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経団連報告 これまでの春闘交渉を大きく転換
2020/01/24(Fri)
 1月24日 (金)

 1月21日、経団連は2020年の春季労使交渉に向けての経営側の指針となる 「経営労働政策特別委員会報告」 を公表しました。
 「報告」 は、終身雇用を前提に新卒者を採用し、様々な仕事を経験させながら年功賃金で処遇するメンバーシップ型と呼ばれる日本型雇用は問題が顕著になってきたと強調します。かわって、職務を明確にした 「ジョブ型雇用」 を導入して賃金を決める、評価で昇給に差をつけたりする仕組みを広げ、社員の意欲を高める必要があるとします。
 これまでのような同一業種の企業が横並びで行う賃金交渉は 「実態にあわなくなっている」 と指摘します。賃上げについても 「モメンタム (勢い) は維持されている」 と言及して基本給の底上げ (ベア) 自体は 「選択肢になり得る」 との姿勢は示しますが、19年にひき続き具体的な数値は示しませんでした。
 働き方の多様化などを背景に労働組合の加入者が減っていることから 「全社員を対象とした一律的な賃金要求は適さなくなってきている」 と労働側をけん制し、労組だけでなく、多様な方法で社員と個別の労使関係を深めていくことが重要だとします。

 18年までは 「アベノミクス」 を “成功” させたい政府の意向の下で 「官製春闘」 に従いましたが、19年の指針では 「賃上げは経営者が自主的に決めていくもの」 と強調しました。20年の指針では、さらに踏み込んで 「良好な労使関係の礎」 となってきた春季労使交渉を舞台に雇用体系そのものも議論すべきだとの方向性を打ち出しました。


 経団連は、同時に会員企業および東京経営者協会の主要会員企業を対象とした 「2019年人事・労務に関する トップ・マネジメント調査結果」 を公表しました。「報告」 はそれをふまえて書かれています。その中から賃金制度についてみてみます。
 「月例賃金における労働組合等の要求項目」 では、「基本給のベースアップ」 75.9% 「定期昇給の実施、賃金体系の維持」 67.0%の労働組合から要求がありました。
 これに対する企業の回答状況としては、「定期昇給の実施、賃金体系の維持」 を55.4%が要求通りに回答をしています。「基本給のベースアップ」 は46.3%が要求を下まわる回答をしています。
 「月例賃金について、労働組合等の要求への回答ではなく、自社の施策として実施を決定した内容 (複数回答)」 についても 「定期昇給の実施、賃金体系の維持」 67.6%、「初任給の引き上げ」 24.0%、「基本給のベースアップ」 24.0%でした。労働組合が存在しない企業では独自の判断もありました。
 「ベースアップ実施企業における具体的な配分方法」 としては、「一律定額配分」 39.6%、「若年層への重点配分」 32.6%、「職務・資格別に配分」 27.3%でした。
 19年は48.9%がベースアップを実施し、そのうち 「直近6年間にベースアップの実施回数」 では 「毎回実施」 が25.4%を占めています。
 ここからいえることは、「定期昇給の実施、賃金体系の維持」 「基本給のベースアップ」 の労働組合の要求、企業の回答の構造はまだ崩壊しているとはいえません。

 賃金制度についてです。
 「基本給の賃金項目 (非管理職)」 の構成要素については、「職能給」65.5%、「年齢・勤続給」 45.9%、「役割給」 39.3%、「業績・成果給」 36.3%、「資格給」 33.8%などです。「年齢・勤続給」 がある企業は半分を割っています。
 さらに 「今後ウェートを最も高めたい項目」 としては、「業績・成果給」 30.2%、「職務給・仕事給」 24.2%、「職能給」 21.7% 「役割給」 16.4%などです。
 日本において 「職能給」 「役割給」 「業績・成果給」 のとらえ方は会社によって独自の制度を採っていて違いますが、使用者は個別的属性、評価で変動する支給方法を望んでいます。管理職に対してはさらにその傾向が強くなっています。

 雇用・採用に関する考え方についてです。
 「雇用のあり方についての基本的な考え方」 としては、「長期雇用を維持する」 が 「現在 (の状況)」 63.9%、「今後 (の方向)」 42.6%、「どちらかというと長期雇用を維持する」 30.1%と24.7%、「どちらかというと雇用の柔軟化・多様化を図る」 4.5%と23.4%、「雇用の柔軟化・多様化を図る」 1.3%と8.8%とになっています。
 「長期雇用維持」 はあわせて90%台から3分の2減少していますが、根強いです。
 「採用の基本的な方針」 についてです。
 新卒者については 「メンバーシップ型を重視」 が 「近年」 50.2%、「今後」 33.9%、「どちらかというとメンバーシップ型を重視」 24.2%と32.3%、「メンバーシップ型とジョブ型を同程度」 8.9%と16.6%、「どちらかというとジョブ型を重視」 10.9%、12.3%です。
 まだまだメンバーシップ型が根強くありますが、ジョブ型はそう多くありません。
 しかし中途、経験者採用ではジョブ型重視が圧倒的です。
 「新卒者と中途・経験者の採用比率」 では、今後は中途・経験者の採用を増やす予定が多くなっています。
 メンバーシップ型とは、先に人を採用してから仕事を割り振ります。ですから仕事内容、勤務地、働く時間に対して異動や転勤があり指導・訓練もあります。そして 「年功序列」 「終身雇用」 を前提としています。労働者は 「貢献度」 で会社に応えます。
 ジョブ型とは、仕事内容や勤務地、働く時間を明確にして仕事に対して人が割り当てられます。日本では、かつてのパート労働者がそうだったといわれます。しかし正規労働者が安易に非正規労働者に切り換えられるなかでジョブ型でない総合職のパート労働者も増えています。
 そして 「報告」 は、このような調査結果をふまえて社員のエンゲージメント(働きがい)を高めるための環境整備の重要性も訴えています。


