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裁量労働制の法案提出を阻止しよう
2018/10/05(Fri)
 10月5日 (金)

 前国会における 「働きかた改革」 関連法案の審議において、企画型裁量労働制の対象業務追加法案は国会に提出されたデータが改ざんされていたことが発覚して議論が中断し、結局法案から削除されました。働きかた改革法案では高度プロフェッショナル制度が焦点になっていましたが、経済界、政府が本当に成立させたかったのは裁量労働制とささやかれていました。
 法案提出においては、あいまいな個所を残す、別個の逃げ道を作るなどのしのぎ方があります。働きかた改革法案においては、時間外労働の上限規制の導入、長時間労働抑制策・年次有給休暇取得の一部義務化、高度プロフェッショナル制度とバーターの逃げ道が裁量労働制でした。
 裁量労働制の法案を削除した働きかた改革関連法は6月29日に成立しましたが、同日、経団連の中西宏明会長は 「残念ながら今回の法案から外れた裁量労働制の対象拡大については、法案の早期の再提出を期待する」 というコメントを発表しました。

 国会でデータ改ざんが指摘された資料は、厚生労働省実施の「平成25年度労働時間等総合実態調査」と厚労省の要請を受けて管轄のJILPT (労働政策研究・研修機構) が実施した「裁量労働制の労働時間制度に関する調査」。2つとも法案提出のおひざ元で改ざんされました。その資料をもとに安倍首相は 「厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均な、平均的な方で比べれば、一般労働者よりも短いというデータもある」 と答弁しました。これが紛糾の発端です。
 2つのデータータ集約 "ミス” は偶然なのでしょうか。

 13年12月3日の 「活動報告」 に書きましたが、改ざんされる前の 「平成25年度労働時間等総合実態調査結果」 からもすでに裁量労働制の長時間労働の実態は見えてきます。
 調査対象事業場は都道府県労働局が無作為に選定しましたが、裁量労働制に係る事業場数を一定数確保するため、専門業務型裁量労働制導入事業場及び企画事業型裁量労働制導入事業場を優先的に選定したといいます。11,575事業場を対象に、労働基準監督官が訪問する方法で、13年4月1日時点の実態を調査しました。臨検などを任務としている監督官が全国統一した方法の調査活動でミスを犯すのでしょうか。“ミス” は統計資料作成の段階で犯されました。

 その裁量労働制についての調査結果です。データ提出は事業場、つまり使用者への調査です。何を目的とした調査かは明らかでした。調査結果はそのことを踏まえて検討する必要があります。事業場での改ざんはなかったのでしょうか。
 専門業務型裁量労働制での労働時間は、みなし労働は平均8時間32分です。実際の労働時間は1日の平均時間は9時間20分、各企業で最長の者の平均は12時間38分で、46.6%の事業所で12時間を超えていました。「法定休日労働あり」 の割合は、平均的な者は21.9%、最多の者39%、4人に1人以上が法定休日に仕事をしています。年間、最多の者で8.5日、平均的な者で4.0日労働しています。
 企画業務型裁量労働制においては、みなし労働は平均8時間19分です。実際の労働時間は1日の平均時間は9時間16分、最長のものは11時間42分で、54.8%の事業所で12時間を超えていました。「法定休日労働あり」 の割合は、最多の者29.2%、平均的な者は17.2%です。年間、最多の者で5.8日、平均的な者で3.1日労働しています。
 裁量労働制が導入される時のうたい文句からはかけ離れた、四六時中業務のことが頭から離れない状態が作り出されて裁量のゆとりがありません。
 この結果を見ても、裁量労働制の労働者が一般労働者と比べて短い、労働者は満足しているという結論は出てきません。改ざんしなくても、報告をきちんと分析すれば長時間労働の実態は浮かび上がってきていました。
 そのうえで改ざん発覚後の個票データの再検討においては、裁量労働制で働く労働者の1日の労働時間が 「1時間以下」 だった事業所が25含まれていることが明らかになったのです。最初から経済界、政府にとって都合のいい調査結果ではありませんでした。

 そして調査結果から見えてくのは裁量労働制の導入に際しての労使協定、従業員代表との労使協定の状況です。
 調査における全事業所の労使協定についてです。
 時間外労働・休日労働に関する労使協定は55.2%の事業場が締結しています。していない事業場についての理由は (複数回答)、時間外・休日出勤がない43.0%、労使協定の存在を知らなかった35.2%、締結・届け出を失念した14.0%となっています。労使協定の存在を知らなかった、締結・届け出を失念したは本当にそうなのかどうかはわかりません。
 うがった見方をすると、55.2%以外の事業場は労使協定を締結していません。おそらく多くの事業場で裁量労働制導入においてもきちんとした締結は行われてない可能性があります。労働者は自分の意思で裁量労働を行っているとはいい切れません。強制されています。


 厚労省は、経済界と政府の意向を受けて、何が何でも企画型裁量労働制の対象業務を拡大する法案を成立させようとしています。そのため9月20日から 「裁量労働制実態調査に関する専門家検討会」 が開催されています。準備が早いです。
 開催要綱の趣旨です。
「裁量労働制は、時間配分や仕事の進め方を労働者の裁量に委ね、自律的で創造的に働くことを可能とする制度であるが、制度の趣旨に適った対象業務の範囲や、労働者の裁量と健康を確保する方策等について、課題がある。これらの課題については、平成25年度労働時間等総合実態調査の公的統計としての有意性・信頼性に関わる問題を真摯に反省し、改めて、現行の専門業務型及び 企画業務型それぞれの裁量労働制の適用・運用実態を正確に把握し得る調査手法の設計を労使関係者の意見を聴きながら検討し、包括的な再調査を実施した上で、現行の裁量労働制の制度の適正化を図るための制度改革案について、検討を実施する必要がある。このため、統計学者や労働経済学者、労使関係者を含む専門家からなる検討会を開催し、裁量労働制の実態把握のための新たな調査について、調査設計等の検討を 行う。」
 調査をやり直して現行の裁量労働制の制度の適正化を図るといいます。
 しかし、長時間労働に至っているからデータが改ざんされたのです。再調査の必要はありません。

 では、政府と経済界はどのような裁量労働制を狙っているのでしょうか。
 17年3月に制度が違法だと指摘された損保ジャパン日本興亜は、嘱託などを除く18.000人の職員のうち、入社4年目以上の総合系、専門系、技術調査系職員6.000人以上に企画業務型裁量労働制を導入していることが明らかになりました。対象外であるはずの一般の営業職にまで適用されています。一般の営業マンのノルマ達成のための残業を 「みなし労働制」 と扱い無償においやりました。たんなる残業代の抑制です。違法性を指摘されて廃止しました。

