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経団連報告 これまでの春闘交渉を大きく転換
2020/01/24(Fri)
 1月24日 (金)

 1月21日、経団連は2020年の春季労使交渉に向けての経営側の指針となる 「経営労働政策特別委員会報告」 を公表しました。
 「報告」 は、終身雇用を前提に新卒者を採用し、様々な仕事を経験させながら年功賃金で処遇するメンバーシップ型と呼ばれる日本型雇用は問題が顕著になってきたと強調します。かわって、職務を明確にした 「ジョブ型雇用」 を導入して賃金を決める、評価で昇給に差をつけたりする仕組みを広げ、社員の意欲を高める必要があるとします。
 これまでのような同一業種の企業が横並びで行う賃金交渉は 「実態にあわなくなっている」 と指摘します。賃上げについても 「モメンタム (勢い) は維持されている」 と言及して基本給の底上げ (ベア) 自体は 「選択肢になり得る」 との姿勢は示しますが、19年にひき続き具体的な数値は示しませんでした。
 働き方の多様化などを背景に労働組合の加入者が減っていることから 「全社員を対象とした一律的な賃金要求は適さなくなってきている」 と労働側をけん制し、労組だけでなく、多様な方法で社員と個別の労使関係を深めていくことが重要だとします。

 18年までは 「アベノミクス」 を “成功” させたい政府の意向の下で 「官製春闘」 に従いましたが、19年の指針では 「賃上げは経営者が自主的に決めていくもの」 と強調しました。20年の指針では、さらに踏み込んで 「良好な労使関係の礎」 となってきた春季労使交渉を舞台に雇用体系そのものも議論すべきだとの方向性を打ち出しました。


 経団連は、同時に会員企業および東京経営者協会の主要会員企業を対象とした 「2019年人事・労務に関する トップ・マネジメント調査結果」 を公表しました。「報告」 はそれをふまえて書かれています。その中から賃金制度についてみてみます。
 「月例賃金における労働組合等の要求項目」 では、「基本給のベースアップ」 75.9% 「定期昇給の実施、賃金体系の維持」 67.0%の労働組合から要求がありました。
 これに対する企業の回答状況としては、「定期昇給の実施、賃金体系の維持」 を55.4%が要求通りに回答をしています。「基本給のベースアップ」 は46.3%が要求を下まわる回答をしています。
 「月例賃金について、労働組合等の要求への回答ではなく、自社の施策として実施を決定した内容 (複数回答)」 についても 「定期昇給の実施、賃金体系の維持」 67.6%、「初任給の引き上げ」 24.0%、「基本給のベースアップ」 24.0%でした。労働組合が存在しない企業では独自の判断もありました。
 「ベースアップ実施企業における具体的な配分方法」 としては、「一律定額配分」 39.6%、「若年層への重点配分」 32.6%、「職務・資格別に配分」 27.3%でした。
 19年は48.9%がベースアップを実施し、そのうち 「直近6年間にベースアップの実施回数」 では 「毎回実施」 が25.4%を占めています。
 ここからいえることは、「定期昇給の実施、賃金体系の維持」 「基本給のベースアップ」 の労働組合の要求、企業の回答の構造はまだ崩壊しているとはいえません。

 賃金制度についてです。
 「基本給の賃金項目 (非管理職)」 の構成要素については、「職能給」65.5%、「年齢・勤続給」 45.9%、「役割給」 39.3%、「業績・成果給」 36.3%、「資格給」 33.8%などです。「年齢・勤続給」 がある企業は半分を割っています。
 さらに 「今後ウェートを最も高めたい項目」 としては、「業績・成果給」 30.2%、「職務給・仕事給」 24.2%、「職能給」 21.7% 「役割給」 16.4%などです。
 日本において 「職能給」 「役割給」 「業績・成果給」 のとらえ方は会社によって独自の制度を採っていて違いますが、使用者は個別的属性、評価で変動する支給方法を望んでいます。管理職に対してはさらにその傾向が強くなっています。

 雇用・採用に関する考え方についてです。
 「雇用のあり方についての基本的な考え方」 としては、「長期雇用を維持する」 が 「現在 (の状況)」 63.9%、「今後 (の方向)」 42.6%、「どちらかというと長期雇用を維持する」 30.1%と24.7%、「どちらかというと雇用の柔軟化・多様化を図る」 4.5%と23.4%、「雇用の柔軟化・多様化を図る」 1.3%と8.8%とになっています。
 「長期雇用維持」 はあわせて90%台から3分の2減少していますが、根強いです。
 「採用の基本的な方針」 についてです。
 新卒者については 「メンバーシップ型を重視」 が 「近年」 50.2%、「今後」 33.9%、「どちらかというとメンバーシップ型を重視」 24.2%と32.3%、「メンバーシップ型とジョブ型を同程度」 8.9%と16.6%、「どちらかというとジョブ型を重視」 10.9%、12.3%です。
 まだまだメンバーシップ型が根強くありますが、ジョブ型はそう多くありません。
 しかし中途、経験者採用ではジョブ型重視が圧倒的です。
 「新卒者と中途・経験者の採用比率」 では、今後は中途・経験者の採用を増やす予定が多くなっています。
 メンバーシップ型とは、先に人を採用してから仕事を割り振ります。ですから仕事内容、勤務地、働く時間に対して異動や転勤があり指導・訓練もあります。そして 「年功序列」 「終身雇用」 を前提としています。労働者は 「貢献度」 で会社に応えます。
 ジョブ型とは、仕事内容や勤務地、働く時間を明確にして仕事に対して人が割り当てられます。日本では、かつてのパート労働者がそうだったといわれます。しかし正規労働者が安易に非正規労働者に切り換えられるなかでジョブ型でない総合職のパート労働者も増えています。
 そして 「報告」 は、このような調査結果をふまえて社員のエンゲージメント(働きがい)を高めるための環境整備の重要性も訴えています。


