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「監視カメラによる労組活動監視による精神疾患は労災」 韓国
2018/12/14(Fri)
 12月14日 (金)

 12月6日のハンギョレ新聞に 「ユソン企業労組に軍配上げた最高裁 『労組活動監視による精神疾患は労災』」 の見出し記事が載りました。
 労組活動監視とは、ユソン企業社は2011年9月以後、ストから復帰した労働者の27人を解雇、42人を出勤停止などの重い懲戒を下しました。
 同時に、他の労働者に対しては防犯カメラを設置し、ビデオカメラ、携帯電話、カメラをも利用して監視を続けました。
 争議中に会社が主導して第二組合を結成させ、「特別生産寄与金」 を支給する一方、ユソン支部には成果給を支給しない、残業と特別勤務からも排除するなどの差別行為を働いてきました。

 このようななかで、牙山 (アサン) 工場の組合員Pさんは重症度のうつ病をり患しました。Pさんは15年9月に労災審査をする勤労福祉公団に療養給与を申込み (労災申請)、16年5月に労災と認定されました。
 会社はそれを不服として裁判所に提訴しましたが、1審・2審とも敗訴、最高裁 (大法院) に上告しましたが、11月27日、棄却されていたことが明らかになりました。
 最高裁が支持したソウル高裁の判決内容は、「P組合員らは良心の自由と経済的圧迫の間で相当な精神的ストレスを受けたと思われる」 とし 「最大の原因は、正常業務遂行中に経験した労使・労労葛藤と、そこに原告 (ユソン企業社側) の不当な経済的圧迫と強化された監視および統制が加えられて生じたもの」 というものです。

 会社側の労働組合弾圧など不法不当労働行為で発生した精神疾患が労災と認定されました。憲法が保障した正当な労組活動を会社が妨害すれば、労組活動中に受けた監視などから生じた精神疾患も不当労働行為だけでなく業務上の労災と認定されるという初めての判例です。


 ユソン企業社の労働争議は2011年から続いています。
 17年2月17日、忠清南道天安 (チョンアン) の新富洞大田 (テジョン) 地裁天安支部で、ユ・シヨン会長に懲役1年6カ月の実刑が言い渡されました。
 判決に至る経緯です。
 11年5月18日、会社は労組がストライキに突入すると職場閉鎖を断行し、工場内にいた労組組合員を引きずり出すために暴力ガードマンを動員して多数の負傷者を出しました。
 7月、労組は工場復帰意思を明らかにしますが、会社は一カ月以上職場閉鎖を維持しながら復帰を阻みます。その間に 「創造コンサルティング」 の諮問に従って、会社主導で会社に友好的な組合を瓦解させるため第2労組を結成させ支援します。
 組合員と第2労組組合員とを差別し始めます。

 12年9月、国会で創造コンサルティングの諮問文書が公開されます。
 労組はユソン企業を不当労働行為の疑いで告訴しますが、検察は13年12月、創造コンサルティングと関連した 「労組破壊」 の容疑を除外し極めて一部の容疑だけでユ会長などを “温情” 起訴するに留めました。
 これに対して労組は大田高裁に裁定申立てを行ないます。
 14年12月、裁判所が検察に公訴提起を命令して 「労組破壊」 の容疑に対する本格的な裁判が開かれることになります。

 17年2月17日、忠清南道天安 (チョンアン) の 新富洞大田 (テジョン) 地裁天安支部で、ユ・シヨン会長に懲役1年6カ月の実刑が言い渡されました。
 16年4月、労組が提起した第2労組無効訴訟でソウル中央地裁は 「第2労組が会社の主導の下に設立されたため無効」 と判決を下しました。
 しかし 「労組破壊」 を主導した経営陣に対する刑事処罰はずっと見送られてきました。この日の判決で初めて、労組が告訴した大部分の犯罪事実が有罪と認められました。


 17年5月24日、検察は、ユソン企業社の「労組破壊」に関与した疑い (「労働組合および労働関係調整法違反」) で、元請け会社である現代自動車の11年9月当時の購買本部駆動部品開発室長など4人の取締役員と法人を 「共同主犯」 として起訴しました。
 その訴状です。
 11年5月、ユソン企業社から現代自動車への部品供給に支障が生じると、元請けの現代自動車は、「2011年末まで品切れの懸念のない安定的生産構造を定着させることができない場合、納品構造の二本化方針によって注文量を削減するしかない」 と圧迫しました。
 ユソン企業社は会社側と対立を深めてきた金属労組の影響力のユソン企業労組の弱体化と瓦解のために、11年7月に会社側に近い労働者を煽って第2労組を組織していましたが、現代自動車に 「第2労組の組合員を増やし、品切れ状態が発生しないようにする」 と明言しました。
 現代自動車はユソン企業社の 「不当労働行為」 を制止するどころか、時期別の第2労組加入人員の目標値を管理し、思ったように組合員が増えないとしてユソン企業社を叱責する一方、労務法人 「創造コンサルティング」 関係者まで現代自動車本社に呼んで会議を開きました。
 検察はこのような行為を、現代自動車が「円滑な部品納品」のためにユソン企業社と共に不当労働行為を 「共謀」 したと判断しました。

 最高裁は10年、現代重工業で社内下請けの労組が設立されたことを受け、元請けの現代重工業が該当の社内下請け会社を廃業させる方法で下請け労働者を解雇した行為を 「不当労働行為」 と認めて以来、元請け会社の使用者による下請け業者労組への不当労働行為が認められる事例が相次いでいます。
 しかし元請けの関係者たちが実際に刑事処罰の対象となったのは今回の事例が初めてです。
 労働基本権の保護を重視する新政府の発足と共に、検察が反労組犯罪を積極的に処罰する方向に変わっています。