 昨年12月27日、マスコミは東京労働局などが野村不動産本社など全国4拠点に調査をおこない、社員に企画業務型裁量労働制を適用していたのは違法と是正勧告をしたことを報道しました。
 全社員1900人のうち、課長代理級のリーダー職と課長級のマネジメント職の社員系600人に適用していました。社員はマンションの個人向け営業などの業務に就いています。営業で売り込み、“ねばり” の戦術を、企画立案を自律的におこなう行為と解釈しています。
 しかし労働局は 「個別営業などの業務に就かせていた実態が全社的に認められた」 と指摘し対象業務に該当しないと判断しました。“ねばり” は長時間労働につながります。しかしその分の時間外手当を支払わないのが裁量労働制です。
 事実、3月4日には、裁量労働制を違法適用されていた男性が長時間労働により過労自殺し労災認定されていたことがマスコミで報道されました。

 トヨタは違法すれすれのことをしようとしています。
 企画・専門業務の係長クラス (主任級) 約1700人に裁量労働制を導入しています。事務職や研究開発に携わる主に30代の係長クラスの総合職約7800人のうち一定以上の自己管理・業務遂行能力を持ち、本人が希望し、所属長、人事部門の承認がある者が対象です。非管理職全体の半数を占めることになります。
 残業時間に関係なく毎月17万円 (45時間分の残業代に相当) を支給し、さらに一般的に残業代を追加支給しない裁量労働制とは違い、勤務実績を把握して月45時間を超えた分の残業代も支払います。
 新制度導入の理由を、自動車産業では自動運転分野などで米グーグルなど異業種との競争が激しくなっていて、仕事のメリハリをつけて創造性と生産性を高める必要があると判断したと説明しています。専門性の高い技術者の間では一律の時間管理の弊害を指摘する声が出ていたといいます。
 上司が対象者に時間の使い方の権限を移すといいます。労働者の自己責任が登場します。

 9月27日、朝日新聞は三菱電機で2014~2017年に、システム開発の技術者や研究職の男性5人が長時間労働を原因とする精神障害や脳疾患の発症により労災認定され、うち2人が過労自殺していたと報道しました。5人のうち過労自殺した1人を含む3人には専門業務型裁量労働制が適用されていました。全社員の3分の1にあたる約1万人に裁量労働制を適用されていましたが、今年3月に裁量労働制を全社的に廃止したといいます。


 政府と経済界の裁量労働制の導入の目的は、損保ジャパン日本興亜、野村不動産のようなことを合法化することです。トヨタのように長時間労働を労働者の自己責任にして常態化させます。法律で規制された時間外労働の上限規制は無視されます。
 政府、経済界が再度提出しようとしている法案はこのようなことを合法化しようとしています。その結果は、三菱電機のような事態を生み出します。

 現状において必要なのは規制強化です。例えば、裁量による労働は行われても、みなし労働は8時間を遵守し、超えた分については、ドイツのように積み立て後でまとめて休暇に振り替える 『労働時間貯蓄口座 (ワーキング・タイム・アカウント)』 のようなことも可能です。(16年11月8日の 「活動報告」 参照)
 裁量労働制実態調査に関する専門家検討会を監視し、裁量労働制の法制化反対の声を高めて行かなければなりません。

 「活動報告」 2018.1.12
 「活動報告」 2016.11.8
 「活動報告」 2013.12.3
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「たくさんの被爆者が今もつらい思いをしていることを考えてみる必要があります」 吉永小百合
2018/10/02(Tue)
 10月2日 (火)

 9月26日、「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」 記念イベントとして、明治大学を会場に、核兵器廃絶日本NGO連絡会主催の 「核兵器なき世界へ向けて ~被爆国の役割を考える~」 集会が開催されました。
 核兵器の全面的廃絶のための国際デーは、2013年の国連総会で制定されました。「核兵器が人類に及ぼす脅威と核兵器の全面的廃絶の必要性に関する社会の認識を高め、教育を充実させるために国際デーを記念し、普及させる」 ことを目的とします。毎年、国連事務総長がメッセージを発表し、記念したイベントが実施されます。
 今年の国連事務総長アントニオ・グテーレス氏のメッセージ・軍縮アジェンダのタイトルは 「共通の未来のために」 です。

 会場を提供した明治大学副学長のあいさつです。「明治大学は全国の大学に先駆けて戦争に協力する研究に関与することを拒否する宣言を発表しました。」
 多くの方が発言に立ちました。
 日本原水爆被害者団体協議会代表委員は核兵器禁止条約の批准状況を報告しました。核条約の前文には 「ヒバクシャの苦しみに留意する」 と盛り込まれています。9月26日段階で14カ国です。しかし見通しは決して暗いものではありません。

 発言で注目を浴びたのが吉永小百合さんとICAN国際運営委員の川崎哲さんによるトークです。
 吉永さんは、まず、政府は核兵器禁止条約にたいしてアプローチが違うと批准していませんが、何とか平和な社会を作っていけたらと思っていますと話しをはじめました。
 ICANのキャンペーン会議で発言したカナダ在住の被爆者のサーロー節子は 「日本にいるあなたたちはどう考えていますか」 と質問してきました。思いは 「核兵器はいらない、核の傘はいらない」 ということです。
 朗読活動をしています。聞いた子供たちも、同じことが起きないためにはどうしたらいいかと質問してきます。
 オーストリアにいきました。風車がたくさんありました。1986年にチェルノブイリ原発事故までは電力を原発に頼っていました。しかし事故後原発を続けるかどうかを国民投票にかけました。結果は 「ノー」 でした。政府はそれを実行しました。さらにその後も国民投票でどうするかを問いました。やはり 「ノー」 でした。
 ヒロシマ、ナガサキを経験し、さらにフクシマを体験した日本政府は見習うべき対応です。たくさんの被爆者が今もつらい思いをしていることを考えてみる必要があります。
 これまで原爆をテーマにした3本の映画に出演しました。
 1本は、大江健三郎の 『ヒロシマノート』 に数行出てくる若い被爆者を主人公にした66年の作品 『愛と死の記録』 です。主人公は4歳の時に被爆しますが青年になってから白血病で亡くなります。その恋人役です。これが被爆者とのかかわり、原爆を考えるきっかけとなりました。2本目は、体内被曝した女性を演じた81年の 『夢千代日記』 です。そして被爆死した医大生とその母の思いをテーマにした15年の 『母と暮らせば』 です。医大生のモデルは元長崎大学学長の土山秀夫さんです。
 今の思いは、「核兵器のことをもっと考えましょう」 ということです。