 もう少 し「報告」 の指針をみてみます。そこには “願望” も見られます。
 日本の労働生産性は主要7カ国で最も低いですが、その原因は成果重視の賃金制度の必要性がバブル崩壊後から叫ばれながら浸透していないのが一因で、長く勤めるほど賃金が増える構造の是正が求められるといいます。
 とはいいながら、賃上げは 「各社一律でなく、自社の実情に応じて前向きに検討していくことが基本」 との指摘にとどめ、ベアも選択肢の一つと位置づけます。理由は調査結果が “願望” 通りにはなっていないからです。
 重点を置いたのが、新卒一括採用と終身雇用、年功序列を柱とする日本型雇用制度の見直しです。「現状の制度では企業の魅力を十分に示せず、意欲があり優秀な若年層や高度人材、海外人材の獲得が難しくなっている」 と指摘します。「現在の雇用制度のままでは魅力を示せず、海外への人材流出リスクが非常に高まっている」 と危機感を示しました。
 そのうえで、ジョブ型雇用は専門性や成果による処遇が基本になるので高度人材の確保には 「効果的な手法」 であり、業種や国境を越えて有能な人材を獲得するためにも、企業は積極的に取り入れてはどうかと提案します。優秀な人材の意欲を引き出すためには、自らの仕事が社会に貢献していると実感させ、高い給与などで報いる仕組みが欠かせないとみています。さらに業務を専門分野に絞って高い給与を払う代わりに、労働時間の規制を外す 「高度プロフェッショナル制度」 の活用も有益だと指摘しました。
 しかしそれはあくまで一部の高度な人材を対象にしています。キャリアアップは自助努力です。企業が必要なくなったと判断したら解雇です。現在厚労省で検討会が開催されている 「解雇無効時の金銭解決制度」 はそのためのものでもあります。多くの労働者にとって 「雇用の流動化」 とは雇用の不安定化です。
 高度な人材に対して、工場現場で働く多くの労働者は、実際はジョブ型を兼ねた労働に従事しています。そのなかで年功賃金体系をなくすということは低賃金層を固定するということになりかねず、労働意欲を失わせます。同じような職務の労働者のなかで評価を高めて昇給を期待するためにはたくさんの同僚のなかから這い上がらなければなりません。
 調査結果で、ジョブ型への期待が小さいのはそれを期待していないということです。
また、日本型雇用の見直しが提起された背景には中高年労働者の使い捨ての思考があります。いま議論されている高齢者雇用政策における処遇はますます劣悪化していきます。


 この 「報告」 を先取りして実践してきたのがトヨタの労使です。
 トヨタでは昨年、労使ともベアの中味を公表しませんでした。今年の春闘においても労使は評価によって個々人のベアの額に差をつける新制度については “合意” しています。
 「報告」 は、業界横並びの賃金交渉が 「実態に合わなくなっている」 と指摘します。また個別企業でも労働組合の加入率低下を背景に 「全社員対象の一律的な賃金要求は適さなくなっている」 と言及します。これまでの労使関係を否定し、海外との人材獲得競争に負けないよう、雇用にも世界標準の仕組みを取り入れるなど時代に即した労使交渉への変革を求めています。
 しかし、労働組合のあり方、雇用政策は各国によって違います。
 春闘は、どの産業・職務に従事する労働者でも生活保障のために賃上げの対象になることを目的にし、底上げによって生活向上を目指して始まりました。また賃金に関わらす、職場における諸制度の改善課題なども要求しています。さらには社会保障の要求も掲げました。上部団体に加盟しなくても成果を上げている労働組合も多くあります。
 企業に社会的責任を負わせます。そのような位置づけで世論を電話喚起し、長期に定着させてきています。

 一方、あらたな産業・職種も登場し格差も拡大しています。労働組合が組織されていない企業も増えています。各企業は、競争社会のなかで労働者に危機感を迫って一体感を迫って要求を放棄させます。そして評価によって労働者の処遇に差をもうけ、使用者の方針に従わない労働者を冷遇して団結しにくい状況を作り出し、帰属意識を高めます。
 そのようななかで、労働者間の格差は、産業別だけでなく職務ごとでも拡大して固定させ、さらに雇用形態において貧困から這い上がれない労働者を大量に作り出しています。
 「報告」 は、雇用の柔軟化が進めば、経営陣と労働組合が向き合う構図が一般的だった労使関係も変革を迫られる、欧米企業は 「社内でも雇用契約が多様なため、企業が個々の社員との労使関係を重視し、待遇など個別に協議している例が多い」 といいます。
 しかし労働者がさらにバラバラにされたならば、個々の契約内容も遵守されなくなり労働条件は悪化していきます。
 春闘の機会に、労働組合は労働者の要求を吸い上げて力強さを発揮し、賃金だけでなく諸制度の改善にも取り組んで働きやすい職場を作り上げていくことが求められています。
 春闘は役割を終えていません。

 「活動報告」 2020.1.10
 「活動報告」 2019.10.18
 「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」 ホームページ・ご相談はこちらから
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トヨタ、労使協調の行き先は
2019/10/18(Fri)

 10月18日 (金)

 「日経ビジネス」 10月15日号は、「トヨタ前代未聞の労使交渉、『変われない社員』 への警告」 の記事を掲載しました。今春の賞与を巡る労使交渉を経て、労使ともに変わろうとする兆しが出てきたと評価しています。
 しかしどのように変わろうとしているのでしょうか。実際は、強制的に変えられようとしているようにしか思われません。
 4月12日の 「活動報告」 で 「トヨタの労使関係は釣り堀の釣り人と魚」 と書きましたがその続編です。


 トヨタは、今年の春闘で夏・冬賞与の年間協定を締結する予定でしたが、経営側が危機意識の共有、「カイゼン」 とあわせて夏季分のみを提案、労働組合はそれをのみ、冬分については10月の秋季労使交渉での決定に持ち越まれました。1969年に年間賞与の労使交渉を導入してからこれまで延長戦に突入したことはありませんでした。
 さらに管理職の夏賞与を前年比平均4~5%減、役員報酬も減額されています。
 10月9日、秋季労使交渉が開催されました。結果は、労働組合が要求した基準内賃金の3.5カ月、2018年冬季比16%増の平均128万円の満額回答です。
 その裏側で、年功序列や終身雇用に抜本的な修正を迫り、新たな雇用モデルをつくるなど、雇用のあり方を大きく見直す人事制度が導入されようとしています。