 もう少 し「報告」 の指針をみてみます。そこには “願望” も見られます。
 日本の労働生産性は主要7カ国で最も低いですが、その原因は成果重視の賃金制度の必要性がバブル崩壊後から叫ばれながら浸透していないのが一因で、長く勤めるほど賃金が増える構造の是正が求められるといいます。
 とはいいながら、賃上げは 「各社一律でなく、自社の実情に応じて前向きに検討していくことが基本」 との指摘にとどめ、ベアも選択肢の一つと位置づけます。理由は調査結果が “願望” 通りにはなっていないからです。
 重点を置いたのが、新卒一括採用と終身雇用、年功序列を柱とする日本型雇用制度の見直しです。「現状の制度では企業の魅力を十分に示せず、意欲があり優秀な若年層や高度人材、海外人材の獲得が難しくなっている」 と指摘します。「現在の雇用制度のままでは魅力を示せず、海外への人材流出リスクが非常に高まっている」 と危機感を示しました。
 そのうえで、ジョブ型雇用は専門性や成果による処遇が基本になるので高度人材の確保には 「効果的な手法」 であり、業種や国境を越えて有能な人材を獲得するためにも、企業は積極的に取り入れてはどうかと提案します。優秀な人材の意欲を引き出すためには、自らの仕事が社会に貢献していると実感させ、高い給与などで報いる仕組みが欠かせないとみています。さらに業務を専門分野に絞って高い給与を払う代わりに、労働時間の規制を外す 「高度プロフェッショナル制度」 の活用も有益だと指摘しました。
 しかしそれはあくまで一部の高度な人材を対象にしています。キャリアアップは自助努力です。企業が必要なくなったと判断したら解雇です。現在厚労省で検討会が開催されている 「解雇無効時の金銭解決制度」 はそのためのものでもあります。多くの労働者にとって 「雇用の流動化」 とは雇用の不安定化です。
 高度な人材に対して、工場現場で働く多くの労働者は、実際はジョブ型を兼ねた労働に従事しています。そのなかで年功賃金体系をなくすということは低賃金層を固定するということになりかねず、労働意欲を失わせます。同じような職務の労働者のなかで評価を高めて昇給を期待するためにはたくさんの同僚のなかから這い上がらなければなりません。
 調査結果で、ジョブ型への期待が小さいのはそれを期待していないということです。
また、日本型雇用の見直しが提起された背景には中高年労働者の使い捨ての思考があります。いま議論されている高齢者雇用政策における処遇はますます劣悪化していきます。


 この 「報告」 を先取りして実践してきたのがトヨタの労使です。
 トヨタでは昨年、労使ともベアの中味を公表しませんでした。今年の春闘においても労使は評価によって個々人のベアの額に差をつける新制度については “合意” しています。
 「報告」 は、業界横並びの賃金交渉が 「実態に合わなくなっている」 と指摘します。また個別企業でも労働組合の加入率低下を背景に 「全社員対象の一律的な賃金要求は適さなくなっている」 と言及します。これまでの労使関係を否定し、海外との人材獲得競争に負けないよう、雇用にも世界標準の仕組みを取り入れるなど時代に即した労使交渉への変革を求めています。
 しかし、労働組合のあり方、雇用政策は各国によって違います。
 春闘は、どの産業・職務に従事する労働者でも生活保障のために賃上げの対象になることを目的にし、底上げによって生活向上を目指して始まりました。また賃金に関わらす、職場における諸制度の改善課題なども要求しています。さらには社会保障の要求も掲げました。上部団体に加盟しなくても成果を上げている労働組合も多くあります。
 企業に社会的責任を負わせます。そのような位置づけで世論を電話喚起し、長期に定着させてきています。

 一方、あらたな産業・職種も登場し格差も拡大しています。労働組合が組織されていない企業も増えています。各企業は、競争社会のなかで労働者に危機感を迫って一体感を迫って要求を放棄させます。そして評価によって労働者の処遇に差をもうけ、使用者の方針に従わない労働者を冷遇して団結しにくい状況を作り出し、帰属意識を高めます。
 そのようななかで、労働者間の格差は、産業別だけでなく職務ごとでも拡大して固定させ、さらに雇用形態において貧困から這い上がれない労働者を大量に作り出しています。
 「報告」 は、雇用の柔軟化が進めば、経営陣と労働組合が向き合う構図が一般的だった労使関係も変革を迫られる、欧米企業は 「社内でも雇用契約が多様なため、企業が個々の社員との労使関係を重視し、待遇など個別に協議している例が多い」 といいます。
 しかし労働者がさらにバラバラにされたならば、個々の契約内容も遵守されなくなり労働条件は悪化していきます。
 春闘の機会に、労働組合は労働者の要求を吸い上げて力強さを発揮し、賃金だけでなく諸制度の改善にも取り組んで働きやすい職場を作り上げていくことが求められています。
 春闘は役割を終えていません。

 「活動報告」 2020.1.10
 「活動報告」 2019.10.18
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しあわせはこべるように
2020/01/21(Tue)
 1月21日 (火)

 1月17日、阪神淡路大震災から25年目を迎えました。
 1月17日の神戸新聞に 「隊員の謝罪手紙に救われた 大震災で 『父埋まってる』 と救助懇願も声しないと後回しに」 の見出し記事が載りました。

 JR神戸線と国道2号の間の住宅街、神戸市東灘区本山中町。ここで生まれ育った素川 (そがわ) 貴子さん (68) は、結婚後も両親と3世代で暮らしていた。
 震災前日の1995年1月16日。「神戸は地震がないからいいね」。夫と話したばかりだった。木造家屋は1階が崩れ、父親の北村末広さん=享年 (69) =を失った。
 神戸製鋼でクレーンの運転士をしていて、相撲大会で優勝するほどがっちりした人。一人娘の私には優しくて、グランドピアノを買ってくれて、大学の音楽学部にも行かせてくれた。
 母親はピアノの下に潜り込み助かったが、末広さんはたんすが倒れてきて圧死だった。
 私が2階で子どもたちに 「地震や! じっとしとき」 と叫んだとき、父が 「良太君!」 とかわいがってた下の孫の名前を、一度だけ呼んだ。それが、最後の言葉になりましたね。
 母は救出されたが、父は翌日も、がれきの下敷きのままだった。
 応援に来た消防の人に 「父が埋まってるんです」 と頼んだけれど、声がしないので、後回しになって。仕方ないと思ったけど、がっくりしました。

 家族は、神戸市垂水区に避難した。4月になって、1通の書留が転送されてきた。差出人は東京消防庁の派遣隊員。供養料として現金が同封されている。驚きつつ封を切ると、丁寧な字でつづられていた。
〈あの時点の救助の優先順位としては、第一に生存者で、北村様の救出は後に回さざるを得ませんでした。後日、家族の人に救出されたと聞かされ、胸が締め付けられる思いがしました。私たちの手で救出できなかった事をお許し下さい〉
〈北村様のおかげで、2名の生存者を救出することができたのも事実です。本当に本当にありがとうございました。そして大変申し訳ありませんでした〉
 すがりつくようにお願いしたから、覚えてくれていたのかもしれません。なぜ来てくれなかったのかという思いが感謝に変わり、すぐに電話をしました。父親の代わりに2人助けられたんやね。それは、本当によかった。