 川崎さんの発言です。
 被爆者の声は 「核兵器は非人道的」 です。
 オーストリア政府が原発を止めたとき市民は政府を応援しました。核兵器廃止は無理の声はずっとありましたが原発被害は核兵器と同じです。核兵器禁止条約にはためらうことなく批准しました。その姿勢は政府の判断ではなく、国民が政府を後押ししました。せっかく出来たのだからと政府に働きかけました。
 大事なことは発言を封じ込めることをしないで世論を作り上げることです。


 しかし発言に立った外務省の軍備管理軍縮課長は、核兵器禁止条約ではなく国連に核兵器廃絶決議案を提出し、核兵器を持つ国と持たない国の橋渡しをして核兵器廃止を働きかけていくと改めて政府の立場を表明しました。それが 「被爆国の役割」 だといいます。
 理由は、核兵器を持つ国には理由があり、核兵器禁止条約に参加できない。安全保障の問題で対応しなければならない面もあるといいます。
 結局は、日本政府はアメリカの傘に守られて安全保障を維持するということです。(2月9日の 「活動報告」 参照)


 高校生平和大使の代表が発言しました。
 今年は20人の高校生平和大使が、高校生1万人署名活動実行委員会がこの1年で集めた10万8476筆の署名を軍縮会議が開催される国連欧州本部に提出しました。
 国連欧州本部には高校生1万人署名活動実行委員会の署名を永久保存するとともに専用のスペースが設けられて展示されていたとのことでした。(8月28日の 「活動報告」 参照)


 メッセージを発表した国際連合事務総長アントニオ・グテーレス氏は、今年、長崎平和祈念式典出席しました。長崎の被爆者に寄り添っているメッセージのほうを紹介します。

 「長崎の皆様、こんにちは。」
 「皆様にお目にかかれて、光栄です。」
 本日、この平和式典において、ご参列の皆様とともに、1945年8月9日に、ここ長崎で原子爆弾の攻撃で亡くなられたすべての方々の御霊に謹んで哀悼の意を捧げられることを光栄に思います。
 今日ここにご参列の皆様、ならびに原爆のすべての犠牲者と生存者の皆様に対し、最も深い尊敬の念を表明します。
 ここ長崎を訪問できましたことは、私自身にとっても大変な喜びです。5世紀近くにわたり、私の国、ポルトガルは、この街と深い政治的、文化的、宗教的なつながりがあります。
 しかし、長崎は、長い魅力的な歴史を持つ国際都市というだけではありません。より安全で安定した世界を希求する世界のすべて人にとっての、インスピレーションでもあります。
 この皆さま方の街は、強さと希望の光であり、人々の不屈の精神の象徴です。
 爆発の直後、そしてその後何年、何十年にもわたって十数万もの人々の命を奪い、人身を傷つけてきた原爆も、あなたがたの精神を打ち砕くことはできませんでした。
 広島と長崎の原爆を生き延びた被爆者の方々は、ここ日本のみならず、世界中で、平和と軍縮の指導者となってきました。彼らが体現しているのは、破壊された都市ではなく、彼らが築こうとしている平和な世界です。
 原爆という大惨事の焼け跡から、被爆者の方は人類全体のために自らの声を上げてくれました。私たちは、その声に耳を傾けなければなりません。
 決して広島の悲劇を繰り返してはなりません。長崎の悲劇を繰り返してはなりません。一人たりとも新たな被爆者を出してはなりません。
 
 ご来賓の方々、ご列席の皆様、児童・生徒の皆さん
 悲しいことに、被爆から73年経った今も、私たちは核戦争の恐怖とともに生きています。ここ日本を含め何百万人もの人々が、想像もできない殺戮の恐怖の影の下で生きています。
 核保有国は、核兵器の近代化に巨額の資金をつぎ込んでいます。2017年には、1兆7000億ドル以上のお金が、武器や軍隊のために使われました。これは冷戦終了後、最高の水準です。世界中の人道援助に必要な金額のおよそ80倍にあたります。
 その一方で、核軍縮プロセスが失速し、ほぼ停止しています。
 多くの国が、昨年、核兵器禁止条約を採択したことで、これに対する不満を示しました。
 また、核兵器以外にも、日々、人々を執拗に殺傷する様々な兵器の危険も認識せねばなりません。
 化学兵器や生物兵器などの大量破壊兵器や、サイバー戦争のために開発されている兵器は、深刻な脅威を呈しています。
 そして、通常兵器で戦われる紛争は、ますます長期化し、一般市民への被害はより大きくなっています。
 あらゆる種類の兵器について緊急に軍縮を進める必要性がありますが、特に核兵器の軍縮はもっとも重要で緊急の課題です。
 このような背景の下、今年5月に私はグローバルな軍縮イニシアティブを発表しました。
 軍縮は、国際平和と安全保障を維持するための原動力です。国家の安全保障を確保するための手段です。軍縮は、人道的原則を堅持し、持続可能な開発を促進し、市民を保護するのを助けます。
 私の軍縮アジェンダは、核兵器による人類滅亡のリスクを減らし、あらゆる紛争を予防し、武器の拡散や使用が一般市民にもたらす苦痛を削減するために、現在の世界で実現可能な様々な具体的な行動を打ち出すものです。
 このアジェンダは、核兵器が、世界の安全保障、国家の安全保障、そして人間の安全保障の基盤を損なうことを明らかにしています。核兵器の完全廃絶は、国連の最も重要な軍縮の優先課題なのです。
 ここ長崎で、私は、すべての国に対し、核軍縮に全力でとり組み、緊急の問題として目に見える進歩を遂げるよう呼びかけます。核保有国には、核軍縮をリードする特別の責任があります。
 長崎と広島から、私たちは、日々平和を第一に考え、紛争の予防と解決、和解と対話に努力し、そして紛争と暴力の根源に取り組む必要性を、今一度思い出そうではありませんか。
 平和とは、抽象的な概念ではなく、偶然に実現するものでもありません。平和は人々が日々具体的に感じるものであり、努力と連帯、思いやりや尊敬によって築かれるものです。
 原爆の恐怖を繰り返し想起することから、私たちは、お互いの間の分かちがたい責任の絆をより深く理解することができます。
 私たちみんなで、この長崎を核兵器による惨害で苦しんだ地球最後の場所にするよう決意しましょう。
 その目的のため、私は、皆さま方と共に全力を尽くしてまいります。
 「ありがとうございます。」
                        国際連合事務総長 アントニオ・グテーレス


 核兵器禁止を求める声はもはや 「微力」 ではありません。核兵器禁止は 「I CAN」 です。

 「活動報告」 2018.8.28
 「活動報告」 2018.7.6
 「活動報告」 2018.2.9
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労働者の人権、人格権・尊厳を包括するハラスメントの禁止規定を
2018/09/27(Thu)
 9月27日 (木)