 春闘から秋季労使交渉までにどのようなことがあったでしょうか。
 トヨタ労組は春季労使交渉後の5月から、現場の仕事改革を促す 「やめよう・かえよう・はじめよう運動」 を始めました。6万9000人の組合員は小数点以下の単位で 「カイゼン」 を積み重ねて経営側を説得し、春の “失敗” を乗り越えようとしています。
 各職場での問題点や課題を基に、組合員が改善策を考えて、無駄をなくし効率的な仕事を目指します。カイゼン事例を募集しています。当初5月末時点で1万3000件だった提案件数は、7月末時点で5倍の6万1000件と急速に広がっているといいます。
 例えば、高岡工場 (愛知県豊田市) の塗装工程では、捨てていた缶の底に残った塗料の使い切りを始めました。車体フレームに塗るさびを防ぐ塗料は、粘度が高くこれまで1缶当たり0.5リットルを残して捨てていましたが、現場担当者がアイデアを出し合い、缶を傾けて振動させながら、空気を吹き付けることで塗料を1カ所に集めて回収する仕組みを作り、残り0.02リットルまで取り切ることができました。その結果、1カ月当たり11万3818円の原価低減となりました。
 現場担当者は「1台当たり46円の原価低減効果があります」といいます。17種類の取り組みを合わせても1台当たりの削減金額はわずかでも、積み上げれば年910万円の原価抑制になります。
 塗装工程ではこの他に、壊れやすい作業道具箱の内製化や安価なふき取り布への転換など、約220もの原価低減活動に取り組んでいます。「一つ一つの削減効果はわずかで以前なら見向きもしなかったが、稼ぐ力のある現場を目指して今はみんな率先して取り組んでいる」 といいます。
 部品メーカーとも現場同士で交流し、製造部品の歩留まりの向上といった生産技術面での協力を始めました。
 幹部は 「組合員に 『自分に今何ができるのか』 と考えてもらう。そういう意識を持ち、少しずつ変わりつつある」 と評しています。
 「カイゼン」 は、「稼ぎ」 ましたが、果たして労働時間、精神的 “ゆとり” 等を考慮したときどのような影響をもたらされているでしょうか。
 

 これほどまでトヨタ労組が変化を打ち出す背景には、春季労使交渉での “失敗” があるといいます。交渉の場で豊田章男社長は「今回ほど距離感を感じたことはない」 とこぼし、組合側の危機感のなさにいらだちをあらわにしました。
 人事部門トップに就任した河合満副社長は 「ものづくりもいままでのやり方では競争に勝てない。がんばる人が報われる人事制度を構築していきたい」 と述べ、会社の置かれた状況への危機感 (価値観) を一緒に持って欲しいと強調しました。
 トヨタ労組の西野勝義執行委員長は、「春交渉では会社側から危機感を問われた。秋に 『変わった』 と感じてもらえる交渉をしたい」と決意を語っていました。
 委員長は秋季交渉前のマスコミのインタビューに、「春交渉の中での1番の反省点は、一時金が夏分だけの回答になり、継続協議という形で年間協定が結べなかったことだ」 「トヨタ自動車の労使交渉はグループ各社をはじめとする産業界への影響が大きい。賃金と同様に、一時金も含めて生活設計している組合員は多く組合員の仕事への意欲をそぎ、生活不安を与えかねず、あってはいけなかった」 と。そして 「厳しい交渉になるのは間違いない。春以降に始めた新たな取り組みをしっかりやりきりたい。金額より 『職場が本当に変わった』 と会社側に感じてもらえなければ協議できないということにもなりかねない」。
 春闘での決裂・継続協議はトヨタ労組にとっては “失敗” でした。その “失敗” を克服するために会社がいう危機感を共有し、組合員を説得しています。
 春交渉で豊田章男社長は社是の豊田綱領を引用し、「現状と照らし合わせながら 『報恩感謝』 といった創業の精神を大切にしていかなければならない」 と語りましたが労組はそれを受け入れています。


 「カイゼン」 の本質はQCサークル運動を連想させます。
 1960年代から、職場でQC (Quality Control 品質管理運動) サークル運動が進められました。無駄な時間を除去する高率のいい方法を労働者自身に考案させました。トヨタはその急先鋒で、自主的取り組みの名のもとに残業代は支払われませんでした。過労死が発生しれ裁判が起こされると残業と認められ、労災が認定されました。
 当初は労働者にとって楽しい運動でした。改善の動機付けとして 「仲間動機に訴える」 方法と 「市場動機に訴える」 があります。「仲間動機」 とは、共同体的企業の経営者が、現場の労働者とも仲間意識を共有するとかけ声をかけて進める方法です。「市場動機」 とは、株主への責任を忠実に果たそうと、利益の増大を第一とする経営者が、「こうすれば賃金を上げる」 と提案する方法です。
 QCサークル運動は、当初は 「仲間動機」 のはずでした。しかしすぐにストレスが伴うものとなり、「市場動機」 であったことが明らかになります。しかし労働者は 「市場動機」 のためにも頑張ります。職場にあるチームワークが、自己利益追求の動機を補うような道徳的義務感を起こさせるからです。会社が仲間意識を破壊しようとしても、末端ではチームワークは再現され、仲間を見捨てない、怠けないという強力な意識が働きます。
 労働者は 「仲間動機」 から始まった運動の成果として “ゆとり” を獲得したのではなく、その逆に息苦しさと苦痛に襲われました。その一方、これに介在することなく、「反合闘争」 「抵抗闘争」 しか対抗できなかった労働者・労働組合は労働者から孤立していいきました。
 この中で競走化が進み、職能資格給、職務職能給などの複雑な賃金体系が作られていきました。「能力」 と 「努力」 が 「公平」 に評価されると受け止められると努力を呼び起こす意欲が高まります。末端の “チームワーク” によって自己利益を追求する競争心と組織目標に対する協調的努力のバランスが取れたとき会社には最高の利益がもたらされました。

 
 トヨタは生きるか死ぬかと危機意識を煽りながら、評価制度、人事制度の見直しに着手しました。労組の執行委員長も労使交渉で 「職場の中には、まだまだ意識が変わりきれていなかったり、行動に移せていないメンバーがいる」 と会社側に伝えました。
 労組も参加した人事制度全般について議論する専門委員会が始められています。
 豊田社長や河合副社長が実際に現場をアポイントなしで訪れ、現場の実態を確認。そのうえで、トヨタの原点である 「カイゼン」 や 「創意くふう」 に改めて取り組みました。5月には60%だった社員の参加率は9月には90%まで上昇したといいます。
 労使は「会社側は 『がんばった人に報いる人事制度』 を目指している。評価の仕組みや一般職に相当する 『業務職』 に長く働いてもらう制度など、期限をもうけずに幅広く話し合いを進めている」と評価しています。
「全員が変われるという期待が持てた。労使で100年に1度の大変革期を必ず越えられる点を確認し、回答は満額とした」 (河合副社長)
 10月9日、労使交渉を終えた後の説明会で、河合満副社長は 「労使が 『共通の基盤』 に立てていなかった。春のみの回答というのは異例だったが、労使が共通の基盤に立つための苦渋の決断だった。今回の (労使での) やり取りの中で、労使それぞれが変わりつつあるのかを丁寧に確認した」。経営側からの 「夏季分のみ」 の提案と危機感の強制、「カイゼン」 の周知は “してやったり” です。

