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時間外労働を月80時間以内に削減するよう指導した事業場2,216
2019/04/26(Fri)
 4月26日 (金)

 4月25日、厚労省労働基準局監督課過重労働特別対策室は、昨年11月に実施した2018年度の 「過重労働解消キャンペーン」 の重点監督の実施結果を公表しました。
 キャンペーンにおける重点監督は、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や若者の 「使い捨て」 が疑われる事業場などを含め、労働基準関係法令の違反が疑われる8,494事業場に対して集中的に実施したものです。その結果、5,714 事業場 (全体の67,3%) で労働基準関係法令違反を確認し、そのうち2,802事業場 (33,0%) で違法な時間外労働が認められたため、それらの事業場に対して、是正に向けた指導を行いました。

 8,494事業場の事業場規模別の監督指導実施事業場数です。
 1~9人が2253、10人~29人が2931、30~49人が1282、50人から99人が975人、100~299人が800、300人以上が271です。
 企業規模別の監督指導実施事業場数です。
 1~9人が826、10人~29人が1369、30~49人が786、50人から99人が925人、100~299人が1515、300人以上が3073です。
 決して企業規模が小さいところが違法行為をおこなっているということではありません。むしろ300人以上の企業が36%を占めています。


 違法な時間外労働が認められたものについてです。
 2,802事業場において時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数についてです。
 月80時間を超えるもの:    1,427事業場 (50.9%)
 そのうち月100時間を超えるもの:868事業場 (31.0%)
 そのうち月150時間を超えるもの:176事業場 ( 6.3%)
 そのうち月200時間を超えるもの: 34事業場 ( 1.2%)です。

 賃金不払残業があった463事業場 (5.5%)
 過重労働による健康障害防止措置が未実施948事業場 (11.2%)です。

 違法な時間外労働が認められた事業場の業種です。
 製造業808、商業484、運輸交通業409、接客娯楽業243、建設業222、その他 (派遣業、警備業、情報処理サービス業等)247です。

 健康障害防止に係る指導として過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導した事業場は4932です。そのうち、時間外・休日労働を月80時間以内に削減するよう指導した事業場は2,216、月45時間以内に削減するよう指導した事業場は2,677です。

 労働時間の管理方法についてです。
 使用者が自ら現認することにより確認780事業場です。
 事業場でタイムカードを基礎に確認3,057、
 事業場でICカード、IDカードを基礎に確認1,712
 事業場で自己申告制により確認2,791でした。

 労働時間の把握方法が不適正なため指導した事業場1,362です。


 労働時間以外についてです。
 賃金不払残業の指摘された事業場数です。
 製造業75、商業104、運輸交通業44、接客娯楽業55、建設業48、その他52です。全体の5.5%で発生しています。

 健康障害防止措置 (衛生委員会を設置していないもの等、健康診断を行っていないもの、1月当たり100時間以上の時間外・休日労働を行った労働者から、医師による面接指導の申出があったにもかかわらず、面接指導を実施していないもの) についてです。
 製造業203、商業198、運輸交通業94、接客娯楽業154、建設業49、その他104です。


 労基署の重点監督は、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や、若者の 「使い捨て」 が疑われる事業場など、労働基準関係法令の違反が疑われる事業場に対して14年度から実施されます。
 今年の具体例です。
その1 脳・心臓疾患を発症した労働者について、労働時間を調査したところ、労働時間の把握方法は勤怠 システムに各人が出退勤時刻と休憩時間を入力する自己申告制を採用しており、当該労働者についても一定の労働時間が申告されていたものの、同僚労働者への聴き取り等により、適正に自己申告 されておらず、実際の労働時間を把握できていないことが判明した。
 脳・心臓疾患を発症し死亡した労働者について、36協定で定める上限時間 (特別条項:月80時間)を超えて、月100時間を超える違法な時間外・休日労働 (最長:月134時 間) を行わせ、それ以外の労働者1名についても、月100時間を超える違法な時間外・休日労働 (最長:月219時間) を行わせていた。
 労働者について、定期健康診断 (1年以内ごとに1回) 及び深夜業に従事させる場合の健康診断 (6か月以内ごとに1回) を実施していなかった。

その2 労働者4名について、月100時間を超える時間外・休日労働 (最長:月127時間) を行わせていた。 また、労働時間の把握は、タイムカード及び作業日報に始業・終業時刻を打刻、記入することで行われていたが、タイムカード及び作業日報を確認したところ、法定の休憩時間を与えていなかったことが判明した。
 長時間労働を行った労働者の氏名及び当該労働者に係る超えた時間に関する情報について産業医に提供していなかった。
 18歳未満の年少者について、その年齢を証明する証明書を事業場に備え付けていなかった。

その3 労働者4名について、36協定で定める上限時間 (月45時間) を超えて、月100時間を超える時間外・休日労働 (最長:月195時間30分) を行わせていた。
 常時50人以上の労働者を使用しているにもかかわらず、安全管理者、衛生管理者、産業医を選任 しておらず、安全委員会及び衛生委員会を設けていなかった。また、労働者に対して心理的な負担を把握するためのストレスチェックを実施していなかった。


 厚労省は、健康被害が生じるリスクが発生するとした月45時間を超える時間外労働を含む過重労働による健康障害防止のための総合対策についてなどさまざまな通達を出しています。しかし過重労働削減の方向には向かっていません。それよりも、「長時間労働を行った労働者に対する医師による面接指導等の過重労働による健康障害防止措置を講じるよう指導」 は、それを行なったならば長時間労働を容認する、労災申請されても、意思の面接指導のときは大丈夫だったと反論する口実になっています。