 5月28日から6月8日まで、第107回ILO総会が開催されました。そこでの第5議題は、「労働の世界における暴力及びハラスメント」 でした。この議題で今年と来年の2回議論が行われます。
 総会に先立ち、16年に労働の世界における男女に対する暴力に関するILO専門家会合の参加者らは、18年6月の総会で議論される暴力に関する基準設定課題についての手引きを策定するにあたって宣言を想起しました。最終的に仕事の世界における暴力とハラスメントの現状を、その内容、関係者、発生場所、影響、推進要素、リスク要因、危険度が特に高い職種や集団などの切り口から解説し、国際・国内の取り組みをまとめました。「労働の世界における男女に対する暴力及びハラスメントの根絶」 (「報告書Ⅰ」) です。
 ILOは、「報告書Ⅰ」 と一緒に各国に質問事項を送付し、17年9月22日までに、もっとも代表的な使用者・労働者組織と協議のうえ見解を提出することを要求しました。その意見等を集約した「労働の世界における暴力及びハラスメントの根絶」 (「報告書Ⅱ」) を作成し、第107回ILO総会の議論はそれを基調にすすめられました。
 これまでのILO文書は、さまざまな暴力及びハラスメントに言及はしていますが、主要な目標として暴力及びハラスメントを扱っているものはなく、そのような行為を定義しているものも、問題に対処する方法について明確な手引きを提供しているものもありません。「報告書Ⅰ」 作成のための専門家会議の議論のなかで討論の表題を 「暴力」 から 「暴力及びハラスメント」 に置き換える提案が行われました。


 総会に向けて、5月17日、労働組合の国際組織である国際労働組合総連合 (ITUC) は 「労働の世界における暴力及びハラスメント 労働者代表のためのブリーフィングノート」 を発表しました。「ノート」 が 『安全センター情報』 2018.10で紹介されています。議論は来年も引き継がれますので、抜粋して紹介します。
 「暴力及びハラスメント」 のとらえ方です。
「労働の世界における暴力及びハラスメントは、重大な人権及び労働権の侵害である。それは、他の基本的労働権を行使する能力に影響を及ぼすとともに、ディーセントワークと両立しない。労働の世界における暴力は、すべての者の尊厳、安全、健康及びウエルビーイングに対する脅威である。それは、民間及び公共部門、フォーマル及びインフォーマル経済を含めた、世界中のすべての職業及び経済活動部門に影響を及ぼす。それは、労働者と使用者だけでなく、彼らの家族、コミュニティ、経済及び社会全体にも影響を与える。」
「労働の世界における暴力及びハラスメントに対処する国際労働基準を策定することはそれゆえ、すべての者に対するディーセントワークの促進における重要なギャップのひとつを埋めることになり、1944年のフィラデルフィア宣言の目的を達成するための重要な貢献となる。」

 ITUCの 「報告書Ⅱ」 にたいするコメントです。
「質問事項に回答した政府の多数は、勧告で補足された条約の形式の拘束力のある国際文書に賛成している。労働者も圧倒的に勧告で補足された条約に賛成している。これは積極的な結果であり、その立場を維持するよう促進するとともに、さらなる支持を取り付けるよう政府に働きかけ続けることが重要である。」


 「報告書Ⅱ」 における 「定義及び対象」 です。
「3.基準の目的のために:
(a) 「暴力及びハラスメント」 の用語は、物理的、精神的、性的または経済的危害を生じさ
 せる狙いまたは効果を有する、単発または反復いずれかの、一連の容認できない行動及び慣行、
 またはそれによる脅威として理解されるべきであり;
(b) 「ジェンダーに基づく暴力」の用語は、性またはジェンダーを理由に人々に向けられる、
 または、特定の性またはジェンダーの人々に偏って影響を及ぼす、暴力及びハラスメント
 として理解されるべきであ (る)
。」

 定義についてのコメントです。
「労働者は、労働の世界における暴力及びハラスメントに対処し、部門にかかわりなく、フォーマルまたはインフォーマル経済いずれかにおけるすべての労働者を保護する、統合的アプローチをとった包括的な国際文書を望むだろう。労働者はまた、国際文書の中で暴力及びハラスメントのジェンダー・ディメンションに強い焦点があてられることを望むだろう。・・・全体的戦略は、雇用形態にかかわらす、すべての労働者がカバーされる包括的国際文書の採択を目的とする必要がある。この点では、それが一定の範疇の労働者を排除する可能性のリスクがあることから、国際文書が適用される労働者の特定のグループまたは範疇を定義することを避けるのが重要だろう。」
 その上で、3 (a) の定義は歓迎しています。そして 「一連の概念は、暴力及びハラスメントがつながりをもち、区別することが困難であるあることを理解している。」 と評価しています。さらに
「一連の暴力及びハラスメントという概念はまた、特定の形態のふるまいを不注意に排除することなく、例えば、物理的な虐待及び暴行、性的暴行、言葉による虐待、いじめ、嫌がらせ、心理的な虐待及び脅迫、セクシャルハラスメント、暴力の脅威及びストーキングを含め、多重及び多様な形態における暴力及びハラスメントをとらえるのに十分幅広い。
 行動と並んで慣行を含めることは、暴力及びハラスメントが、個人または集団の行動はもちろん、ある者の労働の構造的または組織的特性から生じうることを認めている。行動または慣行が容認できないものかどうかは、それを経験している者に対する、経済的影響を含めた、特定の (諸) 影響に言及することによって決められるべきことである。重要なことは、この定義は明確にジェンダーに基づく暴力を含んでいる。」
と捉えています。


 では、日本ではどのように捉えられているでしょうか。
 2012年3月15日に厚生労働省から発表された 「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」 (「提言」) ではじめて職場のいじめ・パワーハラスメントの概念規定・定義が行われました。
「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」
です。
 予防のためには、パワハラは構造的に発生するという捉え方で、取り組みの順序が大切ということで示されました。①企業トップからのメッセージ発信、②社内ルールの作成、③労働者へのアンケートで実態調査、➃研修、➄会社の方針の周知・啓蒙です。そして、解決するために⑥相談窓口の設置、⑦再発防止の取り組みが示され、最後にメッセージという構成です。


 2018年3月30日、厚労省は 「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」 を公表しました。「提言」 の見直しも行われました。検討会でしばしば出た発言は、「『提言』 を大きくいじると定着が進んでいる中で混乱が生じるのでそれはしないで・・」。本音は 「提言」 を認めないという “巻き返し” です。「報告書」 は出された意見が列記されています。
 検討会では 「必ずしもパワーハラスメントとは言えない事案もある」 と相違はあるが使用者側・労働者側委員も発言しています。発生の要因については、行為者及び被害者となる労働者個人の問題によるものと、職場環境の問題によるものがあるとの意見が示されます。
 「報告書」 では、「提言」 の職場のパワーハラスメントは構造的に発生するという捉え方が消え、労働者の 「自己責任」 が大きく登場してきました。そうすると企業の対応が免罪され、労働者が声をあげにくくなります。そしてさらにこの方向から 「提言」 の 「定義」 の見直し・分解解釈がおこなわれました。