 経営者の本当の危機意識はどのようなものでしょうか。
 労使交渉の関係者は 「社長は、若手が多い組合側よりも、ベテランを含むマネジメント層に危機感を持っていたようだ」 と証言します。
 トヨタにはいまだ年次による昇格枠が設定されていて、総合職に当たる 「事技職」 では、40歳手前で課長、40代後半で部長というのが出世コースで、このコースから外れると挽回はほぼ不可能です。
 8月21日の5回目の労使専門委員会で、初めて総合職の評価制度見直しの具体案が組合に提示されました。目玉は、総務・人事本部の桑田副本部長が 「見直していきたい」 と発言した、年次による昇格枠の廃止にあります。
 具体的案として年功序列をどう変えていくか。「これまでは 『何歳でこの資格に上がれる』 という仕組みがあった」 が 「その仕組みが、現状を反映していない場合もあった。例えば、業務職では、ある程度の年齢にならないと上がれなかったが、その期間が長すぎた。明らかに時代に合っていないものは見直していきたい。それ以外 (の職種) でも、できるだけ早めにいろんな経験をさせたい。大きく (年功序列の仕組みを) 撤廃するということではなく、多少、幅を広げていきたいと思っている」と答えています。
 曖昧だった評価基準を、トヨタの価値観の理解・実践による 「人間力」 と、能力をいかに発揮したかという 「実行力」 に照らし、昇格は是々非々で判断するとします。「ぶら下がっていただけの50代は評価されない。これから降格も視野に入るだろう」。組合執行部は 「勤続年数や年齢ではなく、それぞれの意欲や能力発揮の状況をより重視する方向だ」 と好意的に受け止め、運用の詳細について引き続き議論していくとしています。
 評価制度だけでなく、一時金の成果反映分を変更する加点額の見直しや、中途採用の強化なども労使は議論しています。トヨタは総合職に占める中途採用の割合を中長期的に5割に引き上げるとも報じられています。結論は 「やる気のない、体力・能力が減退した社員は要らない」 です。

 長年貢献してきた社員でも、体力、思考能力に限界が目始めると “お荷物” と扱われ、若い社員たちからも阻害されます。若い社員たちは、現在への危機意識の扇動に、明日の生活には意識をむけても将来には思いがおよびません。経営者は高齢者雇用の問題も発生してくるので陰に陽に早期の退職を促しています。
 他社においても業績は悪くなくても希望退職や早期退職者の募集がおこなわれています。現在のㇳヨタは人事制度による振り分けに集中しているだけです。労働者同士の競争を煽り、差別を持ち込む企業・労使は本来の生産性向上を図れません。春闘構造からも離れ、経済界は自分たちの思うようになると思い込んでいるようです。
 はたしてこのようなトヨタの労使の “栄華” はいつまで続くでしょうか。危機はすでに内部にはらんでいます。

 「活動報告」 2019.4.12
 「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」 ホームページ・ご相談はこちらから
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労働相談とは「寄り添うこと」 ではその方法は・・・
2019/10/08(Tue)
 10月8日 (火)

 10月5日と6日、兵庫県姫路市で第31回コミュニティーユニオン全国交流集会が開催されました。
 2日目は11の分科会が持たれましたが、その中の第二分科会 ・ 「いじめ・パワハラ相談の対応ノウハウ」 について報告します。

 呼びかけ文の抜粋です。
「『いじめ・パワハラ相談』 といっても、相談内容は千差万別ですし、相談者が求める内容も違います。しかも、相談者が訴えるパワハラの内容に関しても、ハッキリ黒といえないケースもあります。その時、相談を受けたあなたは、どう対応すればいいのでしょうか?
 今回の分科会では、『いじめ・嫌がらせ』 に関する相談対応に焦点をあて、交流を深めます。具体的な相談対応事例を持ち寄り、経験や教訓を共有しながら、相談対応のスキルアップを図りたいと考えています。」
 労働相談は初対面同士だったり、人格が異なる者同士が向かい合います。呼びかけ文は、日常的に相談を受けている者にとっては切実で共感できますが、ユニオンにいじめ問題で相談をした者にとっては自分がどう思われていたのかを連想し刺激的です。

 はじめに、NPO法人ひょうご労働安全センターが作成した 「職場のいじめパワハラ相談ホットライン 相談マニュアル」 が紹介されました。
 「1.相談員の心構え」 の項には 「相談者の多くは、解決方法を探している方よりも、自らの酷い体験や悩みを聞いて欲しい方の方が多い傾向にあります。ですので 「受容と共感」 の姿勢で、相談者の相談内容を親身に聴き、相談内容に寄り添うことで、多くの相談は解決したともいえます。」 とあります。
 「4.相談ノウハウについて」 の 「受容と共感」 の項には、相談をしてくる方は 「自分が悪いんじゃないか」 ととらえていたり、「多くの場合は誰にも相談しておらず、『自分の立場を誰もわかってもらえない』 と悩んでいます。ですので、相談者の相談内容がどのようなものでも、決して否定してはいけません。まずは、相談内容を受け入れるのです。
 その上で、相談者がなぜそのように悩んでいるのか、どういう解決を望んでいるのかを一緒に探していくという作業が大事です。」 とあります。
 「焦点の当て方」 の項には 「私たちが取り組む相談活動は、『悩みの相談室』 ではありません。働く者の労働条件、労働環境の問題から発生していますのでそこをいかに変えていくのかから取り組む必要がありますし、傷ついた心を癒し働き続ける力を回復してもらうことにあります。これが労働組合の相談では大切です。そうすると多くの相談者は、自分は悪くなかったということに気付いてもらえると思います。」 とあります。
 「事実の確認」 の項には、最近多いのは 「パワハラを受けています」 という相談があります。「どんなパワハラですか」 は聞いてみないとわからないです、とあります。
 本人が受け止めている感覚と、客観的に見てどうなのかを一緒に確認し合うにはポイントを確認し合うことが大切です。