 改善指導する事業場がなかなか減らないということは、現在の対応は実効性がともなっていないということです。


 この4月から働き方改革法が施行され、その中には労働時間に関するものも含まれています。そこでは、長時間労働を促進するものと、時間外労働月80時間と規制するものとをあわせもっています。政府と経済界は長時間労働を本気で改善しようとは思っていません。
 厚労省の仕事はデータを作成することではありません。そのなかから読み取れる問題点を改善するための政策を実行することです。


 「2018年度 「過重労働解消キャンペーン』」
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コンビニ問題  役に立たない労働委員会 世論はオーナー支持
2019/03/29(Fri)
 3月29日 (金)

 2月に東大阪市のセブンイレブンのフランチャイズ店が、人員不足から自主的に深夜の営業時間を閉店したら本部から違約金を請求されたことが報道されると、全国的で同じような問題があると指摘され表面化しています。(3月1日の 「活動報告」)
 この店舗では18年6月から2月までに13人の従業員が辞めたといます。オーナーは 「1人で28時間働いたこともあった。24時間営業が基本というが (人手不足の) 現状を見てほしい」 と語っています。


 コンビニの営業時間、人員体制の問題はかなり前から指摘されていました。
 岡山県の株式会社ファミリーマートのフランチャイズ店のオーナーたちは 「ファミリーマート加盟店ユニオン」 を結成し、2010年にファミリーマートに団体交渉を申入れました。拒否されたので県労働委員会に不当労働行為の救済申立を行いましたがオーナーは労働組合法上の労働者には当たらないと棄却されます。中央労働委員会に再審査を申立てましたがこの3月15日に棄却されました。
 同じように12年に東京でセブンイレブン・ジャパンに団交申入をしたオーナーたちについては、都労委は救済命令を出しましたが本社が再審査を申立て、3月15日に中央労働委員会は不当労働行為の救済申立を棄却しました。
 2つの事件の棄却の理由です。
「加盟者 (オーナー) は、独立した小売事業者であって、会社の事業の遂行に不可欠な労働力として会社の事業組織に組み入れられ、労働契約に類する契約によって労務を供給しているとはいえない。さらに、加盟者は、会社から労務供給の対価として報酬を受け取っているということはできず、他方で、加盟者の事業者性は顕著である。以上を総合考慮すると、本件加盟者は、使用者との交渉上の対等性を確保するために労働組合法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる者として、会社との関係において労働組合法上の労働者に当たると評価することはできない。」

 岡山の救済申し立ては2010年、東京は12年です。団体交渉は、オーナーたちが現場に早急に解決したい困難な問題があったから団結して申入れました。8年間に問題は解決されたでしょうか。そうだったら東大阪の問題は起きません。
 労働委員会にとってオーナーが抱える問題は他人事でしかありません。違うというなら、たとえ労働組合法上の労働者に当たらないと判断するにしてももっと早くに棄却すべきです。そうしたらオーナーたちはもっと早くに別の対応ができます。現在の労働委員会は、決定を出しても行政訴訟を起こされて覆されることをおそれ、独自の判断をしないで裁判所の顔色を窺った決定をします。慎重な判断といいますが、困難をかかえたまま待たされるのは労働組合・労働者性があると主張する側です。行政訴訟に至ったらさらに時間がかかります。
 今回は、途中で和解勧告もおこなわれましたが、早期解決のためではありません。決定を出して行政訴訟で覆されることをおそれた自己保身からです。労働委員会は救済機関というのなら労働者側に立った早期解決を目指すべきです。
 そもそも、個人事業主の労働者性をめぐる訴訟では、現在、結果を想定しにくい現状にあります。フランチャイズの問題は経営者だけでなく、労働委員会も裁判所も解決を放置してきました。労働委員会は、労働組合法上の労働者に当たるか否かの問題だけでなく、取り扱った案件から問題点を整理し、実際に現場で発生している問題についての法整備の必要性を関係省庁等に要請する必要があります。


 セブン―イレブン・ジャパンは3月上旬以降に全店に聞き取りをしたところ、営業時間の短縮を求めるフランチャイズチェーン加盟店が約2万店の0.4%にあたる80店あることを明らかにしました。時短を求める店舗に対しては 「24時間の原則を維持するが、個別の事情に応じて加盟店一店一店と話し合いたい」、従業員の派遣業者を紹介するなどで終日営業の維持を支援し、時短営業の実験店とすることを検討するといいます。ただし、フランチャイズ契約の見直しは現時点で検討していないといいます。
 3月21日から、全国の直営10店で16時間に短縮した店舗運営の実験を始めました。まずは営業時間を短縮した場合に生じる課題を洗い出したい」 といいます。そして店舗の収益や物流のあり方、閉店や開店に伴う従業員の作業負荷などを数カ月かけて検証します。今後、フランチャイズ加盟店にも拡大します。遅きに失した対応です。


 経産省は、コンビニのフランチャイズ契約は対等な契約で、下請取引の公正化や下請業者の利益保護を目的にした下請法の対象にはならないと説明してきました。実態は、時間的にも経済的にも100%従属性があり、実態は本社に指揮命令権がある支配・被支配の関係が明らかにもかかわらずです。
 経産省は昨年末から19年3月にかけて、コンビニ8社のフランチャイズ加盟店オーナー約3万人を対象に、人手不足の状況や、本部とのフランチャイズ契約の在り方、経営の現状に関するアンケート調査を実施しました。3月26日に公表された結果によると、加盟店の6割が人手不足を訴え、半数が売り上げが減少した、4割が加盟したことに満足していないと回答しました。
 世耕経済産業相は3月26日の記者会見で、コンビニが人手不足から24時間営業が難しくなっている問題について、「国民の生活インフラであるコンビニの持続性の観点から問題」 と指摘、行動計画を作製するようコンビニ大手4社に要請することを表明しました。大臣が4月にもコンビニ4社のトップと会談して要請します。行動計画では時短営業や無人化など、企業の自主的な取り組みを促し、また有識者を交えた検討組織をつくる意向も明らかにしました。