 6年という時間の中で、組合員たちの身心は壊されました。今も18人の解雇者が復帰できていません。
 現場にいる300人余りの金属労組組合員は、第2労組員や会社の管理者と衝突し1300件もの告訴・告発にあい、懲戒委員会に呼び出されねばなりませんでした。
 16年3月17日には、ハン・グァンホ組合員は会社の懲戒を控えて自ら命を絶ちました。5月、3人の労働者は精神疾患が業務上の災害に当たるとする認定をうけました。
 組合員の精神状態が深刻化すると、国家人権委員会がユソン企業社の労働者全体を対象に精神健康実態を調査し、17年発表しました。 調査の結果、いじめを経験した人が3人のうち2人に当たる67.6%、潜在的ストレス群が93%、死に至る危険のある高危険群が2人でした。
 14年以降、組合員のうち鬱病など精神疾患で労災を認められた労働者だけで7人にものぼります。
 企業牙山工場の労働者キムさん (38) は、14年11月、ソウル業務上疾病判定委員会で 「職場閉鎖期間中のデモや、解雇などの不利益、監視カメラによるストレスなどが積み重なった混合型不安や憂鬱病障害が現れたのは、業務と関連性がある」 との認定判定を受けました。キムさんは 「解雇された後に仲裁があった時、会社側に私も知らない間に撮影された写真を見せられ驚いた。今はどこに行っても監視カメラがあるか常に確認する。 (誰が私を監視しているのか確かめる習慣が) 身についた」 と話します。


 ユソン企業社ではありません。
 15年5月に自ら命を絶ったポスコ光陽製鉄所の協力会社として酸化鉄を生産するイージーテックの組合員を組織する金属労組ポスコ社内下請け支会イージーテック分会長のヤン・ウグォンさん (当時50歳) は、監視カメラに対する不安を日記に書き残しました。

 労組を1人だけ脱退しなかったヤンさんは、減給、無期限の待機発令、2度の解雇、2度の停職となります。11年と12年の不当解雇には対抗して争い、いずれも勝ります。
 しかし会社は、14年5月23日に復職した彼に対し、製鉄所の外にある会社事務所の机の前で待機するよう命じます。ヤンさんは事務所で1人でいる時の行動を会社側に指摘され、監視カメラが設置されている事実を知ります。会社側は、ヤンさんが復職する直前の14年5月15日に社内に監視カメラ4台を設置していました。
 ヤン分会長はそこで1年余りを送ります。同僚らと対話もできず、一緒に食事もできませんでした。壁に向かい合う机に8時間ずっと座っていました。

 11年、ヤンさんは会社が同僚を通じて自分を監視していることを知ってから、うつ病に悩まされ始めた。遺族は 「監視カメラを通じ監視されている事実を知ってから症状がさらに悪化した」 と主張しました。故人は 「あのカメラが気になってしょうがない。すべての行動が監視されていると思うと気がおかしくなる。ハンマーで叩いて壊してしまいたい。いつまで一人で食事しなくてはならないんだ」 「何の業務も与えられず、こんなふうに机の前に座らせられたら本当におかしくなってしまう」 (14年9月2日) と監視カメラに対する不安を日記に書き残しています。ヤンさんの遺族は 「深刻な精神的ストレスにより精神障害状態に陥り、自殺をすることになった」 と主張しました。

 勤労福祉公団ソウル業務上疾病判定委員会は、ヤンさんの家族が同公団麗水支社に申請した労災保険の遺族給与等の請求に対し、16年5月27日、「解雇と復職が繰り返される過程、復職後に続いた使用者の法的対応及び懲戒処分が繰り返される過程で、業務と関連したうつ病が発生した。悪化したうつ病による心身微弱の状態で自殺した」 「故人の死亡は業務上の死亡と認められる」 と認定しました。判定書は会社側が遺族年金と葬儀費用を支払うよう判定しました。
 会社の監視カメラでうつ症が悪化した労働者の死が、業務上の死亡として認められたのは初めてでした。

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入管難民法改正は外国人労働者の人権、生活権の保障が先
2018/12/11(Tue)
 12月11日 (火)

 12月8日未明、「改正入管難民法」 が成立しました。法案は野党などからは中味が 「スカスカ」 などと批判されたように問題が多すぎます。
 このような国会審議が許されるなら、この後、与党は何を決定する時、タイトルだけで法案を提出し、質問には 「おって省令で決定します」 と答弁してすませて成立させることが許されることになります。省令は国会議論が必要ありません。隠したい項目ほど 「おって省令で決定します」 と答弁すれば済みます。
 国会が死にました。


 外国人労働者はすでに日本を忌避している現実があります。逆に韓国や台湾は期待されています。
 韓国の状況にいて、インターネットの 『WEBRONZA』 18年7月16日号の岩城あすか面市立多文化交流センター館長の記事 「韓国は外国人に門戸を開いた ①『労働政策』 『日本を手本にしていた隣国は、今やはるか先を走っている』」 を引用して紹介します。

「外国人の差別を禁止する法律が制定されていない国は、OECD諸国では長い間日本と韓国だけである。しかしながら、韓国は多文化共生施策に関連する法整備が日本と比べて格段に整っており、さまざまな法体系の中で外国人への差別的待遇が禁止されている。」