 9月7日~8日に開催された 「全国一斉 職場のいじめパワハラほっとライン」 の報告です。東京・名古屋・神戸の相談ポイントに73件の相談が寄せられました。
 それを6つの類型に分類しました。圧倒的に多いのは言葉の暴力などの 「精神的攻撃」 です。
 「パワハラの概念で収まらない相談」 があります。悩ましい相談です。今春成立したパワハラ防止法の定義には当てはまらないものがあります。例えば同僚同士とか、部下から上司などの相談が増えてきているなと感じられます。
 はっきりと黒といえるものについては労働組合としても積極的に交渉したりしていますが、職場の中の同僚同士とかの相談があったときにみなさんはどうされているのかなということが気になっています。

 つづいて現在の職場を取り巻く状況について問題提起がありました。
 現在は生産性向上第一の職場です。その中ではコミュニケーションがとりづらく、人間関係の作り方のほころびが生まれています。個別管理、分断管理がおこなわれ、自己確認の機会が持てません。ゆとりがありません。トラブルが発生するのは必至です。被害者が加害者だったり、加害者が被害者だったりします。
もうひとつ。パワハラという言葉が使われますが、管理する側もされる側も人間の感情・認識をパターン化して枠にはめられれています。本質が見えにくくなっています。その中で自己をちゃんと表現できない、コミュニケーションがとれない、自己確認ができない状況におかれています。
 労働者が表現方法を失っていて、受けている被害についてきちんと説明できなかったり、切実な思いで話していても伝わらないことが多々あります。
 パワハラ (いじめ) という言葉を使わないで、具体的に起きていることを表現すると少しは本質が見えやすくなると思われます。


 この後質問、意見交換に移りました。
 ある組合の報告です。
 職場でこれまでいくつかの問題を解決してきましたが、いつも疑問を持つのは、相談を受けて本人から聞き取りをし、パワハラをした上司等からも聞き取り、同僚からもする中で、一番ネックになっているのは周りの人が口をつぐんでしまうことです。ネックは評価制度です。自分が発言することで評価が下がるのではというおもいがある。あの人がこういう動きをしている、自分も相談をすると、みんなのさらし者になるのではないかとみられてしまうことから、なかなか自分の思いがあっても言えない状況をつくってしまっています。
 いじめは未然に、小さなうちに摘み取るということが大切だと感じます。労働安全衛生委員会が半年に1回ほどしか開催されなくて、小さなうちから摘み取るというこが放置されています。その人が言いやすい環境をつくる難しさがあります。
 意見です。
 職場でいじめ問題を解決した時に、労働組合を含めてその解決をどう財産にしていくかが大切です。それを積み重ねていくと、いじめ問題というつまらないことが起きたんだよ、だけどそれを契機に分かり合ったんだよねという共通認識に至ります。そうすると、トラブルの芽が大きくなるBeforeの段階で解決できる職場ができます。そうでないと問題が大きくなってなかなか解決しないAfterの問題になってしまいます。
 職場環境をどう改善していくか。AさんとBさんの間で発生した問題ではなくてAさんBさんがいる職場で発生した問題であってそこにはCさん、Dさんもいるもいるということを認識しながらやっていくことが大切だと思います。そうすると評価制度は大きな影響を及ぼしていますが、本当に公平な評価がおこなわれているのかという認識に到達することもできると思います。

 被害者の相談者が依存してきます。自分が孤立しているということがわかっていない。さらに組合としては職場環境改善を目指しまが、本人は報復したいという思いが強いことがあります。
 同じような意見が出されました。個人加盟のユニオンには事故が発生した後相談にきます。相談にくる人は、1人職場で仲間がいない。それでもって会社を追求したいとい主張する。

 相談を受けた側が目指す解決は本人が希望する方向です。
 ただしユニオンは万能ではありません。そのことを相談者に自覚してもらう必要があります。相談者が希望する方向で進めることがいいことかどうか、できるかできないかをユニオンは判断する必要があります。抗議行動をする、裁判を起こす等の長期的闘争をすることで体調不良の症状が悪化するか、改善するかの判断も必要です。フラッシュバックを起こすと症状が悪化します。おそらく改善していくことはないです。そのことをふまえたアドバイスはユニオンの任務です。
 どう進めるか。考え方によっては時間が解決するというのが1つの解決方法で、忘れるというのも解決方法です。自分の人生をこんな会社にもてあそばれては困る、こちらから辞めてやると攻勢的に捉えることも解決です。金銭解決の話が出てきて、支払われるということは謝罪の意味を含めていると受けとめさせることもできます。

 労働組合があって、職場改善の問題として円満な解決を期待できるのか、ユニオンに1人で相談にくる事後の問題で職場復帰は望めないような状況の中では相談もギャップがあります。そうすると相談を受ける側の仕方も違ってくると思います。


 辞めた人もいれば、聞いてもらっただけで解決した人もいます。共通できるのは、相談者がどういう思いでいて、どういう解決を望んでいるかということの丁寧な整理だと思います。それが初期段階で大事です。
 パワハラを受けていますというけれど、何かの人間関係が食い違ったりしているところから始まってひどくなっていったということかがよくあるパターンだと思います。
 そういう意味では相談者が 「このようなハラスメントを受けてます」 ということに対して、もう少し職場環境とか人間関係とかの背景まで話を聞けていったら、本人にとっても言葉が足りなかったりして周囲の人たちに理解されなかったところに気が付くことがあり得ると思います。そういうところを相談者と共有できていったら、辞めて他の職場に行っても気づきがなかったら同じことが起こってしまうのではないかと思います。


 いじめられていることについての証拠をつくるという議論がありました。
 しかし振り返ってみたらいじめを受けていたということがあります。証拠はいじめられている時にとれといわれても無理です。ターゲットは変わってくり返されたりしています。
 証拠づくりは当該の身体をさらに悪化させます。当該の将来、生涯の問題を考えた時にどうなのか、そのことをさせていいのかの判断が必要です。裁判で勝つことが本当の目的になるのか。そうでなくてなるべく早く社会復帰をすることが目的になってもいいんじゃないか。じゃあどう対応するかといったら “逃げる” という方法は誰にでもできる方法だと思います。逃げた後に落ち着いて、もう一度自分の中に起きたことをとらえ返して解決方法を考えるということもあり得ると思います。
 そのことをふくめて、相談を受ける側は相談者をどう尊重するのか、同時に人生をどう保証するのかということの問題意識として持っていて対応しないと袋小路に陥ってしまいます。