 さて、親企業が実質的に支配・管理するフランチャイズ契約において、法律上、企業の注意義務や安全配慮義務、労働時間把握義務は本当にないのでしょうか。
 『労働の科学』 の2018年12月号は、「自営業の安全と健康」 を特集しています。そこに労働弁護団の和泉貴士弁護士が 「労働者性概念のゆらぎと労働時間把握義務への影響」 を寄稿しています。抜粋して紹介します。
「労働基準法が法定労働時間制を採用し、時間外労働について割増賃金が発生するとした趣旨は、8時間労働を超えて労働させたことに対するサンクション (制裁) であり、また、労働者が本来生活時間として確保すべき時間を浸食したことに対する補償であると考えられています。そして、法が定める労働時間規制を根拠として、企業には1日の労働時間の適正な把握が求められています (厚生労働省 「労働時間の適正な把握の為に使用者が講ずべき措置に関する基準」)。
 他方で、管理監督者、裁量労働、変形労働時間制度、高度プロフェッショナル制度など、法定労働時間制のもとでその適用を限度的なものにしようとする方改正や立法が次々と制定されてきました。」

 「労働者が本来生活時間として確保すべき時間を浸食した」 のとらえ方は、雇用・被雇用の関係にある場合だけでなく、社会生活を営むすべての者たちに対して適用されなければなりません。一方的に犠牲を強いるにすることは認められません。
 親企業には企業としての社会的責任があります。その責任はまず関連する子会社、系列企業の労働者に対して果たす必要があります。しかし協働の活動をしながら、雇用に関連、労働者制の問題になるとまったくの “他人の関係” になります。一方は暴利をむさぼり、一方は健康を害し、経済的にはぎりぎりの生活を維持しなければならないところまで “搾り上げ ”られます。そのような親企業が 「社会的ニーズ」 「お客様の声」 を口にします。

「電通事件最高裁判決は、・・・『労働安全衛生法65条の3は、作業の内容等を特に限定することなく、同法所定の事業者は労働者の健康に配慮して労働者の従事する作業を適切に管理するように努めるべき旨を定めているが、それは、右のような危険 (労働者の心身の健康を損なう危険) が発生することを防止することを目的とするものと解される』と述べています。このような電通事件の判旨を根拠に、企業には注意義務、安全配慮義務として労働者の労働時間把握義務があると考えられています。
 そして、重要なのは、このような注意義務、安全配慮義務が必ずしも雇用関係を前提としてなくても認められる余地があるという点です。例えば、鹿島建設・大石塗装事件は、『作業につき、場所、設備、器具類の提供を受け、且つ注文者から直接指揮監督を受け、請負人が組織的、外形的に注文者の一部門の如き密接な関係を有し、請負人の工事実施ついては両者が共有してその安全管理に当たり、請負人の労働者の安全確保のためには、注文者の協力並びに指揮監督が不可欠と考えられ、実質上請負人の使用者たる労働者と注文者との間に、使用者、被使用者の関係と同視できるような経済的、社会的関係が認められる場合には注文者は請負人の雇傭契約上の安全保証義務と同一内容の義務を負担するものと考えるのが相当である』 と述べ、直接の雇用関係にない元請負人について、下請け企業の労働者に対する安全配慮義務を認めています。」

 この判例にしたがえば、コンビニ本社はフランチャイズオーナーに対して安全配慮義務があります。オーナーの店舗運営の “力量” に任せるということにはなりません。

 現在の状況はどうなっているでしょうか。
「業務委託や請負が増加している原因については、現代における就業形態の多様性・専門化が挙げられることも多いのですが、実際は人件費削減、生産変動への対応などが動機となり、実質的にはどうみても雇用であるケースも少なくありません。」
「雇用契約が存在しなくとも、使用者、被使用者の関係と同視できるような経済的、社会的関係が認められる場合には、労働時間把握義務は認められる余地があります。」
「また、企業は経済的依存関係・従属関係がある労働者を用いて利益を上げている以上、労働者の健康にたいして何らかの責任を負うべきでしょう。」

 そのうえで警鐘を鳴らしています。
「私が弁護士になった10年前から、労働者概念を狭めようとする動きは活発にありました。・・・近時の働きかた改革等、多様な働き方を推奨する傾向に対しては、法が定める労働者保護を潜脱する危険性があると考えています。
 労働者性概念の変容は労働時間概念の変容であり、その結果、企業の労働時間把握義務の変容につながる危険性があります。」


 「働き方改革」 は、長時間労働などの無法状態に制限を加えるなどといわれますが、その一方で、裁量労働、変形労働時間制度、高度プロフェッショナル制度などの無法状態を容認します。同時に 「労働者性」 の概念の解釈は狭められつつあります。
 そしてフランチャイズ契約においては対等の関係を標榜して、オーナー等を保護する規制はありません。

 「ファミリーマート加盟店ユニオン」 等はそれらの問題を指摘してきました。労働委員会では救済されなかった切実な問題が、現場のオーナーの実力行使で世論を喚起し、支持を獲得して解決の端緒をつくることができました。その結果、通産省も動かざるを得ませんでした。しかし法を整備してオーナー等の健康を保持し、労働に見合った経済的自立・保障を獲得するにはまだまだです。
 ますます格差を拡大する「働き方改革」「働かせ方改革」を、労働者のための本物の「働き方改革」に変えさせていかなければなりません。

 「活動報告」 2019.3.1
 「活動報告」 2019.1.8
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「自分も休んでいるから」 他人に 「働け」 とは言わない
2019/01/08(Tue)
 1月8日 (火)

 お正月らしくないお正月でした。
 門松を立てる家も少なく、道行く人も普段着です。街では営業している店舗はぐっと減っています。しかも例年と比べて休業期間が長いです。これも 「働き方改革」 なのでしょうか。でも不自由したという話は聞きません。時代が変化しています。

