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誰のための高校野球
2019/07/30(Tue)
 7月30日 (火)

 7月25日に開催された夏の高校野球岩手県大会決勝戦で、大船渡高校の佐々木投手が監督の判断で出場を回避したことに賛否さまざまな意見が寄せられています。
 佐々木投手は前日の試合にも登板し129球を投げています。監督は 「投げられる状態であったかもしれないが、私が判断した。理由としては故障を防ぐこと」 と説明。佐々木投手は投げられる状態だったが、「監督の判断なのでしょうがないです」 と話しました。
 このなかには、高校野球、高校野球全国大会、スポーツ界をめぐる問題、教育界を巡る問題などさまざまな問題が含まれています。

 高校野球です。
 クラブ活動は、就職のための面接手段ではありません。だれかに見せる・見てもらうことを目的にしません。高校生活のなかで好きなこと、得意なことを仲間と力を合わせて発揮したり鍛える活動です。試合をするからには勝つことを目指して奮闘しますが、結果は負けることもあります。
 勝つことで学校の名声が高まるのは名誉です。しかしそれは結果であって、学校のために勝つことを目指すのは本末転倒です。
高校かぎりで野球生活を辞めると決めているなら、いま多少無理をすることもできるでしょう。しかしこの後大学やプロ野球で選手生活を続けることを希望するのなら今無理をするのは危険です。危険を予知しながら投げさせるのは無責任で、指導者のやるべきことではありません。大船渡高校野球部監督の判断こそはまさしく選手の側に立った、将来をも見据えた判断です。

 各地の高校は全国からさまざまな条件を提示して選手を勧誘します。
 ある年の夏大会で優勝した沖縄の高校に、親元を離れて寮生活を送る兵庫県出身の選手がいました。甲子園大会出場は帰省のようなものでした。優勝旗を掲げての沖縄への凱旋は故郷をあとにすることでした。
 ある年の夏大会で準優勝した北海道の高校の選手たちのなかには北海道出身の選手はほとんどいませんでした。
 高校にとってはテレビ、新聞などに名前がでると、部員以外の生徒も集まり、学校経営は潤います。生徒は有名校に在籍していることを名誉に感じています。
 箱根駅伝出場の常連校のある大学は優勝候補に名を連ねるようになったら受験生が万単位で増えました。今、大学入試の受験料は2万5千円です。膨大な収入増となります。部や選手をどのように優遇してもおつりがきます。部活動が学校経営の手段となっています。

 では選手はどうでしょうか。
 高校生の身体は成長期です。大学生もそうです。
 期待されてプロ野球に進んでも活躍できなかった選手がたくさんいます。なにが原因だったのでしょうか。それについては検証されたことがありません。 成績を上げられなかったときにいわれるのは身体管理、健康管理は自己責任、それを怠った、です。
 ではいつ怠ったのでしょうか。プロ野球入団前のことは問題視しません。
 検証されないこととエビデンスがないことは別の問題です。検証しないのはエビデンスを作らないためです。
 実際は高校時代に身体管理、健康管理を怠ったのではないでしょうか。そこには関係者それぞれ無責任体制があります。

 日本以外では経験的にもエビデンスが存在します。
 新潟県高校野球連盟は、昨年12月22日、19年の春季県大会限定で、投手の投球数を1試合につき1人100球までにする 「球数制限」 を導入することを全国で初めて明らかにしました。しかし日本高野連は了承しませんでした。エビデンスがないからです。


 無理をしても投げろという世論、圧力は大きいです。
 チームメイトのために、学校の名誉のために、郷土のために、ファンのために・・・
 選手はたとえチームであっても他者のために犠牲にならなければならないのでしょうか。チームメイトのためにというとき、なにがそういう思いにさせたのでしょうか。学校、名誉、郷土、ファンは選手あってのもので、その逆ではありません。
 この問題を考えるとき、戦時中の 「出征兵士」 を連想します。お国のために・・・、「死んで帰れ」 です。この無責任な連呼のために多くの人たちが亡くなりました。そして今、まさしく身体を壊すことがわかっていても 「〇〇のために」 が連呼されます。無責任です。そして怖いです。


 休養日を設定すればいいという意見があります。地区大会なら可能かもしれません。
 しかし、年に全国でいくつもの大会が組まれているなかにあってはスケジュール調整に難しい問題があります。
 3月26日の 「活動報告」 でも書きましたが、全国大会の地元校以外は選手の移動費、滞在費の工面が大変です。ベンチ入りする選手以外にも顧問、コーチ、マネージャーなどが同行しますが本人負担ではありません。地元では学校の奨学会、PTA、同窓会、後援会などが資金作りに奔走します。
 さらに試合当日は大勢の応援団が駆けつけます。生徒の応援団は学校負担になりますが、保護者等は自己負担です。応援団は経費削減のため、遠路からでもバスでの移動、睡眠になります。勝ち続いた時はいったん帰省してまた出かけてきます。体力維持は大変です。
 選手たちが頑張っているときに金のことをつべこべいうなという反論が出ます。そういう人たちはお金を出しません。
 そして教師の長時間労働がおきます。いま、教師の長時間労働の原因の一つとしてクラブ活動に裂かれる時間が問題になっていますがまさしく直撃します。しかしそのときにも 「生徒が頑張っているのだから」 と押し切られてしまいます。

 甲子園大会は年2回も開催する必要があるのでしょうか。しかも誰のためにでしょうか。しかもその1回は真夏です。
 学校が休みの期間に開催しているという意見がありますが、だとしたら国体での高校生の競技・球技はなくすべきです。そもそも年間に大会と名の付く競技・球技が多すぎます。むしろ全国大会は、会場にこだわらずに、国体だけにした方がいいのではないでしょうか。