「まずは2003年7月に 『外国人労働者雇用などに関する法律』 が制定され、当時外国人の7割以上を占めていた非正規滞在者を合法化する大規模な措置がとられ、2004年8月には 『雇用許可制』 が開始された。これは国家間をまたぐ 『ハローワーク』 のようなシステムで、労働者を国内で確保できない韓国企業が政府 (雇用労働部) から雇用許可を取得し、合法的に外国人労働者を雇用するものだ (韓国人との均等待遇が保障され、労働関連法も適応される)。
 その後、移行期間を経て2007年に 『産業研修制度』 は完全に廃止された。」
「『雇用許可制』 は、“非専門就業ビザ (単純労働のビザ)” による 『一般雇用許可制』 と、中国や旧ソ連地域の韓国ルーツのある外国人を対象にした “訪問就業ビザ” による 『特例雇用許可制』 の2つがある。
 一般雇用許可制は、ベトナム、フィリピン、タイ、モンゴル、インドネシアなど16か国との間で二国間協定 (MOU) を締結し、製造・農畜産業・漁業・建設業・サービス業の5業種を対象に受け入れている (2017年3月末現在で26万5198人)。特例雇用許可制は、中国やCIS諸国など11カ国の韓国系外国人 (在外同胞) のためにつくられた制度で、サービス業など38業種を対象とし、事業場移動の制限がないなど、ゆるやかな条件で受け入れられている。」

「一般雇用許可制は、以下の4つの基本原則から成り立っている。
(1) 韓国人労働者との均等待遇 (差別禁止) の原則
  この制度の根拠となる 『外国人勤労者雇用等に関する法律』 は『使用者は外国人労働者で
 あることを理由に不当に差別的処遇をしてはならない』 (第22条) と定めている。これにより、
 韓国人と同様、労働基準法、労働組合法、最低賃金法、産業安全保護法等や社会保障制
 度 (国民年金、健康保険、雇用保険等) が全面的に適用される。 ((2) 以下略)」

 国家間をまたぐ 「ハローワーク」 が存在しますので、ブローカーが介在できません。そして労働条件等の問題が発生した時の解決は 「国家間」 においてです。


 さて、ひるがえって日本はどうでしょうか。
 この間、国会議論やマスコミ等で様々に取り上げられた現在の技能実習生に対する状況は、労働基準法の遵守、最低賃金の保障、寮など生活環境の完備、ハラスメンとの禁止、技術・資格習得の保障などの問題から見るとまさしく 「現代の奴隷制度」 です。

 12月7日の朝日新聞の 「外国人 保険料払い損?」 の見出し記事です。
「新たな在留資格 『特定技能』 で働く外国人について、政府は社会保険制度への加入を徹底する方針を掲げている。だが具体的に導入が検討されている 『特定技能1号』 の滞在期間は最長5年で、介護サービスや年金の十分な受給を想定した制度になっていない。」

「『相当程度の知識または経験を必要とする技能』 がある特定技能1号の滞在期間は最長5年で、技能実習から移行する場合でも最長10年。『熟練した技能』 があり、長期滞在が認められる特定技能2号の対象は2種類だが、受け入れを当面見送る方針だ。」
「公的年金も国籍を問わないのが原則で、年金受給には保険料を10年間納める必要がある。ただ、日本で10年間暮らす特定技能の外国人がどれくらいの人数になるのかは分からない。
 保険料を6カ月以上納め、受給資格を得る前に帰国した場合、『脱退一時金』 を請求できる。加入期間が3年以内なら支払った保険料の半分程度の一時金を受け取れるが、3年超~10年未満で一時金の額は増えない。」
「外国人が一時金を請求しない場合、日本と母国で 『社会保障協定』 を結んでいれば加入期間を通算できることがある。日本は18カ国と協定を発効しているが、うち特定技能の主な対象となるアジアの国はフィリピン、インド、韓国の3カ国。韓国との協定には加入期間を通算できる規定はない。」

 「日本は18カ国と協定を発効している」 の現状は、ヨーロッパなどが中心とで、アジアでは韓国、インド、フィリピンだけです。このうち韓国は 「保険料の二重負担防止」 のみです。中国は署名済未発効です。

 介護保険についてです
「観光目的以外で3カ月を超えて日本に滞在する40歳以上の外国人は、日本人と同様に介護保険を治める義務がある。65歳以上で介護の必要性が認定されれば、施設入所や訪問介護などのサービスを利用できる。40~64歳の間は、認知症やパーキンソン病など特定の疾病で介護が必要となった場合に利用できる。」
「介護の対象となる65歳を過ぎて日本で生活するケースは限られる可能性がある。
 入国管理局は 『就労が在留資格の要件になっている人が介護が必要で働けない状態になれば、原則として在留資格は取り消され、帰国することになる』 とする。40~64歳で特定疾病になった場合も含め、『長期的に介護サービスを利用することは難しい』 (厚生労働省の担当者) というのが実情だ。保険料は 『掛け捨て』 になる可能性がある。」

 政府は社会保険制度への加入を徹底するのなら、外国人労働者が就労する企業等に社会保険への加入を強制義務化して監視する必要があります。傷病休暇・補償制度を周知されず、労災保険に加入していないために、負傷しても放置されたり自己負担を強いられている労働者もたくさんいます。
 さらに、一方的解雇がはびこるなかにおいては雇用保険加入を強化して最低限の生活を保障し、路頭に迷って強制帰国せざるをえないような状況を回避させる必要があります。

 しかし、厚労省は、公的医療保険では、扶養家族による保険利用など、日本人よりも外国人の利用を実質的に制限する方向で制度改正の検討が進んでいるといいます。日本には労働力を提供に来ても生活保障はしないという姿勢です。
 外国人労働者も、日本の制度にもとづいて収めた保険料について同等に適用されるのは当然です。
 一方において 「同一労働同一賃金」 の議論が進むなかで、資格、身分によって差別されることは許されません。
 そして日本政府は、社会保障協定等を拡大する必要があります。


