表の選出手続の厳格化及び適正化等の検討をすることも必要であると考えております。」
 従業員は協定を知らないけれども強制されているということが多々あります。
 これは労働組合による協定でも同じです。労働組合は、36協定については大会で議論をして協定を結ぶ必要があります。

 別の委員からの意見です。
「労働協約の存在を知らない使用者ということで言うと少し語弊があるかもしれませんが、『時間外労働・休日労働に関する労使協定の締結の有無等』 という調査結果が出ています。……そこの中に 『協定あり』 という事業所が55.2%、『協定なし』 の事業所が44.8%となっています。『協定なし』 の中で 『時間外・休日労働がない』 という所が43%になっているわけですが、これを裏返して言うと、『協定なし』 の事業所の中で協定を取らないで時間外・休日労働を実行している所は、逆に言うと57%あるとも読めるわけです。さらに、『時間外労働・休日協定の存在を知らなかった』 という事業場は35%。それと、非常に残念ですが、『時間外労働・休日労働に関する労使協定の締結・届出を失念していた』 という事業場が14%あるという結果が、実際出てきているわけです。」
 労働基準監督署の監視と指導、そして提出に際しては従業員代表の選出方法も必須記載事項にする必要があります。

 建議は 「使用者の意向による選出」 は手続違反に当たるなど通達の内容を労働基準法施行規則に規定することが適当である、また、過半数代表者がその業務を円滑に遂行できるよう必要な配慮を行わなければならない旨を、規則に規定する方向で検討するとしています。
 きちんとして制度を確立されることを期待します。


 「働き方改革」 についてさまざまな方面から意見が出されています。
 経済界からは、改革で生産性が上がるのかという意見があります。生産性は労働時間と正比例するというような意見ですが、正比例しません。なぜなら労働者は “飼いならされて” も “生き物” だからです。長時間労働のリスク管理が無視され、使い捨て可能の思いが隠されています。
 生産性が向上した後に分配があって労働者の労働条件は改善するという意見があります。産業の歴史は技術革新と生産性向上の歴史でした。しかし、例えばQC運動がそうであったように、その結果はより過重な、過酷な労働の登場です。分配は成長のわずかばかりのものでしかありませんでした。そして過労死・過労自殺です。このことを冷静に労も使も捉え返すことが必要です。
 スキルをあげるために頑張っている労働者が挑戦するチャンスを奪うという意見があります。スキルをあげるための努力が時間外労働に至ることもありえます。努力は続ければいいです。その代わりドイツの 「残業で働いた時間は口座に貯蓄しておき、後で休暇として使う」 『労働時間貯蓄口座 (ワーキング・タイム・アカウント)』 のような制度を設ける方がよりクリエイティブな労働ができます。
 残業代をあてにしている労働者が存在するという意見があります。残業代を稼がせることが労働者のことを思っているということではありません。労働者個人の問題ではありません。低賃金が蔓延したり、社会保障が充実していない政治の問題をとらえかえす必要があります。

 労働時間の縮小の問題は、過労死防止のためではありません。過労死が発生するような働きかた・働かせ方がそもそも異常です。
 労働時間の縮小は、労働者がより人間らしい働きかた・生き方を取り戻すことにむけた挑戦です。

   「活動報告」 2017.1.31
   「活動報告」 2017.1.20
   「活動報告」 2016.12.16
   「活動報告」 2016.12.13
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教師は孤立して長時間労働に耐えている
2017/05/09(Tue)
 5月9日 (火)

 4月28日、文部科学省は2016年度の 「公立小中学校教員の勤務実態調査」 の集計速報値を公表しました。
 調査は、昨年10月と11月に分けて、全国の小学校400校、中学校400校を確率比例抽出により抽出し、そこに勤務するフルタイム勤務職員全員 (校長、副校長、教頭、主幹教諭、指導教 諭、教諭、講師、養護教諭、栄養教諭) を対象に実施しました。
 回収率は、小学校397校8.951人、中学校399校10.687人と100%にちかいです。おそらく学校ごとの回収だったと思われますが、そうすると回答者が記載内容に何らかの “判断” を利かせたということもありえます。
 学校調査票は学校に1票、教員調査票は大きく個人調査と教員ストレスチェック調査に分かれていて教員1人に1票配布されます。ストレスチェック調査結果については後日に発表されます。さらに教員業務記録を記載する票が教員1人に1日につき1票、1週間分として7票が配布されました。
 同じような調査は、16年にもおこなわれていて、その比較もおこなわれています。