 かつて、お正月に店舗は2日か3日まで閉めていました。職人や農家の人たちは7日もしくは15日まで休みました。それ以前に働き始めると怪我をするといわれました。
 70年代まではほとんどの百貨店が午後6時までの営業で週1回の定休日がありました。そして商店街の小売店とは共存していました。しかしスーパーが出現して競合するようになると、売り上げを伸ばすために営業時間が延長されてきました。他店に顧客を奪われるのを防止するために定休日がなくなりました。まもなく地域の小売店街はシャッター通りになってしまいました。

 時代が大きく変わったのはいつからでしょうか。
 スーパーが元日営業を始めたのは1996年からです。1つは、バブル経済が崩壊したなかで売り上げを伸ばすための戦略です。2つ目は、コンビニに顧客を奪われないためです。休業するとその分の売り上げだけでなく、その後に平日の状況に戻すのに数日かかるといわれます。それを回避するためでもあります。
 元旦に出勤する社員、パートには一律1万円の手当が支給されました。しかし出勤が当たり前と位置づけられた段階で廃止です。
 元日営業はさまざまなところに影響します。市場が休みのなかで上手に保存した野菜を販売します。豆腐など賞味期限が短い日配品などの製造会社は大晦日も稼働しなければなりません。それを運送会社が引き継ぎます。大手ハム製造会社は元日営業、それに続いたゴールデンウィーク、お盆の全日営業などの影響で年間休日が、徐々にですが、10日間減ったといいます。その回復はまだされていません。

 まもなくお正月期間は売れる商品は限られている、採算が合わないことに気が付きます。しかしいったん始めたものを止めるのは大変です。
 2010年前後から正月営業を止めるスーパーも出てきました。そして最近は、「採算が合わない」 そして 「労働力が集まらない」 という理由から休日を増やしたり、深夜営業を止める外食産業なども増えています。労働力を集めるためには時給を集まる額まで上げなければなりません。


 17年1月20日の 「活動報告」 のコピーです。
 デパートや外食産業では人材不足から営業時間を短縮する動きがあります。
 高島屋や三越伊勢丹ホールディングスは16年から一部の店舗や売り場の営業時間を短くしています。さらに三越伊勢丹ホールディングスは年末年始の休業を現在の2日ら来年は3日にする予定だといいます。「最高の状態で働いていれば、最高のおもてなしができる」 という考えだと説明していますが実際は収益が悪化していることが理由です。
 16年11月、全国223店舗を展開するロイヤルホストは今年1月までに24時間営業をやめることを決めました。早朝や深夜の営業短縮も進めており、定休日も導入を検討していく方針です。理由は、人手不足で賃金が上がり、売上高がコストに見合わなくなってきているためです。人が集まらない中で無理に営業すれると従業員に長時間労働を強いることにもなります。生活習慣の変化で、深夜の利用客が減っている事情もあります。
 その分、来客が多い昼や夕食の時間帯の人数を手厚く配置したほうが、より充実したサービスができるようになるという説明です。ロイヤルホストは16年の春闘でインターバルを導入させました。逆にいうとそれくらい長時間労働があったということにもなります。
 長時間労働の問題はサービス業界でも避けられない課題になっています。

 店舗運営で売り上げ・数字をすべての判断基準にすると労働者の生活、健康は後回しになります。労働者は日常生活、社会生活を奪われました。元日休業を含めて休日が増えた理由は、売上高が採算に合わないのと人手不足です。いかにも労働者のことも考えてのことのようにいわれますが、後から付け加えられた者です。
 労働者・労働組合からの要請ではありません。しかし結果として、労働者の満足度は高くなりました。企業は、意欲向上につながることを期待します。


 営業時間が延期された原因には、利用者の生活サイクルの変化がありました。労働者は長時間労働になると夕方の買い物ができなくなります。そのような労働者の顧客を獲得するために営業時間を延期します。
 その結果は、利用者が買い物をしたい時に買えるような営業時間になり、便利と評価されるようになりました。そして便利が当たり前の感覚になっていきます。コンビニの品ぞろえが豊富になりました。外食産業も同じです。社会全体の生活スタイルでの計画性が奪われ、他の労働者への “思いやり” の感性も失われています。利用者の長時間労働が販売員の長時間労働を生み出す結果をもたらしました。労働者同士の共食いです。
 営業時間が延期された分、売り上げが増える訳ではありません。しわ寄せは労働者の賃金です。正規職員のサービス残業と非正規労働者によって維持されました。コンビニでは外国人労働者の採用が増えています。