 本山中町で自宅を再建するつもりはなかったが、母が戻ることを強く望んだ。その母もがんで逝った。震災からちょうど10年目。2004年1月17日だった。
 不思議な話やけど私が命日を忘れんように、父親と同じ日に亡くなってくれたんと違うかな。
 両親の思い出が詰まった街に慰霊碑ができ、初めての1・17を迎える。
 碑を建ててもらい、両親も喜んでいると思います。今年は仏壇にしまっているあの手紙を、孫たちに見せるつもりです。

 消防士の方の無念と無力感、それでもせいいっぱい任務を果たしたという使命感が伝わってきます。同じ思いの消防士がたくさんいました。


 神戸市消防局は、阪神・淡路大震災に対応した消防職員の手記を雑誌 『雪』 にまとめて公表しました。
 長田消防署の方の手記です。

「ガタガタガタ・・・」
 何の音だろうと目覚めた瞬間、地響きとともにドドドーンと体が4、5回突き上げられた。頭の中では何か悪い夢でも見ているのではないかと思っているところに、次の横揺れが襲ってきた。この時足元から子供用勉強机が顔めがけて倒れてきたので、無意識に「ウワァー!」 と大声を出し、とっさに両手で受け止め、初めて現実の地震であることを認識した。
 横には、小学校6年の長男と次男が寝ていた。見ると私と同じように机が二人の上に倒れていたが、「大丈夫か」 と声をかけると 「大丈夫」 と二人から元気な声が返ってきたので一安心し、隣室で寝ている妻と5歳の三男の無事を確認するため再び大声を発した。隣室からも 「大丈夫」 の声が聞こえたときは、言葉に出せない安堵感を覚えた。
  ・・・
「ウーウーウー」
 あちこちでサイレンの音が聞こえたので、空を見上げると近くではないが東、西、南方面の数箇所から黒煙がもくもくと空を突き上げていた。
 「署に行かなくては」 と言った私に妻は 「こんな時に家族をほっといて行くの」 と反論した。
 「うちの家族は無事だ! 他に困っている人がきっとたくさんいる。今行かなくては一生悔いが残る」 と妻を説き伏せ、幸い無事であった近くに住む妻の親戚に家族を預け、長田消防署に向かった。


 1995年3月号に掲載された予防部長の手記です。

 悲惨! 無常! 無念! 巨大地震は、何10年も鍛え、積み重ねて来た経験と力をはるかに上回るものであった。市民の生命、身体、財産の保護のために職を奉じた者にとって、こんなに辛い1週間はなかった。
 1ヶ月過ぎた今も、その悔しさや無念は、頭から離れようとしない。水さえ出てくれれば! 救助にもっと人手と道具があれば!
貯水槽を2つ空にして次の水槽を探そうとした時にも、まだ応援は来てくれない。その目の前に助けを求める人がいる。炎は容赦なくせまってくる。倒壊した木造家屋は絶好の燃え草となった。
 しかし、その下に人が助けを求めている。それはまるで地獄絵に等しかった。極端に興奮した家族は、隊員に殴りかかってきた。
 「水さえ出れば!・・・・・・」 と言葉にならない。
 「悔しい!」
 無念がこみ上げて来る。
 午前中には、1,300名の職員が、ほぼ活動体制に入れた。比較的被害の少なかった北消防署や垂水、西消防署から、北消防団、西消防団も兵庫区や長田区へ応援にかけつけた。
  ・・・
 家族を親戚や縁者にあずけ、ある職員は、路上に置いた車の中に妻子を置いての活動である。当日当直だった職員が家族の安否を知ったのは3日も経ってからというのが何人もいる。幸い、職員の負傷は軽症以下だったし家族をなくした者13人、家が壊れた者152人で済んだ。それらの職員も、公共のために不眠不休で必死に働いた。そうする事が任務だと心に決めていたからだ。
  ・・・
 全国の消防本部から沢山の隊員の応援を受けた。そして、その人たちにも同じような苦しみと悲しみを与えてしまった。それ程、たった数10秒の大地の揺れが残して行ったものは大きかった。
 今後は、全国の同胞に対し、このお礼をしなくてはならない。それはこの大騒動の結末を立派にやってのける事もその一つだと肝に命じている。


 読んでいると昨日のことのように直後にボランティアに行った時の記憶が蘇ってきます。3年間、神戸に通いました。
 2011年の東日本大地震の時の神戸市消防局からの支援は地元の消防署や消防士、被災者に心強さと安心感を与えてくれました。


 昨年、10月5日と6日に姫路市で開催されたコミュニティーユニオン全国交流集会終了後、車で淡路島の野島断層がある北淡震災記念公園を訪れました。震災の爪痕がそのまま保存されています。
 そしてそこには、震災の3年後まで神戸市長田区若松町にあった 「神戸の壁」 が移設されています。
 「神戸の壁」 は、コンクリート製で高さ7.3メートル、幅13.5メートル、厚さ23センチあります。
 1927年ごろ、公設市場の防火壁として建てられました。45年の神戸大空襲、95年の震災の2度の大きな火災に耐えました。
 震災後は取り壊される予定でしたが 「耐え抜いた」 シンボルとして残す運動が起きました。98年1月17日に訪れた時に近くに立てかけられていた看板です。

  神戸の壁
    神戸の壁保存実行委員会
          “95 oct 17
 「神戸の壁」よ永遠なれ (保存運動)

 この若松3丁目は今回の大震災により倒壊、全焼し13名の方が亡くなりました。
 ゴーストタウン化した時には、1927 (昭和2) 年に若松市場の炎症防災壁として設置された 「神戸の壁」 は第2次世界大戦の空襲でも残り、兵庫南部大震災にも耐え、多くの人々を救って、威風堂々と建っている。
 この歴史ある「神戸の壁」が解体されようとしていたが、勇気ある土地所有者と行政、地域の方々の協力によって解体が延期されている。
 震災の証人として 「神戸の壁」 が永遠に残る様保存活動を展開中である。
 震災で亡くなった人、救出に行って命を失った人、その勇者は地震の怖さ、苦しみを、悔しさをもはや他人に語ることが出来ない。
 幸いにして生存している我々は、亡くなった人々の代弁者として話を伝えたい。せめて 「神戸の壁」 を残すことが、我々に果せられた責務である。
 「神戸の壁」 をみんな手をつないで人類の為に 「物質的語り部」 の遺産として引き継ぎ後世に残すことが大切である。


 人の記憶は風化します。やむを得ません。
 しかし災害が世界中で発生しているなかにあって、被害を最小限にとどめるために教訓は語り継いでいくことが大切です。
 何より大切なことは、共に生きようとみんなが励まし合ったことと感謝の気持ちを忘れないで伝えていくことです。