 平日の1日あたりの職種別平均勤務時間です。(持ち帰り残業時間は含みません)
 小学校は、校長10.37時間 (16年は10.11時間)、副校長・教頭12.12時間 (11.23時間)、教諭11.15時間 (10.32時間)、講師10.54時間 (10.29時間)、養護教諭10.07時間 (9.38時間)です。10年前も長時間労働でしたが、副校長・教頭、教諭は16年と比べると40分以上長くなっています。
 中学校は、校長10.37時間 (10.19時間)、副校長・教頭12.06時間 (11.45時間)、教諭11.32時間 (11.00時間)、講師11.17時間 (10.04時間)、養護教諭10.18時間 (10.01時間)です。教諭は16年と比べると30分以上長くなっています。
 小学校、中学校とも副校長の勤務時間が最も長くなっています。
 土・日については、かつては土曜日が勤務日でなかったり、すべての学校が出勤日とはなっていませんので比較できません。

 1週間当たりの平均勤務時間です。
 小学校は、校長54.59時間 (16年は52.19時間)、副校長・教頭63.34時間 (59.05時間)、教諭57.25時間 (53.16時間)、講師55.18時間 (52.59時間)、養護教諭51.03時間 (48.24時間)です。教諭は16年と比べると4時間以上長くなっています。
 中学校は、校長55.57時間 (53.23時間)、副校長・教頭63.36時間 (61.09時間)、教諭63.18時間 (58.06時間)、講師61.43時間 (58.10時間)、養護教諭52.42時間 (50.43時間)です。教諭は16年と比べると5時間以上長くなっています。
 どちらも副校長・教頭が最も長くなっています。


 1週間の総勤務時間の小学校教諭 (主幹教諭・指導教諭を含む) の分布です。
 55時間~60時間未満24.3%、50時間~55時間未満24.1%、60時間~65時間未満16.4%、45時間~50時間未満13.4%です。80時間~85時間未満0.7%、85時間~90時間未満0.2%、90時間~95時間未満0.1%が存在しました。
 中学校です。60時間~65時間未満17.0%、55時間~60時間未満16.5%、50時間~55時間未満14.8%、65時間~70時間未満14.0%、70時間~75時間未満10.8%です。80時間~85時間未満4.6%、85時間~90時間未満2.2%、90時間~95時間未満1.1%、100時間以上0.2%存在しました。
 小学校と比べると分布の山は長時間のほうに向かっていっています。

 持ち帰り勤務です。
 小学校は、平日平均0.29時間 (16年0.38時間)、土日1.08時間 (1.07時間)です。
 中学校は平日0.20時間 (0.22時間)、土日1.10時間 (1.39時間)です。

 業務内容別の勤務時間です。
 平日の小学校は、授業、授業準備のほかには、生徒指導 (集団) 1.00時間、朝の業務0.33時間、成績処理0.33時間、学校行事0.26時間、学年・学級経営0.24時間、学校経営0.22時間、職員会議などの会議0.22時間などの順です。
 中学校は、授業、授業準備のほかには、生徒指導 (集団) 1.02時間、部活動・クラブ活動0.41時間、成績処理0.38時間、学年・学級経営0.38時間、朝の業務0.37時間、学校行事0.27時間、学校経営0.21時間、職員会議などの会議0.19時間などの順です。
 小中とも、学校行事、学年・学級経営、学校経営、職員会議などの会議に1時間半以上が当てられています。
 土日については、中学校で部活動・クラブ活動が2.10時間です。

 部活について詳しくみると、部活動の活動日数が多いほど、学内勤務時間全体が長くなっています。また、土日の部活動については、部 活動の種類により差が見られます。運動部や吹奏楽部などです。


 基礎調査です。
 「1週間に何コマの授業を担当していますか」 の質問に、中学校では、21コマ~25コマ49.9%、26コマ以上が20.8%、です。70%以上の教師が1日4コマ以上を担当しています。
 「昨年にあなたが取得した有給休暇は何日程度でしたか」 の質問です。
 小学校は6~10日30.2%、11~15日22.7%、16~20日15.6%、無回答15.2%です。
 中学校は、6~10日33.4%、3~5日20.8%、11~15日13.6、%、16~20日7.5%、無回答13.6%です。
 中学校の方が有給休暇を取りにくくなっています。