 法改正・採決の前に取り組む必要がある課題がたくさんありました。
 順序が逆転すると、まさしく労働者の権利は保証されないが義務だけが課せられ、社会保障制度の保護が小さくなり、労働者の “使い捨て” がまかり通ってしまいます。
 「ぼったくり」 の言葉がぴったりする制度です。

 現在の日本政府の政策は 「外国人は煮て食おうが焼いて食おうがかまわない」 のままです。

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外国人労働者への予断と偏見をさらに悪用
2018/12/07(Fri)
 12月7日 (金)

 12月7日の朝日新聞の 「外国人 保険料払い損?」 の見出し記事のなか小見出し 「受診時に写真付き身分証 外国人は在留カード 厚労省検討」 の記事です。
「厚生労働省は、他人の公的医療保険の保険証を使って受診する 『なりすまし問題』 の防止策として、医療機関を受診する患者に顔写真付き身分証明書の提示を求める方向で検討に入った。『なりすまし』 は外国人労働者の受け入れ拡大に関連して議論になっているが、国籍を問わない 『平等の原則』 に沿って、日本人にも提示を求める。
厚労省は早ければ来年度からの実施を目指す。実施に先駆けて、医療機関などに対し、患者に顔写真付き証明書の提示を求めるように依頼する方針だ。」

 根本匠厚生労働相は11月20日の記者会見で、外国人労働者の受け入れ拡大をめぐり、他人の公的医療保険の保険証を使って受診する 「なりすまし問題」 の防止策として、外国人の場合は受診時に写真付きの在留カードの提示を求めて本人と確認することも選択肢とする考えを示しました。
 しかし 「外国人については、出入国管理法 (入管法) で日本に中長期滞在する人に携帯が義務付けられている写真付きの在留カードを、本人確認に用いることを想定。」 という実態があります。
 外国人労働者は 「なりすまし」 の不正使用が多いという主張ですが、何を根拠にしているのかは示しません。そこにあるのは予断と偏見です。
 「なりすまし」 を防ぐというなら、まずはすべての外国人労働者のきちんとした受け入れ体制を整備する、就労する企業等に社会保険への加入を強制義務化してチェックする必要があります。これが急がなければならない防止策です。


 予断と偏見をあおる一方でのもう一つの目的です。、
「ただ、外国人に限った対応は、保険加入者は国籍を問わず、平等に医療サービスを受けられるという原則に抵触する恐れがある。
 このため日本人にも提示を求めるが、日本人が誰でも運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどの顔写真付き身分証明書を持っているわけではない。保険証に顔写真を付けることも、『保険証更新の度に写真を準備する利用者の負担と、保険者の事務作業を考慮すると、実現のハードルは高い』 (厚労省幹部)。」
 政府・厚労省は何かにかこつけてマイナンバーカードの波及を急いでいます。
 その手法として、日本人にも平等の理屈で世論誘導して強制します。火事場泥棒です。


 政府はマイナンバーカードをどのように機能させようとしているのでしょうか。
 17年8月22の 「活動報告」 の再録です。
「15年10月14日、マイナンバー制度のシステム設計の契約に絡んで厚労省の情報政策担当参事官室室長補佐が収賄容疑で逮捕されました。厚労省のシステム設計や開発に関わる調査業務2件の企画競争にシステム開発会社が受注できるように便宜をはかった見返りとして現金を受け取っていました。室長補佐は、収賄がいわれるときは社会保障担当参事官室に在籍しています。
開発内容は病院が持つ情報と連携させるシステム作りなどです。患者の病名、通院・入院の頻度の情報がマイカードに蓄積されるのです。システム設計が厚労省です。
 注意しなければならないのは、健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、高齢者の医療に関する法律による保険給付の支給、保険外の徴収に関する事務も含まれます。保険給付の支給は、人びとの健康状態の掌握が可能になります。

 これまで何度かかきましたが、マイナンバーとストレスチェックがリンクしたらどうなるでしょうか。漏れない情報などありません。
 15年12月から開始されたストレスチェック制度のチェック票には 『心身のストレス反応』 が導入されました。事業者によって労働者1人ひとりの精神状態に関する検査とデータ作成が合法的行えるようになりました。世界で初めてです。労働者は、第三者から 「心の管理」 が行われるのです。残念ながら法案作成から成立までの間に人権・人格、基本的人権、個人情報保護というような問題は議論に上がりませんでした。
 今後、『心身のストレス反応』 検査の合法化は前例となり、他のところでも第三者によって 『心の問題』 への干渉が悪用されていきかねません。
 世界的には人格権侵害、人権無視の行為であり得ないことです。」


 今年9月7日、厚労省から 「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」 がだされました。趣旨です。
「事業者が、労働安全衛生法に基づき実施する健康診断等の健康を確保するための措置 (「健康確保措置」) や任意に行う労働者の健康管理活動を通じて得た労働者の心身の状態に関する情報 (「心身の状態の情報」) については、そのほとんどが個人情報の保護に関する法律規定する 「要配慮個人情報」 に該当する機微な情報である。」

「そのため、事業場において、労働者が雇用管理において自身にとって不利益な取扱いを受けるという不安を抱くことなく、安心して産業医等による健康相談等を受けられるようにするとともに、事業者が必要な心身の状態の情報を収集して、労働者の健康確保措置を 十全に行えるようにするためには、関係法令に則った上で、心身の状態の情報が適切に取り扱われることが必要であることから、事業者が、当該事業場における心身の状態の情報の適正な取扱いのための規程 (「取扱規程」) を策定することによる当該取扱いの明確化が必要である。」