 もう一度3月26日の 「活動報告」 です。
 内田良著 『学校ハラスメント 暴力・セクハラ・部活動―なぜ教育は 「行き過ぎる」』 (朝日新書) が刊行されました。
 著者は、甲子園大会に “疑問” を投げかけています。
「『体罰』 問題の検討に入る前にまず、指導者を含む大人全体が、スポーツ活動時の生徒の身体を侵害しうるというところから出発したい。具体的には、高校野球の甲子園大会を例にとって考えていきたい。
 夏の甲子園 暑いからこそ感動する?!
 ・・・
 夏の甲子園大会は、日本のアマチュアスポーツ最大のイベントである。都道府県を代表する高校球児が、『深紅の大優勝旗』 を目指して闘いを繰り広げる。
 その姿を見て、例年のように話題になるのが、甲子園球場の 『暑さ』 である。『そこまで暑い中でやらなくても・・・』 と心配しる声も聞かれる。
 しかし高校野球においては、『青い空、白い雲。照りつける夏の日差し。日本の夏は甲子園が似合う』 と言われるほどに、『「暑い夏」 と 「甲子園」 は欠かせぬ “舞台装置” である』。『暑い夏』 に、選手が必死にプレイする姿に、私たち観客や視聴者は、甲子園固有の魅力を感じる。
 熱中症に気をつけねばならないほど暑いからこそ、甲子園は盛り上がる。高校野球を、空調の利いたドーム型球場で開催するなど、ありえないというわけだ。
 暑さが高校野球を盛り上げる重要な装置だとしても、それはつねに熱中症という負の側面と紙一重である。暑さは、甲子園大会を引き立たせる魅力であると同時に、選手においては健康面での重大なリスクファクターでもある。
 現時点では、球場としてもまたチームとしても諸々の熱中症対策がなされているものの、『なぜあの炎天下でスポーツをしなければならないのか』 という根本的な訴えは、ほとんど放置されている。」

「暑さの問題を考えるとき、もう一つ目を向けるべきところがある。アルプススタンドだ。高校野球では、私たちはつい、選手の活躍ばかりに見入ってしまう。だが、もしかして選手以上にしんどい思いをしているかもしれないのが、アルプススタンドの高校生たちである。
 あまり知られていないことだが、じつは甲子園のベンチには、エアコンが備え付けられている。ベンチの背面の壁とイスの間から冷風が出てくるという。したがって、選手はベンチにいるときは、日陰のもと比較的涼しい環境にいる。
 他方で、アルプススタンドにいる応援団はどうだろう。とくに、私が 『文化系運動部』 と呼んでいる吹奏楽部は、チームの攻撃中、そこで吹奏、いや運動をつづけなければならない。相手チームの攻撃時は、いちおう休みをとることができるが、そうはいっても、選手がいるベンチとはちがって、日陰もなければエアコンもない。」

 学友を応援するということで教育の一環と位置付けられて強制される応援は、戦時中の出征兵士を送る故郷の儀式に似ています。そのことをさらに強く感じさせるのが、高校野球だけではないですが、多くの競技・球技が 「国歌斉唱」 「国旗掲揚」 ではじまり、終了するということです。
 競技・球技が国家のためと一体となる (させられる) ことと、チームメイトのために、学校の名誉のために、郷土のために、ファンのためにと強制される一体感は選手としての ”自己を殺されます”。
 社会からのさまざまな圧力に抗して自立した個を確立した選手が集まったチームは勝つことの本当の意味を確信できます。

 スポーツは、誰のためではない、自分のためにやっているということを選手たちが自覚して楽しむことを取り戻す時が来ているのではないでしょうか。だれからも、どのような強制もうけないものにしなければなりません。
 生徒も教師ももっともっとゆとりを持って本業の教育に打ち込めるようにしていかなければなりません。
 そうするとファンはもっと楽しんで応援できます。

 「活動報告」 2019.7.12
 「活動報告」 2019.3.26
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深刻な人手不足の実態
2019/07/17(Wed)
 7月17日 (水)

 東京商工リサーチは7月8日、2019年上半期 (1~6月) の全国企業倒産状況 (負債額1,000万円以上) を発表しました。
 倒産件数は3,991件 (前年同期4,148件) でした。上半期としては10年連続で前年同期を下回り、1990年 (2.948件) 以来の低水準です。
 負債総額は、7,623億6,000万円で、前年同期比2.1%増 (157億5,700万円増) の微増で、上半期では2017年 (2兆2,104億3,800万円) 以来、2年ぶりに増加しました。負債1,000億円以上が1件 (前年同期ゼロ) 発生したことが要因です。ただ、負債10億円以上は88件 (同90件) にとどまり、上半期では過去30年間で初めて90件を下回りました。

 もう少し細かくみると
 ・形態別として、法的倒産の構成比が上半期としては過去最高の93.2%
 ・都道府県別件数では、前年同期を上回ったのが18都県、減少27道府県、同数2県
 ・負債別としては、負債10億円以上の大型倒産が88件、負債1億円未満の構成比が
  73.8%
 ・従業員数別は、従業員5人未満の2,914件。構成比は73.0%で、高水準が続く
 ・業種別では、コンビニエンスストア18件 (前年12)、道路貨物運送業110件
  (同82件)、老人福祉・介護事業55件 (同45件)
 ・中小企業倒産 (中小企業基本法に基づく) は、上半期では2000年以降で最少件数
 ・上場企業倒産は1件発生
です。

 産業別倒産件数は、多い順にサービス業他が1,247件 (前年同期比1.2%増) で全体の3割を占め、建設業が694件 (同3.6%減)、小売業が557件 (同3.2%減)、卸売業が540件 (同13.8%減)、製造業が480件 (同8.3%減) と続きます。
 サービス業、情報通信業、運輸業の3産業で前年同期を上回りました。
 サービス業は、16年 (1,116件) 以降、4年連続で増加です。内訳は飲食業 (361→381件) のほか、美容業やマッサージ業などを含む生活関連サービス業,娯楽業 (186→196件) の増加が目立ちます。
 ドライバー不足が深刻化する運輸業は135件 (前年同期比20.5%増) と2割増加し、13年 (236件) 以来、6年ぶりに増加しています。
 3産業以外の建設業、小売業、卸売業、などでは減少しています。
 建設業 (694件) は リーマン・ショック時の09年 (2,100件) 以降、11年連続で減少し3分の1以下の水準となった。
 減少しているのは人手不足業種です。