 では今年はどうだったでしょうか。18年12月28日のFNN.JPプライムオンラインのコピーは 「ついにコンビニまで・・・広がる 『元日休業』 の動き どんなメリットがあるのか? 」です。
 「これまで 『年中無休』 が当たり前だった外食チェーンやスーパーマーケットなどで、元日休業の動きが広がっている。
 関東地方を中心におよそ300店舗を展開するスーパーマルエツは、23年ぶりに1月1日を休業にする。京急ストアも10年ぶりに元日を休業にする。外食チェーンでは、およそ1年前に大晦日と元日を80店舗以上、休業とした大戸屋が、今回も大晦日と元日を休みにすると発表。
 人材不足が叫ばれる中、元日休業のメリットとデメリットはどこにあるか検証する。
  『幸楽苑』 は創業以来初 8割の店舗を大晦日の午後から休業
ラーメンチェーンの 『幸楽苑』 は、今回、およそ520店舗中、8割のお店を大晦日の午後3時から休業にする。創業64年で初めての試みだという。
 幸楽苑ホールディングスは 『2億円弱見込まれる売り上げよりも、スタッフの士気を優先する事で、お客様に対するサービス向上に努めてまいります』 と話す。
 今年の元日を休みにしたロイヤルホストは、来年も元日は休みにするという。
  スーパーでは元日と2日が休みの動きも
こうした動きは、スーパーマーケットにも拡大。
 成城石井は、今年に続いて来年も元日を休業にする予定で、店舗数はおよそ1.5倍の127店舗に拡大する。
 さらに、休業が元日だけにとどまらないスーパーも出てきた。もともと、元日が休みだったサミットは1月2日を休業にし、3日からの営業を予定している。
 サービスを利用する客側の意見を聞いてみると 『元日はみんな休むべきだと思います。そこまでして働いてもね~っていう。』 『どちらかというと賛成。私も飲食店で働いているのでちょっと休みたいなっていうのが正直な感想』 という歓迎の声の一方で、『サービス業が休むと困る』 『全部休まれちゃうと、こっちが休めなくなっちゃうから』 と心配の声もあがった。また、中には 『昔は3日間お休みでしたからね、(福袋の販売も) 4日早朝から。』 という声も聞かれた。
  『元日休業』の波、ついにコンビニまで・・・
 広がる元日の休業の動きは、ついには、365日24時間営業がウリのコンビニチェーンにまで広がっている。北海道では、コンビニエンスストアのセイコーマートでも元日休業を導入。ただ、同じエリアの店がすべて休業にならない配慮をして1193店舗中、671店舗で休みにするという。
 ただ、狙いは店員の負担軽減だけではない。
 セイコーマート広報室佐々木威知部長によると 『休むお店が多くなりますと当然、配送するドライバーさんもお休みできますし、総菜だとかサンドイッチを製造する工場の従業員も全員ではありませんけどもお休みが取れます』 とメリットを話す。
 また、流通業では、福山通運が3が日休業、佐川急便が元日の発送業務を休止するという。」


 17年1月20日の 「活動報告」 の再録です。
 16年11月22日の東洋経済に載ったドイツ在住のフリーライター雨宮紫苑さんの寄稿「日本の過剰労働は、『お客様』 の暴走が原因だ 理不尽な要求にノーといえる文化を作ろう」です。
「ブラック企業をなくしたいなら、社員にまともな賃金を払っている、適切な労働時間を働かせていることによって生じる不便さに寛容でないと。『土日休みなんで納品までにもっと時間かかります』 『定時過ぎたんで会社もう閉めました』 と言われて文句言う人は、言ってみれば 『ブラック市民』 ですよ。・・・
 日本のサービスは、『おもてなし』 という言葉で表される。大辞泉によれば、『もて成す』 とは、『心をこめて客の世話をする』 ことを意味する。しかし、心を込めて客の世話をするという意味を、現在は一方的な奉仕をすると理解され、『お客様は神様』 の状況になっている。客の立場が異常に高く、サービス提供者がへりくだるという、歪んだ関係だ。
 ・・・つまり 『おもてなし』 とは、まず客を思いやる気持ちがあり、客もその厚意を感じて感謝する、『互いに心地よくなるための心遣い』 であったということだ。『おもてなし』 が 『互いが心地よくなるための心遣い』 であったことを考えると、現在の不平等な客とサービス提供者の関係は、その精神とは真逆に位置している。・・・
 ブラック企業をなくすためには、そういった悪意のない 『ブラック客』 の意識改革が必要だ。
 『ブラック客』 の目を覚まさせるためのいちばん有効な手は、サービス提供者がノーをたたきつけることだろう。欧米では、過剰なサービスを要求する客を、『客ではない』 と店が拒否する。
 筆者が住むドイツでは、閉店法という法律により、店の営業時間が規制されている。キリスト教では日曜日が安息日と定められているので、『日曜、祝日は閉店』 が基本だ。また、労働者の休息時間を守り、小売店の営業時間延長による競争を阻止するため、『月曜日から土曜日までの小売店の営業時間は、6時から20時』 という決まりが守られていた。
 ただ、2006年には、閉店法の権限が国から州に移り、その後は各州で規制緩和が続いた。現在は16の州のうち、9つの州が月曜から土曜、3つの州が月曜から金曜の24時間営業を認め、14の州が年4回、またはそれ以上の日曜日の営業を認めた。しかし、法律改正後、ドイツ人は喜んで、店の営業時間を長くしたかというと、そうではない。今でも多くの店で、24時間営業や日曜営業は行っていない。フランクフルト中央駅には、スーパーとパン屋が合計17店舗入っているが、24時間営業しているのは、2軒のパン屋だけだ。
 フランクフルトの中心街にある、ドイツの2大デパートのうちのひとつKaufhofは、月~水が9時半から20時まで、木~土が9時半から21時までで、日曜は休館。もうひとつのKARSTADTは、月~土の10時から20時までの営業で、同じく日曜休館。ショッピングセンターのMyZeil、Skyline Plazaは月~水が10時から20時まで、木~土が10時から21時まで営業、同じく日曜は休みだ。フランクフルトにある4つの巨大商業施設でさえこの営業時間なのだから、あとは推して知るべしだ。日曜や深夜にどうしても食料品が必要になったら、大きい駅の構内の店か、閉店法の規制から外されているガソリンスタンドに行くしかない。
 一見不便に思うだろうが、ドイツ人は深夜や日曜に買い物をする習慣がないので、大して気にしていない。『なぜドイツ人は店が閉まっていても気にしないのか』 といえば、『自分も休んでいるから』 の一言に尽きる。ドイツには 『深夜や日曜日は休むべき』 という価値観が前提としてあり、自分自身が休んでいるのだから、他人に 『働け』 とは言わない。店が閉まっているのなら、前日に食料品を買って家でのんびりしていればいいのだ。
 それでも 『店を開けろ』 『働け』 という客には、はっきりとNOを突き付ける。ドイツだけでなく、欧米では客にNOと言うことが許される。だから対等な立場でいられるのだ。客の要求を拒否することは、サービスの質を下げることではない。労働者を守るために必要なのだ
 日本の 『お客様』 は、自分の立場が上で、過剰なサービスも当然だと思ってしまっている。・・・客がサービスに感謝し、サービス提供者の目線に立つことができて初めて、日本ご自慢の本当の意味での 『おもてなし』 になる。客が相手を思いやる気持ちを持てれば、労働環境も少しはマシになるだろう。」
 ドイツはこれでもかなり “緩和” されました。