「その上で、取扱規程については、健康確保措置に必要な心身の状態の情報の範囲が労働者の業務内容等によって異なり、また、事業場の状況に応じて適切に運用されることが重要であることから、本指針に示す原則を踏まえて、事業場ごとに衛生委員会又は安全衛生委員会 (以下「衛生委員会等」という。) を活用して労使関与の下で、その内容を検討して定め、その運用を図る必要がある。」

 つまりは、これまで個人情報に該当する情報の管理がずさんで個人情報は守られていなかったということではないでしょうか。

 日本では戦時中に強兵を遂行するために厚生省を設立しました。国にとって使える人材かどうかを判断します。それ以降、健康管理は国任せと依存が続いています。
 労働安全衛生法に基づく健康診断等は事業者の義務になっています。結果等の資料管理は事業所がおこないます。では労働者にとって健康診断は権利なのでしょうか義務なのでしょうか。労働者は、無料で健康診断できるという機会を利用しようという捉え方もあります。しかし健康管理が事業所によって行われているという現実を無視することは危険です。

 「2 心身の状態の情報の取扱いに関する原則 (1) 心身の状態の情報を取り扱う目的」 です。
「事業者が心身の状態の情報を取り扱う目的は、労働者の健康確保措置の実施や事業者が負う民事上の安全配慮義務の履行であり、そのために必要な心身の状態の情報を適正に収集し、活用する必要がある。
 一方、労働者の個人情報を保護する観点から、現行制度においては、事業者が心身の状態の情報を取り扱えるのは、労働安全衛生法令及びその他の法令に基づく場合や本人が同意している場合のほか、労働者の生命、身体の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき等とされているので、上記の目的に即して、適正に取り扱われる必要がある。」

 「労働者の健康確保措置の実施や事業者が負う民事上の安全配慮義務の履行」というなら、まず長時間労働は早急に廃止されなければなりません。しかし放置しておきながら、月100時間を超えた労働者については産業医を受診させなければならないと義務付けています。
 不十分な対応を承認する 「指針」 が、訴えられた時に履行しているという事業所からの反論に利用される危険性もあります。産業医受診は、事業者が安全配慮義務違反で訴えられたときに、受診の段階では大丈夫だったと反論するための証拠づくりでしかありません。逆に労働者の 「自己責任」 が問われます。
 事業所、事業所を指導する厚労省は、「指針」 を出す前に改善しなければならないことがたくさんあります。


 さて、「指針」 のストレスチェックに関してです。
 「(9) 心身の状態の情報の取扱いの原則 (情報の性質による分類)」 のなかに 「ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された者に対する・・・」 が登場します。
 ストレスチェック制度がうたわれている法律も労働安全衛生法ですが、健康診断等とは決定的違いがあります。事業主にとって履行は双方とも義務です。しかし労働者にとって健康診断等は義務ですが、ストレスチェックは義務ではありません。個人情報保護の要素が大きいからです。
 しかし 「指針」 はそれを覆い隠しています。事業主、産業医、労働者をだましてまで労働者の 「心身のストレス反応」 を知りたいというあらわれです。
 そして、繰り返しますがストレスチェックの情報とマイナンバーがリンクしたらどうなるでしょうか。病歴が再就職のため履歴書を提出した企業に事前にもれている危険性があります。漏れない情報などありません。

 労働者のためにならない、職場改善にもつながらないストレスチェック制度は直ちに廃止されなければなりません。
 その早道が、労働者にとっては義務ではないのでみんなで拒否することです。


 「指針」
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パワハラ対策は予防・防止が大切
2018/11/27(Tue)
 11月27日 (火)

 11月22日の朝日新聞の 「耕論」 のテーマは「人を導く力とは」 で、全国過労死弁護団の川人博弁護士のインタビューが掲載されました。
「よく、企業のパワハラ研修に講師として招かれます。多くの企業が、『これはダメ、あれもダメ』というリストを並べようとし、メディアも、悪いケースを取り上げる傾向があります。
 そうではなく、上に立つ者がいかに若手を育てていくのかという、もっとポジティブな取り組みにするべきです。人を育てようとすれば、ハラスメントは起きようがありません。良きリーダーシップこそが、あしきパワハラをなくすのです。

 元ラグビー日本代表の故・平尾誠二さんと、ノーベル賞を受賞した山中伸弥さんの物語を書いた 『友情』 という本に、「人を叱る時の四つの心得」 が記されています。(1) プレーは叱っても人格は責めない (2) あとで必ずフォローする (3) 他人と比較しない (4) 長時間叱らない、とありました。
 私が担当する東京大学のゼミで、(お好み焼き店チェーンの) 千房の創業者である中井政嗣さんに話をしてもらったことがあります。元受刑者を積極的に採用し、上司が部下に接する際に大事なのは、『ねぎらい』 と 『励まし』 だと指摘されていました。これこそリーダーシップだと思います。

 この逆がパワハラで、相手のためではなく自分のストレス発散のために叱っています。誰でも加害者になる可能性があります。個人的資質も関係ありますが、環境や置かれた条件にも左右されます。社長から無理難題を課せられた部長や課長が、その部下に八つ当たりをするようになります。
 長時間労働で肉体的にも精神的にも疲れると、他者への配慮を欠くことにつながります。抑圧は下へ下へと移っていき、最終的に家庭内での虐待などにもつながっていると私は考えています。」

「強く叱責 (しっせき) するときほど、理由を伝えることが必要です。仕事で私の見通しが甘く誤算があった際、自分が悪いのにイライラを人に向けてしまうこともありました。私も修業不足ですね。他者への害悪をまき散らす前に、仕事を減らし、休みを取るようにしないといけません。」


 ある大学の運動部は部員が100人います。1人の選手は最高学年の4年生になった時、部員全員と話をすることを目標にし、なしとげたといいます。部を引っ張る立場に立つ最高学年として、全員を期待をこめて掌握することと風通しのいい部を作るためです。