 9地区の地区別では、件数の最多は関東の1,480件 (前年同期比1.3%減)、次いで近畿の1,023件 (同5.8%減)、中部の480件 (同19.5%減) と続き、東名阪を抱える3地区で74.7%を占めました。
 増加率トップは北陸が102件 (同18.6%増) で3年ぶりに増加、四国の97件 (同16.8%増)、九州の343件 (同8.5%増 そのうち福岡は183件、負債23782百万円が目立ちます) はともに2年連続で前年同期を上回りました。
 北陸は、サービス業他 (26→43件) が6割増と、件数を押し上げました。サービス業他のうち、生活関連サービス業,娯楽業 (5→11件) や飲食業 (12→16件) などの消費関連の増加が目立ちます。新幹線開通への期待と実際の状況でしょうか。また、電子機器メーカーの破産などがあります。(FKサービス(株)/福井県/液晶テレビ・電子機器ほか製造/215億8,900万円)
 18年上半期に前年同期比21.1%増と、最も高い伸びを見せて注目を集めた東北は183件で、前年同期と同数でした。


 倒産状況のなかの 「人手不足」 関連倒産についてです。倒産状況について13年から集計を開始しています。
 「人手不足」 関連倒産とは、代表者や幹部役員の死亡、病気入院、引退などによる 「後継者難」 型、人手確保が難しく経営難に陥った 「求人難」 型、人手確保が困難で事業継続に支障が生じた 「従業員退職」 型、賃金等の人件費アップから収益が悪化した 「人件費高騰」 型が要因に分けられます。
 上半期については昨年が185件で最多記録でしたが、3年連続で前年比を上まわり、19年はすでに191件に及んでいます。
要因別にみると、最多は 「後継者難」 型が109件 (前年同期146件、25.3%減) で全体の57%を占め、「求人難」 型が47件 (同19件、147.3%増) で24.6%、「従業員退職」 型が20件 (同10件、100.0%増) で10.5%、「人件費高騰」 型15件 (同10件、100.0%増) 7.85%でした。

 産業別です。
 最多がサービス業他の63件 (前年同期50件 26.0%増)。次いで、建設業33件 (前年同期比3.1%増)、製造業22件 (同31.2%減)、卸売業19件 (同45.7%減)、運輸業18件 (同9件、100.0%増)、小売業17件 (同21.4%増) と続きます。
 建設業は、前年同期比で、全体では減少していますが、 「人手不足」 関連倒産では増加しています。
 地区別です。
 全国9地区のうち九州35件 (前年同期18件)、近畿25件 (同18件)) の2地区で前年同期を上回りました。減少は北海道5件 (同11件)、関東74件 (同81件)、東北12件 (同15件)、中部22件 (同23件)、北陸1件 (同1件) の5地区。中国9件と四国8件は前年同期同数です。
 都道府県別です。
 都道府県別では、東京36件 (前年同期39件)、福岡16件 (同7件)、神奈川11件 (同9件) と大阪11件 (同9件)、愛知10件 (同15件) の順でした。


 今年6月についてです。
 今年最多の41件 (前年同月比10.8%増、前年同月37件) で、今年に入って初めて40件台に達し、最多となりました。
 内訳は、「後継者難」 型が24件 (前年同月30件)、「求人難」 型が10件 (同3件)、「従業員退職」 型が4件 (同1件)、「人件費高騰」 型が3件 (同3件) です。
 産業別です
 産業別では、サービス業他19件 (前年同月14件) が最多で、次いで、建設業5件 (同6件) と製造業5件 (同7件)、運輸業4件 (同2件)、卸売業3件 (同5件)、小売業2件、不動産業2件、情報通信業1件です。
 地区別では、関東17件 (前年同月18件) を筆頭に、九州5件 (同3件)、近畿 (同4件)・中国4件 (同ゼロ)・四国4件 (同1件)、中部3件 (同4件) と東北3件 (同3件)、北海道1件 (同2件)、北陸ゼロです。


 かつては、倒産は年度末の3月末に急増しました。今は違います。ギブアップした時点です。
 3年間の月ごとの数をみてみます。
 1月は、17年33件、18年31件、19年30件、2月は、23件、19件25件、3月30件、30件38件、4月22件、30件、28件、5月28件、38件、31件、6月28件、37件、41件です。
 7月は17年24件、18年42件、8月20件、45件、9月22件、27件、10月39件、25件、11月25件、38件、12月23件、25件です。
 18年は5月から8月にかけて30件後半から40件台になっています。現状ペースで推移すると、19年 (1-12月 )の 「人手不足」 関連倒産は過去最多を塗り替える可能性が出てきています。

 負債総額についての18年と19年の上半期の比較です。
 「後継者難」 型は146件から109件と25.3%減少していますが、負債総額は21846百万円から12068万円と44.8%の減少です。
 「求人難」型 は19件から47件と147.4%増大し、1489百万円から6224万円と418%に急増しています。求人難の倒産は深刻な事態を招いています。
 「従業員退職」 型は10件から20件と100%増大し、1675百万円から3999万円と238.7%に急増しています。
 「人件費高騰」 型は10件から15件と50%増大し、1638百万円から2471万円と134%増大しています。
 件数と負債総額は比例しません。細かい内訳はありませんが、その時の連鎖を含めた経済状況などがありそうです。


 7月9日の 「活動報告」 で希望・早期退職者問題について触れました。
 一方で “人余り” 問題を発生させながら、一方では人手不足問題が深刻になっています。
 “人余り” は高賃金の企業で発生して (作られて) いて、人手不足は低賃金の業種で深刻になっています。
 人手不足は東日本大震災に続く災害復興に大きな影響を及ぼしました。その原因となったのが、東京オリンピックです。
 オリンピック後は、低賃金の業種で “人余り” が発生します。
 現在 “人余り” 企業であろうが、人手不足企業であろうが、労働者は雇用、生活、権利にたいしてきちんと声をあげて要求し確立しておかないと、路頭に放り出される危険性がでてきます。