 ILOの「報告書Ⅱ」、ITUCのコメントとは真逆です。
 そして、ILO総会で日本政府は条約批准の議論において 「各国の体力を踏まえれば勧告がふさわしい。条約を策定する場合には柔軟性をもった枠組み条約が適当」 と主張してことごとく抵抗しまし。


 「報告書Ⅱ」 です。
「5.労働の世界における暴力及びハラスメントの被害者及び加害者は、使用者、労働者、及び、依頼人、顧客、サービス提供者、利用者、患者及び一般の人々を含めた第三者であり得る。」
 ITUCのコメントです。
「5.については、「暴力及びハラスメントが水平的あるいは垂直的であり得ることを認めることになるので、第三者によって行われる暴力及びハラスメントを含めることは重要である。」 と評価しています。

 8月3日、メンタルヘルス・ハラスメント対策局は、厚労省と意見交換をおこないました。その中で対策局は、ILO総会では第三者暴力の問題はどのような議論が行われたのかと質問しました。厚労省の回答はまったく触れられなかったということでした。
 2003年、ILOは 「サービス業における職場暴力及びこの現象を克服する対策についての実施基準案」 を発表しています。そのことを踏まえ、被害者の範疇に入れるべきか否かという議論は問題外という捉え方だと思われます。

 しかし日本では「提言」のなかから第三者暴力と差別問題は排除されています。
 「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」 では、学者委員から、この検討会ではなく別に検討することが望ましいという意見が出されました。
 現在、いわゆる先進国において、職場のいじめについて、職場内と外からとで対応が異なり、「第三者」 からの暴力について法律や通達、指針等から排除し、対処していないのは日本だけと思われます。
 その対極が韓国です。


 「報告書Ⅱ」 の 「条約を視野に入れた結論案」 です。
「6. 条約には、以下の表現をもった前文を含めるべきである:
(a) フィデルフィア宣言が、すべての人間は、人種、信条または性にかかわりなく、自由
 及び尊厳並びに経済的保障及び機会均等の条件において、物質的福利及び精神的
 発展を追求する権利をもつことを確認していることを想起し;
(b) 国際労働機関の基本条約の関連性を再確認し;
(c) 国際人権宣言、市民及び政治的権利に関する国際規約、経済的、社会的及び文化
 的権利に関する国際規約、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、女子に
 対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、すべての移住労働者及びその家族
 の権利の保護に関する国際条約及び障害者の権利に関する条約など他の関係する
 国際文書を想起し;
(d) ジェンダーに基づく暴力を含め、暴力及びハラスメントのない労働の世界に対するす
 べての者の権利を認め;
(e) 労働の世界における暴力及びハラスメントは、人権侵害であり、機会均等に対する
 脅威であり、容認できず、ディーセントワークと相いれないものであることを想起し;
(f) 暴力及びハラスメントは労働者の精神的、物理的及び性的健康、尊厳、家族及び社会
 的環境に影響を及ぼすことを認め;
(g) 暴力及びハラスメントは、公共及び民間サービスの質にも影響を及ぼすとともに、
 人々、とりわけ女性が、労働市場にアクセスし、とどまり、また向上するのを妨げるか
 もしれないことを認め;
(h) 暴力及びハラスメントは、持続可能な企業の促進とは相いれず、職場関係、ワーク
 エンゲージメント、企業の評判及び生産性に否定的な影響を与えることを指摘し;
(i) 労働の世界における暴力及びハラスメントを根絶するためには、ジェンダーをめぐる固
 定観念を含め、根底にある原因及びリスクファクターに対処する、包括的、統合的かつ
 ジェンダー平等を志向したアプローチが不可欠であることを認め;
(j) 家庭内暴力並びにその他のかたちの暴力及びハラスメントは、それが職場に影響を与
 えるとともに、労働の世界とその制度が家庭内暴力の根絶に貢献できる場合には、労働
 の世界に関係があることを認める。」


 ITUCのコメントは、特に 「(d)-(j) は強く支持すべきである」 と主張しています。
 このほかの項目にもコメントが出されています。


 厚生労働省の労働政策審議会 「雇用環境・均等分科会」 で、職場のセクハラ・パワハラ規制についての議論が開始されました。労働側はILO総会での議論をふまえ 「国際水準に合わせたハラスメントの包括的な禁止規定」 を主張しています。使用者側は 「セクハラ・パワハラを分けて議論し、規制ではなくガイドラインにとどめるべき」 と主張しています。
 年末までに具体案をまとめられます。

 「提言」 におけるパワーハラスメントの概念規定・定義は労働者の人権、人格権・尊厳の問題は認識が希薄です。これは日本の現状でもあります。
 労働政策審議会、そして来年のILO総会での第二回目の討論において、日本政府の政策を転換させ、“独自路線” の ”暴走” を許さないための監視が必要です。そのための世論形成が必要です。
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清掃労働者は、自らの身を挺して盾となり、飛散を防ぐ
2018/09/20(Thu)
 9月20日(木)

 9月17日の朝日新聞・ 「職場のホンネ」 に載った記事です。
「東京都内の自治体からゴミ収集業務を受託している会社で働いています。最近辛いのが、作業中に一部の住民からひどい言葉を浴びせられることです。『臭いから早く持っていけ』 と言われたり、『勉強しないから、こんなことになる』 と周囲に向かって大きな声を出されたりします。理不尽な暴言には反論したいのですが、上司は仕事を失うことを恐れて委託元の自治体には伝えず、『我慢してくれ』 と言うばかりです。今は仲間内で愚痴を聞いてもらうよりなく、やりきれません。(東京都・30代男性)

 投書を漫画家のさいきまこさんがツイッター上で紹介すると炎上しました。
 炎上を紹介します。
「収集の方たちは周囲にすごく気配りしています。収集時、車等かが通れるようギリギリ端に停めて作業しています。横を通るときは収集車にゴミを入れるのを待っててくれますし。いつもテキパキ、小走りで作業していて頭が下がります。
 いつもありがとうございます。」

「こう言うサービス業者を見下す方は、よく見かけますね。店員にだけは横柄な態度を取る人とか。小さな人間です。」

「私は清掃業ですが、見下されています。でも、いつもきれいにしてくれてありがとうと言ってくれる方もいます。人のふりみてですよね。心の中で、バカにしてくる人を見下して、自分も 人への感謝を忘れない人間であろうと日々頑張っています。」

