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「核の非人道性」 を声高に
2018/02/09(Fri)
 2月9日 (金)

 2月2日、トランプ米政権の国防省は、オバマ前政権の方針を転換する新たな核政策、戦略、能力、戦力態勢を定めた報告書 「核戦略体制の見直し」 (NPR Nuclear Posture Review) を公表しました。新たな措置として爆発力を低下させた小型核を潜水艦発射弾道ミサイル (SLBM) に導入すると提言しています。
 2010年のNPRで 「核なき世界」 を目指し、核兵器の数と役割の縮小を掲げたオバマ前政権の理想主義的な核軍縮方針から決別し、「安全で確実、効果的な核抑止力」 を確保することに重きを置くとしています。
 NPRの公表は1994年、2002年、2010年に次いで4回目、です。
 オバマは前年の09年4月5日のプラハ演説で 「核兵器のない世界の平和と安全を追及する」 と語りました。そして2010年に公表されたNPRは、究極的な核廃絶という理想を高らかに表明しました。

 日本政府は3日、このトランプの転換を 「高く評価する」 と歓迎する河野太郎外相談話を発表しました。新戦略について 「米国による抑止力の実効性の確保と我が国を含む同盟国に対する拡大抑止へのコミットメントを明確にしている」 と評価します。
 日本は、専守防衛をうたい、非核三原則を堅持する方針を明確にしています。だから北朝鮮の核への抑止を米国の核兵器に依存することが必要と説明します。

 河野外相に対し、6日の衆院予算委員会で菅直人元首相が質問に立ちました。
 1962年のキューバ危機のとき 「危機の後に米ソは、先制攻撃をしても双方だめになるという 『相互核破壊』 の考え方に落ち着いた。(NPRは) 先制攻撃を認める方向に進み、核戦争の可能性が拡大するのではないか」 と追及しました。
 河野外相は、「前回の2010年のNPRでも米国は先制不使用をうたっておらず、米国の方針が転換したと考えていない」 と答弁しました。


 キューバ危機についてです。
「1962年と言えば、ソ連が同じ共産主義独裁のキューバに核ミサイルを秘密裏に搬入し、これを探知した米国のジョン・F・ケネディ政権がキューバへの空爆と軍事進攻を検討、核戦争をも覚悟したキューバ危機が10月に勃発している。ケネディは最終的に、『キューバ不可侵』 の確約に加え、いずれ退役させるつもりだったトルコ配備のミサイルの撤去を決めてソ連の要望に応えることで、ソ連にキューバから核ミサイルを引き揚げさせるディール (取引) に成功、『核戦争の手前まで行った』 とよく評された危機を収束させた。
 だが、平和裏の解決を見たキューバ危機は、西ドイツなど米国の同盟国には逆に、そこはかとない疑念と懸念を抱かせることになったのではないか。なぜなら、米国本土が核攻撃の危険にさらされる究極の事態となれば、米国は同盟国の意など介さずに、さっさとソ連と手を握ってディールをまとめてしまう恐れを想起させたからだ。NATOメンバー国のトルコからミサイル撤去が公表されなかったのも、同盟国の動揺回避を狙ったケネディ政権の対外広報戦略の一環だった。
 いずれにせよ、『万が一の場合、米国は真に頼りにできるのか』 『米国の 『核』 頼みで本当に欧州の安全は保てるのか』 『やはり自前の核兵器が必要ではないのか』 との疑念がキューバ危機のあった1962年頃から、西ドイツ政府内で渦巻き始める。」 (太田昌克著 『偽装の被爆国 核を捨てられない日本』 岩波書店)
 「大国がいかなるコストを払ってでも同盟国を守ると信じることには、計算できないリスクが伴う」 という意見が西ドイツ政府内にくすぶり続けていたといいます。
 米軍基地が米国外に散在するのは、米国本土が襲撃されることを回避するためでもあります。
 ベトナム戦争ピークの1967年、沖縄に配備・貯蔵されていた核兵器の総数は1300発に上りました。仮に今、北朝鮮がアメリカを攻撃しようとするときに最初のターゲットは沖縄基地です。

 河野外相は評価の理由について、「同盟国に対して核抑止を明確にコミット (約束) している」 と改めて強調。「オバマ政権も友好国に対して核抑止のコミットをしてきた」 と指摘されると、「ご質問の意図が全く分からない」 と声を荒らげる一幕もありました。実際はどの時点でのオバマ評価かということもあります。

 オバマは、広島訪問後、NPRの見直し作業をおこない、そこでは 「核の先制攻撃」 から、相手が使用する前には使用しないという 「核の先制不使用」 を含ませていたことが明らかになっています。
 なぜ公表されなかったのでしょうか。「核の傘」 にいる同盟国から反発を受けることを懸念したからです。例えば、日本は独自の核開発をいいだす危険性がでてきます。原発問題とも絡みますが不可能ではありません。
 
 この “緊張関係” は日米の間にはずっと存在します。核所有国が増えることはアメリカにとっては望むことではありません。
 そのため、アメリカは、日本と 「密約」 を結んでいます。ドイツもそうです。
「日本の場合、1960年の日米安全保障条約改定に際し、首相の岸信介、外相の藤山愛一郎、駐日米大使のダグラス・マッカーサー二世が中心となって、米軍核搭載艦船の日本寄港を米日間の 『事前協議』 対象から除外し、米側に核寄港のフリーハンドを与える 『核持ち込み密約 (核密約)』 を交わしていた。
 また、1972年に実現した 『核抜き本土並み』 の沖縄返還に当たり、首相の佐藤栄作は69年に米大統領のリチャード・ニクソンと密約議事録を作成し、有事における沖縄への核再配備を認める 『沖縄核密約』 で合意している。」 ( 『偽装の被爆国 核を捨てられない日本』 )

 1970年、核拡散防止条約 (NPT) が締結されました。条約作りを主導したのはアメリカ、ソ連などの核所有国で、アメリカ、ソ連、イギリス、フランス、中国の5大国以外の核保有を禁止します。逆にいうと5大国が独占します。ターゲットは日本とドイツでした。
 日本は1970年にNPTに署名しながら5年間批准、加盟の手続きをしませんでした。理由は、「日本の核武装のオプションが閉ざされる」 からです。アメリカは 「核抑止力」 の 「核の傘」 の実行性を確認させて批准を強制しました。

 これが 「非核三原則」 を堅持しているという日本の実情です。
 アメリカの核は有事の時に行使し、「日本を守る」 だけでなく、日本の核武装に対する 「抑止力」 の役割も持っていたといえます。
 そしてアメリカ本土の被害を小さくするための基地の散在は、日本にとっては 「本土」 への被害を免れるための沖縄基地ではないでしょうか。歴史は繰り返されます。