 「全国企業倒産状況」
 「活動報告」 2019.7.9
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希望・早期退職者数 リーマンショック時と同じに
2019/07/09(Tue)
 7月9日 (火)

 7月7日の日経新聞は 「早期退職はや8000人、18年の倍 次見据える中高年 上場企業1~6月」 の見出し記事を載せました。引用が長いですが、全体像を解説していますので紹介します。
「人手不足が続くにもかかわらず、大企業で定年前の退職を募る早期退職が増えている。2019年1~6月には上場企業の17社が合計で約8200人の早期退職者数を発表し、半期で18年を上回った。製薬など、業績が好調なうちに人員を適正化して事業環境の変化に備える動きも目立つ。応募者側も人生100年時代をにらみ、早期にキャリアの再設計に動く中高年も増えている。
 ■業績好調な製薬も
 調査会社の東京商工リサーチによると、19年1~6月に上場企業が募集 (または応募) を発表した早期退職者数は、18年の年間 (12社、4126人) の人数の約2倍になった。7月以降もこのペースなら19年は年間で13年以来6年ぶりの1万人超えとなりそうだ。
 45歳以上を対象にした早期退職者数が増えている。エーザイでは応募が当初見込みの3倍にのぼり、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスやアルペンでも募集より20~35%程度多く集まった。

 19年1~6月の17社のうち人員が多かった業界は電機 (5社) と製薬(4社)だった。電機は経営再建に揺れるジャパンディスプレイ (JDI) や富士通など経営不振による人員削減だったが、製薬は様子が違う。
 中外製薬は4月に45歳以上の早期退職者を募集。応募は172人にのぼった。同社は18年12月期の純利益が2期連続の過去最高を達成したばかり。だが 「デジタル化で経営環境が大きく変わり、従来の専門性や技術で競争力を維持するのは困難」 (同社) と将来への危機感が強い。希望者に退職金と特別加算金を支給し、外部の専門会社による再就職支援もする。
 東京商工リサーチの二木章吉氏は最近の希望退職について、従来のリストラ型から「成長分野に事業転換するため余裕のあるうちに人員構成の見直しを進める 『先行実施型』 が増えている」 と指摘する。
 1990年代に大量に採用されたバブル世代 (19年に49~52歳) や人口が多い団塊ジュニア世代 (45~48歳) を削り、若手を増やして新分野の技能を育てる狙いだ。
 ■デジタル化に若手必要
 年功序列型の賃金では企業の負担が大きい。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると大企業で年齢別に賃金が最も高くなるのは50~54歳 (男性) で平均月給は51万円だ。45~49歳も46万円と高い。

 団塊ジュニア世代が50歳に近づき 「多くの企業で中高年がボリュームコストになっている」 (日本総合研究所の山田久主席研究員)。一方で同所の調査では、およそ1千社の約8割が 「若手の人材が不足」 と答えた。
 20年3月期に3期連続で増収増益を見込むエーザイも、デジタル対応や新薬開発に向けて組織の若返りを進める。45歳以上の約300人が3月末までに早期退職した。全従業員の9%にあたる人数だ。新卒採用は例年の約40人から100人規模に増やし、初任給を上げたほか20~30歳代の給与もベースを引き上げた。
 日本経済新聞社が今月まとめた 「社長100人アンケート」 では5割超が年功序列型の賃金制度を見直すと回答した。業績が良く余裕のあるうちに退職金などを上積みして中高年の転職を促す。攻めの早期退職は人事と賃金制度の抜本見直しにもつながりそうだ。」


 募集人数の最多は、富士通 (グループ会社を含む) の応募2,850人です。成長領域のITサービス等を強化し、間接部門の効率化を目指した 「成長に向けたリソースシフト」 の一環として実施しました。次いで、収益力強化に向けた構造改革計画の一環で実施した東芝 (グループ会社を含む) の約1,060人 (応募823人)。(東芝は予想を超えた流出に対して、社内に 「まだ大丈夫希望を持とう」 のポスターが貼られているといいます) 物流費等の上昇に人件費圧縮で経営効率化を目指すコカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス (グループ会社を含む) の募集700人 (応募950人)。経営計画に沿って国内事業の再編を進めるアステラス製薬 (グループ会社を含む) の応募約700人と続きます。
 中外製薬の応募人数172人、カシオ156人、アルペンは募集人数300人程度に対して応募人数355人でとなっています。

 パイオニアはこの4月から希望退職者の募集を開始し、当初の募集人員700名に対し、すでに希望退職に950名が応募したことが明らかになっています。2018年12月に公表した、今後2年間で国内外グループの従業員約3000人を削減する計画を打ち出した合理化策の一環として実施したもので、対象となったのは同社および国内グループ会社の社員です。
 主力のカーナビ事業の不振で、2019年3月期の純損益が3年連続の赤字になる見通しです。昨年12月、香港の投資ファンド 「ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア」 の完全子会社になって再建をめざすと発表し、3月に東京証券取引所第1部の株式の上場を廃止しました。希望退職のほか、採用の抑制や非正規社員の縮小なども実施する方向で、開発や生産、販売などの拠点を再編する方針も示しています。想定人数は 「公表できない」 (広報) としていますが管理職以外の募集についても、労働組合から合意を得ているといいます。

 医薬品では過去最高の売上収益・営業利益を達成した中外製薬など、業績好調な企業でも希望退職者募集や配置転換など人員構成の見直しに動き出しています。医療費抑制を背景に、2年に1度の薬価改定が2021年度から毎年改定に変わり、薬価引き下げによる業績低下の可能性が影響しています。さらに、技術高度化に伴う新薬開発費の上昇に加え、グローバルマーケットでのメガファーマ (巨大製薬企業) 化の動きなど、事業環境が急速に厳しさを増していることも要因にあげられます。