 解決とは、相談者が職場復帰でも、退職にいたっても、社会復帰のために一緒に納得できる方法を探ることだという体験談が語られました。今は相談を受ける側にいますが、かつてはパワハラをうけた当該でもあります。
 組合活動をしていたのですが不当な人事異動を命じられました。組合潰しです。それに対して最初は抵抗していたのですが、仕事でのストレスもあるなかで自分の気持ちを維持することができなくて心療内科で適応障害の診断を受けました。半年間休職していたのですが、その時の医師や周囲のアドバイスから退職しました。
 職場を改善するのはいいですが、そこから自分を違う環境において新たな社会復帰をしたことは今でも自分では正解だったと思っています。我慢をし続けるより、新たな一歩を踏み出すというアドバイスをユニオンの立場ですることもひとつの方法だと思います。


 明確な回答を探れるテーマではありませんが、それぞれが抱えている問題意識を出し合えたということは有意義な議論でした。

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誰のための高校野球
2019/07/30(Tue)
 7月30日 (火)

 7月25日に開催された夏の高校野球岩手県大会決勝戦で、大船渡高校の佐々木投手が監督の判断で出場を回避したことに賛否さまざまな意見が寄せられています。
 佐々木投手は前日の試合にも登板し129球を投げています。監督は 「投げられる状態であったかもしれないが、私が判断した。理由としては故障を防ぐこと」 と説明。佐々木投手は投げられる状態だったが、「監督の判断なのでしょうがないです」 と話しました。
 このなかには、高校野球、高校野球全国大会、スポーツ界をめぐる問題、教育界を巡る問題などさまざまな問題が含まれています。

 高校野球です。
 クラブ活動は、就職のための面接手段ではありません。だれかに見せる・見てもらうことを目的にしません。高校生活のなかで好きなこと、得意なことを仲間と力を合わせて発揮したり鍛える活動です。試合をするからには勝つことを目指して奮闘しますが、結果は負けることもあります。
 勝つことで学校の名声が高まるのは名誉です。しかしそれは結果であって、学校のために勝つことを目指すのは本末転倒です。
高校かぎりで野球生活を辞めると決めているなら、いま多少無理をすることもできるでしょう。しかしこの後大学やプロ野球で選手生活を続けることを希望するのなら今無理をするのは危険です。危険を予知しながら投げさせるのは無責任で、指導者のやるべきことではありません。大船渡高校野球部監督の判断こそはまさしく選手の側に立った、将来をも見据えた判断です。

 各地の高校は全国からさまざまな条件を提示して選手を勧誘します。
 ある年の夏大会で優勝した沖縄の高校に、親元を離れて寮生活を送る兵庫県出身の選手がいました。甲子園大会出場は帰省のようなものでした。優勝旗を掲げての沖縄への凱旋は故郷をあとにすることでした。
 ある年の夏大会で準優勝した北海道の高校の選手たちのなかには北海道出身の選手はほとんどいませんでした。
 高校にとってはテレビ、新聞などに名前がでると、部員以外の生徒も集まり、学校経営は潤います。生徒は有名校に在籍していることを名誉に感じています。
 箱根駅伝出場の常連校のある大学は優勝候補に名を連ねるようになったら受験生が万単位で増えました。今、大学入試の受験料は2万5千円です。膨大な収入増となります。部や選手をどのように優遇してもおつりがきます。部活動が学校経営の手段となっています。

 では選手はどうでしょうか。
 高校生の身体は成長期です。大学生もそうです。
 期待されてプロ野球に進んでも活躍できなかった選手がたくさんいます。なにが原因だったのでしょうか。それについては検証されたことがありません。 成績を上げられなかったときにいわれるのは身体管理、健康管理は自己責任、それを怠った、です。
 ではいつ怠ったのでしょうか。プロ野球入団前のことは問題視しません。
 検証されないこととエビデンスがないことは別の問題です。検証しないのはエビデンスを作らないためです。
 実際は高校時代に身体管理、健康管理を怠ったのではないでしょうか。そこには関係者それぞれ無責任体制があります。

 日本以外では経験的にもエビデンスが存在します。
 新潟県高校野球連盟は、昨年12月22日、19年の春季県大会限定で、投手の投球数を1試合につき1人100球までにする 「球数制限」 を導入することを全国で初めて明らかにしました。しかし日本高野連は了承しませんでした。エビデンスがないからです。


 無理をしても投げろという世論、圧力は大きいです。
 チームメイトのために、学校の名誉のために、郷土のために、ファンのために・・・
 選手はたとえチームであっても他者のために犠牲にならなければならないのでしょうか。チームメイトのためにというとき、なにがそういう思いにさせたのでしょうか。学校、名誉、郷土、ファンは選手あってのもので、その逆ではありません。
 この問題を考えるとき、戦時中の 「出征兵士」 を連想します。お国のために・・・、「死んで帰れ」 です。この無責任な連呼のために多くの人たちが亡くなりました。そして今、まさしく身体を壊すことがわかっていても 「〇〇のために」 が連呼されます。無責任です。そして怖いです。


 休養日を設定すればいいという意見があります。地区大会なら可能かもしれません。
 しかし、年に全国でいくつもの大会が組まれているなかにあってはスケジュール調整に難しい問題があります。
 3月26日の 「活動報告」 でも書きましたが、全国大会の地元校以外は選手の移動費、滞在費の工面が大変です。ベンチ入りする選手以外にも顧問、コーチ、マネージャーなどが同行しますが本人負担ではありません。地元では学校の奨学会、PTA、同窓会、後援会などが資金作りに奔走します。
 さらに試合当日は大勢の応援団が駆けつけます。生徒の応援団は学校負担になりますが、保護者等は自己負担です。応援団は経費削減のため、遠路からでもバスでの移動、睡眠になります。勝ち続いた時はいったん帰省してまた出かけてきます。体力維持は大変です。
 選手たちが頑張っているときに金のことをつべこべいうなという反論が出ます。そういう人たちはお金を出しません。
 そして教師の長時間労働がおきます。いま、教師の長時間労働の原因の一つとしてクラブ活動に裂かれる時間が問題になっていますがまさしく直撃します。しかしそのときにも 「生徒が頑張っているのだから」 と押し切られてしまいます。