 「阪神淡路大震災」
 「消防士の惨事ストレス」/span>
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カジノ  利用者・ストレス 労働者・健康被害 地域・崩壊  三方に悪影響
2020/01/15(Wed)
 1月15日 (水)

 1月10日、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会は、政府が進めるカジノを含む統合型リゾート (IR) の設置をめぐってギャンブル依存症患者が増えることを予想し、今年4月から治療を公的医療保険の適用対象とする方針を示しました。自己責任で行うカジノや競馬、パチンコなどのギャンブルの依存症治療に、公費や保険料などでまかなう公的保険を適用します。
 深刻なギャンブル依存症患者問題が発生することを政府自身が予測しているということです。政府がギャンブルを推進して患者を作り、治療を公的医療保険の適用対象として医療費の増大を進めます。
 一方で今、政府は、医療費が拡大しているとして財源確保のために高齢者に対してもその負担を高めています。さらに消費税率もアップしました。


 さらにギャンブルは行う側だけでなく、従事するサービス業労働者の健康被害も及ぼします。
 韓国では1967年に外国人向けカジノが合法化され、17あるカジノのうち16は外国人用です。韓国人も入場できるのは、2000年に開業したカンウォンランドだけです。

 韓国における感情労働の問題をとり上げた2011年9月16日の 「ハンギョレ新聞」 です。タイトルは 「〔低い声〕 灰皿投げられても喉首捉えられても… “愛しています、お客様”」 「感情労働者の涙」 です。
「あなたのご両親が亡くなっても笑わなければならないとしたら?
 一般人としては想像だに難しいことだ。だが、こういう状況に置かれている人々がいる。
 ほかならぬ ‘感情労働者’ だ。‘感情労働’ (emotional labor) という単語は米国の社会学者ラッセル ホックシールドが著書 <管理される心:人間感情の商品> で書き初めて世間に知られた。感情労働は本来の感情は隠し職業上他の表情と身振りをしなければならない状況を称する。美容業、コールセンター、販売職、カジノディーラー、スチュワーデスなどがこれに該当する。韓国ではまだ統計上 ‘感情労働者’ の項目が別になく、販売・サービス職従事者統計を根拠に630万人余りの感情労働者がいると推定している。
 ちょっと見には感情労働者は華麗に見える。労働をする場所がホテル、デパート、カジノのような消費の上層を占める空間であるためだ。だが、こういう華麗さの裏面に ‘蝕まれた心’ が存在するということが専門家たちの指摘だ。

 今回の ‘低い声’ ではカジノ ディーラー、デパート販売職に従事する女性感情労働者の声を聞いてみた。彼らは “中が腐る一歩手前” とし鬱憤を晴らした。以下の記事はインタビューを土台に独白再構成されたものだ。名前は全て仮名だ。

   特級ホテル カジノディーラー キム・ジョンミン氏

 こんにちは。私はソウルにある特級ホテルのカジノでディーラーとして仕事をしているキム・ジョンミンといいます。年齢は28才で経歴5年目です。初めて入社した時は私の特技である中国語を思う存分活用できるという夢を膨らませていました。しかし、教育を受けた時から何か変でした。基礎的なディーラー技術を習ってからは継続的に ‘忍耐’ 教育を受けました。会社では "無条件に我慢しろ" とばかり言いました。"カジノという所はお金を得る人より失う人々が多いので、顧客が怒るのは当然だ" と言いながらです。 
 教育を終えて現場に投入されると、なぜこらえなければならないのか実感できました。悪口くらいは基本ですよ。お金を失った顧客がテーブルを叩き、ののしり、乱暴を働いてもじっとしているほかはありませんでした。そのように教育を受けたからです。 韓国のお金で最大8千万ウォンまでベッティングが可能ないわゆる ‘大口’ 顧客たちにはより一層気を遣わざるを得ません。実際ディーラーに何の罪がありますか。自分たちが失敗してお金を失ったのに、なぜ私たちが災いをみな受けなければならないのですか。

  "お金を失い、なぜ八つ当たりするの
  灰皿投げるのは止めてください
  各種疾病にうつ病まで…
  あと5年やったら辞めます"

 私たちはタバコの煙にも無防備に露出しています。勤務が終われば喉に痰がいっぱいです。賭博する人々はなぜタバコをあんなにたくさん吸うんでしょうか。自然にテーブル上の灰皿も多くならざるをえません。ところで灰皿が最近、陶磁器からプラスチック製に変わりました。お客さんが腹が立てば投げるからです。よく知っている後輩はお客さんの投げた灰皿に当たって病院で治療を受けたこともあります。本当に生命の脅威を感じる程度まで達して初めてプラスチック灰皿に変えたんですよ。
 顧客たちの暴力はそれでも耐えることができます。あまりにひどければ保安要員が制止したりするからです。でも、外国人が自分たちの言語でするセクハラは本当に我慢できません。私たちが聞き取れないだろうと思って、あらゆるわい談をならべます。私たちはみな分かっていますね。 ほとんど全員が外国語を特技として選ばれた人々なのに、それが分からないと思いますか? ア、考えただけで怒りがこみあげてきます。

 勤務環境も劣悪です。朝6時~午後2時、午後2時~夜10時、夜10時~朝6時、このように3交代で回ります。一回時間が指定されれば2か月連続で勤めます。深夜班になれば2か月間何をして暮らすのか、ぼんやりしています。一日8時間勤務で良いですって? 中間に昼休みもありません。ご飯を10分で食べなければなりません。そのためかディーラーたちの大部分が神経性胃腸病を持っています。ここに一日中立っていると首・腰・膝が全て良くありません。太陽の光を見られずに屋内生活だけする結果、うつ病症状も出てきます。精神科診療を受けている同僚も多いのです。私も3年目になって、からだが壊れていくのが感じられましたよ。風邪を引くとなかなか治りません。名節ですって? 外国人対象カジノなので国内の名節とは関係ありません。ストレス解消はどのようにするかですか? 大部分は ‘お酒’ です。不規則な勤務時間のせいで友人たちと会うことも難しく、仕事を終えて同僚たちとお酒を飲むのがストレス解消の全てです。からだはもっと壊れることですね。本当に、私はぴったり5年だけ働いて辞めます。ぴったり5年だけ。」

 11年11月28日の 「ハンギョレ新聞」 です。
「感情労働とは顧客満足のために自身の感情を抑制し、常に親切な表情と語り口で応対しなければならない労働形態を意味する。販売・サービス業の競争が熾烈になる中で労働者に過度な親切を要求する傾向が増え関連業種従事者らのストレスとうつ病が激化している。昨年11月、民間サービス産業労組連盟が労働環境健康研究所とともに民間サービス労働者3.096人を対象に職種別うつ病程度を調査した結果、専門的な相談が必要な重症以上のうつ病が化粧品販売員の場合、32.7%、カジノディーラー31.6%、レジ26.5%と現れた。これは事務職の23.9%、施設職23.7%より高い数値だ。」