 長時間労働の改善は経営者の都合では悪循環をもたらします。労働者の生活時間の確保、健康の維持の要求にこたえ、お互いへの思いやりを社会運動として進める中から実現させていくことが大切です。

 「活動報告」 2017.1.20
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本当の 「働き方改革・働かせ方改革」 なら 「つながらない権利」 の法制化は必須
2018/11/06(Tue)
 11月6日 (火)

 10月29日の日経新聞に、「勤務時間外のメール規制 NYで条例案、仏・伊は法律 『つながらない権利』 労働者に」 の見出し記事が載りました。

「勤務時間外のメール業務を規制する動きが広がっている。米ニューヨーク市で 『つながらない権利』 の条例案が審議中で、フランスやイタリアでは、法律が成立した。IT化でオフィスの外でも柔軟に働けるようになった一方、仕事と絶え間なくつながる環境が労働者のストレスになっているとの調査もある。オンとオフの線引きはできるのか。日本でも議論を呼びそうだ。」
ということを踏まえて各国の状況が紹介されています。

 「つながらない権利」 については、6月8日と6月19日の 「活動報告」 にも書きました。そこでは、フランス、ドイツ、韓国について触れましたがそれ以外の国について紹介します。

 アメリカです。
「ニューヨーク市議会で審議されているのは、勤務時間外のメールやチャットなどに返信するのを従業員に強いるのを禁じる条例案だ。市議の1人が3月に提案した。時間外の連絡そのものは規制しないが、労働者が望んで 『オフライン』 になる権利を保障する。
 条例案では、従業員10人以上の企業に時間外のメールに返信する必要がないなどのルールを明文化して周知するよう義務づける。返信しないことによる懲罰的な扱いも禁止する。市当局が従業員による違反の訴えを認めた場合、1回につき250ドル (約2万8千円) などの罰金を企業に科す。
 背景には急速に進む働き方のデジタル化がある。自宅からでも仕事ができるようになった半面、飛行機からでもネットへの接続が可能になり 『逃げ場』 がなくなった。米バージニア工科大などの研究チームが2016年に米国の各産業界で働く計約600人を調べたところ、時間外のメール対応は平均して週8時間にのぼったという。
 この研究チームが18年8月に発表した調査では、本人の健康だけでなく家族関係への悪影響もわかった。同大学のウィリアム・ベッカー准教授は 『実際の作業以上に、メールが来るかもしれないと常に構えていること自体がストレスをもたらす』 と指摘する。」

 2017年にアメリカ旅行産業協会が、職場の外からもメール等にアクセスできる人役2600人に休暇中のメールの対応についてインターネットで尋ねました。
 その結果です。「1日複数回以上」 27%、「ときどき」 46%、「まったくしない」 27%です。7割が休暇中にも対応しています。

「イタリアでも17年、働く場所や時間を選ばない 『スマートワーカー』 を保護するための法律が成立した。就業時間後の 『つながらない権利』 を雇用契約に明記することを義務づけた。
 企業による自主的な対策もある。独ダイムラーは14年、休暇中の社員あてのメールが自動的に消去されるしくみを導入した。メール送信者は社員の休暇終了後にメールを再送するか、緊急の場合は同僚にメールを転送する必要がある。「社員は休暇から戻った後、大量にたまったメールを処理せずに済む」 (同社) という。」


 さて、7月25日付の日経新聞で日本でも 「つながらない権利」 を導入して成功した大阪にあるネット広告の効果を測定するシステムの開発する企業・ウェブマーケティング会社のロックオンが紹介されました。導入前と後の状況について紹介します。社員数は100人です。
 きっかけとなったのは、11年に導入した平日5日間と前後の土日を合わせた9連休の取得を社員に義務付けた制度です。そのうえで、休んでいる社員に上司や同僚らが仕事上の連絡を取ることを禁じました。名付けて 「山ごもり休暇」 です。
 まず、決算年度末である9月中に、次年度の全社員の山ごもり休暇の取得日を確定させます。課やチーム内で社員同士の日程を調整し、業務が滞らないようにしたうえで、誰がいつ休むかを社内システムで共有します。

 そのために、社員一人ひとりが引き継ぎシートを必ず作成して皆で共有します。携わるプロジェクトや朝会の運営といった業務について、どういう時にその作業が発生するのか、どう対応するのか、その業務に関わるマニュアルはどこにあるのかをだいたい1人10項目ほど記入されて、その一つ一つに対応するマニュアルが緻密に作られています。過去の経験から想定される事態を書きだして対処法も示します。業務の “たな卸し” です。
 「一切の連絡が禁止と言われると引き継ぎに甘えが許されない。周りに迷惑をかけないようシートづくりは真剣だ」 といいます。
 「つながらない権利」 の3か条があります。
 ・連絡を取らないことをルール化
 ・引継ぎ資料作りは徹底的に
 ・日頃から自分の業務を棚卸し
です。

 なぜ休むためにここまでするのか。社長は 「社員を休ませるためだけに始めたのではない」 と打ち明けます。
 会社は急成長しました。
 しかし、成長に伴って社員一人ひとりが何をしているのかがわかりにくくなりました。「仕事が属人的になり過ぎると、社員が病気になったり転職したりしたときのリスクが大きい」
 山ごもり休暇は9日間とはいえ強制的に仕事から離れることで、社員一人ひとりが抱える仕事を洗い出す効果があります。さらに、効率的な仕事の仕方を考える機会にもなりました。
 「導入当初は 『人が足りない』 『仕事をカバーできない』 といった反発が大きかった」 といいます。ところが、トップダウンで強行してみると、「やってみれば意外とできた」。