「最近増えた昔はそんなこと言う奴いなかったと思われてるものの一つですね。公務員がお茶飲んだだけで苦情などは昭和の頃のほうが盛んでした。今はネット社会で、ひとつの事象が広がりやすく発言の機会も多いので 『増えた』 と感じるのでしょう。
しかし時代が変わっても職業差別する人間の存在はかわりません。誰かがやってくれてるから社会が回っている。」

「東京都で廃棄物処理業をやっている者です。我々のお仕事は3Kと呼ばれるお仕事です。
一般廃棄物なら人々の癖や生活を知ります、産業廃棄物なら物の大切さや、ありがたさを知ります。私個人ではありますが、何事にも感謝の気持ちを大切に日々仕事をしております。
 トラックを走らせれば道を譲ってくれる方もいれば、この夏は猛暑だからと飲み物を差し入れして下さる方もいらっしゃいました。細かい事から大きな事まで沢山ありますが書ききれません。見てくれてる人はちゃんと見てくれてる。だから私も一生懸命に働けます。
 少なくとも私自身は生活されている皆さんに助けて頂いています。そしてこの記事を見て、コメント欄を見て、また助けられました。私のように心が救われる廃棄物業の方がいらっしゃるのを願います。」

「幼稚園、保育園児にとってゴミ収集車&作業の方々は憧れのヒーローなんですよ!!同じ園に通う子のお父さんは収集車の作業員で、その子はお父さんの仕事を誇らしげに話しています! 作業員の方も園に来てゴミのお話をしてくださいます。本当になくてはならない素晴らしいお仕事だと思います。」

「ホントに感謝の気持ちでいっぱいです。大変な仕事で文句も言われるし踏んだり蹴ったりなことも多いと思います。中には運転の荒い方や雑な回収をする方も居ますが…。それと同じで文句言う人も居るでしょうが感謝してる人もそれ以上に居ます。昔はもっと酷いのがたくさん居た気がします。お互いが嫌な思いせずに気持ち良く居られるようになるの願うばかりです。」

「同業者です。そのような苦情はなく、もし言われたとしても笑顔で対応しています。市から委託されており、市の代行業務ですので苦情トラブルのないように日々作業しております。いつもご苦労様! お菓子やドリンクを待ち構えてる人もいます。地域サービスに貢献できるように、明日からも頑張って収集いたします (๑>◡<๑)」

「介護の仕事でもそうだが、人が嫌がる業務を引き受けてくれているのに敬意が足りないよね。慰めにならないかもしれないが、ちゃんとお天道様はみてる…否、ちゃんと人間も見ているよ。他人に敬意を持てない人は敬意を持たれてもいないから、ちゃんと天秤は釣り合っているんだよ。」

「最近この国は、敬意を払わない人増えたな。お互い敬意を払い合う。人として最低限の美徳の一つだと思います。
 自分にも立場や背負っている責任があるように、相手にも同じものがあるのではなかろうか!?」

「行過ぎたクレームや八つ当たり的なクレームは新しい法律作って罰金刑にでもしないと何時まで経ってもクレームを受ける側が我慢を強いられる事になる、これじゃ公共サービスに従事したいって人がなかなか出てこないだろうね。」

 反響はかなりの数におよび、続いています。
 自分はそうは思わない、怒りを覚える、むしろ感謝しているという内容が圧倒的でした。社会のなかで担っているそれぞれの労働をお互いに理解しながら共同体は維持されています。どのような労働も、軍需産業、軍事に従事する労働以外は、必要不可欠であり役割分担をしています。
 しかし、いかにも自分 (たち) は他者とはちがうと自分を位置付けないと自己を維持できない人たちがいます。かわいそうな人たちです。


 7月31日の 「活動報告」 で、藤井誠一郎著 『ごみ収集という仕事 清掃車に乗って考えた地方自治』 (コモンズ刊) を紹介しました。その中からまた引用します。

 収集作業は、今年のような猛暑が続いても休むことはありません。炎天下での熱中症対策は区によってさまざまです。しかし基本は自己管理です。
「熱中症の原因はいろいろ挙げられるが、寝不足の状態や深酒をすれば発症する可能性が高くなる。付き合いで深酒をするときはあろうが、ほとほどで止めておかなければ、同僚はもちろん住民にも多大な迷惑をかけかねない。自らの体調を管理し、万全の態勢で収集業務に臨めるよう自己コントロールすることが、真夏に収集業務を行う際の基本となる。睡眠時間を十分に取り、規則正しい生活も必要だ。清掃職員は 『窮屈』 な 生活を強いられる。」
 以前、清掃労組も傘下にあった地域の労働組合に清掃労組の役員がいました。定例の役員会は、終了すると飲み会に移るのが恒例でしたが、清掃労組の役員は参加しないで帰ります。酒が嫌いなのか、付き合いが悪いのかと勝手に思い込んでいましたが、本を読んで翌日の業務のための自己管理だったのかと今にして思い至りました。

「・・・作業員は集積所に積まれたごみを清掃車が停まっている場所まで持ち運ばざるを得なくなり、余計な労力を費やす。だが、作業員は表情に出さずにその状況を受けいれ、黙々と収集する。清掃職員の心の広さを感じるところであるが、このようなルールを守らない者に対しては、現場で一定の注意を与えることを許可すべきではないだろうか。
 一方で協力者も存在する。マンションから出される多量のごみ袋の中には、独身者のものと分かる非常に小さなごみ袋も多い。コンビニのレジ袋程度のものも見られる。こうした小さなごみ袋が複数あると、拾い上げるのに手間がかかり、収集作業に時間を要する。気が利く管理人さんは、作業員が収集しやすいように、小さなごみ袋を45ℓ入りの大きな袋に入れ直してくれる。些細な行為ではあるが、収集側からすると非常に助かる。
 清掃行政は、清掃職員のみが行うわけではない。多くの人びとの小さな協力の積み重ねによって、よりよい形が築きあげられていく。1人でも多くの住民がそのことに気づき、当事者意識をもって清掃行政に協力 (参加) していくように期待したい。」
 マンションで管理人が小さなごみ袋を大きい袋に詰め込んでいる風景はよく見かけます。
 一方、家庭から出たごみを、毎日出勤時にコンビニや駅のごみ箱にすてる人たちもけっこう見受けます。この行為は自分の身の回りがきれいになればそれでいいという他者のことは考えない行為で、収集は誰かがやるものと思っています。分別も行なわれていません。しかしコンビニや駅は、業務用ごみとなるので有料です。
 ごみに関する行為は、けっこう人間性、“個性” が表れます。