 2000年代に入ってからの状況をみると、希望・早期退職者の実施は、2000年に80社でしたが01年に132社、02年に200社と急増します。その後減少し、リーマンショック後の09年に再度191社にのぼりましたがその後はまた減少をたどり、14年以降は円安などの影響があって50社を割り17年25社、18年は最小の12社でした。
 希望・早期退職者は、2000年は1万5千人でしたが02年は39,732人になり、03年2万数千人に減り、その後は1万人台がつづきましたが、09年22,950人に急増します。その後は減少を続け13年は10,782人でしたがさらに1万人を割り続けていました。


 もう一度日経新聞です。
「■中高年、人生100年見据える
 中高年の転職は難しいとされてきた。ただスタートアップ企業などの引き合いも強く過去の常識が崩れつつある。
 総務省の労働力調査では、18年の転職者数は329万人で8年連続で増えた。年齢別では45歳以上の転職者が145歳以上の24万人で5年前に比べ3割以上増えている。
 日本人材紹介事業協会 (東京・港) がまとめた人材紹介大手3社の紹介実績でも、18年10月~19年3月の41歳以上の転職者数は5,028人で、前年同期比40.4%も増えた。世代別でも最も伸び率が大きい。
 リクルートワークス研究所によると、企業が年功序列型から成果主義型にシフトするなか、上場企業で40歳代で課長になる人は10年前に比べて2割減った。大久保幸夫所長は 「40歳代で会社での自分の先が見えてしまい、モチベーションを持って働くために早期退職で新天地を求める人が多い」 と分析する。
 また 「今のうちに厚待遇を提示してくれる別の会社に移り70歳まで働きたい」 (メーカーを早期退職した55歳男性) と長く働ける環境を求める人もいる。
 政府は人生100年時代を見据え、中途採用の拡大に力を入れている。大企業には中途採用の比率の公開を求める方針だ。転職先の選択肢が広がれば、成長企業への人材移動が進みやすくなる。
 中途採用市場が広がり、年功ではなく実力主義の評価・賃金制度を持つ企業が増えれば、高齢者も60歳を超えて再雇用になって賃金が一律でカットされるといったことがなくなり、モチベーションの維持にもつながる。」


 2001年に松下電器が1万3千人の早期退職を募集すると、他社は雇用を大事にする松下電器がおこなうならと 「勇気」 をもらって真似をしました。経営陣のなかで松下電器は雇用問題を牽引する位置にありました。その結果失業率が5%台に跳ね上がりました。(厚労省の 「毎月勤労統計」 改ざんが問題になりましたが、その始まりは 「失業率が5%」 を覆い隠すためにおこなわれたことが始まりです)

 松下電器が雇用を大事にしていたといっても、労働者はみな正規社員や直接雇用者だったわけではありません。非正規労働者、請負労働者、派遣労働者が製造現場を支えていました。
 雇用問題は、正規社員の問題がクローズアップされているとき、実は非正規労働者の問題が深刻化を増します。非正規労働者でもパート労働者の問題が論議されているときに派遣労働者の処遇が悪化しました。非正規労働者の問題がクローズアップされているとき、正規労働者に早期退職、解雇が持ち上がります。

 リーマンショックのときは 「派遣切り」 が社会問題になりました。その時も派遣切りだけでなく多くの正規労働者が退職を強要されていました。

 今回は、それらの時とは違います。現時点で “リストラ (合理化)” が回避できない状態に陥った企業もあれば、本物の “リストラクチャー (企業の再編構築)” を進めようとしているところもあります。そして、募集人数を超えた企業もあれば、満たない企業もあります。なかなかその実態は漏れてきません。


 中高年の転職を促す早期退職は確実に人事と賃金制度の抜本見直しにもつながります。
 年功序列型の賃金制度は諸手当が占める割合が増えていますがまだ残っています。それをさらに縮小したりなくす方向にむかっています。これまでの貢献、経験は否定され、成果主義から、さらに役割給の制度に変えられています。役割給は会社が要請する任任務にたいする ”貢献度” に対する評価によります。競争社会が激化します。
 2000年に入ってからの人員削減の経験をへて企業はいろいろな教訓を積みました。有能な人材を残しながら”金食い虫”を排斥していきます。そのマニュアルが流布されています。

 企業が退職勧奨、解雇を実行することが不可欠であったとしても、その行使は最後の手段でなければなりません。ましてや年金問題で老後の生活の不安が煽られるなかにおいては、企業の社会的責任を含めて慎重でなければなりません。

 かつて中高年の労働者がリストラに直面している時に “見て見ぬふり” をしていた世代が今度は直面させられています。団塊世代の団塊ジュニア・ゆとり世代がリストラされています。それにしても当該を含めて労働者は静かです。

  「活動報告」 2019.6.18
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「フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想」
2019/04/23(Tue)
 4月23日 (火)

 4月12日の東京大学の学部入学式で上野千鶴子名誉教授が祝辞を述べました。最初はざわめきもありましたが徐々にみな聞き入っていたといいます。
 しかしあまり議論が起きないのは、時代も変わり、上野名誉教授の問題提起がセンセーションを起こすほどの珍しいものでもなくなりつつあるということでしょうか。
 とはいいながらまだまだ奇異なことがたくさんあります。抜粋して紹介します。


「ご入学おめでとうございます。あなたたちは激烈な競争を勝ち抜いてこの場に来ることができました。
 その選抜試験が公正なものであることをあなたたちは疑っておられないと思います。もし不公正であれば、怒りが湧くでしょう。 
 が、しかし、昨年、東京医科大不正入試問題が発覚し、女子学生と浪人生に差別があることが判明しました。文科省が全国81の医科大・医学部の全数調査を実施したところ、女子学生の入りにくさ、すなわち女子学生の合格率に対する男子学生の合格率は平均1.2倍と出ました。問題の東医大は1.29、最高が順天堂大の1.67、上位には昭和大、日本大、慶応大などの私学が並んでいます。1.0よりも低い、すなわち女子学生の方が入りやすい大学には鳥取大、島根大、徳島大、弘前大どの地方国立大医学部が並んでいます。ちなみに東京大学理科3類は1.03、平均よりは低いですが1.0よりは高い、この数字をどう読み解けばよいでしょうか。統計は大事です、それをもとに考察が成り立つのですから。」