 昨年12月、ノーベル平和賞は、核兵器を法的に禁止する 「核兵器禁止条約」 を実現するために設立された 「核兵器廃絶国際キャンペーン (ICAN)」 が受賞し、10日にはノルウェー・オスロで授賞式がありました。そこには広島、長崎の被爆者も出席しました。
 2013年から14年にかけて、ノルウエ―のオセロ、メキシコのナヤリッド、オーストリアのウィーンで開かれた核の非人道的結末を論じる国際会議を通じ徐々に核兵器の開発や製造、実験、保有、使用、または使用の威嚇を全面的に禁じるという共通認識が醸成されていきました。
 その成果は16年秋の国連総会決議に反映され、法的禁止の具体的措置をめぐる交渉会議開催へと結びつき、17年3月、国連で 「核兵器禁止条約」 の成立・締結を目指した外交交渉が開始されました。
 ICANは101カ国・468の非政府組織 (NGO) がパートナー組織になっています。各国の政府に任せておくだけではなかなか解決しない世界共通の重要課題に対して、市民社会に根付いたNGOが積極的な役割を果たすことで現実を動かし、未来を変えていこうという活動です。被爆者の証言を現実の外交と結びつけるなどの活動を続け、昨年7月に国連での採択にさいしては主導的役割を果たしたと評価されました。加盟団体のNGOは自国政府への働きかけを行いました。その結果、市民の力が決して小さいものではなく、政府を動かすことができることも示しました。

 核兵器禁止条約の前文には 「ヒバクシャの苦しみに留意する」 と盛り込まれ、核兵器は 「いかなる場合の使用も違法」 と 「核の非人道性」 が明記されています。核兵器で核を封じ込めるのではなく、核を禁止することが必要だという主張です。

 NPTと核兵器禁止条約は矛盾するものです。核所有国にとって核兵器禁止条約はあいいれないものです。
 では、核兵器禁止条約への被爆国である日本の立ち位置はどうだったのでしょうか。
 参加しませんでした。理由は、①核保有国が参加する見込みがなく核廃絶につながりそうにない、➁北朝鮮の核ミサイル開発で悪化する安全保障環境を考えると 「核の傘」 は不可欠である、③条約に反対する核保有国と推進派の非核保有国の分断が一層深まる、と説明します。
 日本政府は毎年、国連に核兵器廃絶決議案を提出していますが本気ではありません。昨年は見透かされて賛成国が減っています。


 広島、長崎、ビキニ珊礁の被害を受け、福島原発事故の経験を持つ日本こそ、原爆、核兵器、原発の恐怖、危険性をごまかすことなく、もっと声高に語り続ける責務を負っているはずです。

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どうするストレスチェック制度
2018/02/05(Mon)
 2月5日 (火)

 15年12月1日にストレスチェック制度の実施が開始されてから2年が経過しました。
 様々なところから様々な意見がでています。

 従業員が50人以上の企業は年1回の実施が義務づけられましたが実施状況はどうでしょうか。
 企業は実施結果を所轄の労働基準監督署に報告する必要があります。結果は、17年6月末時点で、実施義務対象事業場のうち82.9%が実施していました。その事業場でストレスチェックを受けた労働者は78.0%でした。さらにそのうち医師による面接指導を受けた労働者は0.6%でした。
 ストレスチェックを実施した事業場のうち集団分析を実施した事業場は78.3%でした。

 17年12月21日の毎日新聞は、多くの企業で高ストレスと評価されても医師面談に手を挙げる人が少ないことが課題になっていると報告しています。理由は、高ストレス者が医師面接を受ける際に会社に申し出なければならないからです。義務化以前から取り組んでいる企業では逆に 「よほど会社に物申したい人以外、なかなか手を挙げなくなった」 といいます。労働者は 「メンタルヘルス不調者のあぶり出し」 に利用され不利益な対応をされるのではないかという恐れから相談の心理的ハードルが高くなったといいます。体調不良者は相談するのをやめたり、社外の相談できるところにむかいます。
 以前は、保健師ら産業保健スタッフがまず面談し、深刻な状態の場合は本人の同意を得て会社と連携して対処していました。

 ストレスチェック制度の導入・実施に至るまでにはかなりの紆余曲折がありました。(2015年12月1日の 「活動報告」)
 法案の議論が進むうちに 「メンタルヘルス不調の未然防止」 が 「メンタルヘルス不調者の未然防止」 に変えられました。使用されるストレスチェックの 「票」 は 「仕事のストレス要因」 だけでなく 「心身のストレス反応」 「周囲のサポート」 に関する項目も一緒になっている57項目か、短縮版の23項目のアンケートが盛り込まれていることが必須になりました。

 「メンタルヘルス不調の未然防止」 とは 「予防医学」 の一次予防として職場のストレス要因をあぶり出し環境改善を行うことです。しかし改正法の運用に際しては 「仕事のストレス要因」 の分析は努力義務になりました。
 代わって 「メンタルヘルス不調者の未然防止」 のために二次予防 「早期発見」 を 「心身のストレス反応」 でおこなうことが目的になりました。事業場によって労働者1人ひとりの精神状態に関する検査とデータ作成が (世界で初めて) 合法的に行える、労働者は第三者から 「心の管理」 が行われることになりました。しかし 「あぶり出し」 を含めて結果への対処は自己責任です。
 
 制度をわかりやすくするためにイギリスの例を紹介します。
 イギリスのストレスチェックは 「職場のストレスの多くの原因は、人事関係の問題である。職場のいじめ、長時間労働の慣習、人員整理とそれによって残された人々にかかる作業負荷、そして、女性差別や民族差別のようなことは、全て人事が対処すべき問題である」 ととらえ、企業が職場のストレスレベルを測定し、その原因を特定し、問題に取り組むスタッフに役立てることを目的としています。
 日本のように個人の 「心身のストレス反応」 をチェックして個人対応に導くものではありません。わかりやすくいえば 「仕事のストレス要因」 「周囲のサポート」 の問題から 「心身のストレス反応」 が起きるという捉え方です。
 イギリスと日本とは、職場全体の問題か、個人的問題かと捉え方が大きく違います。