 なぜIR誘致を進める動きが出てくるのでしょうか。横浜市の例をあげます。
 市が作成した資料では、「IRによる納付金や入場料収入、さらには法人市民税や固定資産税、都市計画税によって年間820億円から1200億円の増収効果が期待できる」と試算されています。この金額は、横浜市が1年間に企業から得られる法人市民税 (570億円=2017年度決算) をはるかに上回る数字です。個人市民税に頼ることへの懸念は、超高齢化社会を迎えるなかで、今後の税収増は望めず、逆に医療や介護に使われる費用は増えることが予想されること。
 これに加え、年平均額で約900億円かかるという老朽化した公共施設の建て替え期限も迫っており、市の定期的な“出費”は増える一方というのが市の説明です。
 IRは市の財源確保に寄与するだけでなく、市の資料によると、運営時には年間6300億円から1兆円の経済波及効果があり、さらには年間7万7000人から12万7000人の雇用を生み出すとしています。


 だからといって市政をギャンブルに委ねていいのでしょうか。
 地元の反対集会での江田憲司衆議院議員の発言です。
「カンウォンランドに行ってきました。自殺率トップで奇怪な風景の町。そうなってしまったと地方自治体の人が嘆いていましたよ。もう、青少年に顔向けできないんだと。昔、石炭の町だった。炭鉱が閉鎖されて、カジノが地域振興の目玉ということで我々は誘致した。しかし、15万人あった人口が3万8000人に減ってしまった。奇怪な風景の町とはなんでしょう。風俗店と質屋とサラ金が立ち並ぶ町。金をすった人が野宿をし、地域住民と諍いを起こす。治安が乱れ、風紀が乱れ、小学校が隣の町に移転した。カンウォンランドの社長は最高検検事出身で国会議員出身。韓国でパチンコを禁止した方なのですが、『江田さん、横浜でもカジノを誘致する動きがあると聞いていますが、横浜は人口何万人ですか?』 と聞くので、370万人と答えると、『絶対辞めた方がいい』 と社長が言うんですよ。(中略) 『江田さん、横浜みたいな大都会に設置したらもう、規制をしたり監督すればいいというレベルを超えて、大変な事態になりますよ。絶対に辞めた方がいい』。社長の言葉を噛みしめて帰ってきました」
 江田議員は、カジノで成功したシンガポールも昨年視察しました。
「シンガポールは明るい北朝鮮といわれるほど、規制・監督・取締国家です。顔認証、指紋認証で、個人カードにはすべての個人情報が入っています。植栽の陰には、監視カメラが町中に張り巡らされています。タクシーで乗り逃げしても翌日には捕まる。それほどの規制・監督・取締国家だからこそ、やっと成功しているのがシンガポールです。懸念される風紀、治安、反社会的勢力とのつながりですが、20、30年前に、そういう組織は壊滅して、今はひったくりの類しかいないそうです。シンガポールは、きわめて例外的なカジノの成功例です。(中略) 我々、横浜の将来、我々の子供や孫の将来を真剣に考えると、横浜のカジノ誘致は選択肢として絶対にありえないと思います」


 統合型リゾートでは膨大な利権がうごめきます。すでにその動きは明らかにされています。
 ギャンブルは、まず主催者が儲けます。ですからすべてのひとが儲かるわけではありません。次に一部の客が儲けます。外国人向けカジノは儲けたお金は海外に送られます。多数のすってしまった客等の対応をするのがサービス業に従事する労働者です。
そして、統合型リゾートを誘致する地域の政策そのものがギャンブルです。市として、地域としてすってしまう危険性があります。

 労働者の健康に害を加えて金儲けをするようなことは金額の多寡にかかわらずやめるべきです。労働者の健康を害する産業はいりません。

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トヨタ  組合が5段階の分断賃上げを承認
2020/01/10(Fri)
 1月10日 (金)

 トヨタ自動車グループの労働組合でつくる全トヨタ労働組合連合会は1月10日、中央委員会を開催して2020年春闘の方針を決定しました。
 昨年に続き、定期昇給も含めた賃金の総額を重視し、ベースアップについては実質3千円以上を目安にします。一時金 (ボーナス) は5カ月以上を要求します。また、人手不足が問題となっているなかから非正規雇用の組合員の賃上げを本格的に要求します。
 総額を重視とは、具体的には、基本給の底上げのためにあててきた原資を個人の評価に応じて5段階にわけて配分する新たな賃上げ制度です。「改善分 (ベア) で全員一律に賃金を引き上げる必要性はよく考えていかないといけない」 という経営側の発言をくみとり、横並びの賃上げ手法について見直すことにしたといいます。
 労組によると、これまでも5段階の人事評価に基づいてベアに差が出る仕組みではありました。その人事評価に応じてベアの幅に差をつけて配分する案が有力です。「頑張った人に報いるべく、さらにメリハリを付けるような制度の検討をしている」 (幹部) と説明します。その結果、中堅クラスで人事評価が低い社員だと、ベアがゼロになる可能性もあるといいます。別の幹部は 「ベアゼロを作りたいわけではなく、メリハリを付けた結果、そうなるかもしれない」 と話します。
 ベアは、社員の職務や勤続年数で決めている賃金表を書き換え、賃金水準を一律に引き上げる制度で、年功序列や横並びを前提として極端な差をつけません。
 しかし全トヨタ労組は今春闘において労働組合の方から格差を設けた制度を要求します。労働組合がさらに変質しています。

 労使ともに、以前からこのような制度を目論んでいる徴候はありました。
 経営側は勤続年数などに応じた全員一律の賃上げの必要性に否定的な考えを示していました。
 労組は、昨年の春闘で賃金の総額を重視する方針に転換しました。平均1万2千円の賃上げを要求しましたが妥結したベアの平均額を労使ともに公表しませんでした。労組は一般組合員にもしませんでした。それまでの組合員1人ひとりの 「カイゼン」 に取り組む姿勢を評価し、賃上げの総額重視の色合いを強めるためと説明しました。
 春闘交渉の最終局面で豊田章男社長は 「今回ほど距離感を感じたことはない」 と危機感を煽って変わらなければならないと力説しました。自動車業界は変革期を迎え、電動化や自動運転など次世代技術の競争が激しいなかで、賃金にメリハリを付けることで競争力向上につなげる狙いといいます。社内の労働者同士の競争が世界での競争力向上につながるということです。
 また、経営側はこれまでの一時金の年間妥結を拒否し、冬分については10月の秋交渉での決定に持ち越しました。
 労働組合は経営側と危機感の共有に応じました。
 グループ企業などにトヨタのベアにとらわれない議論を促したいとも説明しました。