 いつも送られてくるミニコミ誌の最新号は 「教育の 『貧困』 を考える」 の特集です。そこへの教師の投稿です。
  「多忙という労働強化は学びの機会を奪う」
 「先生方は忙しいのよね」 とお母さん同士の会話。先生も 「学校って1年中忙しいのよ」 と言う。先生の忙しさはもう世間の常識になっています。まず、ある女性教師 (小学校) の1日を紹介します。
  教師の学校での1日
 勤務開始は午前8時15分ですが、学校には7時頃にきています。もう何人かきています。出勤簿に押印し、1日の予定を確認し教室に行きます。早朝練習が始まります。練習終了、職員の 「朝の打ち合わせ」 で職員室にいきます。子どもたちは教室で 「朝自習」 です。打ち合わせが終わり教室へ、ここから子どもたちとの1日が始まります。
 「朝の会」 では子どもたちの健康状態を観察し、今日の予定や注意事項を伝えます。そして 「授業」 開始です。授業は1時間目から5時間目まで切れ目なく続きます。間に 「5分休み」 と 「ロング休み20分」 と 「昼休み」 が入ります。担任は次の準備をしたり、子どもの相談を聞いたりして休み時間にはなりません。「給食指導」 や 「清掃指導」 もあります。「帰りの会」 では、1日の反省と明日の連絡、そして連絡帳の確認です。
 ここまでは昔も今も変わりません。変わったのはこれ以外です。
  増えた授業以外の活動
 放課後には職員会議や研究会議、学年会議等が次々に入ってきます。子ども同士のトラブルがあった場合には臨時の生徒指導部会も開かれます。学校対抗の 「サッカー」 「ミニバスケット」 「水泳」 「陸上競技」 等の大会、「合唱」 や 「吹奏楽」 の発表会の練習もあります。放課後の練習は午後4時半から5時位まで続きます。クラスの子どもたちのことに取りかかれるのはそれからです。出張して1日研修会に参加した場合は 「研修報告書」 の提出が必要となります。文書作成は時間がかかるものです。
 以上のような事を次々とこなしたとしても、仕事量が多すぎて退勤が午後9時や10時になってしまうのです。
  学びの機会が奪われる
 先生方が一番欲しているのは 「明日の授業の準備をする時間」 です。授業は料理と同じです。手をかけないと美味しい料理は出せません。子どもたちが食いついてくれる授業をするには準備が不可欠です。「教材研究」 といいますが、この教材研究の時間が 「多忙」 という労働強化で奪われてしまっています。自分で調べたり、先輩の先生方に聞いたりして学んでいくことによって先生として成長していきます。また子どもたちに関わることによって気づかされ、親が子育てをしていくのと同じです。
 多忙という労働強化は 「自分で考え、判断する」 という主体性を弱体化させてしまっています。自分で教材研究する時間がないので、出来合いの 「指導書」 に頼って授業をしてしまいます。指導書は文部省の検定を合格した教科書の内容を教えるために作られたものです。これを使えば一応授業は出来ます。料理ではなくインスタント食品を食べさせているような授業になります。これでは学びがないから先生は成長しません。子どもたちも成長出来ません。多忙化は、子どもの現実に近づく機械も奪ってしまいます。多忙化解消のためには、保護者の声が必要です。子どものために先生とのつながりを深めていきましょう。


 以前と比べて授業以外の活動、特に報告書作成業務が増えたということをよく聞きます。いわれるところの管理教育、文部省―教育委員会―校長―教師の管理支配体制と評価に繋がっています。その結果、時間的ゆとりもありませんので横の繋がりもなかなか生まれません。

   孤独には慣れているが
    人は孤立には耐えられないと知る 職員室
        (3月20日 「朝日歌壇」)

 全国で学校のいじめが社会問題となっています。
 13年9月から施行されたいじめ防止対策推進法は、いじめの防止や早期発見、対処の理念などを定め、重大事態の発生時は調査組織による事実関係解明と被害者側への適切な情報提供を求めています。重大事態とは 「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた……児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき」 と定義されています。
 しかし推進法どおりに進めたら対応や調査に時間がかかり過ぎ、さらに業務過重になるという不満が起きています。そのためその場しのぎの対処になり、それぞれの立場で 「いじめはなかった」 への期待となって処理されたり、責任転嫁が進みます。重大事態の認定には学校あげて隠ぺい思考に向かいます。
 児童・生徒の生命に影響しかねない問題は何にもまして優先して対処されなければならないのは当然のことですが、“見過ごし” “放置” の批判と一緒に教師の労働環境も検討される必要があります。

 今、政府は自殺総合対策大綱の見直しを進めていますが、その中の若者対策には、教師による自殺しそうな場所や駅のホームなどでの監視も盛り込まれようとしています。さらなる過重労働がおこなわれようとしています。

 日本では子どもの教育だけでなく生活指導まで学校の責任になります。そのため日常的問題も含めてさまざまな問題が学校には寄せられオールマイティーが要求され、教師の資質が問われます。まさしく 「聖職」 です。その一方で保護者には “お任せ教育” と学校の私物化・「モンスターペアレント」 が同居しています。学校はその防御としてますます孤立と同時に排除を進めます。その結果、外部から教師の労働環境には意識が向きません。
 海外では子どもは市民として存在し、学校は社会のなかで共存しています。学校で起きた問題は社会で起きたことととらえ、教師と保護者、市民は共同で対応します。
 日本の教師は、世界の中で孤立しています。深刻な職場環境の犠牲者は子どもたちです。教師はもっと声をあげ、無理なことについてははっきりと 「できません」 と主張することが解決に向かわせます。保護者と市民はもっと学校と教師が抱えている問題に、国とは違う方向から監視・干渉をして協同していく必要があります。

   「公立小中学校教員の勤務実態調査」
   「活動報告」 2017.2.3
   「活動報告」 2016.12.13
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