 その典型が厚労省のメンタルヘルス対策、長時間労働対策です。
 「過重労働による健康障害防止のための総合対策」 「労働時間等見直しガイドライン」 などが策定されています。しかし通達や指針などで、禁止の強制力を持つ法律ではありません。使用者にとっては努力義務で遵守しなくても違法にはなりません。労働時間についてはあらためていうまでもなく労基法がザル法に改訂されています。
 「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」 です。
 「事業者は、労働安全衛生法等に基づき、労働者の時間外・休日労働 時間に応じた面接指導等を次のとおり実施するものとする。
 ① 時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える労働者であって、申出を行った
  ものについては、医師による面接指導を確実に実施するものとする。
 ② 時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超える労働者であって、申出を行ったも
  の (①に該当する労働者を除く。) については、 面接指導等を実施するよう努めるもの
  とする。
 ③ 時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える労働者 (① に該当する労働者
  を除く。) 又は時間外・休日労働時間が2ないし6月の平均で1月当たり80時間を超え
  る労働者については、医師による面接指導を実施するよう努めるものとする。」
 長時間労働が前提にあり、100時間労働は違法ではないが 「100時間を超えたら体調を崩すものが出るかもしれない」 との判断から 「医師による面接指導」 を取り上げています。

 使用者が 「100時間を超えた者は医師による面接指導」 を実行したら 「使用者の安全配慮義務」 は履行したことになり、訴訟などを提起されても反論し、労働者の自己責任と主張できることになります。
 ストレスチェック制度も同じです。長時間労働などの 「仕事のストレス要因」 を解決しようとしないから 「心身のストレス反応」 のチェックが必要なのです。


 1月15日の日経BizGateに 「ストレスチェックで分かるブラック企業」 が載りました。
 筆者は医師で株式会社健康企業代表の亀田高志さんです。
「……ストレスチェックを拒否した人は実に2割を超えていたのです。この2割以上の拒否した人の中にこそ、不調の恐れのある人が含まれているかもしれないのですが。……
 ストレスチェックは……働く人が職場ストレスや自覚症状に気付いて、うまく対処することで、不調にならないよう 『未然に防止するため』 という謳い文句で導入されました。
 ストレスチェックは定期健診と違って拒否しても構わないのです。既にうつ病で治療中の人があえて受ける必要は無いでしょうし、それを会社には黙っていたい場合もあるでしょう。
 メンタルヘルスにかかわる深刻な悩みを職場で尋ねてほしくない人もいるからです。拒否したい理由は他にもあります。例えば、ストレスに関する質問に正直に回答しても大丈夫だろうかと心配する人も少なくありません。リストラやコスト削減の影響で、人員がギリギリの職場で働かされていると感じている人は、職場でストレスの状況を尋ねられること自体に違和感を覚えるかもしれません。
 また、雇用や身分が保障されていないと感じる人は、チェック後の安全が確保されていないと不安を感じて、回答しない可能性があります。そのため、受検を拒む従業員に、就業規則で無理やりストレスチェックの受検を強制したり、懲戒してはならないことが法律で定められています。」

「しかし、現実にはストレスチェック制度の義務化によって、かえって 『会社のブラック度』 が分かるようになってしまいました。ブラックな面をオブラートに包んで触れないようにしていたのに、それが 『はげ落ちた感じ』 と言えるかもしれません。
 日本では 『従業員のことを大切に』 と謳う会社は少なくありません。株主だけを最優先するのではなく、従業員や顧客、地域社会を重視するのが日本的な経営だという見方もあるでしょう。しかし、法的義務であるストレスチェックを実施せず、あるいはおざなりにやりっ放しにするなど、従業員のことを粗末に扱うことが判明した会社もかなりの数に上っています。このほか、チェックを実施しているけれど、それが形ばかりにとどまる会社も少なくありません。初年度では平成28年11月末か翌年3月末までが実施期限だったのに、労基署の指導があってはじめて、重い腰を上げた会社もかなりあります。」

「職場の健康問題を話し合う衛生委員会を開催し、そこでストレスチェックに関する懸念や意見を従業員側から集めるように会社は求められています。そして、従業員に不利益な取り扱いをしないと説明しなければならないのです。これらを怠っている会社もあります。
 実施後には丁寧に評価や判定を行う必要がありますが、受検した人の10%前後と想定される高ストレス者の割合が、それをはるかに超えて高い会社もあります。
 反対に高ストレス者の割合が限りなく0%に近いところもあります。この場合、受検した人たちが正直に書いた結果であればよいのですが、パワハラが横行するような職場で回答することで危険が及ぶと考え、うそを書いていることもあり得ます。
 このようなストレスチェック制度の不適切な運営やストレス対策として好ましくない状況は、会社のブラックな面のあらわれなのです。」
「ストレスチェックを実施する一方で、受検する人のプライバシーを守るというお題目が加わり、上司にとって部下の回答結果はブラックボックスとなってしまいました。悪気はなくとも部下がどのような回答をしているのかを気にしている管理職は相当な数に上ります。」


 そして筆者は 「職業性ストレス簡易調査票の57項目の質問は、ほとんどが上司と対話ができれば事足りる問題ばかりです。仕事や職場の状況について困っているなら、素直に上司に相談できると簡単にストレスの原因が解消される可能性があります。それによって職場の人間関係が好転することもあるでしょう。その結果、仕事の満足度も高くなるかもしれません。」 といいます。
 つまりは、日常的コミュニケーションがしっかりとれていればあらためてストレスチェックを実施しなくても済むことです。残念ながら職場が殺伐としているから、上司が部下との関係性ができていないから、あらためて制度として義務付けて実施することになっています。
「このようにストレス解消のヒントは、ストレスチェック制度の中ではなく、その多くは日ごろからの上司と部下との直接の対話の中にあるのです。」


 しかし、これまでも繰り返してきましたが、実際のストレスチェック制度には他の目的があるのかもしれません。(16年11月18日の 「活動報告」 参照)
 現場の労働者は、ストレスチェック制度が実施されても、検査を受けることは義務ではありません。法律によって拒否できます。
 やむなく検査をうけざるを得ないとしても 「心身のストレス反応」 は拒否しましょう。
 チェック票にマイナンバーを記載することに反対しましょう。個人情報が流出して知らないところで管理される危険性があります。
 一次予防が目的なら、チェック票は無記名での提出も有効です。無記名でも 「検査結果の集団ごとの分析」 はできます。
 労働者と労働組合は、実施されても、体調不良者のリストアップ、排除・退職勧奨等に繋がらないよう監視をして行く必要があります。

   「活動報告」16.11.18
   「活動報告」15.12.1
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過労死は長時間労働だけの問題ではない
2018/02/02(Fri)
 2月2日(金)