 春闘後、労組は各職場で業務を再度見直し、生産性が低い業務を選別し改善する取り組みを徹底します。
 10月9日の労使交渉で、経営側から人事評価見直しの方針が示されます。労組もトヨタが持続的に成長することが要求の前提になる、頑張った人に報いるような競争力向上につながる賃金制度が必要と判断します。
 また、労使双方から部長級・次長級などに相当する 「幹部職」 や課長級に相当する 「基幹職」 と呼ばれる中間層の中に 「役割を果たせておらず、周りにマイナスの影響を与えている人がいる」 という問題提起が上がります。「変われない中間層」 に身の振り方を問うのが豊田社長の目的だったとの見方もあります。退職勧奨です。
 このようななかで、冬の一時金は満額回答で落ち着きます。この方向性の延長線上にあるのが 「脱一律ベア要求」 です。評価の基準は 「役割給」 といわれる献身性です。


 賃金改定に際して、使用者はいつも若年層に中高年層を “働かないおじさんたち” と煽って対立させます。年功序列が確保する管理能力や技術・技能の蓄積、経験・感による職場秩序は排除されます。その結果、非常時には回復に大きなリスクを伴います。
中高年層の会社への貢献を否定する評価は、実は次の時代の中年層である若年層の処遇でもあります。企業は1人ひとりの労働力、能力を1個の部品、“生産性” でしか評価しません。部品はいつでも取り換えがきくという使い捨てのとらえ方が根底にあります。
 さらに若年層間にも競争を煽ります。トヨタにおいてはすでにそうですが、労働者はエンドレスの 「カイゼン」 への挑戦を要求されます。
 労働者は納得いかない評価に対して最も大きいストレスを感じます。不信・不安にかられます。恒常的にストレスが蓄積すると他者にぶつけたり、事故を併発します。使用者は職場秩序が乱れると管理を厳しくします。労働者にとってはますます働きづらい職場環境がつくられていきます。そのようななかで生産性向上などできるはずはありません。
 トヨタでは時間外労働を実際にしているかどうかではなく月45時間分の手当てがつきます。会社や労組はどう説明しようが時間外労働の強制に繋がります。そしてそれだけではなく常的に長時間労働が強制されていて過労死も発生しています。長時間労働はさらに加速します。


 1941年11月、政府は産報聯盟を解散し、新たに大日本産業報告会を設立します。
「〈皇国勤労観〉 にもとづく産報運動の編成替えにかかわって、いま1つ注目しておかなければならないのは、それが生活給思想をともなって現れたことである。大日本産報は、41年11月、パイロット万年筆の工員月給制度を紹介するパンフレットを発行したが、そこには、職員にならって生産現場の労働者についても、『功利心』 を刺激するような請負制を廃し、年齢に応ずる基本給を主体にすえた月給制を導入し、生活確保をはかるのが 『人を人として取り扱う』 道であり、職分奉公の精神を振起しようとする産報運動の指導理念に適うのではないかという思いが込められていた。つまり、月給制への転換をはかることによって、『経済人』 から 『職分人』 への転換を促そうというのであった (広崎真八郎 『工員月給制度の研究』 1943年)。」 (兵藤釗著 『労働の戦後史』 上)
 今でいうなら、非正規労働者をなくし正規労働者にした方が生産性は高まるという判断です。しかし経営者は企業の自主性保持を盾に抵抗します。

 戦局が重大化し軍需生産の急増を求められます。
「政府は、42年の重要事業場労務管理令の施行にあたって、少なくとも年1回従業員全員を昇給せしめることを盛り込んだ昇給内規を設けるよう指導した。さらに翌43年3月、政府は 『賃金対策要綱』 を閣議決定し、緊要事業場とされたものにもこの方式を導入しうることとした。これは、請負賃金製、奨励加給制の併用を認めながらも、『年齢、勤続年数ニ応ズル基本給制度』 を確立し、『勤労者ノ生活ノ恒常性』 を確保することによって、職分奉公の精神を振起しようとするものであった。だが、これに応じて昇給内規を設けた企業では、人事考課による昇給額に差等をつけてモラール・アップをはかることに力点をおいていたことも留意しておかなければならない。」 (『労働の戦後史』 上)
 政府の 「皇国勤労観」 にもとづく昇給内規は経営者の人事考課の抵抗にあいます。
 しかし昇給内規は、労働者の共感を組織できました。
「大正デモクラシーの奔流のなかで、労働者が急速に社会改造思想に傾いていったときも、<国体> 観念のうちに人格承認要求の正当化の根拠を求めようとする傾向がみられたことからしても、<陛下の赤子> としての平等を打ち出した <皇国勤労観> は、労働者の共感を誘うものを含んでいたことは疑いない。」 (『労働の戦後史』 上)


 戦後、労働組合は双方を取り入れた生活給を要求していきます。
 46年3月、電力10社の企業別組合は全国電気事業労働組合懇談会を結成し、4月、産業別単一組合をめざす日本電気産業労働組合協議会 (電産協) を発足させます。懇談会では 「新給与体形ノ確立ノ件」 が議論され、「改善基本給ノ基決定ト各組合ノ為スベキ調整措置」 を 「緊急検討」 し 「(電産協結成の) 大会ニ於テ方針決定スル」 ことが決定されます。
 6月の給与委員会で作成された 「新給与体制委員会案」 では、「基本賃金」は 「A生活保障給」 「B能力給」 「C勤続給」 に細分化されています。
 10月7日、電産は会社に要求書を提出し、団体交渉が開始されます。
 その中に、「能力給」 は 「各人ノ技術、能力、経験、学識等ヲ総合加味シタル一定ノ標準額ニヨリ査定ヲ行ウ」 とあります。しかし技術等の内容については明確にされていません。
 10月18日、会社は賃金体系の対案を提出しました。電産要求案にいくつかの修正を加えたものです。「能力給」 については 「能力給ハ技術、能力、経験、学識等ヲ総合加味シタル能力成績ニヨリ査定シ其ノ平均額ハ300円程度トスル」 とあります。能力給の比率は電産要求案より低いものでした。
 12月22日、電産と会社は協定書に調印します。
 協定書は中労委による調停案をもとにというよりは事実上、中労委が作成しました。いわゆる 「電算型賃金」 です。「能力給」 の要因は、電産要求案と完全に同一でした。
 能力給は当初から組み込まれています。しかし能力給に影響する要因は何であるべきなのか、査定基準はどうあるべきかについては電産では合意は成立しませんでした。その結果は 「会社の責任に於て能力給を決定する」 です。理由は、多くの労働者にとってはとにかく賃金が上がりさえすればいいという意識と、若年労働者や学歴のある労働者、職位が上の労働者は他の労働者より高い評価を要求したことなどがあげられます。