 甲子園大会は年2回も開催する必要があるのでしょうか。しかも誰のためにでしょうか。しかもその1回は真夏です。
 学校が休みの期間に開催しているという意見がありますが、だとしたら国体での高校生の競技・球技はなくすべきです。そもそも年間に大会と名の付く競技・球技が多すぎます。むしろ全国大会は、会場にこだわらずに、国体だけにした方がいいのではないでしょうか。


 もう一度3月26日の 「活動報告」 です。
 内田良著 『学校ハラスメント 暴力・セクハラ・部活動―なぜ教育は 「行き過ぎる」』 (朝日新書) が刊行されました。
 著者は、甲子園大会に “疑問” を投げかけています。
「『体罰』 問題の検討に入る前にまず、指導者を含む大人全体が、スポーツ活動時の生徒の身体を侵害しうるというところから出発したい。具体的には、高校野球の甲子園大会を例にとって考えていきたい。
 夏の甲子園 暑いからこそ感動する?!
 ・・・
 夏の甲子園大会は、日本のアマチュアスポーツ最大のイベントである。都道府県を代表する高校球児が、『深紅の大優勝旗』 を目指して闘いを繰り広げる。
 その姿を見て、例年のように話題になるのが、甲子園球場の 『暑さ』 である。『そこまで暑い中でやらなくても・・・』 と心配しる声も聞かれる。
 しかし高校野球においては、『青い空、白い雲。照りつける夏の日差し。日本の夏は甲子園が似合う』 と言われるほどに、『「暑い夏」 と 「甲子園」 は欠かせぬ “舞台装置” である』。『暑い夏』 に、選手が必死にプレイする姿に、私たち観客や視聴者は、甲子園固有の魅力を感じる。
 熱中症に気をつけねばならないほど暑いからこそ、甲子園は盛り上がる。高校野球を、空調の利いたドーム型球場で開催するなど、ありえないというわけだ。
 暑さが高校野球を盛り上げる重要な装置だとしても、それはつねに熱中症という負の側面と紙一重である。暑さは、甲子園大会を引き立たせる魅力であると同時に、選手においては健康面での重大なリスクファクターでもある。
 現時点では、球場としてもまたチームとしても諸々の熱中症対策がなされているものの、『なぜあの炎天下でスポーツをしなければならないのか』 という根本的な訴えは、ほとんど放置されている。」

「暑さの問題を考えるとき、もう一つ目を向けるべきところがある。アルプススタンドだ。高校野球では、私たちはつい、選手の活躍ばかりに見入ってしまう。だが、もしかして選手以上にしんどい思いをしているかもしれないのが、アルプススタンドの高校生たちである。
 あまり知られていないことだが、じつは甲子園のベンチには、エアコンが備え付けられている。ベンチの背面の壁とイスの間から冷風が出てくるという。したがって、選手はベンチにいるときは、日陰のもと比較的涼しい環境にいる。
 他方で、アルプススタンドにいる応援団はどうだろう。とくに、私が 『文化系運動部』 と呼んでいる吹奏楽部は、チームの攻撃中、そこで吹奏、いや運動をつづけなければならない。相手チームの攻撃時は、いちおう休みをとることができるが、そうはいっても、選手がいるベンチとはちがって、日陰もなければエアコンもない。」

 学友を応援するということで教育の一環と位置付けられて強制される応援は、戦時中の出征兵士を送る故郷の儀式に似ています。そのことをさらに強く感じさせるのが、高校野球だけではないですが、多くの競技・球技が 「国歌斉唱」 「国旗掲揚」 ではじまり、終了するということです。
 競技・球技が国家のためと一体となる (させられる) ことと、チームメイトのために、学校の名誉のために、郷土のために、ファンのためにと強制される一体感は選手としての ”自己を殺されます”。
 社会からのさまざまな圧力に抗して自立した個を確立した選手が集まったチームは勝つことの本当の意味を確信できます。

 スポーツは、誰のためではない、自分のためにやっているということを選手たちが自覚して楽しむことを取り戻す時が来ているのではないでしょうか。だれからも、どのような強制もうけないものにしなければなりません。
 生徒も教師ももっともっとゆとりを持って本業の教育に打ち込めるようにしていかなければなりません。
 そうするとファンはもっと楽しんで応援できます。

 「活動報告」 2019.7.12
 「活動報告」 2019.3.26
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深刻な人手不足の実態
2019/07/17(Wed)
 7月17日 (水)

 東京商工リサーチは7月8日、2019年上半期 (1~6月) の全国企業倒産状況 (負債額1,000万円以上) を発表しました。
 倒産件数は3,991件 (前年同期4,148件) でした。上半期としては10年連続で前年同期を下回り、1990年 (2.948件) 以来の低水準です。
 負債総額は、7,623億6,000万円で、前年同期比2.1%増 (157億5,700万円増) の微増で、上半期では2017年 (2兆2,104億3,800万円) 以来、2年ぶりに増加しました。負債1,000億円以上が1件 (前年同期ゼロ) 発生したことが要因です。ただ、負債10億円以上は88件 (同90件) にとどまり、上半期では過去30年間で初めて90件を下回りました。

 もう少し細かくみると
 ・形態別として、法的倒産の構成比が上半期としては過去最高の93.2%
 ・都道府県別件数では、前年同期を上回ったのが18都県、減少27道府県、同数2県
 ・負債別としては、負債10億円以上の大型倒産が88件、負債1億円未満の構成比が
  73.8%
 ・従業員数別は、従業員5人未満の2,914件。構成比は73.0%で、高水準が続く
 ・業種別では、コンビニエンスストア18件 (前年12)、道路貨物運送業110件
  (同82件)、老人福祉・介護事業55件 (同45件)
 ・中小企業倒産 (中小企業基本法に基づく) は、上半期では2000年以降で最少件数
 ・上場企業倒産は1件発生
です。

 産業別倒産件数は、多い順にサービス業他が1,247件 (前年同期比1.2%増) で全体の3割を占め、建設業が694件 (同3.6%減)、小売業が557件 (同3.2%減)、卸売業が540件 (同13.8%減)、製造業が480件 (同8.3%減) と続きます。
 サービス業、情報通信業、運輸業の3産業で前年同期を上回りました。
 サービス業は、16年 (1,116件) 以降、4年連続で増加です。内訳は飲食業 (361→381件) のほか、美容業やマッサージ業などを含む生活関連サービス業,娯楽業 (186→196件) の増加が目立ちます。
 ドライバー不足が深刻化する運輸業は135件 (前年同期比20.5%増) と2割増加し、13年 (236件) 以来、6年ぶりに増加しています。
 3産業以外の建設業、小売業、卸売業、などでは減少しています。
 建設業 (694件) は リーマン・ショック時の09年 (2,100件) 以降、11年連続で減少し3分の1以下の水準となった。
 減少しているのは人手不足業種です。