 地方のあるサークル団体から定期的に交流誌が届きます。
 最新号の扉を開くと詩が載っていました。

   失業者の自殺
           児玉 花外

 鬼こそ堪えめ、人なるを
 長き苦しき 労働 (はたらき) に
 身は青草の 細くのみ
 一たび肺を 病みしより
 血を喀 (は) き遂 (お) はる 杜鵑 (ほととぎす)
 彼方此方と さまよいて
 今はすみかも あら悲し

 両国橋の 欄干に
 流るゝ水を ながめしか
 夜の鷗(かもめ)の 侶となり
 哀れや水に 沈みけり
 越中島の 蘆 (あし) の邊に
 死骸は浮きぬ、そのあした
 嗟呼 (ああ) 惨 (いた) はしや 聞くさえに
 これぞ働く 人の果。

 1903年に刊行された 『社会主義詩集』 に収められていました。
 両国橋は、隅田川に架かる橋です。越中島は下流にある地名です。
 亡くなった失業者の性別はわかりません。しかし 「肺を 病みしより」 から想像すると当時近くにあった紡績工場の女工でしょうか。粉塵のなかでの長時間労働で結核を発病する労働者はたくさんいました。発病し、働けなくなったら “自己責任” です。

 作者の児玉花外は、明治大学の校歌 「白雲なびく 駿河台・・・」 の作者でもあります。
 校歌に関する明治大学のホームページです。
「大正9年当時隅田川で行われた大学の漕艇レースは現在にみる六大学野球に似て全学熱狂的な対校試合であった。校歌作成の動機はこのスライデング式による第1回の対校競漕に歌う歌を必要としたことである。校歌作成の動機は学生大会において可決され、その歌をもって校歌とする約束を大学側からもとりつけた。武田孟 (元総長) ・牛尾哲造両氏が使者となり社会主義詩人であった児玉花外、そして欧州帰りの新進作曲家山田耕筰を説き伏せて出来たのが白雲なびくの校歌である。歌詩は現在と若干異なっているが、しかし、校歌は時代と共に学生と共に歌いやすい様に変わっていったのであろう。」

 2つとも隅田川にまつわります。時代はずれますが対照的な陰と陽です。


 この詩に接した時、2014年11月14日に厚労省主催で開催された 「過労死等防止対策推進シンポジウム」 での過労死弁護団全国連絡会議幹事長の川人博弁護士の講演を思い出しました。
 1926年、長野県諏訪湖畔に 「母の家」 が建てられました。紡績工場の舎監から逃げ出して諏訪湖に入水する女工があとを絶ちませんでした。いまも諏訪湖畔には遺体が埋められた跡に乗せたと思われる石が見かけられるそうです。
 このような状況にあって、女性社会事業家は自殺防止のために湖畔や線路わきに立札をたてながら巡回し、生き悩む工女たちを絶望の淵から救う活動をつづけました。
『ちょっとお待ち、思案に余らば母の家』
 立札にはこう書かれていました。
 「湖水に飛び込む工女の亡骸で諏訪湖が浅くなった」 と言われました。


 1927年3月、諏訪湖の近くの岡谷町にある山一林組製糸所で、日本労働総同盟加盟の全日本製糸労働組合が誕生しました。(15年8月25日の 「活動報告」 参照)
 組合結成後、女工たちは歌をうたいながら街をデモ行進します。

  朝に星を いただきて
  夕になおも 星迎う
  わが産業に つくす身に
  報われしもの 何なるぞ

  搾取のもとに 姉は逝き
  地下にて呪う 声をきく
  いたわし父母は 貧になく
  この不合理は 何なるぞ

  かくまでわれら 働けど
  製糸はなおも 虐げぬ
  悲しみ多き 乙女子や
  されどわれらに 正義あり

 ここにも長時間労働と姉妹が殺されたことが語られています。


 小島恒久著 『ドキュメント働く女性 百年のあゆみ』 (河出書房新社) からの引用です。
「『工場づとめは監獄づとめ』 といわれましたが、寄宿舎のまたそれにおとらずひどいところでした。女工の募集が遠隔地にひろがるにつれて、寄宿舎制度が普及し、1910年の調査では、紡績女工の66パーセント、製糸女工の86パーセントが寄宿舎に住んでいました。(石原修 『女工と結核』 による)。
 だが、この寄宿舎の実態は一般にきわめてお粗末なものでした。どくりつの家屋であればいいほうで、工場の建物の一部をさいたり、事務室の2階などがあてられたりしていました。『生糸職工事情』 はこうのべています。『ソノ設備ハ甚ダ不完全ナリト云ウノ外ナシ。各室ノ広サハ十畳乃至二十畳ナルモノ多ク、往々一室ニシテ、五、六十畳ナルモノアリ。大概一畳ニツキ工女一人ヲ容レ、工女二人ニ対シ寝具一組 (上下各一枚) ヲ給ス。室ニ押入モナク棚モナク、往々畳ニ代ウルニ莚ヲモッテシタル処モアリ、マタ避難設備モナキモノ多シ』。これでは身体を休めるどころか、まさに 『拘置所』 といったところです。」

「そもそも繊維資本が、寄宿舎の付設に力を入れたのは、女工に快適な宿舎を提供するというより、労働力を確保し、労務対策にそれを利用するところにねらいがありました。というのは、寄宿舎はまず女工の出勤督励に好都合です。長時間労働、とくに深夜業のばあいは、欠勤者が多く、必要労働力をなかなか確保できませが、寄宿舎はその点、労働者をいやおうなしにかり出すのに便利でした。次に寄宿舎は、女工の移動や逃亡が頻発する 『状況』 のもとでは、それを防止する 『城砦』 の役割をはたしました。」


「女工の勤続年数は一般に短期でした。石原修の 『女工と結核』 はこういっています。『紡績と織物は女工の半分は1年と続いたものがありませぬ、勤続1年未満のその中の半分は六か月続いて勤めないものであります』。また1909年、新潟など12県の出かせぎ女工2万5600名について調査されたところによると、その年中に約40パーセントの女工が帰郷しており、その帰郷理由の28パーセントが疾病ということになっています (岡実 『工場法論』 による)。
 このように農村からはたらきにでた新鮮な労働力を、資本はつぎつぎに食いつぶし、役立たなくなれば弊履のように捨てました。」

「女工の病気にはむろん種々のものがありましたが、そのなかでもっとも恐れられ、死亡率も高かったのは、当時 『不治の難病』 といわれた結核でした。細井和喜蔵は 『女工哀史』 のなかで、『工場へ行ったがため、やった故に、村にはかつてなかった怖るべき病い――肺結核を持って村娘は戻った。娘はどうしたのか知らんと案じているところへ、さながら幽霊のように蒼白くかつやせ衰えてヒョッコリ立ち帰って来る。彼女が出発する時には顔色も赧 (あか) らかな健康そうな娘だったが、僅か3年の間に見る影もなく変わり果てた』、と書いていますが、同じような光景は当時農村の諸所で見られました。」