 その後、各会社においては職務、職位ごとの賃金表が作成されて行きます。賃金差は拡大していきます。しかし同じ職務の賃金表の適用者においては賃金格差を拡大させないことが労働組合の共通認識で役割でした。


 トヨタの労使交渉は他の企業に大きな影響を与えてきました。
 トヨタの今春闘の動向に経団連も動き始めました。経団連は昨年12月23日、20年春季交渉の経営側の指針として、年功型賃金の見直しを重点課題として掲げました。職務に応じて賃金に格差をつけ、成果をより重視した昇給制度を設けるよう促します。
労働組合も差別を推進します。春闘で労働者はますます働きにくい、生活しにくい状況がつくられようとしています。職場内で弱肉強食がおき、格差は拡大していきます。
 トヨタは危機を突破し、競争に勝つための挑戦を展開しているといいながら、それを阻んでいるのはトヨタの労使自身だということを自覚すべきです。
 労働組合は、春闘をもう一度、職場改善、労働者の生活改善のためのものに取り戻す必要があります。

 「活動報告」 2019.10.18
 「活動報告」 2019.4.12
 「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」 ホームページ・ご相談はこちらから
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薬では飢えや乾きは治せぬと 水路作った中村医師逝く 
2020/01/06(Mon)
   謹 賀 新 年 

 「中村哲氏 世界を照らす」

 ・アフガンの大地に水を引いた日の 中村医師の輝く笑顔
 ・「一隅を照らす一灯でありたい」 と記せし中村哲氏 世界を照らす
 ・先生を返せ お前も井戸を掘れ 正しいことなら何故撃って逃げた
 ・「悔しい」 とただそれだけを思い泣く 中村医師を知る人はみな
 ・質問にはぐらかさずに答えてた中村医師の人柄偲ぶ
 ・恩人と敵の区別ができなくて自動小銃放つバカモノ
 ・アフガンの大地に水と人の 「道」 創りし仕事 中村氏逝く
 ・生きるため傭兵になる男らを 緑の大地に導きし人
 ・薬では飢えや乾きは治せぬと 水路作った中村医師逝く
 ・日本で政治家をして欲しかった中村哲は偉大なる人
 ・無残でも無駄と思へぬ死に様を 中村哲は吾らに示す
 ・井戸を掘る (比喩でありまた比喩でなく) アフガニスタンに中村医師死す
 ・訃報までその存在もアフガンでの偉業も知らざりし 己を恥じぬ
 ・助けんと尊きことを為すも人 容赦なくいのちを奪うも人ぞ

 「朝日歌壇」 は4人の選者が10作品ずつ選びます。12月29日にはアフガニスタン・ペシャワールで銃殺された中村哲氏についての作品があわせて14首選ばれました。中村氏の人柄とその活動をたたえるとともに、その無残な死を惜しんでいます。

 「ストライキやらんで、組合の役はないんじゃないか」

 中村医師は小説 『花と竜』 などの作家火野葦平の甥にあたります。
 『花と竜』 の主人公は任侠玉井金五郎で、モデルは火野葦平の父親です。後半には火野葦平そのものがモデルの息子・勝則も登場します。
 金五郎は北九州・福岡県若松港で、筑豊炭鉱から掘り出されて若松港に運ばれてきた石炭を帆船に積み込む荷役を請け負う請負師です。請負師は仲仕を抱えて仕事をします。
 1910年代末になると、請負師の中の小頭が集まって聯合組を作ります。金五郎はそれとは別に 「小頭組合」 の結成に奔走します。
 炭鉱会社は大型運搬船を取り入れ、運搬費を安くするために請負師にも工作します。聯合組と小頭組合が衝突するようになります。小頭組合が切り崩される危険性が予想されると勝則は金五郎に提案します。
「あくまで、こっちの主張を貫徹しようというのでしたら、今よりもっと強力な組織が必要です。それで、沖仲仕労働組合を作った方がよいと思います」
 了承されると続けます。
「きっとお父さんが小頭組合を作ったときと、同じことが起きるでしょう。どうも、変ですね。請負師というものは、僕には、働く者の側に立つ人としか思われんのに、友田さんは、いつでも、労働者の敵に回っとる。・・・友田さんの居るかぎり、仲仕に有利になることは考えられません。友田さんは資本家と結びついています。これに対抗するには、組合の力以外にないと思うんです」

 荷役も機械化されていきます。「三菱炭積機建設問題」 が起きます。
 建設中止嘆願書が作成され、反対運動が起きます。
「洞海湾における数戦の石炭仲仕は、石炭荷役をすることによって、僅かに、生きている。然るに、次々に、荷役は機械化され、仲仕の仕事は減少した。仲仕の生活は、貧窮の底に叩き落された。そのうえ、またも三菱炭積機が建設されるということは、そのまま、仲仕の飢餓と死を意味する」
 しかし止めることまではできません。
 金五郎は、小頭組合総会で小頭組合として、三菱、三井、麻生、住友、貝島、その他をふくむ 「若松石炭商同業組合」 に対して、転職救済資金25万円を要求することを提案し、決議されます。
 しかし交渉はうまく進捗しません。

 金五郎の妻マンは2人に何度かストライキを進めます。
「お父さん、あれよ、あれ、ストライキ、もう、その一手よ」
「勝則、お前、なんのために、仲仕の組合作ったの? こういうときに、ストライキやらんで、組合の役はないんじゃないか」

 小頭組合総会で怠業が決議されます。
 しかし決議を破る組が出てきます。後ろで手を引いているのは友田です。金五郎は、友田を訪ね直談判します。そしてストライキの同意書に署名させて判を押させます。
 総罷業を決行することが決定されます。
 しかし当日操業を続ける船がありました。金五郎は船に乗り込み、機械を止めます。洞海湾内のすべての沖積荷役は停止されました。
 総罷業は、石炭を掘り出す炭坑元をはじめ、鉄道、桟橋、汽船、湾岸諸工場、関門地方から阪神地方までさまざまの影響を起こし重大化します。
 石炭商組合に、最終的に6万円と争議費用3千円を支払わせます。
 下請の 「経営者」 連合と一般労働者が協力して、無統制の、強い者勝ちの労働現場に秩序と規律を作り上げて争議に勝利します。