 パワーハラスメントの議論をすると必ずのように 「どこまでが指導でどこからがパワハラか」 の議論になります。正直、本当につまらないです。この議論には、パワハラは職場で起きているという基本的な問題が排除されています。そしてお互いが人権・人格を持つ人間ということが忘れられています。
 まず、上司には部下を指導する権限・義務があります。指導しないで放置するのは、“無視” といういじめです。ましてや部下のなかに対応の濃淡があることは許されません。
 しかしよくあるトラブルの原因として業務の成果が、期待から大きく外れたことが発見された時に初めて “指導” します。そして人格否定の言辞を発します。
 この段階で、すでに問題が蓄積されています。
 指導・叱責された側は、これまでのこうしてきた、これで問題はなかった、知らなかったなど理由を述べます。そして他の社員と自分への対応の違いの不満を漏らし、パワハラだだと反論します。
 上司はこミュニケーション・「ほうれんそう」 が足りないからだと主張し、指導・叱責された側は孤立が自己判断を誘導していました。しかし、コミュニケーションは一方的なものではありません。
 日常的に人間関係が成立していないなかにあっては収集がつかなくなり、新たなトラブルが発生したりします。やはり職場そのものに問題があります。

 そして、トラブル解決のためにテクニックが持ち出されます。パワハラとはなにか、どこまでが指導にあたり、どこからがパワハラかの解釈です。
 人間関係に境界線などありません。許されるパワハラはありません。法律、判例に依拠するのは愚の骨頂です。
 「それでは指導ができない」 ということをよく聞きますが、そこにあるのはそこにあるのは指導する側の力量の限界です。

 指導には、相手の成長の期待が込められます。
 「どうしたんだ」 といいながら一緒に解決しようとする吸引力を感じさせ善処するのが指導です。問題を拡大させないで解決できます。逆に、「何してるんだ」 と突き放し、遠心力を感じさせたら排除でパワハラです。

 ある職場で、部下が上司に提案・提言をしたら相手にされませんでした。上司は部下の積極性を否定しました。
 部下が上司に言います。
「私は会社のことをおもって提案しているんですからね。検討もしないで排除するなら、もし、会社の業績が悪化しても労働者に責任を転嫁しないでくださいね。」
 上司は無視を止めて自分の意見をはなしました。そこから意見交換が生まれました。その後、会社に意見が言いやすくなり、“少しは” 職場の雰囲気が改善されといいます。
 労働者がいやすい職場は法律に縛られません。人がいるなかでルールが確立されるのであって、法律のなかに人が存在するのではありません。そのことを捉えようとしないと労働者の個性が特異に映ってしまい、職場全体が見えなくなり、再発や別の問題が発生する事態が続きます。


 パワハラは起きてからではなく、起こさない対応が大切です。
 11月22日、日本労働弁護団主催の 「職場のハラスメント防止法を作ろう!」 の集会が開催されました。
 そこで2つの防止に向けた取り組みが紹介されました。
 1つは、組合員3700人のヤナセ労働組合の 「ハラスメント防止に向けた取り組み」 です。
 パワーポイントによる報告でしたのでそれを紹介します。
1.ハラスメントの自認予見
 ・ハラスメントが当たり前になってはいけないと認識する
 ・ハラスメントがどのような場面で起こっているかを把握し、次の機会を予見・対策する。
 ・ハラスメントの対象者が自分でなくても組織としてたいおうするという感覚を持つ
 ・過去の案件であっても、事実認定ができるならば勇気をもって声をあげること
2.覚悟と勇気を持つ
 ・理想は、本人が勇気を持ってハラスメントの発信者に声を挙げる
 ・難しければ、職場全体で組織として対応する
 ・職場の一枚岩は必須 (証言者の確保等)
 ・職場の組合役員への相談が露呈した後に起こることを予見し、準備する
3.解決には時間がかかる可能性があることを認識する
 ・職場の組合員への意見聴取を経て、会社として対応する場合には、思いの外
  時間を要することを認識しておく
 ・ハラスメントの発信者への懲罰や人事異動が目的ではないことを認識する
 ・労働組合の力を鼓舞するような対応は逆効果になり得ると認識する
4.解決後は結果で示す
 ・ハラスメント発信者に対する会社の決定が下された場合、どのような結果であって
  も受け入れる心を持つこと
 ・会社判断後は業務に邁進し、結果で示すこと
5.ハラスメントが起こらない職場をつくる
 ・常に活気があり、上司と部下の関係が分け隔てのない職場にはハラスメントは
  起こりにくい
 ・仲間や上司との仕事外の対話の場づくりに専念する
 ・ハラスメントを受ける側にも原因があることを認識し、爪に自分を糺す心を身に
  付ける
 ・ハラスメントの対象者になり易い組合員へのケアーを怠らない

 2つ目は、自治労東京地本社会福祉法人生光会職員労働組合です。職場でパワハラが発生したことを契機に労働組合を結成し、法人と団体交渉を開始しました。
 団体交渉における労使協定です。

      「職場のあらゆるハラスメント行為を禁止する労使協定」
 職場における、あらゆるハラスメントは職員の個人としても尊厳を不当に傷つける社会的に許されないこういであるとともに、職員の能力の有効な発揮を妨げ、また法人にとっても職場秩序や業務の遂行を阻害し、利用者サービスの低下、法人の社会的評価に影響を与える。
 したがって、社会福祉法人生光会 (以下「法人」) と社会福祉法人生光会職員労働組合 (以下「組合」) は 「職場のあらゆるハラスメント行為を禁止する労使協定」 を締結する。
          記
1.法人と組合は、被害者の人格権を侵害し、周囲の労働者の就労環境を害する職場の
 あらゆるハラスメント行為を禁止し、快適な職場環境を実現する。
2.法人と組合は、「ハラスメント防止規定」 を別途定めこれを遵守する。
3.法人は、職員がハラスメントに関し相談 (苦情を含む )したこと又は事実関係の確認に
 協力したこと等を理由として、不利益な取り扱いを行なってはならない。
4、法人はハラスメントが発生したときは、被害者の保護、ハラスメント行為者に対する厳正
 な処分及び、ハラスメントにあたりうる行為について周知徹底を図るとともに、再発防止策
 (研修を含む) を講じる。
       2018年8月17日