 4月19日の 「活動報告」 に書きましたが韓国でベストセラーになっている小説 『82年生まれ、キム・ジヨン』 の最後に 「解説」 を担当した方が書いています。
「ちょうどこの解説を書きはじめた頃、東京医大での入試差別事件 (男子学生だけ一律加点したというもの) が発覚し、日本の女性たちの多くが足元が崩れ落ちるようなショックを受けた。怒りと情けなさの中で思ったのは、韓国なら即時に2万人の集会が開かれているだろうということだ。」
 「ME TOO」 運動においても日本ではほかの国ほど盛り上がっていません。差別、差別構造にならされているということもありますが、その構造から抜け出すことが難しい現実があります。


「これまであなたたちが過ごしてきた学校は、タテマエ平等の社会でした。偏差値競争に男女別はありません。ですが、大学に入る時点ですでに隠れた性差別が始まっています。社会に出れば、もっとあからさまな性差別が横行しています。東京大学もまた、残念ながらその例のひとつです。
 学部においておよそ20%の女子学生比率は、大学院になると修士課程で25%、博士課程で30.7%になります。その先、研究職となると、助教の女性比率は18.2、准教授で11.6、教授職で7.8%と低下します。これは国会議員の女性比率より低い数字です。女性学部長・研究科長は15人のうち1人、歴代総長には女性はいません。」

 古い話ですが 「女子学生亡国論」 が世間をにぎわしたことがありました。
 1960年代前半に女子大生が急激に増えたことにたいして有名大学の有名教授たちが、「女子学生は国をダメにする」 とか、「滅ぼす」 という主張を展開しました。特に文学部では典型でした。そもそも高校卒業して大学への進学率がまだ20%前後の頃です。女子大生は選ばれた人たちでした。

 では卒業したらどうしたのでしょうか。
 わかりやすく今流で、放送局のアナウンサーを例にとります。
 担当させられる番組は、時刻の告知、MCのとなりで出演者を紹介するだけの飾り物、独立したコーナーとして天気予報など。ニュースを読むなどということはとんでもないことでした。さらに男女で定年差別があります。なんと女子アナウンサーは30歳です。
 卒業して就職するに際しても専門的知識は期待されていません。そもそも求人がありません。理由は 「使いにくい」。そのため就職しない者も大勢いました。その一方で、「学歴は花嫁道具の1つ」 ととらえられていたこともあります。
 自立できる職業を探そうとしたときに学校の教師がありました。ただし、教頭・校長に辿り着くことはできません。

 日本においては、1960年代末から70年代にかけて学生運動が活発になりました。「大学解放」 「帝国主義打倒」 などのスローガンを掲げます。主体は “男の闘争” で、無意識のうちに男女の役割分担がありました。
 大学闘争が下降線をたどった頃、このような“体制”への反撃、突き上げとしてフェミニズム、ウーマンリブ運動が登場したように思われます。男性社会への反感もふくめてさまざまな主張がおこなわれましたが、根底にあるのは「女性の能力をちゃんと認めろ」ということでした。

 同じ頃に、3月5日の 「活動報告」 に書きましたが、女性労働者は、定年差別、昇格差別、賃金差別などに対して裁判闘争をたたかって歴史を変えてきました。


「こういうことを研究する学問が40年前に生まれました。女性学という学問です。のちにジェンダー研究と呼ばれるようになりました。私が学生だったころ、女性学という学問はこの世にありませんでした。なかったから、作りました。女性学は大学の外で生まれて、大学の中に参入しました。
 4半世紀前、私が東京大学に赴任したとき、私は文学部で3人目の女性教員でした。そして女性学を教壇で教える立場に立ちました。女性学を始めてみたら、世の中は解かれていない謎だらけでした。どうして男は仕事で女は家事、って決まっているの?主婦ってなあに、何する人?ナプキンやタンポンがなかった時代には、月経用品は何を使っていたの? 日本の歴史に同性愛者はいたの?...誰も調べたことがなかったから、先行研究というものがありません。ですから何をやってもその分野のパイオニア、第1人者になれたのです。
 今日東京大学では、主婦の研究でも、少女マンガの研究でもセクシュアリティの研究でも学位がとれますが、それは私たちが新しい分野に取り組んで、闘ってきたからです。そして私を突き動かしてきたのは、あくことなき好奇心と、社会の不公正に対する怒りでした。
 学問にもベンチャーがあります。衰退していく学問に対して、あたらしく勃興していく学問があります。女性学はベンチャーでした。女性学にかぎらず、環境学、情報学、障害学などさまざまな新しい分野が生まれました。時代の変化がそれを求めたからです。」
 

 東大で最初に女性で教授になったのは文化人類学者で、『タテ社会の人間関係』 (講談社現代新書) の著者でもある中根千枝さんです。
 その中から抜粋します。
「日本人が外に向かって (他人に対して) 自分を社会的に位置づける場合、好んでするのは、資格よりも場を優先することである。記者であるとか、エンジニアであるということよりも、まず、A社、S社のものということである。他人がしりたいことも、A社、S社ということがまず第一であり、それから記者であるか・・・ということである。・・・
 ここで、はっきりいえることは、場、すなわち会社とか大学とかいう枠が、社会的に集団構成、集団認識に大きな役割をもっているということであって、個人のもつ資格事態は第二の問題となってくるということである。・・・
 『会社』 は、個人が一定の契約関係を結んでいる企業体であるという、自己にとって客体としての認識ではなく、私の、またわれわれの会社であって、主体化して認識されている。そして多くの場合、それは自己の社会的存在のすべてであり、全生命のよりどころというようなエモーショナルな要素が濃厚にはいってくる。」
 このような社会に慣らされてきました。
 ただしこのような社会に存在できるのは自分の努力等だけではありません。