「なお、ついでながら紹介しておくと、こうした女工と疾病の関係について、鋭い分析と告発をおこなった先駆的な医学者に石原修がいました。石原は内務省や農商務省の嘱託として、工場や農村の調査に従事し、1913年、論文 『衛生学上ヨリ見タル女工ノ現況』 や講演 『女性と結核』 などをあらわしました。そして、繊維資本の酷使がいかに女工を食いつぶしているかを、詳細なデータにもとづいて明らかにし、つぎのように資本家を断罪しています――
 日本の女工の死亡率は最低に見積もっても、1000人につき18人であり、その死因の7割は結核、残りが脚気、胃腸病などである。いま日本の女工を50万人とすると9000人の女工が死んでいることになり、これは同年齢の一般死亡率4000人より断然多い。この差5000人は女工になったがゆえに早死したものである。『……工業の為にこれだけのものが犠牲になった。春秋の筆法で言えば工業五千人を殺すということを言ってよかろう、謀殺故殺は刑法上の責任がございますのに、人を斯くして殺したのは何の制裁がない、工場は見様に依っては白昼人を殺しているという事実が現れている、然るにその責任を問う者もない……』 (講演 『女工と結核』)。」


 結核をうつ病・メンタルヘルス、死亡・自殺を過労死・自死と置き換えたら今と似ています。長時間労働が結核やうつ病を発生させています。
 現在は、かつての寄宿舎のような心身の拘束はしません。しかし労働者は別の手法で心身を長時間拘束させられています。
 日本には、昔も今も労働者の尊厳は問題にされません。問題にされるのは輸出を稼ぐ経済です。


 過労死や自死は長時間労働だけが原因ではありません。
 電通は、15年末の新入社員の過労自殺を契機に労働時間削減を軸とする働き方の抜本的な見直しを進めたといいます。16年10月下旬から午後10時~翌朝5時の全館消灯を開始。「退社時間を守らないと翌日上司から注意される」 といいます。しかし会社に提出する資料の出退勤は “改革” どおりでも、その後も電気を消して仕事をしている、外部で仕事をしている、家に持ち帰っているなどの実態が語られています。
 電通は16年12月下旬に今回の過労死事件に関する内外の調査結果を公表しました。その中では 「長時間労働や職場での人間関係が心理的なストレスになった」 とあります。また 「パワハラとの指摘も否定できない、行き過ぎた指導があった」 ともあります。
 パワハラとは、一方的な業務指示、催促、無理な目標設定、早期の目標達成強制、周囲の非協力による孤立化などがあります。
 本物の改革のためには、何が長時間労働の原因になっているかを追及しその解消からはじめる必要があります。


 15年8月25日の 「活動報告」 を再録します。
 山一林組製糸所争議が終った翌18日付の 『信濃毎日新聞』 の社説のタイトルは 「労働争議の教訓」 です。
初めに人間があり、人間の生活がある。そして終りも亦人間と、生活とで在る。これが人間史の全部である。/ 人間生活のあるところ、そこにありとしある生活資料の生産がある。(中略) 注意せよ。生産方法在つて生活在るのではない。生活在つて而して生産方法があるのである。従つて生産の方法と態様とは人間のものなのであって、決つしてその逆ではないのだ。(中略) 然るに岡谷に於いては、それが全く逆転してゐるのだ。人間史が、人間生活が、理論的にも現実的にも転倒してゐるのだ。それこそ製糸の街岡谷の、製糸家の、人間としての欠陥である。(中略) / 二旬に亘る女工達のあの悪戦苦闘、それはそもそも何のための苦しみ、何のための闘ひであったか。いふまでもなく、それは生産方法における一手段、即ち生産用具たるの地位から、本然の人間に立ち戻らんとする彼等の努力の表現に外ならなかった。(中略) / 女工達は繭よりも、繰糸わくよりも、そして彼等の手から繰りだされる美しい糸よりも、自分達の方がはるかに尊い存在であることを識つたのだ。(中略) 彼等は人間生活への道を、製糸家よりも一歩先に踏み出した。先んずるものの道の険しきが故に、山一林組の女工達は製糸家との悪戦苦闘の後、ひとまづ破れた。(中略) とはいへ、人間への途はなほ燦然たる輝きを失ふものではない。/ 歴史がその足を止めない限り、そして人間生活への道が、その燦然たる光を失はない限り、退いた女工達は、永久に眠ることをしないだらう。」

 労働者の尊厳は労働者自らの手でつかみ取ることが大切です。

   「活動報告」18.1.11
   「活動報告」15.8.25
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接客業務従事者へのクレーム防止対策は
2018/01/30(Tue)
 1月30日 (火)

 昨年12月21日、連合は 「消費者行動に関する実態調査」 結果を発表しました。
 調査に至る問題意識です。
「接客業において、商品やサービスに瑕疵があった場合、消費者による苦情 (クレーム) や改善要求は健全な消費活動の実現のためにも必要な行為であり、事業者にとっても新商品開発やサービス向上につながる側面もあるため積極的に受け止めるべきものです。しかし近年、暴言などの行き過ぎたクレーム、暴力や長時間拘束などの迷惑行為によって、労働者が精神的なストレスを抱えていることが課題となっており、その対策が求められています。」
 調査は民間調査機関の協力で、2017年11月13日~11月14日の2日間、インターネットリサーチにより実施し、全国の15歳~69歳の男女2,000名 (一般消費者 (接客業務に従事していない人) 1,000名、接客業務従事者1,000名) の有効サンプルを集計しました。

 同じような調査は、UAゼンセン同盟流通部門が、昨年11月16日、「悪質クレーム対策 (迷惑行為) アンケート調査結果 ~サービスする側、受ける側が共に尊重される社会をめざして~」 の速報版を公表しました。(17年11月22日 「活動報告」)
 それに先立ち9月には 『悪質クレームの定義とその対応に関するガイドライン』 を策定し発表しました。(17年10月6日 「活動報告」)
 UAゼンセン同盟流通部門の調査は組織内組合員に対する調査です。
 質問内容は似ていますが、今回の連合の 「消費者行動に関する実態調査」 はゼンセン以外の接客業に従事している労働者も含まれています 