                    社会福祉法人生光会
                     理事長
                    社会福祉法人生光会職員労働組合
                     委員長


        「ハラスメント防止規定」
 社会福祉法人生光会 (以下「法人」) と社会福祉法人生光会職員労働組合 (以下「組合」) は 「職場のあらゆるハラスメント行為を禁止する労使協定」 に則り、この「ハラスメント防止規定」を遵守する。
              記
1.役職員は以下のハラスメント行為を行ってはならない。
 ①暴行・障害等の身体に対する攻撃を行うこと。
 ②暴言や侮辱等精神的な攻撃を行うこと。
 ③仲間外しや無視等人間関係から切り離しを行うこと。
 ➃業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制すること。
 ➄業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること。
 ⑥私的なことに過度に見聞きし立ち入ること。
 ⑦各職員の業務の遂行に支障をきたす指示・命令を行うこと。
 ⑧ハラスメント行為に参加するよう強制すること。
2.法人と組合はハラスメントに関する職員からの相談 (苦情を含) に対応する 「相談窓口」
 及び 「ハラスメント対策委員会」 を設置する。「相談窓口」 と 「ハラスメント対策委員会」 構成は
 同一メンバーとし、法人理事会から理事2名、組合2名とする。
3.ハラスメントを受けていると思う者、又はその発生のおそれがあると思う者は、相談窓口に
 書面または口頭で申し出ることができる。
4.相談窓口(対策委員会)はハラスメントに対する相談に対し、事実関係を迅速かつ正確
 に確認し、適切に対応する。
5.ハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、「対策委員会」 は行為者に対す
 る指導等の適切な措置を講ずる。
6.上記1のハラスメント行為は実情に応じて適宜追加更新する。
       2018年8月17日

                         社会福祉法人生光会
                          理事長
                         社会福祉法人生光会職員労働組合
                          委員長


 パワハラへの対応は発生してからの対応ではなく、予防・防止が大切です。
 そのためには職場の多くの労働者が参加と監視が不可欠です。

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パワーハラスメント及びセクシュアルハラスメントの防止対策等の労政審
2018/11/21(Wed)
 11月21日 (水)

 11月19日、第11回労働政策審議会雇用環境・均等分科会が開催されました。分科会では第6回から、パワーハラスメント及びセクシュアルハラスメントの 防止対策等についての議論が続いています。
 第11回には、厚労省から 「女性の活躍の推進及びパワーハラスメント防止対策等の在り方について (取りまとめに向けた方向性)」 が提案され、これを受けての議論がおこなわれました。
 次回には取りまとめ案が提案されます。

 (取りまとめに向けた方向性) の 「パワーハラスメント防止対策の強化」 についてです。
 総論として、
○ パワーハラスメントは相手の尊厳や人格を傷つける許されない行為であり、あってはな
 らないもの。企業にとっても経営上の損失に繋がる。都道府県労働局における職場の 「い
 じめ・嫌がらせ」 の相談件数や、嫌がらせ、いじめ又は暴行を 受けたことによる精神障害
 の労災認定件数が増加傾向となっている。職場のパワーハラスメント防止は喫緊の課題で
 あり、現在、法的規制がない中で、対策を抜本的に強化することが社会的に求められている。
○ 職場のパワーハラスメントの防止のためには、企業の現場において確実に予防・解決に
 向けた措置を講じることが必要。その際、現場の労使が対応しやすくなるよう、職場のパワ
 ーハラスメントの定義や考え方、企業が講ずべき措置の具体的内容を明確化していくことが
 必要。
○ 中小企業については、パワーハラスメントの防止に関するノウハウや専門知識が乏しい
 こと等から、その負担軽減に十分配慮し、支援を強化することが必要。
○ なお、法律でパワーハラスメントを禁止することについては、民法等他の法令との関係の
 整理や、違法となる行為の要件の明確化等の課題があることから、今回の見直しにおける状
 況の変化を踏まえつつ、その必要性も含めて中長期的に検討することが必要ではないか。

 12年3月15日に発表された 「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」 (「提言」) は予防・防止がセットでした。具体的には、いじめは構造的におきるということを前提に、はじめに予防のための取り組みとして、①企業トップからのメッセージ発信、②社内ルールの作成、③労働者へのアンケートで実態調査、➃研修、➄会社の方針の周知・啓蒙、続けて解決するためとして、⑥相談窓口の設置、⑦再発防止の取り組み、そして最後に⑧メッセージがあります。取り組みは順序が大切です。
 今回の取りまとめにも 「職場のパワーハラスメントの防止のためには、企業の現場において確実に予防・解決に向けた措置を講じることが必要」 とありますが、予防のための議論はほとんど行われていません。職場で発生したトラブルをパワハラとして判断するかどうか、判断した後の対応のハウツーが中心になっています。
 パワハラが起きにくい職場をどう作るか、起きてしまったとき職場の問題としてどう取り組むかという発想が消し去られています。