 60年末に学生運動が激しく戦われていた頃、「東大生の親からの仕送り額が慶大生を上まわった」 ことがニュースになりました。慶大は “お坊ちゃん大学” の典型でした。
 笑い話ですが本当にあった話です。その慶大における授業料値上げ反対闘争の最中、大学側が 「反対といっていると、慶大の授業料は早大に追い越されますよ」 いうと学生の反対の声は衰退していったといいます。
 親の側にもゆとりが生まれてきていました。親の財力がそのまま若者たちの社会の格差にもつながっていきました。そのなかで若者たちは 「頑張ればなんとかなる」 と自分の夢を実現するためにふんとうしました。


「あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。
 あなたたちが今日 『がんばったら報われる』 と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと...たちがいます。がんばる前から、『しょせんおまえなんか』 『どうせわたしなんて』 とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。」


 女性労働者は、様々な差別とたたかって女性の地位を向上させてきました。
 しかしその先にあったのは、一方で相変わらず家事、育児を一方的に押し付けながら、男性と同じように頑張れば昇進できるという主張です。女性労働者は納得できないと声を挙げます。
 1998年の労働基準法改正で、限定されていた女性の深夜労働が解禁されました。これで “男並み” の活・昇進ができることを保障されたといわれました。
 しかし本来労働者が要求すべきは 「女性の深夜労働禁止」 の条文を男性労働者にも適用させることでした。そのつけが80年代頃から過労死・過労自殺が増えていきます。
 “男並み” に働けない労働者は、退職し、短時間の非正規労働者になります。
 息苦しい時代になっています。


「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。女性学を生んだのはフェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。」


 大学進学率が50%をこえ頃になると、自分のポジションはおのずから指定されたものになります。なおかつどこにいても不安定です。格差社会であり、不確実性の自大です。

 フェミニズムだけでなく 「弱者が弱者のままで尊重される」 社会は生きやすい社会です。
 新しい門出にたむけられた素晴らしい祝辞です。

 「活動報告」 2019.4.19
 「活動報告」 2019.3.5
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非正規公務員 全国で64万人  その処遇は?
2019/04/16(Tue)
 4月16日 (火)

 4月4日の朝日新聞に 「公務員 進む非正規化 93自治体で5割超 人件費抑制」 の見出し記事が載りました。
 総務省がおこなった16年4月1日時点の 「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査」 では64万3000人におよんでいます。06年の調査の約45万6000人から4割増えています。93の自治体で全体の5割を超え、現場は 「5人に1人が非正規」 です。
 団体区分別では、都道府県約14万人、指定都市約6万人、市区約36万人、町村約7万人です。
 主な職種別では、事務補助職員約10万人、教員・講師約9万人、保育所保育士約6万人、給食調理員約4万人、図書館職員約2万人となっています。住民がいろいろな手続き、相談をする窓口、そして直接接する職種などの 「住民サービス」 を担当する部署で増えています。
 任用根拠別では、 特別職非常勤職員約22万人、一般職非常勤職員約17万人、臨時的任用職員約26万人です。性別では、女性が約48万人で、臨時・ 非常勤職員の74.8%です。

 「女性の活躍推進」 が叫ばれている時代に、女性が低賃金の非正規労働という構造が推進されています。しかも任用 (雇用契約) においては、現在、法的に民間のような更新は認められていません。「官製ワーキングプア」 です。「官吏」 とそれ以外では大きな格差が存在し、拡大していっています。


 地方自治総合研究所が総務省に情報公開請求をして自治体ごとに集計したら、長崎県佐々町で全職員の66.0%を占めていました。沖縄県宜野座村65.8%、北海道厚真町64.4%と続き、5割を超す自治体は93におよびました。08年の調査では17でした。
 長崎県佐々町は佐世保のベッドタウンとして人口が増え続けています。4年前の同じ調査と比べると正規職員の数はほぼ変わりませんが非正規職員は31人増えています。おもに看護師、介護士、保育士という専門職です。

 総務大臣は記者会見で、非正規公務員が増大している理由として、教員の大量退職に対する補完をあげました。学校現場でも非正規教員が増えています。いうなれば正規教員が退職したら非正規教員に切り換えるということです。少子化が進むなかで確かに長期的任用 (雇用) 維持が難しいという問題はありますが、事態はその想定をかなり上回っています。


 非正規職員が増えた背景には国が進めた行財政改革があります。05年の 「集中改革プラン」 は、無駄が多いと世論を煽り、公務員の人件費を抑制するため、地方自治体に5年間で6.4%の職員を削減するよう要請しました。要請は自治体の事情を鑑みない数字の強制です。その結果正規職員は約23万人減少しました。長時間・過重労働が増え、そして人件費を抑制する方法として低賃金の非正規職員を増やし続けました。
 住民は、政府が煽った世論に乗せられ一方で、それまでとおなしサービスを要求しました。

 このようななかで具体的にどのようなことが起きたでしょうか。
 11年の東日本大震災では被災地の自治体自体も大きな被害がでました。職員が削減されたなかで犠牲者も出ました。自らが被災者でもありながら住民の救援活動に奔走しました。それまでの日常業務においてもゆとりがない状況で業務が増大しました。そのなかで連日長時間労働をしいられました。しかし住民からは対応が遅いと叱責されます。
 全国の自治体からも応援職員がきました。しかし派遣する自治体においてもゆとりがありません。この状況は今も続いています。
 各地で災害が発生しています。被災地・被災者の救援は自治体職員抜きにはあり得ません。国は公務員のあり方を見直す必要があります。そして人件費を抑制する政策を撤回し、各自治体にゆとりを保証する必要があります。そうしないと被災者は棄民化します。