 集団の力で大資本、ゼネコンにモノを言う

 似たような争議を、今、全日建運輸連帯労組が展開しています。労働組合のホームページから引用します。
 労働組合は今、権力から60人を超える組合員が不当な弾圧をうけ、長期の拘留も続いています。

 生コン業界で働く労働者の賃金を上げるには、生コンの単価を上げることが必要です。そのためには中小企業を協同組合に結集させて、集団の力でゼネコンやセメントメーカーに運賃などを含めた値上げを求めていかなければいけません。より多くの事業者を協同組合に入れる取り組みが必要です。競争にのみ込まれてしまうと、必ず値段の買いたたき、ダンピングが始まります。多くの中小企業が協同組合に結集し、集団によるスケールメリットを拡大させることができれば、大資本、ゼネコンにモノが言えます。

 しかし、こうした状況に慣れてくると業界側は労働組合との対決姿勢をあらわにします。
 2004年から、これまで協同組合に参加していない「アウトサイダー」といわれる業者17社、18工場を協同組合に入れようと議論をしてきました。その結果、「大同団結をしよう」ということで、協同組合に入ることが決まりました。ところが、このなかから2社ほどがゼネコンやセメントメーカー、あるいは権力から圧力を受けて、協同組合への加入の約束を反故にします。
 労働組合は約束の履行を求め、会社に申し入れに行くと、警察は 「威力業務妨害」 をでっち上げて、05年ごろから弾圧を始め、弾圧は5次にわたりました。その結果、業界はまた混乱した状態が約10年間続きました。

 15年に業界の有力な人たちから労働組合に業界再建に向けた協力の要請がありました。
 要請に対して労働組合は 「協力は惜しまないけど、今までの約束をどう履行するのか」 「生コン価格の適正化を図ったときに、出入り業者の運賃も見直してほしい」 と求めました。
 約束とは、1リューベ=100円を積み立てて、日々雇用の人たちに対する相互扶助、あるいは技術センターや生コン会館をつくることでしたが、結局、弾圧でつぶされてしまっていました。
 業界側は私たちの要求に対して、「約束する」 と明言しました。
 こうして、2015年に大阪府下の3協同組合(大阪広域協組、阪神生コン協組、レディース生コン協組)が大同団結し、今や164社、189工場を擁する日本最大の生コン協同組合にまで成長しました。組織力も高まり、生コンの値段も高めになりました。
 しかし業界側は生コンの値段上昇を背景に収益を上げたにもかかわらず、出入り業者 (ミキサー輸送、セメント輸送、ダンプ) へ値上げの還元をしないので、労働組合はストライキを展開しました。ストに対して、業界側は「自分たちの権益が侵された」と思い込み、「威力業務妨害」 「恐喝」 などと事件をつくり上げます。労働組合と業界団体が共同でつくった大阪広域協組を、今、一部の人間が牛耳って、労働組合を敵視しています。

 権力は、中小企業が大同団結し、労働組合といっしょに大資本にモノを言うという産業民主化の流れが、やがて関西から全国に広がることを恐れています。この対立に介入して弾圧つづけています。たとえ協同組合をつぶしても労働組合がまた再建させるので、まずは労働組合をつぶそうということです。
 一部の業者だけに膨大な利益が集中しているような状況が続けば、生コン業界の崩壊につながります。
 権力の労働組合つぶしを全国の労働者の力を団結させて跳ね返していかなければなりません。

 一時的な 『焼石に水』 に終らないように

 昨秋、藤野豊著 『「黒い羽根」の戦後史 炭鉱合理化政策と失業問題』 (六花出版) が刊行されました。終戦直後から1960年の三池闘争までの政府の石炭政策、炭鉱地帯における失業問題がテーマで、最後は、59年8月に始められた「黒い羽根運動」が取り上げています。
 「黒い羽根運動」 は、政府が閉山を推し進めながら失業対策には取り組もうとしないなかで、地元自治体も対応する力量を失って学校の給食体制も維持できなくなってしまったなかで、炭坑一帯の家族を襲う住宅・食料問題、子どもたちの教育問題に対して、全国から 「赤い羽根募金」 をまねた形式で支援することが目的でした。1本10円の募金、寄付金で炭坑失業者の家庭に食料、医療、学用品などを供給するとともに政府に対して失業者救済の施策を求めます。
 自治体や労働組合ごとに、そして社会運動団体、キリスト教関連団体が運動を展開しました。

 報道機関もさまざまな角度から取り上げます。文化人も運動への協力を呼びかけ全国化していきます。
 朝日新聞は運動の進行とあわせて賛同を求める報道を続けました。9月7日に掲載された火野葦平の意見です。
「生活にあえいでいる人たちを救おうという運動が起きているというが、いくらかの金を集めるだけでは焼け石に水のような気がする。小さな手をさしのべることももちろん大切だが、もっと大きな政治の手を動かして、思い切った救済と復活策をとってもらいたい」
 9月14日の紙面には、火野葦平の 「黒い地獄――かつての石炭天国にあえぐ失業者たち」 の論稿が載っています。
「売春防止法でも、女たちの行先を作らずに禁止だけをしたために、悪弊のみを残した」 ことを教訓に 「黒い羽根によって多くの募金が集まって欲しいけれども、それが一時的な 『焼石に水』 に終らないようにしなくてはならない」 「この際、早急に、思い切った政治的対策と復活を祈ってやまない」
 この火野葦平の思いは、自らが指導した若松港での争議での教訓と仕事を追われた仲仕たちへそれと重なります。炭鉱の栄枯を近くで見てきました。

 運動は世論を喚起し 「炭鉱離職者臨時特措法」 を成立させます。

 火野葦平――中村哲 そして私たちの今年

 火野葦平の思いは、生活のために働く労働者を路頭にまどわさないようにすること。
 中村哲の思いは世界中で憲法9条を豊富化し実践すること。
 火野葦平の一時的な、表面的な問題の解消ではなく根本的な、そして恒久的な解決方法を希求する思いと、アフガンでの中村哲医師の実践は似ているように思えます。
 その思いをしっかりと受け継いでいくことこそが大切です。

 2020年を、貧困・格差を解消し、労働者がよりよい生活を送ることができる 「共に生きる」 社会を作り上げていきましょう。
 「生きるため傭兵になる男らを 緑の大地に導きし人」 のような活動を広めることが地球上から武器を持って争うことをなくすことにつながります。辺野古基地建設を阻止しましょう。沖縄に基地はいりません。そのような社会を目指して手をつないでいきましょう。


   涙を流して種まく人は
    歓喜をもって収穫をする
     そのための努力を
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