 労働現場、職場で起きている問題、つまり労働問題を一般的問題に解消してとらえています。トラブルの発端は加害者も被害者も気づかないものだったりします、発覚したときには困難な状況に陥ったりします。
 そうならないためにも予防が大切で、自主解決の方法を確立しておく必要があります。
 職場に最初から法律を持ち込むことは、集団的労使関係を否定し、労働者を個々に管理支配するということになっていきます。

 これは今年3月30日に公表された、「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」 (報告書) の影響を強く反映しています。
 検討会でしばしば出た発言は、「『提言』 を大きくいじると定着が進んでいる中で混乱が生じるのでそれはしないで・・」。本音は 「提言」 を認めないという “巻き返し” です。
 「報告書」 は出された意見が列記されています。
 そこでは 「必ずしもパワーハラスメントとは言えない事案もある」 と、相違はあるが使用者側・労働者側委員も発言しています。発生の要因については、行為者及び被害者となる労働者個人の問題によるものと、職場環境の問題によるものがあるとの意見が示されました。
 「提言」 の職場のパワーハラスメントは構造的に発生するという捉え方が消え、労働者の 「自己責任」 が大きく登場してきました。そうすると企業の対応が免罪されます。労働者が声をあげにくくなります。
 「提言」 の定義は 「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」 です。
 検討会では 「提言」 の 「定義」 を “整理” するという口実で分解解釈がおこなわれ、すべての要素を満たさまければならないものとなりました。

 それが (とりまとめ) でも踏襲され 【取組の内容】 の 「(1) 職場におけるパワーハラスメントの定義」 の
① 職場におけるパワーハラスメントの定義について、「職場のパワーハラスメ ント防止対
 策についての検討会」 報告書の概念を踏まえて、以下の3つの要素 を満たすものとして
 はどうか。
 (1) 優越的な関係に基づく
 (2) 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
 (3) 就業環境を害すること (身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)
です。


 「 (2) 職場のパワーハラスメントの防止対策」 です。
 総論のなかに 「法律でパワーハラスメントを禁止することについては、民法等他の法令との関係の整理や、違法となる行為の要件の明確化等の課題があることから、今回の見直しにおける状況の変化を踏まえつつ、その必要性も含めて中長期的に検討することが必要ではないか」 とあります。禁止の法制化は時期尚早ということです。
 その上で、
① 職場のパワーハラスメントを防止するため、事業主に対して職場のパワーハラスメントを
 防止するための雇用管理上の措置を講じることを法律で義務付けるべきではないか。
② 事業主に対して措置を義務付けるに当たっては、男女雇用機会均等法に基づくセクシュ
 アルハラスメント防止の指針の内容を参考としつつ、職場のパワーハラスメントの定義や事業
 主が講ずべき措置の具体的内容等を示す指針を策定すべきではないか。
③ 男女雇用機会均等法に基づくセクシュアルハラスメント防止対策と同様に、職場のパワー
 ハラスメントに関する紛争解決のための調停制度や、助言や指導等の履行確保のための措
 置について、併せて法律で規定すべきではないか。
④ その際、中小企業はパワーハラスメントの防止に関するノウハウや専門知識が乏しいこと
 等を踏まえ、例えば、コンサルティングの実施、相談窓口の設置、セミナーの開催、調停制度
 の周知等の支援を積極的に行うこととしてはどうか。
とあります。

 検討会の 「報告書」 に記載された ③事業主に対する措置義務は取り上げられています。一方、④事業主による一定の対応措置をガイドラインで明示、⑤社会機運の醸成が消えています。
 そして、 【取組の内容】 の (2) 職場のパワーハラスメントの防止対策 に
「② 事業主に対して措置を義務付けるに当たっては、男女雇用機会均等法に基づくセクシュアルハラスメント防止の指針の内容を参考としつつ、職場のパワー ハラスメントの定義や事業主が講ずべき措置の具体的内容等を示す指針を策定すべきではないか。」
と記載されています。
 事業主に対する措置義務とは、セクシュアルハラスメント対策やマタニティーハラスメント対策の例を参考に、事業主に対し、職場のパワーハラスメント防止等のための雇用管理上の措置を義務付け、違反があった場合の行政機関による指導等について法律に規定することで、個々の職場において、職場のパワーハラスメントが生じない、労働者が就業しやすい職場環境の整備を図る対応です。

 措置義務は定着して運用され、効果を上げています。しかしまだ不十分です。
 審議会ではセクシャルハラスメントを禁止する法律がない、禁止する法律制定が必要であるという意見が何度も出されました。 パワーハラスメント、セクシャルハラスメントにおいてもはっきりと禁止する法律の制定が必要です。


 (3) 指針において示すべき事項 の ⅲ) 事業主が講ずることが望ましい取組として
「・ 顧客や取引先等からの著しい迷惑行為に関する取組」
とあります。
 「提言」 では 「同じ職場で働く者に対して」 と制限されて排除され、検討会では集約として 「第三者からの暴力については別の検討会をたちあげての議論がのぞましい」 の意見が行われましたが、今回は排除ではなく議論の対象とされています。
 「提言」 を作成した 「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」 では初回に委員から 「第三者からの暴力」 の対策の必要性が訴えられましたがその後は取り上げられませんでした。
 しかし今回は (取りまとめに向けた方向性) の段階ですが課題としてあげられています。


 検討会は、労働者側委員の不甲斐なさが明らかで、使用者側が委員からの 「提言」 を認めないという “巻き返し” がまかりとおってしまいました。今回は、多少はその “巻き返し” が行われているように思われました。しかし一度 「報告書」 に記載された内容を変更させるのは簡単ではありません。

 法制化に向けてさらなる監視と世論喚起が必要です。

 「女性の活躍の推進及びパワーハラスメント防止対策等の在り方について (取りまとめに向けた方向性)」
 「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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