 9地区の地区別では、件数の最多は関東の1,480件 (前年同期比1.3%減)、次いで近畿の1,023件 (同5.8%減)、中部の480件 (同19.5%減) と続き、東名阪を抱える3地区で74.7%を占めました。
 増加率トップは北陸が102件 (同18.6%増) で3年ぶりに増加、四国の97件 (同16.8%増)、九州の343件 (同8.5%増 そのうち福岡は183件、負債23782百万円が目立ちます) はともに2年連続で前年同期を上回りました。
 北陸は、サービス業他 (26→43件) が6割増と、件数を押し上げました。サービス業他のうち、生活関連サービス業,娯楽業 (5→11件) や飲食業 (12→16件) などの消費関連の増加が目立ちます。新幹線開通への期待と実際の状況でしょうか。また、電子機器メーカーの破産などがあります。(FKサービス(株)/福井県/液晶テレビ・電子機器ほか製造/215億8,900万円)
 18年上半期に前年同期比21.1%増と、最も高い伸びを見せて注目を集めた東北は183件で、前年同期と同数でした。


 倒産状況のなかの 「人手不足」 関連倒産についてです。倒産状況について13年から集計を開始しています。
 「人手不足」 関連倒産とは、代表者や幹部役員の死亡、病気入院、引退などによる 「後継者難」 型、人手確保が難しく経営難に陥った 「求人難」 型、人手確保が困難で事業継続に支障が生じた 「従業員退職」 型、賃金等の人件費アップから収益が悪化した 「人件費高騰」 型が要因に分けられます。
 上半期については昨年が185件で最多記録でしたが、3年連続で前年比を上まわり、19年はすでに191件に及んでいます。
要因別にみると、最多は 「後継者難」 型が109件 (前年同期146件、25.3%減) で全体の57%を占め、「求人難」 型が47件 (同19件、147.3%増) で24.6%、「従業員退職」 型が20件 (同10件、100.0%増) で10.5%、「人件費高騰」 型15件 (同10件、100.0%増) 7.85%でした。

 産業別です。
 最多がサービス業他の63件 (前年同期50件 26.0%増)。次いで、建設業33件 (前年同期比3.1%増)、製造業22件 (同31.2%減)、卸売業19件 (同45.7%減)、運輸業18件 (同9件、100.0%増)、小売業17件 (同21.4%増) と続きます。
 建設業は、前年同期比で、全体では減少していますが、 「人手不足」 関連倒産では増加しています。
 地区別です。
 全国9地区のうち九州35件 (前年同期18件)、近畿25件 (同18件)) の2地区で前年同期を上回りました。減少は北海道5件 (同11件)、関東74件 (同81件)、東北12件 (同15件)、中部22件 (同23件)、北陸1件 (同1件) の5地区。中国9件と四国8件は前年同期同数です。
 都道府県別です。
 都道府県別では、東京36件 (前年同期39件)、福岡16件 (同7件)、神奈川11件 (同9件) と大阪11件 (同9件)、愛知10件 (同15件) の順でした。


 今年6月についてです。
 今年最多の41件 (前年同月比10.8%増、前年同月37件) で、今年に入って初めて40件台に達し、最多となりました。
 内訳は、「後継者難」 型が24件 (前年同月30件)、「求人難」 型が10件 (同3件)、「従業員退職」 型が4件 (同1件)、「人件費高騰」 型が3件 (同3件) です。
 産業別です
 産業別では、サービス業他19件 (前年同月14件) が最多で、次いで、建設業5件 (同6件) と製造業5件 (同7件)、運輸業4件 (同2件)、卸売業3件 (同5件)、小売業2件、不動産業2件、情報通信業1件です。
 地区別では、関東17件 (前年同月18件) を筆頭に、九州5件 (同3件)、近畿 (同4件)・中国4件 (同ゼロ)・四国4件 (同1件)、中部3件 (同4件) と東北3件 (同3件)、北海道1件 (同2件)、北陸ゼロです。


 かつては、倒産は年度末の3月末に急増しました。今は違います。ギブアップした時点です。
 3年間の月ごとの数をみてみます。
 1月は、17年33件、18年31件、19年30件、2月は、23件、19件25件、3月30件、30件38件、4月22件、30件、28件、5月28件、38件、31件、6月28件、37件、41件です。
 7月は17年24件、18年42件、8月20件、45件、9月22件、27件、10月39件、25件、11月25件、38件、12月23件、25件です。
 18年は5月から8月にかけて30件後半から40件台になっています。現状ペースで推移すると、19年 (1-12月 )の 「人手不足」 関連倒産は過去最多を塗り替える可能性が出てきています。

 負債総額についての18年と19年の上半期の比較です。
 「後継者難」 型は146件から109件と25.3%減少していますが、負債総額は21846百万円から12068万円と44.8%の減少です。
 「求人難」型 は19件から47件と147.4%増大し、1489百万円から6224万円と418%に急増しています。求人難の倒産は深刻な事態を招いています。
 「従業員退職」 型は10件から20件と100%増大し、1675百万円から3999万円と238.7%に急増しています。
 「人件費高騰」 型は10件から15件と50%増大し、1638百万円から2471万円と134%増大しています。
 件数と負債総額は比例しません。細かい内訳はありませんが、その時の連鎖を含めた経済状況などがありそうです。


 7月9日の 「活動報告」 で希望・早期退職者問題について触れました。
 一方で “人余り” 問題を発生させながら、一方では人手不足問題が深刻になっています。
 “人余り” は高賃金の企業で発生して (作られて) いて、人手不足は低賃金の業種で深刻になっています。
 人手不足は東日本大震災に続く災害復興に大きな影響を及ぼしました。その原因となったのが、東京オリンピックです。
 オリンピック後は、低賃金の業種で “人余り” が発生します。
 現在 “人余り” 企業であろうが、人手不足企業であろうが、労働者は雇用、生活、権利にたいしてきちんと声をあげて要求し確立しておかないと、路頭に放り出される危険性がでてきます。

 「全国企業倒産状況」
 「活動報告」 2019.7.9
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