 現在の非正規公務員は公務員法の適用対象にはなっていません。かといって労働基準法の適用対象にもなっていません。法的にどこからも保護されない谷間に存在する “労働者” です。処遇がよくない、しかも任用 (雇用) が安定しない状況では人員不足が発生しています。
 そのため、国は17年に地方公務員法等を改正し、非正規職員の処遇改善のため雇用形態を 「会計年度任用職員」 と改め20年度から施行します。
「法律上、一般職の非常勤職員の任用等に関する制度が不明確であることから、一般職の非常勤職員である 『会計年度任用職員』 に関する規定を設け、その採用方法や任期等を明確化する。」
「会計年度任用職員について、期末手当の支給が可能となるよう、給付に 関する規定を整備する」
 ボーナスや退職金などの手当も支払うことができるよう処遇改善するといいます。民間の 「同一労働同一賃金」 の動きを追いかけたものですが、どの程度の処遇改善になるかは自治体の条例で定めるのでどの程度になるかはわかりません。


 自治体で働く労働者はすべて正規の公務員でなければならないということではありません。現実には、各部署で委託をうけた民間の労働者、派遣労働者なども働いています。しかし処遇において大きな格差があります。委託契約がいつ解約されるか予測できません。民間より無慈悲です。
 正規職員としての任用・雇用でなくとも、雇用、賃金等の処遇、業務の遂行方法・指示などにおいては正規職員と差のない 「均等」 「同一労働同一賃金」 を保障すべきです。


 16年6月21日の 「活動報告」 の部分再録です。
 「季刊労働法」 16年春季号は、研究論文 「ドイツ・官吏の勤務評価」 を載せています。
 ドイツでの官吏は、日本での上級公務員や監獄、警察署、消防署および守衛などのスタッフのことを言います。公法上の任用関係にあり重要労働条件は議会で決定され、公法上の任用関係にあります。ストライキ権は認められていません。
 それ以外の職員や現業労働者などの公務被用者は自治体と司法上の労働契約関係にあります

 日本では、1885年 (明治18年) に伊藤博文が内閣制度を定めて内閣総理大臣に就任するときにドイツ・フランスを真似た官吏制度をつくります。1886年 (明治19年) に帝国大学令を定めて東京大学を帝国大学とし、官吏養成機関とします。
 旧憲法下では、天皇の大権に基づき任官され公務の担任を命ぜられた公法上の関係にある高等官と判任官をさしました。民法上の契約により国務に就いた雇員・傭人とは区別されていました。
 地方公共団体において公務に従事し官吏に相当する者は公吏と呼ばれていました。官吏は人びとの上に存在します。
 戦後は、国家公務員全体を官吏と呼んでいます。
 日本国憲法は、公務員を 「全体の奉仕者」 と位置付けています。

 ドイツの官吏の勤務評価についてです。
 成績主義は伝統的官吏の人事運用原則の1つでもっぱら採用と昇進で利用されてきましたが給与制度でも適用可能です。1997年に初めて成績給と業績給が導入され、導入されました。
 業績給は、卓越した特別な個人の業績対して支給されます。最長1年の手当です。

 人事制度は、使用者と公務員代表が協議して合意します。合意不成立時には使用者側が単独で決めます。昇進での判断材料や人材育成、適正な配置、動機付け等に利用されます。評価時期は、遅くても3年ごとに、または勤務上ないし個人的事情が評価を必要とする時は行なわれます。最多は3年ごとです。
 評価指標は、適正、能力および専門的な業績です。相対評価か絶対評価については、定期評価では各人ごとに絶対評価です。ただし、臨時評価では、たとえば昇進では1人の募集に対する応募者ごとに選抜する相対評価です。専門的業績は、とくに作業結果、実際の作業方法、作業行動について、上司である場合にはさらに指導方法について評価されます。
 勤務評価は、統一的な評価基準にもとづいて、通常2人以上から行なわれます。詳細は上級勤務官庁が評価指針で定めます
評価される俸給グループおよび役職レベルの官吏の比率は、最上級得点10%、次に高い得点で20%を超えないものとします。
本人への開示、評価懇談は開示されます。人材育成目的を達成するためには、本人に改善すべき点を認識してもらう必要があるからです。人材育成措置には、例えば、1、勤務上の資格向上、2、官吏職の人材育成、3、協力懇談、4、勤務評価、5、目標協定、などです。
 勤務評価は、官吏に言葉の完全な意味で開示され告げられます。開示は文書によって行われ、評価は人事記録に残されます。
評価ラウンドの結果は被評価者に点数リストの形式を含む適切な方法で知らされます。

 勤務評価の目的は、1、人選、職業的昇進、3、最適の配置の保障 (配置目的)、4、動機付け目的、5、喚起目的、が挙げられています。
 業績給支給の目的は、1、行政における近代化過程の支援、2、生産性ないし行政サービスの質の改善、3、人事指導の改善、4、顧客指向および市民指向の改善、を誘導し動機づけることです。

 人事評価における日本の上級国家公務員にあたる官吏と、公務員にあたる公務被用者の違いです。
 官吏は、業績給支給のためではなく、人事決定、人材育成が目的です。公務被用者は協約上の業績給支給のためです。
 官吏は、評価方法で目標協定の利用がごく一部です。
 評価指標は、「公共へのサービス」 は共通しますが比重は官吏の方が高いです。


 日本がドイツ・フランスの官吏制度を取り入れてから100年以上が過ぎました。人事評価制度から見てもあまりにも大きな違いが生じています。ドイツは政府機構を推進するスタッフの組織ですが、日本は官僚制度の維持と人脈につながる制度に変えられました。評価の基準はお上への “迎合”、気に入られる傾向が強くなっています。
 ドイツでは公務被用者は自治体と司法上の労働契約関係にありますが、日本では地方公務員も任用です。地方公務員を含めて官吏の意識をもって官僚制度を維持するシステムに組させられて人びとを管理・支配側に位置し、その思考になってしまっています。「全体の奉仕者」 ではありません。そしてそこに “心地よさ” と安住を感じて積極的に受け入れています。
 安住をより安住にするためには不安定任用 (雇用) の労働者の存在が不可欠です。

 「活動報告」 2019.3.9
 「活動報告」 2016.6.21
 「活動報告」 2013.11.29
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