「運転手は収集作業終了後、翌日に備えて清掃車を洗い、必要ならば磨き上げる。プレス車ならタンクの中を洗浄し、臭いがこもらないようにする。彼らは、こんな思いでメンテナンスを行っている。
『ごみという、汚く、臭い、誰もが嫌がるものを運搬するのだから、車まで汚れていれば、それを見た住民はいい気分にはならない』
 職人が道具を大切に扱うことが基本中の基本であるように、清掃職員も道具を大切にする。そこには、車輛が通行する際に異臭がすれば住民が気分を悪くするであろうという配慮でもあるが、清掃行政への偏見に対する挑戦、自らの仕事の質の向上への努力が含まれている。
 それは、清掃職員による住民との目には見えないコミュニケーションである。住民はそれに気づかないであろうが、きれいな清掃車が街を走り抜けているのを見かけた際には、清掃職員の収集業務への思いやりや住民への気配りを認識してほしい。」

 ゴミは確かに匂うことがあります。
「水分をしっかり切っていないごみである。重くなるから、投げ入れにかなりの力を要する。しかも、プレスに押し込む際にごみ袋から水分が飛ぶ。プレス車のタンクの中が少ないうちは問題にならないが、だんだん詰まって来ると、押し込む際にごみ袋が破裂し、水分が作業員に飛び散る。作業員にかかるだけならまだよいが、通行人、周囲の建造物や施設にかかってしまうと、取り返しがつかない。そのため、押し込む際に袋が破裂する音が聞こえ始めると、細心の注意を払う。飛び散るようであれば、自らの身を挺して盾となり、飛散を防ぐ。・・・排出者がルールを守れば、飛散問題は回避される。排出者のモラル低下を清掃職員がカバーしているのが現状である。」
 このような労働者が自己を犠牲にしてまで住民や通行人に配慮しながら業務を遂行しているにも関わらず、投書にあるように 「臭いから早く持っていけ」 などと暴言を吐かれては、努力が報われません。やる気をなくします。


 住民やビル住居人から事務所にさまざまなクレームが電話で寄せられます。その対応です。そのような時には謝るのではなく 「確認しにいきます」 と答えて現場に向かいます。
 ルール違反には “指導” します。
「指導される相手は清掃職員に対して対抗的であり、言葉を間違える突っ掛かられる可能性がある。逆切れし、頭ごなしに怒ってくることもあろう。それゆえ、しっかりした目で向き合い、毅然とした態度で接することが、清掃職員の資質として求められる。同時に、度胸や心の支え、言い換えれば覚悟や根拠が必要となる。
 不適切な排出者への対応マニュアルは存在しない。収集業務を通じて、ごみ出しの正しい知識とルール、原理原則を自らに落としこみ、それらを根拠にした自信をもとに対応するしかない。確固たる自信がなければ、しっかりした目で不適切な排出者を見ることができない。また、そうした覚悟や根拠がなければ、精神的に参ってしまうだろう。
 清掃指導は収集業務の延長線上にあり、収集業務を真剣に行なって経験を蓄積しているがゆえに遂行できる。収集業務を伴わない清掃指導は成立しにくい。」

 この指導の姿勢は、いわゆるサービス業の労働者や行政窓口の労働者への客や住民からのクレーム対応の基本です。
 理不尽な相手に対する対応マニュアルはありません。そのなかで 「確認に行きます」 は、そこに収集に行った労働者がミスをしたということを前提にしていない対応で謝っていません。労働者の側に立った対応です。「しっかりした目で向き合い、毅然とした態度で接すること」 「正しい知識とルール、原理原則を自らに落としこみ、それらを根拠にした自信をもとに対応する」 は自分たちの労働に対する誇りの保持のためです。


 現在、収集業務の多くが民間への委託業務になっています。
 委託業務は固定業務だけで、住人に対する指導権限等はありません。指導は区職員の清掃労働者だけです。また、委託先の区の施設には委託労働者・運転手が休息するスペースが確保されていません。昼休みに行き場がない労働者は倉庫で雑魚寝し、運転手は駐車場内で仮眠します。倉庫も駐車場もクーラーが効いていません。エンジンを停止させなければならないので送風機で暑さをしのいでいます。寒い季節もまた同じような状態です。
 そこには住民エゴの抑制による清掃行政の効率化の問題があります。著者が指摘します。
「委託化が進んで清掃職員が収集作業をおこなう機会が減れば、知識や経験を積んで自信を築く機会も自ずと減少する。結局、不適正排出者に向き合えない清掃労働者が増え、清掃労働者が成り立たなくなる可能性が生じる。自信がないまま向き合い続ければ、心の健康が維持できず、適応障害や不安障害を持つ職員が増えるであろう。」
 自信や確信は経験に裏付けられるものです。

 効率化を追求することによって生じるつけは、結局、どこで誰が支払うことになるのでしょうか。住民がどのような公共サービスを希望するかは住民自身が労働者と一緒に協議し決定していくことになります。

 「活動報告」 2018.7.31
 「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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日本と共通する韓国の職場いじめ対策と課題
2018/09/14(Fri)
 9月14日 (金)

 全国労働安全衛生センター連絡会議の機関誌 『安全センター情報』 18.10号が届きました。そのなかに韓国のキム・ドンヒャン弁護士の論文「職場いじめの実態と改善対策」 が載っています。韓国では 「感情労働」 については日本と比べると積極的な取り組みがおこなわれています。ではそれ以外のいわゆる職場のいじめ問題の状況、対策はどうなっているのでしょうか。興味が惹かれました。
 日本の状況とは、時間のずれがありますが取り組みに至る経過は似ています。
 長いですので抜粋して紹介します。

 「職場いじめ」 という言葉が社会的に使われはじめたのは比較的最近のことです。労働者が自分の人権侵害を 「職場の甲質」 「職場暴力」 などとよんで相談してくることが頻繁に起こるようになりました。
 4~5年前までは、自分が遭遇したり、目撃したことをいじめと表現することができませんでした。自ら耐えたり、自分に問題があるととらえていました。我慢できないときは辞めていました。
 その点では、労働者が自分がうけている被害を 「職場暴力」 などと表現し始めたのは大きな変化といえます。
 しかし、相談を受ける側は、そのような人権侵害を訴えられても、現行法では職場いじめに関する規定や制度がないため、直ちに解決することは簡単にできないと言わざるを得ませんでした。
 他の国ではどうなっているのかという問題意識から2017年の国家人権委員会による 「職場いじめ実態調査」 に参加しました。

 実態を把握するために、アンケート調査と面接調査を実施しました。
 アンケート調査では、いままでに1年以上の職場経験がある満20歳以上60歳以下の男女の賃金労働者と特殊雇用形態にあった労働者1.506人を対象に実態把握をしました。
 最近1年間のいじめ被害経験は全回答者の73.3%で、被害経験の回数は平均10.0回でした。
 主観的な類型別いじめ経験は、「個人的ないじめ」 39.0%、「集団的ないじめ」 5.6%です。
 「組織的ないじめ」 の類型としては、「経営戦略によるいじめ」 22.4%、「労働組合活動や労働者が集まることを妨害」 4.6%です。
 「差別に該当する行為があった」 50.5%でした。内容は、「年齢」 16.4%、「社会的身分」 16.2%でした。
 主観的な方法で測定するといじめの経験率はより低くなります。類型的には、「個人的ないじめ」 が最も高かったが、「経営戦略によるいじめ」 もたくさんありました。