 「消費者行動に関する実態調査」 のなかから見えてきたこととして
 ・消費者からの迷惑行為 接客業務従事者の半数以上が 「受けたことがある」 一般消費者の
  約6割が接客業務従事者への迷惑行為を見聞きした経験あり
 ・他の消費者の迷惑行為 一般消費者の8割以上が 「不愉快」
 ・勤務先で 「迷惑行為に関するマニュアル作成や教育を行っていない」 約6割
 ・消費者の迷惑行為をなくすために必要なこと  1位 「消費者への啓発活動」
などがあげられています。

 そのなかからいくつかを紹介します。
 接客業務従事者が、勤務先で消費者から受けたことがある迷惑行為について聞いています。
 「暴言を吐く」 33.1%が最も多く、「威嚇・脅迫的な態度を取る」 28.5%、「説教など、権威的な態度をとる」 19.2%、 「何回も同じクレーム内容を執拗に繰り返す」 16.7%、「従業員を長時間拘束する」 10.4%が続きます。さらに 「セクハラ行為をする」 3.5%や 「暴力を振るう」 3.3%、「SNS・インターネット上で誹謗中傷する」 2.3%、「土下座を強要する」 1.7%もあります。
 雇用形態別にみると、いずれかの迷惑行為を受けたことがある人の割合は、正規雇用64.3%、非正規雇用55.5%です。
 正規雇用と非正規雇用で差が大きいのは、「暴言を吐く」 が正規雇用37.3%、非正規雇用32.5%、「威嚇・脅迫的な態度を取る」 が正規雇用34.3%、非正規雇用26.2%、「何回も同じクレーム内容を執拗に繰り返す」 が正規雇用20.2%、非正規雇用15.3%などです。

 業種別に、いずれかの迷惑行為を受けたことがある人の割合をみると、「公務」 が最も高く79.4%、次いで 「情報 通信」 69.6%、「運輸・郵便」 66.7%、「金融・保険」 61.9%、「小売」 59.4%、「医療・福祉」 55.4%の順です。
 受けたことがある迷惑行為については、公務は、「暴言を吐く」 58.8%、「威嚇・脅迫的な態度を取る」 55.9%、「説教など、権威的な態度をとる」 38.2%、「何回も同じクレーム内容を執拗に繰り返す」 38.2%、「従業員を長時間拘束する」 32.4%で、いずれも他の業種より高くなりました。
 他の業種で目立つのは、「運輸・郵便」 「情報 通信」 で 「暴言を吐く」 が38.1%、37.0%、「金融・保険」 で 「威嚇・脅迫的な態度を取る」 45.2%、「従業員を長時間拘束する」 16.7%などです。

 迷惑行為を受けたことがある人に、それぞれどのように対応したかを聞いています。
 「暴言」 については、「丁重に謝罪した」 47.4%、「対応できる内容と、できない内容をはっきり説明した」 38.4%、「上司に対応してもらった」 27.8%、「毅然と対応し、応じられない要求は断った」 25.4%、「複数で対応に当たった」 15.4%です。
 「威嚇・脅迫的な態度」 については、「丁重に謝罪した」 44.2%、「対応できる内容と、できない内容をはっきり説明した」 37.5%、「毅然と対応し、応じられない要求は断った」 34.0%、「上司に対応してもらった」 31.6%、「複数で対応に当たった」 16.5%です。
 「説教など、権威的な態度」 については、「丁重に謝罪した」 43.2%、「対応できる内容と、できない内容をはっきり説明した」 41.7%、「上司に対応してもらった」 34.9%、「毅然と対応し、応じられない要求は断った」 34.4%、「複数で対応に当たった」 21.4%です。
 「同じクレームの執拗な繰り返し」 については、「対応できる内容と、できない内容をはっきり説明した」 50.9%、「丁重に謝罪した」 38.9%、「上司に対応してもらった」 34.7%、「毅然と対応し、応じられない要求は断った」 29.9%、「複数で対応に当たった」 20.4%です。
 「従業員の長時間拘束」 については、「対応できる内容と、できない内容をはっきり説明した」 47.1%、「毅然と対応し、応じられない要求は断った」 39.4%、「上司に対応してもらった」 37.5%、「丁重に謝罪した」 33.7%、「複数で対応に当たった」 26.9%です。
 それぞれで対応が違っています。「暴言」 「威嚇・脅迫的な態度」 「説教など、権威的な態度」 では 「丁寧に謝罪した」 が最多ですが、「同じクレームの執拗な繰り返し」 「従業員の長時間拘束」 では 「対応できる内容と、できない内容をはっきり説明した」 が最多です。
 消費者に迎合するだけではない対応をしています。

 消費者から迷惑行為を受けたことがある人に、迷惑行為は解決したかを聞いています。
 「解決した」 と回答した人の割合を迷惑行為別にみると、「金品の要求」 が86.8%、「威嚇・脅迫的な態度」 が84.2%、「暴言」 が83.1%、「説教など、権威的な態度」 が82.%で続きました。他方、「セクハラ行為」 65.7%、「暴力」 63.6%です。
 しかし、解決内容については不明です。

 消費者から迷惑行為を受けたことがある人に、仕事で苦情やクレームを受けた経験は、日常生活に何か影響を及ぼすかと聞いています。
 「自分が消費者として店やサービスを利用するとき、同じようなクレームを言わないように心掛けた」 59.2%、逆に 「自分が消費者として店やサービスを利用するとき、同じようなクレームを言った」 8.3%です。


 接客業務従事者に、勤務先で、消費者の迷惑行為に関するマニュアル作成や教育などが実施されているかどうかを聞いています。
 「実施されている」 が42.9%、「実施されていない」 が57.1%です。
 業種別にみると、実施率が高いのは、「公務」 67.6%、「金融・保険」 59.5%です。続けて 「運輸・郵便」 45.2%、「生活関連サービス・娯楽」 43.4%、「医療・福祉」 42.9%、「情報通信」 41.3%の順です。
 「公務」 は、いずれかの迷惑行為を受けたことがある人の割合が高いですが、それが対応方法にもつながっているのでしょうか。

 勤務先に消費者の迷惑行為に関する悩みを誰に相談できるか聞いています。
 「上司」 54.2%が最も多く、「同僚・部下」 35.0%、「企業内カウンセラー」 5.6%と続きました。「相談で きる人はいない」 が29.4%でした。


 一般消費者に、他の消費者の迷惑行為を見聞きしたことがあるかを聞いています。
 いずれかの迷惑行為を見聞きしたことがある人の割合は58.4%になりました。
 具体的には、「暴言を吐く」 42.5%、「威嚇・脅迫的な態度を取る」 28.1%、「説教など、権威的な態度をとる」 19.1%、「何回も同じクレーム内容を執拗に繰り返す」 15.5%、「従業員を長時間拘束する」 11.9%などです。