 休みをとった社員の感想も 「仕事を1人で抱え込むメリットはない」 と実感したといいます。いったんシステムに不具合があれば24時間いつでも1人しか対応できないのは、本人にとっても会社にとってもデメリットだということを実感しました。
 さらに、引き継ぎ資料やマニュアルを通じて他人の仕事の進め方を知ることが、自身の仕事の効率改善にもつながるという声も多いといいます。「引き継ぐには自分の業務を他人に明確に説明する必要がある。各自が自分の仕事を整理し、客観的に把握できるようになった」。
 繋がらない権利は、毎日の帰宅後、「山ごもり休暇」、社員が急に休まざるをえなくなった時も仕事を代わってもらえるという効果があります。


 NTTデータ経営研究所が1100人を対象に6月に実施した調査では、ほぼ3人に1人が 「月1回以上、上司からの不急のメールや電話に対応している」 と答えました。同僚からも同じ状況で、部下、顧客からも4人に1人が対応しています。これが日本の現状です。


 前国会で強行された働き方改革法案について、政府は「働き方改革こそが、労働生産性を改善するための最良の手段」と意義を述べています。労働時間に関してもさまざまな条文がありました。しかし高プロのような労働基準法適用を除外する労働者を登場させるとともに、職場にいる間の時間の管理は行われても、職場外で延長される実質的残業には議題にも上がりませんでした。
 しかし。労働時間と労働生産性は比例しません。長時間労働を容認するような改革は労働生産性を高めません

 時間外に業務に関するメールが頻繁に届いては場所をかえて仕事をしているのと同じです。長時間労働は緩和されません。
 有休の消化や連続休暇の取得を奨励したといわれても、その間にも仕事の連絡が入り無視することができず労働者は対応せざるを得ません。「オンとオフの線引き」 が社会的に存在していません。
 そのため、仕事と絶え間なくつながる環境は労働者のストレスになっていきます。

 それに比べてロックオンの取り組みはまさしく働き方改革です。
 個人ごとの業務配分は、自己責任・自己完結が強制され、ゆとりがなくなり長時間労働をしいます。業務のとらえ返しもできません。それにかわりお互いの業務をお互いの認識、共有化することで無駄を省き、それぞれの労働者に心身のゆとりが生まれ、会社としての生産性は確実に向上しています。

 労働者がきちんと心身を休める体制をとる必要があります。そのためには 「つながらない権利」 の法制化が必要です。それこそが本物の 「働き方改革・働かせ方改革」 です。

 「活動報告」 2018.6.8
 「活動報告」 2018.6.19
 「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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「大綱」 は問題提起ではなく、取り組みの義務
2018/07/27(Fri)
 7月27日 (金)

 7月24日、「過労死等の防止のための対策に関する大綱 ~過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ~」 が閣議で決定されました。「過労死等防止対策推進法」 (2014年法律第100号) に基づき、2015年7月に初めて策定しましたが、約3年を目途に、大綱に基づく対策の推進状況等を踏まえて見直すこととなっています。
 「大綱」 は、これまで省庁などのさまざまな機関が独自に行なってきた長時間労働やストレス、メンタルヘルス対策などの問題や調査結果を個別課題としてではなく検討しています。
 しかし、実際の推進力はどこにあるのかとなるとはっきりしません。本物の「働きかた改革」の中心テーマとして位置付けられたら実効性が出てくるかもしれませんがそうは位置付けられません。
 本来は、見直しに際しては、何ができなかったのかを指摘してなぜできなかったのかを検証しないと変更された内容についても実効性が薄くなります。


 「大綱」 を検討します。
 まず、「現状と課題」 においてさまざまな統計資料が取り上げられています。
 「勤務間インターバル」 については、「導入している」 1.4%、「導入 を予定又は検討している」 5.1%、「導入の予定はなく、検討もしていな い」 92.9%です。さらに、勤務間インターバル制度の導入の予定はなく、検討もしていない企業について、その理由別の割合をみると、「当該制度を知らなかったため」 40.2%、「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」 38.0%です。
 恒常的体制として必要ない企業もあります。労働実態と制度の必要性をクロスさせた調査をおこない、インターバルが必要な企業にたいしては導入の支援が必要です。

 「職場におけるメンタルヘルス対策の状況」 については、仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み又はストレスを感じている労働者の割合は、59.5% (2016年) と依然として半数を超えています。その内容 (3つ以内の複数回答) をみると、「仕事の質・量」 (53.8%) がも多く、次いで、「仕事の失敗、責任の発生等」 (38.5%)、「対人関係 (セ クハラ・パワハラを含む。)」 (30.5%) です。
 ストレスチェック制度の実施が義務付けられている事業場のうち、実施している割合は82.9%です。結果を集団ごとに分析し、その結果を活用した事業場の割合は、37.1%です。(厚生労働省 「平成2 8年労働安全衛生調査 (実態調査) 特別集計」 による。)。
 ストレスチェック制度は当初から効果についてはエビデンスがないといわれていますが厚労省は実施に熱心です。他の課題についても同じような熱心さが必要です。