 いじめの行為者 (加害者) は、役員・経営陣を含んだ上級者が77.6%で最も多く、職場内の権力関係を利用して発生しています。
 回答者の職業別では、委託・販売職の労働者において、顧客などによりいじめの経験が16.8%で、他と比べると高いです。


 回答者が職場のいじめ被害に遭ったときの周囲の対応においては、相談と苦情処理の手続きの関連者、当事者の直属上司、その他の上級職、同僚者や下級職など、職場の構成員による二次被害があります。
 回答者は、いじめの被害を経験した以後に特別な対応をしていません。その理由は、「対処しても改善されないだろう」 43.8%、「関係上の不利益を憂慮」 29.3%、「職務上の不利益を憂慮」 19.2%、「雇用上の不利益を憂慮」 17.0%、でした。
 特別な対処をしたケースでも、「相手方に対する直接的な問題提起」 26.4%が最も多く、公式的な対応につながるケースはまれでした。
 対処のこうかとしては損害賠償請求訴訟をのぞいてはそれほど効果的ではありませんでした。
 被害者への対処において、いじめの行為者に何事も起こらないケースが53.9%あります。行為者が個人的に謝罪するが個人的レベルでのおえられるケースが39.3%です。

 その一方、いじめの被害者への対処では、被害者の不利益につながるケースが多くありました。「自発的な部署や勤務地の異動」 22.1%、「望まない部署や勤務地への異動」 18.7%、「解雇や退職勧奨、労働契約の変更拒否」 13.7%、「自発的な退職」 6.6%、「その他の雇用上の不利益」 4.3%でした。
 また、「業務上の不当な待遇や不利益を被った」 31.1%、「そのような対処をしたという理由で非難された」 29.5%、「悪意的なうわさが広まることを経験した」 26.9%でした。
 「自発的な部署や勤務地の異動」 等と 「業務上の不当な待遇や不利益を被った」 等は重なります。異動等は自発的なものではなく、実質的には強制的なものでした。


 いじめ被害の影響です。
 「真剣に離職を考えた」 66.9%、「上級者や会社に対する信頼が落ちた」 64.9%、「業務能力や集中度が落ちた」 64.9%、「同僚との関係が疎遠になった」 33.3%などでした。
 被害経験者の相当数が精神的、身体的に否定的な影響を受けています。特に、回答者の憂鬱の水準に関しては、被害経験の頻度と憂うつの水準を重ねて分析した結果、うつ病を疑われる水準は、いじめ被害が週1回以上あった集団であり、特にほとんど毎日被害を経験すると答えた集団の憂うつレベルは非常に高くなっています。

 職場の態度については、「職場いじめを実績や成果向上のために一般的な手段として利用している」 25.6%でした。そして 「職場で職場いじめを重要な問題としていない」 という評価は40.1%でした。

 社内の職場いじめに関する手続きに関しては、「相談したり苦情処理を要請できる担当者または相談窓口がある」 で 「利用する資格がある」 は21.2%でした。
 政策や対応手続きについては、「すでに用意されている」 14.8%、「現在作っている」 と 「まもなく作る予定」 6.6%でした。
 いじめ発生時における異議申立に対する同僚や会社への期待についてです。
 「同僚に対する肯定的な期待」 49.1%、「上級者に対する期待」 43.0%、「会社に対する期待」 42.7%で、それぞれ半数に至りませんでした。


 14の事業所で19人を対象に面接調査をおこないました。
 深刻な事態では、いじめの加害者が上級者から人事の権限者、さらに組織の全体にわたっていて、同僚を加害者として参加させるところまでおよんでいました。
 企業の労働組合活動の排除としていじめがおこなわれる場合、その結果が同僚との関係を歪めさせ、労働者の心理的な委縮を強めています。労働組合に対する企業の敵対政策は、組合員を敵とさせ、他の労働者が公開的に組合員を非難して暴力的な行動をとることを幇助し、深刻な事態に至らしめます。
 労働者が被害を認識しているにも関わらず、職場での認識が低いだけでなく、組織内では職場いじめをある程度は許される行為として理解しています。


 では、職場いじめ予防と対策としてはどのようなことが必要となるでしょうか。
 まず、組織内部からの予防教育があげられます。職場いじめが 「禁止された行為」 であることを組織内で認識する必要があります。職場いじめの予防教育を通じて組織内文化を改善し、職場いじめを禁止された行為だと認識できるようにすることです。
 次に、いじめは組織内で容認されないということが組織内の規範として定着させなければなりません。規範は、最高経営者のメッセージから、社内規定や団体協約などさまざまあるが、その確信は、いじめは組織の内部で容認されないということを確認することです。

 いじめが発生した時の救済に関しては、立法的には労働法制を改正したり、「職場いじめ禁止と権利救済などに関する法律」 を制定し、職場いじめに相対的な対応を準備することが必要です。この中には、職場いじめの定義と禁止義務の付加、予防教育の義務化、政府の基本計画樹立などの支援方法の法制化、救済機関と手続きの法制化などが含まれます。
 職場いじめに対する迅速な対応の必要性を考えると、組織内部の社内苦情処理システムを整理することが何よりも重要な課題です。
 職場いじめを 『人権尊重』 の問題として捉え労働者の人権を積極的に保障するためには人権擁護機構である国家人権委員会の役割も重要です。

 多くの職場いじめは、表面だけみれば個人同士のもめごとから出発します。そうすると、あるひとは職場いじめを単純な1つの職場内の個人的なもめごととして片づけ、その原因と解決策を個人に求めたりします。
 しかしいじめは社会的な通念と、根の深い組織文化起因するケースが多くあります。
 職場いじめの問題を 「共同のもの」 と認識し、「共同の問題」 として議題化する必要があります。

 これまでいじめの問題が労働組合の注意を惹くことはなく、主要な闘争課題の副次的な課題に置き換えられていました。
 より多くの問題提起がさまざまなチャンネルから起こらなければなりません。
 労働組合は、組合に加入している事業場での職場いじめの問題解決だけではなく、労働組合がない事業場などで苦しんで労働者に対しても一緒に対応することが必要です。「共同のこととして対応する」、連帯を拡大して強化することが、職場いじめへの対応の最も確信の部分であり、労働組合運動の本質でもあります。

 「活動報告」 2013.10.25
 「いじめメンタルヘルス労働者支援センター」ホームページ・ご相談はこちらから
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