 では消費者は、他の消費者が行う迷惑行為に対して、どのように感じているのかを聞きいています。
 「非常に不愉快」 66.9%、「やや不愉快」 17.7%でした。男女別に見ると、「不愉快 (計)」 は男性80.7%、女性88.3%でした。
接客業務従事者に対しても同じ質問を聞いています。
 「非常に不愉快」 68.3%、「やや不愉快」 17.3%でした。男女別に見ると、「不愉快 (計)」 は男性82.9%、女性88.3%でした。一般消費者と同程度の高さです。


 一般消費者に、消費者が店員・係員に対して迷惑行為を行うことは、近年増えていると思うかどうか聞いています。
 「増えている」 は48.9%、「減っている」 28.0%です。
 接客業務従事者にも、同じ質問をしました。
 「増えている」 は 56.4%、「減っている」 27.9%です。

 一般消費者に、消費者の迷惑行為が発生している原因は、どのようなことだと思うか聞きました。
 「消費者のモラルが低下した」 (58.5%) が最も多く、「(店員・係員は) ストレスのはけ口になりやすい」 (41.2%)、「SNS の普及で情報が拡散しやすくなった」 (34.9%)、「サービスに対する消費者の期待が過剰になった」 27.5%、「店頭スタッフやサービス業者の尊厳が低くみられている」 22.2%と続きます。
 接客業務従事者にも同じ質問をしました。
 「消費者のモラルが低下した」 65.7%が最も多く、「(店員・係員は) ストレスのはけ口になりやすい」 46.6%、「サービスに対する消費者の期待が過剰になった」 34.8%、「SNS の普及で情報が拡散しやすくなった」 27.1%、「店頭スタッフやサービス業者の尊厳が低くみられている」 26.7%と続きます。
 接客業務従事者は一般消費者と比べて消費者に問題があると捉えているようです。

 一般消費者に、店員・係員に対する消費者の迷惑行為をなくすためには、どのようなことが必要だと思うかを聞いています。
 「消費者への啓発活動」 が最も多く46.0%でした。続いて 「企業のクレーマー対策の教育」 42.0%、「法律による防止」 36.0%、「企業のマニュアル整備」 26.0%、「対応を円滑にする企業の組織体制の整備」 24.7%の順です。
 接客業務従事者にも同じ質問をしました。
 「消費者への啓発活動」 が最も多く49.5%、「企業のクレーマー対策の教育」 40.6%、「法律による防止」 37.3%、「企業のマニュアル整備」 32.5%、「対応を円滑にする企業の組織体制の整備」 26.7%の順です。
 「企業のマニュアル整備」 は、接客業務従事者の方が5.6%高くなっています。


 一般消費者に、店員・係員が、行き過ぎた苦情・クレームなどによって、うつ病を発症するケースがあることを知っていたかを聞きいています。
 「知っていた」 は 45.1%です。
 接客業務従事者にも、同じ質問をしました。
 「知っていた」 は58.7%です。
 接客業務従事者の方が危機感を持っています。


 今、厚労省は 「職場のパワハラスメント防止対策についての検討会」 を開催しています。
 検討会においては、いわゆる 「第三者からの暴力」 についても討論し、「報告書」 には具体的防止策として 「消費者への啓発活動」 「企業のクレーマー対策の教育」 「法律による防止」 「企業のマニュアル整備」 「対応を円滑にする企業の組織体制の整備」 への取り組みを働きかける内容になることを期待します。

   「活動報告」 2017.11.22
   「活動報告」 2017.10.6
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災害に 〈攻め〉 の姿勢を
2018/01/26(Fri)
 1月26日 (金)

 1月17日、阪神淡路大震から23年を迎えました。
 関東のテレビ各局の現地の追悼集会中継は5時46分を前後してせいぜい2~3分でした。遠い過去の出来事になってしまったのでしょうか。

 1月17日付の神戸新聞を送ってもらいました。1面トップはま 「県の復興借金4386億円」 です。内容を紹介します。
「県は震災半年後の1995年7月、10年間の復旧・復興計画 『兵庫フェンイックス計画』 を策定 『創造的復興』 を掲げてインフラや福祉、防災など多岐にわたる事業を展開し、県の負担は2兆3前億円に上った。うち1兆3千億円を県債発行 (借金) で賄ったが、公債費 (借金返済額) が膨らみ、歳出が歳入を上回る 『収入不足』 を基金 (貯金) や新たな借金で穴埋めした。
 収入不足が1120億円に達した2008年からは、職員の給与や定数削減など11年間の行財政構造改革 (行改) に着手。18年度には、震災後初めて収支不足を解消する見通しだが、震災関連の借金残高は4386億円 (16年度決算)。」
 これが23年たった実情です。

 東日本大震災では、国は11~15年度を東日本の集中復興期間と位置づけ、復旧・復興事業の地元負担を実質ゼロにしました。阪神淡路大震災で被災自治体の財政がひっ迫した教訓が生かされたともいえますが、震災の借金に対する措置を今も求めている兵庫県に国が応える様子はないといいます。

 自民党政権が推し進めた行政改革によって全国の自治体の一般行政職員の総数は、1995年度の約117万人から2017年度には約91万人に減少しています。兵庫県はそのうえに2008年から行政改革を進めています。しかし東日本大震災が発生すると、被災地・被災者の痛みに共感できる分、人と物の支援を他の自治体以上に続けています。
 その状況を総務省が発表している 「東日本大震災に係る地方公務員の派遣状況調査の概要」 から見てみます。
 2017年4月1日時点で全国の自治体から派遣されている職員数は1782人です。内訳は、44都道府県から975人、20指定都市から195人、341の市区町村から612人です。
 さらに都道府県975人の内訳は、兵庫県は82人で、被災県から被災地市町村への派遣を除くとトップです。続いて、神奈川県79人、東京都22人の順です。
 指定都市195人の内訳は、神戸市6人です。
 市区町村612人の内訳です。兵庫県は25市区町村から42人です。東京都の107人、愛知県の60人に続きます。

 2016年に熊本地震が発生し、16年9月1日から17年3月31日までの間に、都道府県から319人、指定都市から120人、市区町村から1027人、合計1466人が派遣されています。しかし細かい内訳は不明です。