 「第2 過労死等の防止のための対策の基本的考え方」 の 「調査研究等の基本的考え方」 です。
「過労死等の実態の解明のためには、疲労の蓄積や心理的負荷の直接の原因となる労働時間や職場環境だけでなく、不規則勤務、交替制勤務、深夜労働、出張の多い業務、精神的緊張の強い業務といった要因のほか、その背景となる企業の経営状態や短納期発注を含めた様々な商取引上の慣行等の業界を取り巻く環境、労働者の属性や睡眠・家事も含めた生活時間等の労働者側の状況等、複雑で多岐にわたる要因及びそれらの関連性を分析していく必要がある。このため、医学分野や労働・社会分野のみならず、経済学等の関連分野も含め、国、地方公共団体、事業主、労働組合、民間団体等の協力のもと、多角的、学際的な視点から実態解 明のための調査研究を進めていくことが必要である。
 なお、過労死等の調査研究は、業務における過重な負荷による就業者の脳血管疾患、心疾患等の状況が労災補償状況等からは十分把握されていないことを踏まえ、労働・社会分野の調査において、労働者のみならず自営業者や法人の役員も対象としてきており、今後とも自営業者等一定の事業主のほか、副業・兼業を行う者も含め、広く対象とする。」
と問題点の指摘がおこなわれています。

 「企業の経営状態や短納期発注を含めた様々な商取引上の慣行等の業界を取り巻く環境」 については他の箇所でも取り上げられています。
「長時間労働が生じている背景には、様々な商慣行が存在し、個々の企業における労使による対応のみでは改善に至らない場合もある。このため、これらの諸要因について、取引先や消費者等関係者に対する問題提起等により、個々の企業における労使を超えた改善に取り組む気運を社会的に醸成していくこと が必要である。」
 労働時間は、親会社は削減さわれても、そのしわ寄せが子会社・孫会社、さらにその下請けに至っているという話をよく聞きます。また子会社・孫会社で過労死が発生しても親会社への気兼ねや圧力からうやむやに扱われているという話も聞きます。
 「生活残業」 がいわれています。残業代を生活維持のためにあてにして時間削減に応じない労働者がいます。さらに非正規労働者の処遇などを含めて労働時間の短縮は、業界としての取り組みを行わないと効果はありません。
 長時間労働の問題はもっと掘り下げての問題指摘と改善の取り組みが必用です。


 「2 啓発の基本的考え方」としては 「(1) 国民に対する啓発」、「(2) 教育活動を通じた啓発」、「(3) 職場の関係者に対する啓発」 があげられています。
 「(3)職場の関係者に対する啓発」 では 「過労死等は主として職場において発生するものであることから、その防止のためには、一般的な啓発に加えて、管理監督者等職場の関係者に対する啓発が極めて重要である。特に、それぞれの職場を実際に管理する立場にある上司に対する啓発や、若い年齢層の労働者が労働条件に関する理解を深めるための啓発も重要である」 とあります。

 職場における取り組みはトップの意識改革から始める必要があります。問題はトップの意識の問題です。
 2000年初め、「電通過労死事件」 の判決が確定すると、各企業の管理職研修は、使用者の安全配慮義務違反で裁判を提起されて敗けると膨大な賠償金を支払わなければならない、そのために裁判を提起されても負けないように労働者を管理し記録を残しておくようにという内容でした。労働者の健康を守るということが目的ではなく、会社の賠償額の減額が目的でした。今もそのようなとらえ方から行われている研修があります。
 啓発は、労働者の健康、権利、人権の基本視点がなければなりません。


 「第3 過労死等防止対策の数値目標」 が労働時間、勤務間インターバル制度、年次有給休暇及びメンタルヘルス対策について掲げられました。
 労働時間については、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下とする (2020年まで)。
  勤務間インターバル制度について、労働者数30人以上の企業のうち、(1) 勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を20%未満とする (2020年まで)。(2) 勤務間インターバル制度を導入している企業割合を10%以上とする (2020年まで)。
 年次有給休暇の取得率を70%以上とする (2020年まで)。特に、年次有給休暇の取得日数が0日の者の解消に向けた取組を推進する。
 メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上とする (20 22年まで)。
 仕事上の不安、悩み又はストレスについて、職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者の割合を90%以上とする (2022年まで)。
 ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上とする (2022年まで)。
などです。

 その上で、「第4 国が取り組む重点対策」 として、「1 労働行政機関等における対策の重点的取り組み」 が掲げられています。
「(1) 長時間労働の削減に向けた取組の徹底」では法律順守やこれまでの指針や通達の徹底があげられています。
 さらに、今回の特徴として公務労働における長時間労働があげられています。
「地方公務員の勤務条件について、ガイドラインの周知はもとより、労働基準監督署がその職権を行使する職員を除き、人事委員会又はその委任を受けた人事委員会の委員 (人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の長) (以下 「人事委員会等」という。) がその職権を有する、労働基準法別表第1第11号及び第12号並びに同別表に含まれない官公署の事業に従事する職員に過重労働の疑いがある場合は人事委員会等が監督指導の徹底に努めるものとする。」


 「3 啓発」 のなかの 「(9) 商慣行・勤務環境等を踏まえた取組の推進」 として具体的に業種があげられました。
 ア.トラック運送業 イ.教職員 ウ.医療従事者 エ.情報通信業 オ.建設業 カ.その他。その他のなかには、重層下請構造や長時間労働の傾向が見られるメディア業界、長時間労働の傾向が見られ、年次有給休暇の取得率が低い宿泊業について具体的取り組みの必要性が指摘されました。


 さらに、長時間労働、健康被害の問題として 「第三者からの暴力」 の問題が指摘されています。
「平成29年版白書によると、外食産業の労働者のうち、顧客からの理不尽な要求・クレームに苦慮することが 『よくある』、『たまにある』 と回答した者の割合が44.9%に達すると報告されている。特に、サービス産業を中心に、一部の消費者及び生活者から不当な要求を受け、日常の仕事に支障が生じ、労働者に大きなストレスを与える事例も問題となりつつあることから、取組に当たってはそうした点に配慮する必要もある。」


 「大綱」 を問題提起にとどめるのではなく、解決が迫られている課題が指摘されていると受け止め、その改善の取り組みを労使ともの義務として進めなければなりません。

 「「過労死等の防止のための対策に関する大綱」
 「活動報告」 2016.10.7
 「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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