 東日本大震災の被災地に対する兵庫県の思いがあらわれています。この傾向は東日本大震災が発生後ずっとそうです。県独自の行革がつづく中にあっても無理をしながら支援を続けています。自分たちの経験を役立てることや、二次被害を最小限にとどめようという思いからでもあります。勝手な行動ではありません。
 職員派遣は総務省が全国の自治体に要請したものでもあり、全国からの派遣状況を見たなら兵庫県は震災関連の借金残高を抱えながらも無理をしている状況は明らかです。国は今からでも何らかの支援を検討してもいいと思われます。

 阪神淡路大震災、東日本大震災の教訓は被災地・被災者だけにとどめずに全国で活かし、第二次被害も含めて 「減災」 を目指していく必要があります。そしてその対策は、被災者だけでなく、救援活動、支援活動に携わる人たちへのフォロー、アフターフォローを含めてです。


 大阪府富田林保健所職員の男性職員は、2011年4月に続けて5月12~16日の予定で岩手県宮古市に派遣され、避難所を巡回する保健師らを車で移送する業務に従事していました。その最中の14日、宿泊先のホテルで頭痛を訴え、くも膜下出血で死亡しました。
 妻は公務災害を地方公務員災害補償基金に申請しましたが 「公務外」 と認定されませんでした。大阪地裁に訴訟しましたが地裁は過酷な勤務とは認めがたいと請求を棄却しました。
 その控訴審判決が17年12月26日、大阪高裁でありました。業務との因果関係を認め、原告側の1審大阪地裁判決を取り消し、公務災害と認定しました。運転業務に従事した時間自体は比較的短いとしながら、余震や津波への恐怖を感じる被災地で 「普段と比較にならないほどの強い精神的緊張を強いられる状況」 と指摘し、男性に高度な負荷がかかっていたとして死亡との因果関係を認めました。

 地方公務員災害補償基金や裁判所は、被災地で被る 「普段と比較にならないほどの強い精神的緊張を強いられる状況」 の精神的負荷を軽視し、労働時間の長短で判断しました。
 被災地で被る精神的負荷を軽視する対応では救援活動、支援活動の二次被害を防ぐことはできません。


 被災地の自治体職員はまだまだ過重労働のなかで頑張っています。
 17年11月8日の河北新報は、「<石巻市> 膨大な復興事業で疲弊 市職員の健康チェック強化」 の見出し記事を載せました。
 宮城県石巻市は、これまでも産業医や臨床心理士の面談で職員をフォローしてきましたが、精神疾患が原因の病気休暇取得者は全職員約2160人のうち2011~16年度に年間32~50人で推移。新たに発症する職員も後を絶たず、労働環境の改善には長時間労働の現状把握の徹底が必要と判断しました。
 時間外の超過時間の目安は、厚生労働省の資料を参考に健康へのリスクが高まる時間を設定。昨年度は時間外が月平均80時間を超えた職員が24人に上り、最長は月113時間でした。16年9月に再開した市立病院や、同年12月に新築移転した夜間急患センターの関係部署など復興事業に携わる職員が目立ちます。
 そのため9月から膨大な復興事業に追われる職員の働き方改革に取り組んでいます。過度な仕事量やストレスから体調を崩す職員が多く、健康状態をチェックする態勢を強化しました。担当者は 「適切な働き方ができるように各職場の意識を高めたい」 と話しています。
 長時間労働をした職員の所属長に報告を求める態勢を構築。時間外勤務が月100時間か2カ月の月平均が80時間を超えた職員が対象で、所属長が 「過度の疲労感」 「睡眠不良」 「精神的なプレッシャー」 の有無など体調や仕事量に関するチェック項目を確認して人事課に提出します。すると全職員のうち9月は16人、10月は13人が該当しました。
 人事課の冨沢成久課長は 「復興事業に関する過度なストレスや、仕事が進まない焦りで休むケースがある。長時間勤務者の体調管理を職場で徹底したい」 と話しています。

 被災地の他の自治体も同じような状況にあるとおもいます。


 もう一度1月17日付の神戸新聞です。神戸新聞社は15年、阪神淡路大震災の教訓と経験を次世代と国内外に発信する 「6つの提言」 を発表しました。災害への備えを 〈守り〉 と捉えず、社会の在り方を見直し、暮らし、生き方を創造する 〈攻め〉 の契機としようとする内容です。6つは、
  市民主体の復興の仕組みを確立する
  防災省の創設
  「防災」 を必修科目に
  住宅の耐震改修義務化を
  地域経済を支える多彩なメニューを
  BOSAIの知恵を世界と共有しよう
です。提言に基づき、被災地の現状と課題を検証しています。その中の 「市民主体の復興の仕組みを確立する」 です。

 ■市民主体の復興の仕組みを確立する
 ボランティア重要性増す
 被災地の復興は市民が主体となって手掛けていくべきだ。この考え方は阪神・淡路大震災後の東日本大震災や熊本地震の被災地でも主流となっている。
 阪神・淡路では、早く市民生活を再建するため、行政主導の再開発やまちづくりが進められた。だが、住民との意思疎通が十分とは言えない状況も生まれた。
 議論を重ねてきたが、23年を経て今なお課題は形を変え、残る。少子高齢化や東京一極集中など新たな課題も加わり、解決への道のりは容易ではない。
 復興の目標は日常を早く取り戻すことだけでなく、より豊かな暮らしを目指し、模索できる環境を整え、実現させていくことだ。
 それには被災者に寄り添う人たちの力が欠かせない。2013年には改正された災害対策基本法に国や自治体とボランティアとの連携推進が記されるようになり、地域で多彩な活動を展開するNPO法人やボランティアグループの存在は、重要性を増している。
 内閣府によると、全国で認証されているNPO法人は約5万2千団体 (昨年11月末時点)。都道府県別では、兵庫県は東京都、神奈川県、大阪府に次いで4番目の数を誇る。阪神・淡路をきっかけに設立された団体が多い一方で、震災から20年以上がたち解散も目立つようになってきた。
 代わりに、台頭しているのが一般社団法人だ。08年以降、NPO法人に比べて設立や報告の手続きが簡単なため急増。最大の課題だった資金集めについても、自由度の高い事業ができるため、活用する市民グループが相次ぎ、現在では1500以上が県内で活動しているといわれる。
 高まる市民力をどう復興に生かしていくのか。官が示した復興の道筋を、民がただたどる時代ではない。市民の声、意見を復興の基軸に。市民主体の復興の理念を根付かせよう。


 災害はいつ襲ってくるかわかりません。全国で災害を 〈守り〉 から 〈攻め〉 へと捉え返し、1次被害も2次被害も減災を目指していく必要があります。

   「活動報告」18.1.16
   「活動報告」17.10.11
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